西麻布
バブルの西麻布を象徴する建築が現代アートとカルチャーの拠点に
WALL_alternative
バブル期、ポストモダンと呼ばれた装飾性の豊かな建築が都内各所に出現した。西麻布交差点近くの商業ビル「ザ・ウォール」もその一つ。夜ごと若者たちで賑わっていた空間が、現在はエイベックスのプロデュースで現代アートを中心に様々なカルチャーが交わる交流の場となっている。
「ザ・ウォール」の外壁はローマ時代の城壁の廃墟を表現するため、日本の煉瓦造の建物を解体した際に出た古い煉瓦をイタリアの手法で積み上げている。隣接する円筒形の建物「アートサイロ」もナイジェル・コーツの設計。
新しいムーブメントの発信地
イギリスの建築家ナイジェル・コーツの設計による、煉瓦の壁と多様な装飾が印象的な商業ビル「ザ・ウォール」。竣工の1990(平成2)年はバブル経済の絶頂期であり、入居したディスコバーは平日も深夜まで賑わっていた。そんな時代の余韻が漂う建物に、2023(令和5)年秋、「WALL_alternative」という、現代アートを中心とする多様なカルチャーを発信するための空間が生まれた。運営を手がけているのは、エイベックス・クリエーター・エージェンシー株式会社。1990年代のJポップを席巻した、エイベックスのグループ企業である。
同社のアート事業は、2020(令和2)年、YouTubeチャンネル「MEET YOUR ART」の開設に始まる。音楽とアートは異分野だが、MEET YOUR ARTプロジェクト共同代表をつとめる古後友梨さんは「弊社の企業理念は、『人が持つ無限のクリエイティビティを信じ、多様な才能とともに世界に感動を届ける』であり、ジャンルの制限はありません」と語る。
従来のアートのビジネスは愛好家以外との接点が少なく、かつ日本の市場規模は小さい。同社はその状況を変えようと、YouTubeチャンネルに続き、2022(令和4)年、MEET YOUR ART FESTIVALを立ち上げた。アートを中心に音楽、食、ファッションなどの要素も交えたジャンル横断型のフェスは好評を博し、以後毎年開催されている。
WALL_alternativeはこの一連のアートプロジェクトのリアルな拠点に位置付けられる。多様な才能が出会い、新しいムーブメントが発生する場になることを目指し、展示空間にバーを併設した。バーで作者との会話が弾み、そのキャラクターにひかれて作品を購入する人も。「作品を購入していつも見ているとさらに好きになり、作者をもっと応援したくなるのは、推し活に似ています」と古後さん。作者の創造の力、エイベックスのプロデュースの力に加え、推す力、楽しむ力など、多様なエネルギーが集まるこの場所から、日本のアートの新しい風が吹き始めている。
                  外壁の廻り縁の上に彫刻群を配置。大時計は、有名デザイナーのトム・ディクソンが手がけた。
                  スポーツブランドのニューバランスとの展覧会「GREY ART MUSEUM」の会場風景。内装を担当した新鋭の建築家、萬代基介は、柱や壁の塗装を完全に落とさず、バブル時代からの堆積を見せることで、年月の質感を表現した。
                  バーでは「つくり手の物語を伝えたい」と、国産のナチュラルワインをメインとする。展覧会に合わせたメニューの提供など、食とアートのコラボレーションにも積極的。
                  2022年に始まった「MEET YOUR ART FESTIVAL」は翌年より寺田倉庫を中心とした天王洲運河一帯を会場とする。展覧会、アートフェア、音楽ライヴ、アートマーケットなどが行われ、2024年は4日間で5万人以上を動員。
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目次
西麻布エリア全体MAP
REAL PLAN NEWS No.126 掲載