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  4. 鳳明館本館 - 小石川 PAST AND PRESENT

海外からのゲストも若者も感動の昭和空間

白山通りの東側、東大方面へと向かう坂道には、新しい戸建て住宅やマンションが立ち並ぶ。その中に周囲とは異質な空気感をまとって佇む大きな木造建築が、国の登録有形文化財でもある旅館、鳳明館本館である。

明治後期の1898年に下宿屋として建てられた鳳明館本館は、昭和初期に下宿と旅館を兼ねた施設に業態を改め、戦後に団体旅行向けの旅館へと増改築が行われた。団体旅行用につくられたロビーは中庭を改めたもの。下宿兼旅館だった時代は、中庭を囲んで部屋が並んでいた。レトロなタイルの浴室も団体旅行用の増築だ。

これらの改築は街の歴史でもある。明治時代末には近隣一帯に500軒もの下宿が並び、昭和初期には旅館への転業が相次いだ。その多くは戦争中に失われたが、残った旅館は戦後全国からの旅行者を受け入れた。宿泊団体には農協、皇居奉仕団、戦没者遺族会などがあったが、メインは修学旅行。鳳明館は本館と別館2つを合わせ最大約1200名の学生を収容した。

ところが、修学旅行の行き先や宿泊先の多様化、少子化に加え、団体旅行から個人旅行への風潮が界隈の旅館には逆風となる。平成に入り次々と昔ながらの和風旅館が廃業していく中、唯一残った鳳明館も、コロナ禍の2021年、廃業を決意。建物を取り壊してマンションにする計画を進めていると、地元で建設業を営む松下産業グループが「地域の歴史と文化の保存のために」と引き止め、事業を受け継いだ。

現在は修繕工事に備えデイユースのみで営業している。大曽根美代子支配人は、「デイユースならではの敷居の低さを活かし気軽に利用していただき、宿泊施設の概念を超えた『スペース』としての新しい活用法を広げていきたい」と語る。すでに新しい試みとして、館内の見どころを案内するツアーの提供や東大の学生や地元団体とのコラボイベントなどを開催。リモートワークやミーティングのほか、海外からのゲストに異文化体験を提供する企画や、未来小説の読書会など、特別な場所を求める人々に喜ばれている。

昭和を感じさせるものを「エモい」と呼ぶ若者には、鳳明館本館はエモの塊のはず。大曽根支配人は「旅館建築の楽しさに加えて、地域の歴史的・文化的観光資源の面白さを紹介し、『文の京』である文京区の魅力を発信する場になれば」と今後の広がりに期待をこめる。

2階の「えびす」の間。改築の際にオーナーが入手した銘木に合わせ、オーナーと棟梁が部屋の意匠を考えたと見られ、部屋ごとに床、天井、窓等の意匠と使用の樹種が異なる。えびすの間は鯛を釣る恵比寿様の造形、蛇の目傘の天井などが特徴。

玄関には昔ながらの帳場が。今も受付として現役。写真奥側は戦後の改築で中庭をロビーに。

地下の「龍宮風呂」。魚や亀などのタイルがかわいらしい。深めの浴槽も昭和ならでは。

ロビーのお土産コーナーでは、数は少なくなったが、現在も昭和レトロの土産物を販売中。

隣の「台町別館」。もとは個人の邸宅で、那智黒を廊下に敷くなど、素材のあしらい方が趣味性に富む。広い池に奇石や石灯籠を配した日本庭園に面し縁を巡らせる。本郷6丁目にもう一軒、「森町別館」がある。

協力:鳳明館本館
(文京区本郷5-10-5 Tel. 03-3811-1181

鳳明館本館 総支配人 大曽根 美代子 (おおそね みよこ) (おおそね みよこ)

旅館として創業したオーナーの孫で、台町別館で育った。
2016年、株式会社鳳明館入社。2022年より現職。

鳳明館本館 総支配人 大曽根 美代子 (おおそね みよこ) (おおそね みよこ)

大曽根 美代子
大曽根 美代子

旅館として創業したオーナーの孫で、台町別館で育った。
2016年、株式会社鳳明館入社。2022年より現職。

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