タワーマンションの地震のリスクとは?構造と安全対策について解説

タワーマンションは地震のリスクが高いのか?

地震が起きると、大きな揺れに見舞われるリスクが高いと思われがちなタワーマンション。「高層階に住んで大丈夫?」「地震でタワーマンションが倒壊したりしない?」と、心配な方もなかにはいることでしょう。しかし、本当にタワーマンションは地震によるリスクが高いのでしょうか?

実際は、タワーマンションには耐震・制震・免震といった構造による、予防的な地震対策が施されています。今回は、タワーマンションに採用されているこうした構造の特徴と、地震が起きた際の注意点、また自分でできる災害対策について解説します。タワーマンションの購入を検討している方は、ぜひ参考にしてくださいね。

厳しい建築基準を満たすタワーマンション

タワーマンションとは一般的に、地上20階以上、高さにして60mを超える超高層マンションを指します。20階以上の超高層建築物には、構造の強度や安全性に関する厳しい建築基準が国によって定められており、その基準を満たした場合にだけ建設が認可されます。

また、地震大国の日本では1981年に耐震基準が改正されており、それ以降に建てられる建築物の全てに新耐震基準が適用されています。新耐震基準で新たに定められたのは、たとえ震度6~7の地震が起きたとしても、建築物が倒壊しないという構造基準です。ちなみに、それ以前の「旧耐震基準」は震度5程度の揺れで倒壊しないことが基準でした。タワーマンションは、この新耐震基準を満たす強度の構造や高い耐震性が求められるうえに、耐火性能や避難時の安全性など、一般のマンションより厳しい安全基準も設定されています。

このように、タワーマンションは数多くの厳しい審査を受け、国土交通大臣から認定されてようやく建設できる建築物です。優れた技術を導入して各審査をクリアしたタワーマンションは、地震による倒壊のリスクが低く、安全性に関して信用できる建築物だといえるでしょう。ここから先は、地震対策のために用いられるタワーマンションの構造についてご紹介します。

地震対策の構造は3種類

タワーマンションには、地震に対応するための高度技術を駆使した構造が用いられています。その構造には「耐震構造」「制震構造」「免震構造」の3つのタイプがあり、ほとんどの場合、いずれかの方法で建設されています。これらの構造について、それぞれ特徴を見ていきましょう。

耐震構造

耐震構造は、建物が地震に耐えられるように、柱・梁などが太く堅固に造られる構造です。建物自体の倒壊は防ぎやすい一方、地震の揺れをそのまま受け止める構造になっているため、揺れが大きく伝わり、壁や柱にひびが入るといった建物へのダメージが大きくなります。しかし、制震構造や免震構造よりも建築コストを抑えられるため、物件価格が一般的に安くなるのがメリットです。

制震構造

制震構造は、建物に「ダンパー」と呼ばれる制震装置を設置し、地震のエネルギーを吸収する構造です。ダンパーとは、ゴムのような弾性体を利用することで、衝撃を弱めて、振動が伝わるのを制御する装置のことです。揺れ幅が少ないので、耐震構造より柱や壁などの損傷を抑えやすいほか、風による揺れにも強いというメリットがあります。そのため、多くのタワーマンションで採用されている構造です。

免震構造

免震構造は、地盤と建物の間にゴム層を入れて地震の振動を吸収し、揺れが建物に直接伝わらないようにする構造です。地面と建物が切り離されているため、地震による激しい揺れが緩和され、ゆっくりとした揺れになります。耐震構造・制震構造と比較すると、揺れ方が小さいために、建物へのダメージは少なく、家具の転倒も軽減できるといわれます。ただし、ほかの2つの構造に比べて建設費が高くなるため、物件価格が高くなる傾向にあります。

地震の際のリスクとは?

構造による地震対策が施されたタワーマンションの安全性は高いものの、リスクがゼロというわけではありません。ここからは、地震の際に起こり得るリスクには主にどのようなものがあるのか、それぞれを見ていきましょう。

高層階は揺れが大きい

地震の際、タワーマンションは高層階になるほど揺れが大きくなり、低階層ほど揺れが小さくなります。耐震構造や制震構造などの構造タイプによっても揺れ方は異なりますが、どの構造であっても、高層階に住む場合は揺れのリスクを考慮しておく必要があります。

エレベーターが止まることがある

エレベーターに乗っている間に地震が起きると、エレベーターが停止することもあります。また、地震の影響で長時間エレベーターが止まった場合、復旧するまでの間は階段を使用しなければならないことも考えられます。

ライフラインが止まることがある

タワーマンションに限ったことではありませんが、地震によって電気や水などのライフラインが止まることもあり得ます。また、排水設備が機能しなくなり、トイレが使えなくなることもあるかもしれません。一般のマンションに住む場合と同じく、懐中電灯や簡易トイレを常備するなど、日頃から自分で地震対策を講じておくとよいでしょう。

