再開発とは?進行中のエリアと不動産価値に与える影響を解説

再開発の意味と目的

再開発とは、簡単にいうと「一度造られた街や建造物を、時代に合った形に改修すること」です。再開発を行う場合は、1969(昭和44)年に施行された「都市再開発法」に基づき、長い期間をかけて計画的に進めます。再開発の事業主体は、地方公共団体をはじめ、地権者の組合やデベロッパーなど、複数の団体や企業によって構成されるのが一般的です。

再開発を行うメリットには、「商業施設や交通網が充実して住みやすくなる」「人や企業のコミュニティが形成され、地域が活性化する」といったことが挙げられます。さらに、再開発によって街のブランド力が上がると、市場での需要も高まり、不動産価値が上がる可能性もあります。

不動産売買や不動産投資を検討している方にとって、再開発情報は見逃せないトピックといえるでしょう。そこで今回は、再開発の成功事例や、今後再開発が予定されているエリアなどについて、詳しい情報をお伝えします。

再開発が進むエリア

再開発の成功事例

日本ではこれまで、さまざまなエリアで再開発が行われてきました。そのなかでも、成功事例として話題を集めているものをピックアップしてご紹介します。

東京都・下北沢

東京都世田谷区の小田急線下北沢駅周辺では、2022年5月に「下北線路街」が全面開業しました。これは、小田急線東北沢駅・下北沢駅・世田谷代田駅の地下化に伴い、連なる3駅の旧線路上にできた空き地を有効活用したものです。

下北沢といえば、劇場やライブハウス、古着店などが集まる「雑多な街」というイメージが定着していますが、そんなもともとある地域の魅力を「変える」のではなく、一層引き立つように配慮しながら進められたのが、下北沢の再開発の特長です。

下北線路街に設けられている施設は、再開発エリアに多いオフィスビルやタワーマンションではありません。カフェ、温泉旅館、認可保育園、学生寮といった、地域住民の暮らしやすさや個人のチャレンジを支えるようなジャンルの施設が多く並びます。いわゆる「シモキタらしさ」を生かして進められた再開発には肯定的な声が多く、街には新たな注目が集まっています。

下北沢の街並み

香川県・高松丸亀町

香川県高松市の中心部に位置する高松丸亀商店街は、アーケードの総延長が2.7kmと、日本一の長さで知られる商店街です。かつては地元の買い物客でにぎわっていたものの、バブルによる地価の高騰で居住者が減り、さらに同時期の1988年、瀬戸大橋が開通したのをきっかけに大型店が多数出店したことで、客足が大型店に流れてしまいました。

そこで高松丸亀町商店街が実行したのが、「消費者」を大型店と取り合うのではなく、「生活者」を取り戻すことをテーマにした再開発です。リニューアルした商店街の上部にマンションを設け、さらに医療機関も近くに集めることで、高齢者が住みやすいまちづくりを実現しました。

「医食住」がまとまっているおかげで、車に乗れなくとも徒歩で用事を済ませられるという安心・安全性から居住者が増加し、現在では商店街活性化の模範例として広く知られています。

再開発された高松丸亀町商店街

富山県・富山市

再開発によるまちづくりのなかでも、都市の中心部に医療・住居・行政施設などを集約させる都市構造を「コンパクトシティ」と呼びます。地方都市のコンパクトシティ化で成功例の1つに挙げられるのが、富山県富山市です。

富山市はもともと自動車依存度が高い街で、公共交通機関が衰退しており、車を利用できない高齢者にとっては暮らしにくい街になっているという課題がありました。そこで富山市が行ったのが、公共交通機関を軸としたまちづくりです。複数の「徒歩移動できる生活圏」を、ライトレール(路面電車)で結ぶという仕組みを作ったところ、電車を利用する人が大幅に増加し、地域経済の活性化に貢献しました。

また、市の中心部や公共交通沿線地区に住宅助成制度を導入したことで、郊外から人が戻り始め、「人口問題の解決」というコンパクトシティの目標達成にもつながっています。

ライトレールが走る富山県富山市の様子

東京で注目の再開発予定エリアは?

ここからは、2024年以降に再開発が予定されている・または進行している、東京都内のエリアをピックアップしてご紹介しましょう。

中野

JR中央線の中野駅周辺では、「100年に一度の再開発」と呼ばれる大規模な再開発が進行中です。計画されているプロジェクトは11を数え、対象エリアは約110haにも及びます。主には、南口と北口をつなぐ南北通路(2027年度竣工予定)ができることによって行き来がしやすくなるほか、解体される「中野サンプラザ」を後継する大規模複合施設の建設(2028年度竣工予定)などが控えています。

この再開発によって、中野は「今までの地域文化と上質な暮らしの両方を楽しめるようになる」との期待が寄せられています。

中野駅の再開発の様子

八重洲

東京駅前の北~東側に位置する八重洲では、2023年3月に大規模複合施設「東京ミッドタウン八重洲」がオープンしたほか、2028年には地下4階・地上62階建て・高さ385mという、日本一高いオフィスビルも竣工予定です。

また、地下街経由で東京駅と直結している「バスターミナル東京八重洲」が既に開業しており、2028年度の全体開業時には、国内最大級の高速バスターミナルになる予定です。「日本の玄関口」といわれる東京駅前・八重洲は、今後ますます便利で充実したエリアになるでしょう。

