東京メトロ南北線は、品川区・目黒駅から北区・赤羽岩淵駅までを結び、東京を南北に縦断する地下鉄路線です。このうち、白金高輪駅〜目黒駅間は都営地下鉄三田線と共用区間になっているという珍しい特徴もあります。
そんな南北線では現在、「品川地下鉄構想」が本格化しています。品川地下鉄構想とは、白金高輪駅で南北線を分岐させ、延伸することで品川駅へ接続するというものです。2022年1月、有楽町線の延伸とともに鉄道事業許可が申請され、2022年3月、南北線、有楽町線ともに国土交通大臣から事業許可を受けました。2023年12月には、関連工事である「7号線品川工区土木工事」が一般競争入札で公告になり、事業はいよいよ具体的に動き出した状態です。
開業は2030年代半ばに予定されており、開業すれば沿線地域にはさまざまな変化が起こることが予想されます。なかでも気になるのは不動産価値への影響です。そこで今回は、南北線ユーザーの方、南北線沿線で不動産購入を検討中の方へ向けて、延伸事業の詳細と品川駅にもたらす変化について詳しく解説します。
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品川地下鉄構想は2015年に東京都が提案したものですが、南北線の延伸はなぜ行われることになったのでしょうか?ここではその理由と、延伸事業の概要を見ていきます。
南北線の品川延伸は、東京の国際競争力強化のために行われるものです。品川駅は、東海道新幹線をはじめJR線、京浜急行線など多くの路線が乗り入れる大型ターミナル駅です。空の玄関口である羽田空港へ直結するほか、今後はリニア中央新幹線の始発駅となる予定もあることから、東京の国際競争力強化の拠点とされています。
南北線の品川延伸は、この品川駅周辺と都心部の六本木・赤坂エリアとをつなぎ、東京の地下鉄ネットワークをより充実させるのが目的です。現状、品川駅から六本木・赤坂エリアへ移動するには、JR線と東京メトロ銀座線を経由する必要がありますが、延伸が実現すればアクセス性は大きく向上するでしょう。
また、品川延伸によって六本木・赤坂エリアとのリダンダンシー(自然災害や事故による一部区間の途絶に備え、経路を多重化しておくこと)の確保につながるほか、東京メトロ銀座線をはじめとする周辺路線の混雑緩和も見込まれています。
南北線の延伸による分岐線のルートは、「Ω」を描くような線形が特徴です。直線なら1.7km程度で到達するものの、計画ルートでは約2.8kmと遠回りしていますが、この線形には2つの理由があります。
理由の1つは、民有地を避けるためです。今回の延伸計画では、道路下の公共用地を通すことを基本としています。そのため、国道15号・目黒通り・その2つを結ぶ環状第4号線と、公共用地である大通りに沿うとルートはΩ型になるのです。
2つ目は、留置線(一時的に車両を停めるための線路)を活用するためです。現在の計画では、延伸で新設される品川駅は国道15号の地下に配置し白金高輪駅付近の既設の留置線の活用を踏まえつつ、道路下公共用地を通過することを基本として計画されています。既設の留置線は、白金高輪駅から目黒方面に向かって目黒通り下に位置しており、留置線を使わない場合、現在の南北線を運行しながら工事を行うことが難しいというのが、直線ルートを計画しなかった1つの理由とされています。
また、白金高輪駅から品川駅をつなぐルートの途中には、白金台駅や都営浅草線の高輪台駅がありますが停車はしないことになっています。延伸ルートに駅を新設した場合、既設の2駅より深い位置にホームを造ることになり、乗り換えの利便性が悪く事業費もかさんでしまいます。そのため、中間駅の建設は現段階では予定されていません。
東京都市整備局より引用
現在、地下鉄がない品川駅に南北線が延伸すると、次のような利便性向上が期待されます。
ここではそれぞれの利便性について解説します。
南北線の品川駅が新設されれば、六本⽊⼀丁⽬駅、溜池⼭王駅などの主要なエリアと、発展が進む品川エリアとが結ばれることになります。これにより、JR各線、京浜急⾏本線などへの移動時間短縮や、乗り換え回数削減につながるでしょう。
また、オフィス・商業機能が進んでいる六本木・赤坂エリアと、国際競争力の強化拠点として整備が進んでいる品川エリアとのアクセス性が向上することで、それぞれの地域活性化も見込めます。
品川駅は東海道新幹線が通っているほか、京浜急行線で羽田空港へ直結、将来はリニア中央新幹線の始発駅となることも予定されています。鉄道ネットワークが充実して品川駅へ到達しやすくなることは、すなわち日本広域へのアクセス性向上にもつながるでしょう。
今回の品川地下鉄構想が実現されれば、新橋駅構内および銀座線の混雑緩和が見込めます。現在、横浜・川崎方面から溜池山王方面に向かうためには、新橋駅で銀座線に乗り換える必要があります。南北線が延伸されることによって、乗り換えの選択肢として品川駅が追加されることになり、新橋駅を利用していた乗客が品川駅に分散され、新橋駅の混雑が緩和されるでしょう。
加えて、品川駅から溜池山王駅までも同様に、新橋駅を使った銀座線への乗り換えが必要です。しかし、南北線が品川駅まで直通することにより、新橋駅での乗り換えが不要になり、新橋駅構内と銀座線の混雑緩和につながります。
2022年度の東京メトロにおける1日平均の乗降人数が7位である新橋駅の混雑緩和は、多くの乗客にとってメリットになるでしょう。また、通勤で利用する方の多い銀座線の利用者が、南北線に分散されることで、電車を利用する際の身体的・精神的なストレスの緩和も期待できます。
現在、六本木一丁目駅から品川駅までの所要時間は約19分となっていますが、南北線が延伸されると約9分になり、10分程度も時間短縮できます。さらに、2回かかることもある乗り換えの必要もなくなり、快適に移動できるようになるため、南北線の利用者にとって大きなメリットです。
南北線品川駅(仮称)が新設される予定の国道15号周辺では、地上の再開発事業も同時に進められています。品川駅と街をつなぐ動線を改善するため、国道15号上空に「国道上空デッキ」が設置されるほか、西口駅前広場の再整備、複合ビルの建設などが行われる予定です。分岐線の上を通る環状4号線の開通は2032年度を予定しており、その数年後に南北線延伸が実現していれば、品川エリアの機能性・快適性は大幅に向上するでしょう。
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南北線の延伸は、利便性の向上や沿線地域の活性化が見込まれる事業です。特に、地上の再開発事業も進んでいる品川は、今後ますます存在感を増していくでしょう。さらに、隣の高輪ゲートウェイ駅でも大規模な再開発が進んでおり、周辺のマンションの資産価値にも好影響が期待できます。品川エリアでのマンション購入・売却をご検討の方は、三井のリハウス 品川センターまでご相談ください。
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また、品川を含む東京の臨海部は「湾岸エリア」と呼ばれ、発展性と暮らしやすさから近年人気を集めているエリアです。数多くのマンションが建ち並ぶマンションエリアでもあり、東京都内で物件をお探しの方に注目されています。湾岸エリアにご興味をお持ちの方は、三井のリハウスの特設サイトをぜひご覧ください。
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三上隆太郎
株式会社MKM 代表取締役
大手ハウスメーカーにて注文住宅の受注営業、家業の建設会社では職人として従事。個人向け不動産コンサルティング会社のコンサルタントやインスペクターを経験し中古+リノベーションのフランチャイズ展開、資格の予備校にて宅地建物取引業法専属講師など、不動産業界に幅広く従事。
https://mkm-escrow.com/