有楽町線の延伸計画「豊洲〜住吉」間で始動!開業はいつ?沿線の不動産価値についても解説

有楽町線の延伸計画とは?

東京メトロ有楽町線(地下鉄8号線)では現在、延伸計画が進行中です。この計画は2022(令和4)年3月、東京メトロの申請に対して国土交通大臣の事業許可がなされ、始動しました。

計画内容は、豊洲駅から東陽町駅を経由して住吉駅へ至る分岐線を作るというもので、中間には「枝川駅(仮称)」「千石駅(仮称)」という2つの新駅も設置されます。2030年代半ばの開業を目指して計画を推進するとともに、沿線の江東区では「地下鉄8号線沿線まちづくり事業」と称した、新駅周辺の街づくりも行う予定です。

今回は、この事業の概要やメリット、また沿線の不動産価値への影響などについて解説します。

有楽町線延伸ルート

※1 江東区役所公式HPより引用

有楽町線延伸に至った経緯

有楽町線の延伸は、実は50年以上も前の1970年代から持ち上がっていた計画でした。その理由は、南北移動の不便さです。

江東区には、東西に横断する鉄道路線はあっても、南北を縦断する鉄道路線はなく、鉄道路線から遠い住民は都営バスや自家用車を使わないと南北移動がしにくいという課題があります。そのため、江東区は繰り返し延伸の申請を続けてきましたが、ようやく事態が動いたのが2021(令和3)年でした。国土交通省の交通政策審議会が「早期の事業化を図るべき」との答申を示したことで、急速に計画が進展したのです。

沿線では現在、延伸計画の実現によって得られるメリットに大きな期待が寄せられています。では、どのようなメリットが得られるのか、次項で詳しく見ていきましょう。

有楽町線の延伸によるメリット

有楽町線の延伸に期待されているメリットは、主に次の2点です。

  • 湾岸エリアと深川・城東エリアの行き来がしやすくなる
  • 周辺路線の混雑が緩和される

湾岸エリアと深川・城東エリアの行き来がしやすくなる

上でも述べたように、有楽町線が延伸されると、江東区内では南側の湾岸エリア(豊洲・東雲など)と、北側の深川エリア(東陽・千石など)・城東エリア(南砂・亀戸など)の行き来がスムーズになります。

現状、住吉駅から豊洲駅へ行くには、半蔵門線・清澄白河駅、大江戸線・月島駅と2回の乗り換えを経て約20分かかります。しかし、有楽町線が延伸すれば、乗り換えなしの約9分で移動できる見込みです。

移動がスムーズになれば、「国際競争力強化の拠点」として開発が進む臨海地域、また東京スカイツリーや豊洲市場といった観光拠点へもアクセスしやすくなり、さらなるにぎわいの創出も期待できるでしょう。

また、江東区には現状、徒歩約10分圏内に最寄り駅がない「鉄道空白地帯」が生じていますが、枝川駅(仮称)と千石駅(仮称)が設置されることによって、これらも解消されます。新駅の周辺は交通利便性が向上し、住民の暮らしやすさに大きく貢献するでしょう。

江東区エリアマップ

※1 江東区役所公式HPより引用

周辺路線の混雑が緩和される

有楽町線の延伸には、東西線の混雑緩和の目的もあります。今回の計画では、分岐線が東西線の東陽町駅へも乗り入れることによって、東西線で最も混雑する木場駅〜門前仲町駅間の混雑緩和に役立つと想定されています。

これに併せて、半蔵門線や都営新宿線といった、周辺路線の混雑緩和も期待してよいでしょう。

有楽町線の延伸ルートと新駅

現在公表されている有楽町線の延伸ルートは、豊洲駅から東陽町駅を経由し、住吉駅へと至るものです。また、豊洲駅から東陽町駅の間には枝川駅(仮称)、東陽町駅から住吉駅の間には千石駅(仮称)という、2つの新駅が設置されることが決定しています。

ここでは、延伸にかかわる各駅について、街の特徴をご紹介しましょう。

豊洲駅

豊洲は、都心部への近さが注目されて2000年代から再開発がさかんに行われてきた街です。駅周辺に大型商業施設の「アーバンドック ららぽーと豊洲」があるほか、豊洲シビックセンター、病院なども集まっており、生活利便性の高さがうかがえます。2018年には築地市場が豊洲へ移転したことでも注目を集めており、今後もますます人口が増えると見られる、発展性の高いエリアです。