東京ミッドタウン八重洲

品川

JR東海道新幹線をはじめ、多数の路線が乗り入れる品川駅周辺でも、現在複数の再開発が進行中です。品川駅前の国道15号上空に歩行者デッキを設置し、西口に3棟の複合ビルを建設するほか、近隣の高輪ゲートウェイ駅、泉岳寺駅、田町駅でも再開発が行われています。これらの再開発によって、品川駅周辺は新たな国際交流拠点として大きく発展することが期待されています。

品川駅周辺の様子

▶︎ 品川の再開発に関する詳しい記事はこちら

新宿

東京・新宿区の新宿駅周辺では、2040年代を目標とした再開発計画「新宿グランドターミナル」が進められています。新宿駅西口の小田急百貨店跡地に、地上48階、地下5階、高さ260mの複合施設が建設される(2029年度竣工予定)ほか、東口と西口を結ぶデッキで回遊性を高めるといったプロジェクトも進行中です。

詳細についてはまだこれからという状況ですが、この再開発によって、中心エリアの建物の老朽化や、駅周辺の移動の複雑さなどが解消される予定です。

東京都内の再開発情報をいち早く知るには、東京都都市整備局ホームページ「市街地再開発事業について」を閲覧してみましょう。再開発が行われるエリアや計画内容などを一覧できます。

小田急百貨店が解体される様子

地方の再開発予定エリアは?

東京に続いて、地方都市の再開発予定エリアについても見ていきましょう。

大阪府・梅田

梅田駅の付近一帯は大阪の一等地ですが、かつては梅田貨物駅がその広範囲を占めていました。そこで、土地のポテンシャルを生かすため、駅を吹田に移転した跡の区域を「うめきた地区」とし、先行開発区域(グランフロント大阪)と2期区域(グラングリーン大阪)とに分けて大規模な開発を進めてきました。

先行開発区域は2023年に街開きを行っており、2期区域も2024年夏より一部先行の形で街開きが予定されています。2期区域は、公園、南街区、北街区の3つに大きく分かれており、オフィス、ホテル、商業施設、住居などが整備される予定です。

また、JR大阪駅には2023年に地下ホームが設置され、関西国際空港や和歌山・白浜へとつながる特急列車が乗り入れるようになり、アクセス性も向上しました。今後は梅田東側の茶屋町地区での再開発も予定されており、さらなる成長が期待できそうです。

うめきた2期地区開発プロジェクトの様子

福岡県・天神

福岡市中央区の天神エリアでは、「天神ビッグバン」と呼ばれる再開発プロジェクトが進行中です。このプロジェクトは、天神交差点を中心とする半径500mのエリアを対象に、建物の高さ規制を緩和することで、建物の改築・増設を促して街を活性化させることを目的としています。

2023年3月末時点で竣工棟数は52棟にのぼり、エリア内で第1号の竣工となった大規模オフィスビル「天神ビジネスセンター」、高級ホテルや飲食店が入る「福岡大名ガーデンシティ」など、魅力的な施設が続々オープンしています。「アジアの拠点都市」を目指して成長を続ける天神エリアは、今後も要注目といえるでしょう。

天神ビッグバンの様子

熊本県・熊本市

熊本市では、2019年より「まちなか再生プロジェクト」を推進中です。このプロジェクトには、老朽化した建物の建て替えを促すとともに、にぎわいも創出するという目的があります。

熊本市街の中心部には、旧耐震基準の建物が多く残っているほか、空き地や駐車場のままの土地も多いのが現状です。そこで本プロジェクトでは、防災機能を強化して建物を建て替える場合は容積率を割増する、隣接する空き地も統合して「にぎわい施設」を造る場合は財政支援するなどの取り組みを行っています。熊本市では、JR熊本駅前の再開発が既に完了しているので、街なかもリニューアルされれば、より暮らしやすく働きやすい街になるでしょう。

こうした各地方の再開発エリアを探すなら、まずは各自治体のホームページを調べるのがおすすめです。興味のあるエリアが絞られている場合は、そのエリアに強い不動産会社に相談して情報収集するとよいでしょう。

再開発が進む桜町の様子

再開発なら湾岸エリアも要注目!

再開発は、街をより暮らしやすく魅力的にするために行われるものです。交通や生活の利便性が高まるため、不動産価値に与える影響も大きいといえます。不動産売買や不動産投資を検討している場合は、ぜひ最新情報をチェックしましょう。

東京都内で発展性の高いエリアを探している方には、上記でご紹介してきたエリアのほかに、「湾岸エリア」もおすすめです。湾岸エリアとは、東京都の中央区・江東区東部、港区や品川区の一部エリアを含む臨海地域を指します。都心部へアクセスしやすく、最新機能を備えたタワーマンションが数多く建設されているのが魅力です。エリアの詳細や物件情報を知りたい方は、三井のリハウスの「湾岸エリア」特設ページをぜひご覧ください。

▶︎ 湾岸エリア特設ページはこちら

三上隆太郎

株式会社MKM 代表取締役
大手ハウスメーカーにて注文住宅の受注営業、家業の建設会社では職人として従事。個人向け不動産コンサルティング会社のコンサルタントやインスペクターを経験し中古+リノベーションのフランチャイズ展開、資格の予備校にて宅地建物取引業法専属講師など、不動産業界に幅広く従事。
https://mkm-escrow.com/