要介護認定の基礎知識!要支援・要介護の違いと申請方法の解説

介護保険制度を利用するには、まずは「要介護認定」を受ける必要があります。要介護認定は、介護の必要度に応じて8つの段階がありますが、今回は、要介護度の目安となる状態や要介護認定の申請方法、そんな要介護認定の8つの段階の違いや、申請方法、流れについてご紹介します。

目次
  1. 介護の必要度を判定する要介護認定とは?
  2. 心身の状態によって変わる8段階の要介護度
  3. 要介護認定を受ける3ステップ
  4. 要介護・要支援認定でサービスを活用する第一歩を
記事カテゴリ 親のケア シニア
2021.02.26

介護の必要度を判定する要介護認定とは?

高齢、遠距離、一人暮らし…。すぐに介護が必要な状態ではなくても、将来の親の介護について不安に感じる方が多いのではないでしょうか?今回は、親に介護が必要になったときに心強い味方となる介護保険制度について、認定の目安となる状態や申請の流れを見ていきます。

訪問看護師とシニア
介護保険制度を利用するには、まず「要介護認定」を受ける必要があります。

介護保険制度を利用するには、まず「要介護認定」を受ける必要があります。要介護認定とは、日常生活の中で、どの程度介護が必要なのかを判断するためのもので、非該当(自立)、要支援1〜2、要介護1〜5のいずれかの要介護度で判定されます。今回は要介護認定の基礎知識と介護保険制度を利用する際の手順について紹介します。

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介護保険制度のサービス内容や支給額を解説

心身の状態によって変わる8段階の要介護度

要介護度は、介護の必要度に応じて8つの段階に分けられます。まだ介護保険サービスを利用する必要がないと判定された「非該当(自立)」、介護予防のためのサービスが必要と判定された「要支援」、介護サービスが必要と判定された「要介護」という分類になります。

要介護度は、身体機能や生活機能、認知機能、社会生活の適応力などを調べる訪問調査と主治医の意見書をもとに決定されます。

また、認定の結果によって、利用できるサービスや支給限度額も変わってきます。
それでは、要支援・要介護それぞれの段階が、どれくらいの状態なのかを詳しく見ていきましょう。

要支援認定は2段階

要支援の認定は2段階に分かれています。要支援に認定されると、介護予防サービスを利用できるようになります。段階ごとの定義は以下の通りです。

[ 1 ] 要支援1
食事や入浴、歩行などの日常生活はほぼ自分でできますが、掃除や食事の準備など、部分的な支援を必要とする状態です。

[ 2 ] 要支援2
立ち上がりや歩行の運動機能に若干の低下が見られ、日常用生活の一部に見守りや支援が必要な状態です。

車椅子のシニアと介護士

要介護認定は5段階

要介護認定は5段階に分かれています。要介護に認定されると、介護サービスを利用できるようになります。段階ごとの定義は以下の通りです。

[ 1 ] 要介護1
自力での立ち上がりや歩行といった運動機能に不安があり、排せつや入浴の際に見守りや一部介助が必要な状態です。

[ 2 ] 要介護2
自力での立ち上がりや歩行といった運動能力が低下し、排せつや入浴の一部、あるいは全てに介助が必要な状態です。

[ 3 ] 要介護3
自力での立ち上がりや歩行などが難しく、日常生活のなかで、排せつ、入浴、衣服の着脱など全面的な介助を必要とする状態です。また、認知症の症状がある場合は、日常生活に影響がある状態です。

[ 4 ] 要介護4
自力での立ち上がりや歩行がほとんどできず、食事などの日常生活全般に介助が必要な状態。コミュニケーションの部分でも、理解力の低下があり、意思疎通がやや難しい状態です。

[ 5 ] 要介護5
日常生活全般において介助が必要な状態です。理解力の低下が進み、意思疎通が困難な状態です。

要介護認定を受ける3ステップ

要介護認定を受けるまでの流れは大きく分けて、「申請」「認定調査」「結果通知」の3ステップとなります。申請から結果が通知されるまで1か月ほどかかります。では、申請から認定までの流れを見ていきましょう。

介護サービス計画書と要支援・要介護認定区分書

[ 1 ] 申請

申請は介護を希望する人が居住する各市区町村の窓口で行います。要介護認定を受けたい本人、または家族が直接申請します。自治体のなかには、郵送で受け付けているところもありますので、HPや電話で問い合わせるとよいでしょう。