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ららぽーと豊洲周辺

枝川駅(仮称)

枝川駅(仮称)周辺は、河川に囲まれた閑静な住宅地です。1998(平成10)年から人口が急増しましたが、その後2004(平成16)年以降は落ち着いており、長く居住している世帯が多いとみられます。

枝川には児童相談所や区民館などの公共施設があるほか、近隣の潮見には「水素情報館 東京スイソミル」「環境学習情報館 えこっくる江東」といった文化施設があります。また、2023(令和5)年には、文化財に指定されている「旧渋沢邸(旧渋沢家住宅)」も移築されました。

しおかぜ橋

東陽町駅

現在、東陽町駅の乗り入れ路線は東西線1本のみですが、オフィスビルが多く集まっていることから、駅の乗降客数は多いことで知られています。江東区運転免許試験場や江東区役所の最寄り駅ということもあって、江東区住民にとっても重要な駅です。

東陽町駅前には7つのバス乗り場があり、亀戸駅や豊洲市場へも出られるなど、バスによる交通網が充実していますが、有楽町線が延伸されればより移動しやすくなるでしょう。

江東区役所

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千石駅(仮称)

千石駅(仮称)周辺は、落ち着いた雰囲気の住宅地です。一戸建て住宅が多く、スーパーや商店街、病院などもそろっています。

近隣には「横十間川親水公園」「仙台堀川公園」など水や緑に触れられる環境があるほか、「宇迦八幡宮」「東京都現代美術館」で芸術や歴史に親しむこともできるなど、文化的な面でも豊かなエリアです。

宇迦八幡宮

住吉駅

半蔵門線と都営新宿線が乗り入れている住吉駅は、有楽町線が延伸すれば3路線が乗り入れることとなり、将来はさらに交通利便性の向上が期待できる駅です。

そんな住吉駅周辺には、テニスコートや野球場もある広大な公園「猿江恩賜公園」、有名スポットの1つ「扇橋閘門(おうぎばしこうもん)」といった観光資源が充実している一方、公共施設・商店街・病院といった暮らしに必要な施設もそろっています。繁華街は徒歩10分ほど離れた錦糸町にあるので、落ち着いて暮らしたい人にも住吉駅周辺はおすすめです。

猿江恩賜公園

有楽町線の延伸は埼玉へも?

待望の有楽町線延伸計画は既に始動していますが、将来はより大規模な計画へと発展していく可能性もあります。

豊洲駅から住吉駅への分岐線を作るだけでなく、さらに住吉駅から押上駅、千葉県の野田市駅まで延伸する「東京直結鉄道(東京8号線)」という構想もあり、2023年10月には、押上駅〜野田市駅間の延伸の要望が国土交通省へ提出されました。

これは、千葉県北西部や埼玉県東部、茨城県西南部からは都心へアクセスしにくいという課題を踏まえたものです。千葉県、埼玉県、さらに野田市より先の茨城県内へも延伸が実現すれば、周辺住民の通学・通勤圏はより拡大するでしょう。

このように、交通利便性は快適な暮らしのために重要な要素の1つです。今回の有楽町線延伸計画によって設置される2つの新駅の周辺は、交通利便性の向上に加えて、新たな街づくりも行われることで、地価の上昇が見込まれます。併せて、分岐線のそのほかの駅周辺についても、不動産価値の上昇を期待してよいでしょう。

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※1出典:地下鉄8号線(有楽町線)の延伸(豊洲~住吉), 江東区役所
https://www.city.koto.lg.jp/397101/kurashi/kotsu/kokyo/53247.html
(最終確認:2023年12月18日)

※2出典:江東区の観光, 江東区役所
https://www.city.koto.lg.jp/103010/bunkasports/kanko/kotoku/28041.html
(最終確認:2023年12月18日)

三上隆太郎

株式会社MKM 代表取締役
大手ハウスメーカーにて注文住宅の受注営業、家業の建設会社では職人として従事。個人向け不動産コンサルティング会社のコンサルタントやインスペクターを経験し中古+リノベーションのフランチャイズ展開、資格の予備校にて宅地建物取引業法専属講師など、不動産業界に幅広く従事。
https://mkm-escrow.com/