StoryEssay / 2017 05,15 /Part.3

38歳出版社勤務。過ちから逃げるように始めたランニングの先に見えた新しい自分。 そして新たな出会いからのリライフ(前編)

出版社に勤める勇次は、大阪府豊中市で生まれ育ち、明治大学経済学部を卒業。学生時代から10年付き合った恋人とまさかの結婚1年で別れてしまった×1(バツイチ)男。
これからお話しするのは、そんな勇次が離婚、転職、友人関係、恋愛、お金など様々な人生の局面で必死にリライフ(=人生の再生)を繰り返し、大きくなっていくヒューマンドラマです。

走っている間は消える心のノイズ 気付けば22kgの減量成功 取り戻せたほんの少しの自信

Chapter.11

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走っている間は、頭の中が空っぽになります。当時の僕は、同僚を裏切ったという自己嫌悪が長く尾を引き、常に心のどこかで自分を否定していました。愚行を思い出しては自らを責めてしまい、寝ても覚めてもどこか苦しいような状態でした。

でも、無心になって地面を蹴っているときだけは、悩みから解放されました。距離が進むにつれて雑音は耳に入らなくなり、自分の呼吸と心臓の脈打つ音だけが聞こえる。一時ではありますが、煩わしい悩みが消え去ったような錯覚を味わえる。肉体的には確かにきついのですが、どこか心地いい。

僕にとって走ることは現実逃避に近い意味もあったかもしれないし、走ることで過去の自分を振り切りたかった、と言ってもいいかもしれません。
過去の自分に追いつかれたくなくて、僕は走り続けました。

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毎晩走るので、スニーカーのソールは急速にすり減っていきました。のめり込むに連れ、新宿のスポーツショップへたびたび通うようになり、ランニングシューズやジョギングウェアを買いそろえました。スタッフの飯倉さんが親切で「少しずつ痩せてきましたね」なんて声をかけてくれて。ショップに行くたびに交わす会話も楽しみになりました。

気が付けば、一年後にはみごとダイエットに成功。22kg落とすことに成功しました。
痩せたからといって、孤独な日々に大きな変化はありません。同僚の反応も通り一遍で、誰も心を通わせてはくれません。それでも、「自分の意思で健康を管理できるんだ」という自信がついたことは、僕にとって大きな収穫でした。なぜなら、肉体をコントロールできるなら、精神的にもより自分を律することができるはず、と思えたからです。

欲望に負けて誰かを裏切ったりすることは、二度としたくありません。走るようになって、ほんの少しだけ強くなれた気がしました。

ダイエットに成功し、ほんの少し自信を取り戻した勇次に、新たな出会いが訪れる。