「都心最後の一等地」といわれる築地の再開発が、いよいよ始動しました。2018年に築地の場内市場が豊洲へ移転して以来、更地となっていたエリアの動向に注目が集まっていましたが、2024年5月、6年越しで事業計画が発表されました。計画内容は、5万人規模のスタジアム整備を中心とする壮大なもので、東京という都市全体にも大きな影響をもたらすとみられています。
この記事では、築地市場跡地の再開発に関する最新情報のほか、築地を含む湾岸エリアの魅力についてもご紹介します。
東京都が所有する築地市場跡地の再開発の事業者としては、三井不動産を代表とする下記11社が予定されています。
企業連合が2024年5月に発表したところによると、再開発は「ONE PARK×ONE TOWN」をコンセプトとして、主に以下のような計画を予定しています。
再開発エリアの中心を担うのは、最大5万7,000名を収容できる屋内全天候型の多目的スタジアムです。スポーツ、エンターテインメントなど、用途に応じてフィールドや客席の形状を自由に変えることができ、さらに臨場感や没入感を演出するための最先端のデジタル・音響技術の導入も予定されています。
隅田川に面した約10万㎡のスペースは緑地広場となり、敷地の約4割が緑化される予定です。最先端の技術を駆使してCO2排出実質ゼロを目指すだけでなく、再生可能・未利用エネルギーの活用による省エネも推進されます。
再開発エリアでは、これまで築地が育んできた食文化の継承も行われます。築地場外市場と連携して、江戸前の伝統的な食文化を提供する商店街(にぎわい空間)や、日本の食産業・文化の発展を促す「築地クリナリーセンター」などが整備される予定です。
新しい築地の基本機能として、スタジアム周辺にはオフィス、ホテル、レジデンス(住宅)などが建設されます。
また、築地という立地を生かした施設が、滞在機能を備えたMICE施設(ビジネス上の展示会やイベント、会議などを行う施設)です。築地に近い「東京ビッグサイト」や「東京国際フォーラム」といった展示場との一体運用により、今までにない規模のイベント開催が可能になります。そのほか、「国立がん研究センター」と隣接するエリアには、ライフサイエンス分野のイノベーション施設も整備される予定です。人材や情報の集積によって、研究開発が効率的に進むことが期待されます。
新しい築地では、世界中の人々を迎えるために、陸・海・空のモビリティが乗り入れできる交通結節点も整備されます。具体的には、臨海部と東京駅を結ぶ地下鉄新駅、隅田川や東京湾に面している立地を生かした船着き場、さらには将来の実用化を見据えた「空飛ぶクルマ」の発着場などが設けられる予定です。
※引用
上記のように、盛りだくさんの計画内容からは、従来の「食」を中心に、スポーツやエンターテインメントの要素も加えるというまづちくりの方向性を読み取ることができるでしょう。さらに、国際競争力を高めるための機能を備えた施設も多数整備されることで、築地だけでなく、東京全体においてこれまでにない発展が期待されます。総事業費は約9,000億円、広さは約19万m²(東京ドーム約4個分)とされ、2038年度の全体竣工を目指しています。
ここで、築地市場跡地とはどういう土地なのか、また再開発はいつ頃からどのようなスケジュールで進められてきたのか、改めて振り返ってみましょう。
2018年 | 築地の場内市場が豊洲に移転 |
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2019年 | 東京都が「築地まちづくり方針」を策定 |
2020年 | 再開発の方針見直し(新型コロナウイルス流行、東京五輪・パラリンピック延期による) |
2022年 | 具体的な事業実施方針を策定、事業者の募集開始 |
2023年 | 事業者の募集締め切り |
2024年 | 事業予定者決定、事業内容の発表 |
築地市場とは、都内に11か所ある東京都中央卸売市場の1つで、1935年(昭和10年)に開場して以来、水産物や青果物を取り扱う市場としてにぎわいを生み出してきました。しかし、施設の老朽化のため、2018年に豊洲へ移転して今に至ります。
一方、波除(なみよけ)通り沿いにある「場外市場」は築地に残っており、新鮮な海鮮料理や、すしを味わえたり、買い物もできたりすることで今も人気となっています。
移転後の2019年に東京都が策定した「築地まちづくり方針」では、大規模な集客施設を核とする「交流促進ゾーン」、国際会議場やホテルなどを備えた「おもてなしゾーン」など4つのゾーンを設け、それぞれ異なる機能を持たせる方針が記されています。しかし2020年になると、新型コロナウイルスの流行と、その影響による東京五輪・パラリンピックの延期により、再開発方針の見直しを余儀なくされました。
築地地区まちづくり事業においては、2022年3月には、事業者募集に向けて具体的な整備条件を示す事業実施方針が策定され、11月には募集要項が公表されました。そして、2024年4月に事業予定者が決定、5月に計画内容を発表、築地の再開発はようやく本格的に始動することになりました。
今後は、事業者と東京都で2024年度末に協定を締結後、2025年度から一部で着工するスケジュールとなっています。
前述の通り、築地再開発の目玉は大規模な多目的スタジアムです。また、中心事業者として読売グループが参加していることから、「読売ジャイアンツの本拠地が水道橋の東京ドームから築地に移転するのでは?」という声が多数上がっていました。しかし、2024年5月に行われた再開発事業者の会見では「本拠地移転を前提にしたものではない」と明言されており、築地のスタジアムが読売ジャイアンツの本拠地となることは現状未定とみられています。
東京ドームは野球ファンにとって思い入れのある施設であり、移転すれば周辺の飲食店の売上にも影響するため、時間をかけて議論する必要があります。ただ一方で、以前から建物の老朽化を懸念する声が上がっているのも事実です。東京ドームおよび周辺の東京ドームシティ一帯も、今後の再開発について注目していきたいエリアといえるでしょう。
多目的スタジアムや各種施設の建設、さらに交通インフラの整備も予定されている築地市場跡地は、東京という都市全体の発展も担う可能性があります。
併せて注目したいのが、この築地を含めた東京の湾岸エリアです。東京臨海部の総称である湾岸エリアは、1990年代から再開発が進んできたエリアで、現在は多くのタワーマンションが建ち並ぶことで知られています。都心へのアクセスがよく、暮らしやすいことから高い人気を集めていますが、築地地区の再開発が進めば、湾岸エリアの人気や不動産価値はますます向上することが期待されます。
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三上隆太郎
株式会社MKM 代表取締役
大手ハウスメーカーにて注文住宅の受注営業、家業の建設会社では職人として従事。個人向け不動産コンサルティング会社のコンサルタントやインスペクターを経験し中古+リノベーションのフランチャイズ展開、資格の予備校にて宅地建物取引業法専属講師など、不動産業界に幅広く従事。
https://mkm-escrow.com/