本人や家族が難しい場合は、「地域包括支援センター」「居宅介護支援事業者」「介護保険施設(入所中の方)」の職員が申請を代行することも可能です。

申請時に必要な書類は以下の通りです。

申請時に必要な書類
・介護保険要介護(要支援)認定申請書
市区町村の窓口、あるいは市区町村のHPから入手します。

・マイナンバーカード
マイナンバーの通知カード、あるいは本人のマイナンバーが記載された住民票の写しでも代用できます。

・写真付き身分証明書
写真付きマイナンバーカード、パスポート、運転免許証などから1点が必要です。
なお、写真付き身分証明書がない場合は、医療保険の保険証(医療保険加入の場合)、年金手帳、身体障害者手帳など身元を確認する書類の写しが2点必要になります。

・介護保険被保険者証
65歳の誕生月に送られてきます。紛失している場合は、その旨を申請時に伝えるようにしましょう。

車椅子に乗ったシニアと介護士

[ 2 ] 認定調査

認定調査は、「訪問調査」「主治医の意見書」「一次判定」「二次判定(介護認定審査会)」によって行われます。それぞれの内容を見ていきましょう。

訪問調査
市区町村の職員やケアマネジャーが介護認定を受ける本人の自宅等を訪問します。本人の心身の状態や日常生活の様子、家族や住まいの環境、健康状態、受けているサービス、また生活環境について聞き取り調査が行われます。

訪問調査では、全国共通の認定調査票にもとづき、74項目の基本調査を行います。

●身体機能
生活に必要な基本動作がどのくらいできるかを調査します。体に麻痺している部分がないか、関節の動きはどうか、視力、聴力、寝返りなどの状態も確認します。

●生活機能
食事や排せつができているか、簡単な衣類の着脱はできるか、適度な外出はできているかなど、日常生活で行う機能の状態を確認します。

●認知機能
自分の名前や生年月日、年齢、今いる場所がいえるか、意思伝達ができるかどうかなどを確認します。

●精神・行動障害
過去1か月の間に、社会生活を送るうえで不適切な行動があったかどうか、その内容と頻度について確認します。

●社会生活への適応
集団のなかで社会性のある言動が取れるか、買い物、お金や薬の管理などを行えるかどうかについて確認します。

また、医師や看護師から過去14日間に受けた特別な治療(点滴や透析、ストーマ(人工肛門)、経管栄養の処置など)についても尋ねられます。

主治医の意見書
訪問調査によって作成された書類に併せて、主治医の意見書が必要になります。主治医の意見書とは、介護や支援が必要になった原因の疾病や負傷の状況、どのくらいの介護が必要かについて、かかりつけの医師の意見を記した書類です。

主治医がいない場合は、市区町村が指定する医師の診察を受けることになります。

主治医意見書の作成依頼は市区町村から直接主治医に行われます。作成費用についても市区町村(保険者)の負担となります。

この意見書は、このあと行われる一次判定や二次判定(介護認定審査会)での審査判定の資料として用いられます。

一次判定:コンピュータが判定
訪問調査の内容、主治医の意見書がそろったら、一次判定としてコンピュータが要介護度を判定します。

二次判定:介護認定審査会が審査
一次判定後、主治医の意見書や訪問調査の特記事項などをもとに、保健、医療、福祉の専門家が要介護度を判定します。特記事項とは、訪問調査の際、認定調査票に記述した本人の心身の状態や介護実態を補足するために記した内容を指します。

介護士とシニア

[ 3 ] 結果通知

二次判定終了後、郵送で認定結果が届きます。その際、新しい介護保険被保険者証も同封されてきます。
サービスの利用を行うためには、要支援の方は地域包括支援センター、要介護の方は居宅介護支援事業所のケアマネジャーにケアプランの作成を依頼します。

なお、要介護認定には有効期間があるため、(初回申請の場合は原則6か月)、継続してサービスを利用するためには更新が必要となります。

以上の流れを踏むことで、適切な介護保険サービスを受けられるようになります。

要介護・要支援認定でサービスを活用する第一歩を

要介護認定の流れを説明してきました。不安な部分があれば、地域包括センターやケアマネジャーに相談しながら進めるとよいでしょう。

認定を受けるまで1か月ほどかかるため、早めの申請が必要なことを覚えておくとよいですよ。

また、もし認定結果に納得がいかなかった場合には、不服を申し立てることができます。不服の申し立ては認定結果を受け取ってから3か月以内であれば可能です。

今回説明した手順に沿って申請し、要介護認定を受けることで、介護保険サービスを利用できるようになります。これらの情報を知っておくだけでも、いざというときに慌てず対応できますよ。

将来、親に介護が必要になった時、どのような介護を求めているのか、同居や介護施設の利用などについても家族で早めに話し合っておくと安心ですね。

三井不動産株式会社 ケアデザイン室

三井不動産グループが培ってきた住まいと不動産に関する総合力・専門性を生かし、豊かな老後を過ごすためのお手伝いをするとともに、福祉の専門職が豊富な経験に基づいたコンサルティングを通して高齢期のさまざまなお悩みにお応えしています。