タワーマンションの地震対策

上記で紹介した地震のリスクに備えて、タワーマンションは建築基準法によっていくつかの安全対策を施しています。それぞれをご紹介します。

地震時管制運転装置

地震時の心配事の1つに「エレベーターの閉じ込め事故」がありますが、建築基準法では、エレベーターが一定以上の揺れを感知した際は、自動的に最寄りの階に停止し、開扉する「地震時管制運転装置」の設置を義務付けています。(※1)これによって乗客はすぐに避難できるため、タワーマンションのエレベーターに長時間閉じ込められることは少ないといえるでしょう。

非常用エレベーター

建築基準法では、高さ31mを超える建物には、非常用エレベーターの設置を義務付けています。(※2)そのため、タワーマンションには非常用エレベーターが設置されており、災害時には救助や避難に役立てられることになっています。なお、停電時には予備電源で作動するので安心です。

タワーマンションの購入を検討している方は、エレベーターに関して「エレベーターに地震時管制運転装置がついているか」「非常用のエレベーターが何基あるか」「予備の電源で何時間稼働できるか」の3点を確認しておきましょう。なお、非常用エレベーターの稼働時間が短い場合は、避難の際に階段を使うことになる場合もあるため、非常階段の位置や使い方も確認しておきましょう。

ヘリポート

タワーマンションも含めた高層建築物の屋上には、通常「H」、あるいは「R」のマークが大きく描かれています。これは、はしご車での救助活動に限界がある高層建築物に対して、ヘリコプターでの救助活動を行えるように設置されたスペースを示すマークです。Hのマークは「Heliport(ヘリポート)」の頭文字で、ヘリコプターがそこに着陸して救助するスペースであることを意味します。一方のRは「Rescue(レスキュー)」の頭文字で、緊急救助用スペースを意味しており、ヘリコプターは直接着陸できません。そのため、ホバリング(空中停止)状態で救助活動を行うことになります。

スプリンクラーや防火シャッターなど

タワーマンションでは、地震の影響で火災が起きた場合に備えて、スプリンクラーや防火シャッターを設置し、火が広がらないように設計しているほか、壁やドアには防火素材を使用しています。特に非常用エレベーターやその昇降路、司令塔でもある機械室は、耐火構造の壁・床・天井に囲まれているため、避難経路の面も安心でしょう。

ちなみに、火災は住戸内で発生することも多いので、室内の絨毯やカーテンは防炎加工されたものを使用する、という火災被害を抑えるためのルールも消防法で義務付けられています。

防災用品

タワーマンションでは、災害に備えて防災用品を備蓄しているのが一般的です。簡易トイレや防寒用アルミマット、保存食や飲料水などを備蓄していますが、数に限りがあるため、自分自身でも備蓄することをおすすめします。

自分でできる地震対策

タワーマンションに住む場合、先にお伝えしたマンションの構造を知っておくことが大切です。入居を検討しているタワーマンションが、耐震・制震・免震のうちどの構造を取り入れているか、またほかにどのような地震対策を施しているかを調べてみると、安心できる住まい選びに役立つでしょう。

また、自分で地震対策をしておくことも重要です。家具や家電を固定し、非常食や飲料水、懐中電灯やライター、携帯ラジオなどを準備するようにしましょう。避難グッズは目に付きやすく、取り出しやすい場所に置いておくことも大切です。タワーマンション内の避難経路の確認もしっかりと行いましょう。

安全対策を施したタワーマンションを選ぼう!

タワーマンションを建築するには、厳しい建築基準を守らなければなりません。そのため、建築基準をクリアしたタワーマンションは、地震の際にも建物が折れる、倒壊するなどといったリスクはかなり低いといえます。多くの地震対策や災害対策を施して国に認可されたタワーマンションは、「地震に弱そう」という漠然としたイメージよりずっと安全といえるでしょう。

ただし、高層階の揺れやエレベーターの停止など、タワーマンション特有のリスクもあります。これらも把握し、自分自身でも日頃から災害に備えることで、より安心・安全なタワーマンションライフを送れるでしょう。

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※1出典:エレベーターの安全に係る技術基準の見直しについて、国土交通省(最終確認:2023年3月20日)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_fr_000012.html

※2出典:建築基準法(第三十四条の2)、e-Gov法令検索(最終確認:2023年3月20日)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000201

三上隆太郎

株式会社MKM 代表取締役
大手ハウスメーカーにて注文住宅の受注営業、家業の建設会社では職人として従事。個人向け不動産コンサルティング会社のコンサルタントやインスペクターを経験し中古+リノベーションのフランチャイズ展開、資格の予備校にて宅地建物取引業法専属講師など、不動産業界に幅広く従事。
https://mkm-escrow.com/