新築住宅着工戸数は100万戸を目前に足踏み…一軒家の需要が止まった理由

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新築マンションや新築一戸建など、新築住宅の購入を考えている方たちにとって、「新設住宅の着工戸数」の動向は気になるところではないでしょうか。

マンションにしても、戸建にしても、着工件数が多ければ選択の幅がさまざまに広がります。また、市場全体の需要が多ければ、材料費などの価格も安くなるのです。

つまり、着工戸数が多ければ多いほど、新築住宅を購入する方にとっては喜ばしいことなのです。

しかし、近年の着工戸数は、新築住宅の購入を検討する方の背中を押すほどの勢いがあるとは言い難い状況となっています。

国土交通省の「建築着工統計調査報告書」を見ると、1980年代から90年代まで、日本の住宅着工戸数は年間120万~170万戸とかなり高い水準で推移していました。

バブル崩壊後、やや低迷し、2000年代に入っても120万戸付近をキープしていました。しかし、2007年のリーマンショックを契機に大幅に下がり始め、09年には100万戸を下回って80万戸あたりまで減少。2013年には再び100戸へ届きそうなほどの回復を見せたものの、その後は90万戸あたりで足踏みをするという状況で現在に至っているのです。

では、なぜ「100万戸の壁」を越えることができないでしょうか。

いくら株価が上がっても、サラリーマンには賃金アップなどの恩恵もなく、なかなか景気回復が実感できないのだから当然だ…という声が聞こえてきそうです。

たしかに、アベノミクスがスタートしてから、不動産価格サイクルが好転したことにくわえて、建築資材の世界的な高騰があり、新築一戸建ての価格を引き上げています。買いたいけれど、なかなか手が出ない…という方も多いかもしれません。

また、少子高齢化や晩婚化の影響で、新築一戸建てを購入しようという若い世代の絶対数が減ってきている、ということもあるでしょう。

人口が減少していても「おひとりさま」と呼ばれる単身者世帯が増えているのだから、住宅市場には追い風だという見方もあります。けれど、「おひとりさま」ではマンションなど集合住宅ならまだしも、新築一戸建ての購入にまで至るとはなかなか考えられません。

実際、国土交通省の「建築着工統計調査報告書」の内訳を見ても、持家・分譲戸建の着工戸数は、2013年に50万戸に届きそうなほど回復しましたが、2014年以降は低迷し、2016年には約41万戸となっています。

新築一戸建ての着工「100万戸の壁」の背景に「中古住宅志向」

このような、「景気」や「人口」という要素にくわえて、新設物件の「100万戸の壁」がなかなか突破できない背景には、「中古住宅志向」というトレンドも関係している指摘もあります。

これまでは、新築住宅を購入するということは人生の大きな目標とされてきました。理想としては、自分の思うような注文住宅、予算的に難しければ建売住宅が目標とされました。

また、新築一戸建てが難しいようであれば、新築マンションの購入を目指すという風に、一戸建てに限らず、まずは「新築住宅」を第一選択とする方も多くいました。

しかし、近年になると、環境に配慮する「エコ」という概念が浸透し、古民家などの再利用なども注目を集めていることにくわえ、リフォーム技術の向上から、中古住宅というものに対する抵抗感がなくなってきました。

そんな「中古住宅志向」を示すように、中古マンションの売買成約件数がじわじわと伸びてきています。

国土交通省がまとめた「既存住宅流通シェアの国際比較」によると、住宅市場全体に占める中古住宅の流通の割合は、アメリカが77.6%、イギリスが88.8%(ともに2004年のデータ)と高い水準となっているのに対して、日本ではわずか13.5%(2008年のデータ)に過ぎません。

そのため、政府としては中古住宅をよりうまく活用をするために、市場の活性化を目指しています。

また、約820万戸あるといわれる全国の空き家対策が注目を集めるなかで、古い住宅をいかに有効活用するのか、というリフォームも活発になってきています。

このような大きな流れに、景気や人口動態が複雑にからみあって、「100万戸の壁」ができていると推測されます。

新築の住宅が増えていない、と聞くとなにやらネガティブな印象を受けるかもしれませんが、少し見方を変えれば、住宅選びの「幅」が増えていることでもあるのです。

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