【茅ヶ崎】JOURNAL
 小津安二郎も愛した!老舗旅館が見る、茅ヶ崎の歴史と未来

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100年後を見据えたランドスケープデザインを

しんとした空気が流れる応接間。小津監督の愛用品がさりげなく飾られて。
関東大震災を乗り越えて130年前の意匠が残された、風呂場の屋根。

茅ヶ崎に生まれ育った森さんは、老舗旅館を切り盛りするだけでなく、地域の活性化、この地に脈々と受け継がれる文化を伝える活動にも奔走しています。
「宿に泊まっていただくということは、その街のすばらしさを知ってもらうことでもあります。茅ヶ崎は映画人だけでなく、国木田独歩をはじめとした明治の文豪や、萬鉄五郎といった画家にも愛されてきたのですが、そうした歴史は埋もれつつあります。この地の歴史や物語を受け継いで発信していかないと、どこにでもある地方都市になってしまうと思うのです」

そんな思いから近年、取り組んでいるのが「茅ヶ崎映画祭」。以前からあたためていた構想を、震災を機に形にしたもので、今年で8回目を迎えました。
「手軽にDVDや動画を見る機会が増えるなか、映画館で映画に触れる機会が減っていますよね。ですが、不特定多数の人々がひとつのスクリーンを見ることで、観衆が醸す感情のうねりのようなものが生まれます。小規模ながら、そんなライブ感を大切にしたお祭りを目指しています」
映画祭以外でも、「茅ヶ崎館」を会場にサイレント映画に弁士が台詞をあてる活弁映画を上映するなど、「茅ヶ崎ならでは」の映画文化をつくりあげ、伝える取り組みを行なっています。
「いつもどこかで映画が上映されている……そんな街にできたらと思っています」

2019年6月に第8回目が開催された茅ヶ崎映画祭。こちらは一昨年、茅ヶ崎館で行われた上映会の様子。2019年はクロージングパーティの会場として賑わいました。
2代目にあたる祖父が使っていたという波乗り板。1920年頃作られた、現存する日本最古のサーフボード。

森さんのもうひとつの取り組みは、海の景観をデザインし直すこと。
「茅ヶ崎はやはり、海があってこそ、なんです。いまの海もいいのですが、自然の風景に配慮したランドスケープデザインがなされないままここまで来てしまったので、景観がばらばらなんです。いろいろな世代の声を取り入れ、みなが納得できる、魅力あふれる海岸線を、50年、100年かけて作っていけるといいですね」

海の景観をデザインし直す取り組み例の施工前(写真上)と施工後(写真下)の様子。開放感のある自然と調和したデザインを目指し、垣根の素材や全体の色彩、在来植物種の保護にまで配慮されています。(写真提供:茅ヶ崎市)

「茅ヶ崎館」を後にして、徒歩5分ほどの海へ向かいます。はじめに感じた「不思議な感覚」の正体は、まるで光の粒子が異なるかのような、海面に反射する陽光だったようです。海岸にはビーチサンダルを履いた子どもたちがアイスをくわえながらぱたぱたと足音をたて、若者がギターを奏でる――ここには、そんな開放的で独特の時間が流れています。そんな空気を味わっていると、森さんの言葉が甦ってきました。
「肩の力を抜き、波のリズムに身をゆだねる……素直な心境になったところでなにかをつくると、いいものが生まれる。茅ヶ崎には、何かを生み出す創造的な磁力があるような気がしてならないのです」

■施設データ
茅ヶ崎館
所在地:神奈川県茅ヶ崎市中海岸3-8-5
アクセス:JR茅ヶ崎駅南口から徒歩15分
問合せ:0467-82-2003
http://chigasakikan.co.jp

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text KOKI ASO  photos KOKI ASO, SO IMADA/Furaido
edit IKUMI ISHIKAWA/Furaido, SO IMADA/Furaido

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※本記事は記事執筆時点での情報に基づいています。