在宅介護を始めたい!準備を整えてストレスの少ない介護を

在宅介護を始めるためには、自宅で介護ができる環境を整える必要があります。今回は、在宅介護を始めるうえで必要な3つの準備「介護保険の申請」「住環境の整備」「資金調達」についてそれぞれ詳しくお伝えします。

目次
  1. 在宅介護を始めるには?
  2. [ 1 ] 介護保険の利用
  3. [ 2 ] 住環境の整備
  4. [ 3 ] 資金調達
  5. 介護の話は家族で早めに話し合っておこう
記事カテゴリ 親のケア シニア
2021.04.09

在宅介護を始めるには?

そろそろ親の介護について考えようと思ったとき、「施設に預けるよりは、自宅の方が…」と考えている人もいるのではないでしょうか?しかし、初めての親の介護では、どんな準備をすればいいのか分からないですよね。そんな人のために、今回は在宅で介護を始める前に必要な準備についてお伝えします。

車椅子

在宅介護をスタートするには、「介護保険の申請」「住環境の整備」「資金調達」の3つの準備が必要です。それぞれを具体的に見ていきましょう。

[ 1 ] 介護保険の利用

介護が必要になったら、まず介護保険の利用の準備を行わなければなりません。介護保険への加入は40歳以上の国民に義務付けられており、社会保険料の一部として支払いが開始されます。介護保険に加入している人は、介護度に合わせた一定の介護サービスの費用補助が受けられます。介護保険を利用するためには、以下の2ステップが必要になります。

ステップ1:要支援・要介護認定を受ける

介護保険を利用するためには、要支援・要介護認定を受ける必要があります。認定の申請は、介護を受ける親が住んでいる市区町村の窓口で行います。

要支援・要介護認定を受けるには1か月程度かかるので、介護が必要になると分かったら、早めに申請をしましょう。申請に必要な書類は以下の通りです。

・要介護認定の申請書
・介護保険被保険者証
・マイナンバー
・身分証明書

申請すると、市区町村の担当者かケアマネジャーが家庭に訪問し、どの程度の介護が必要かを見極めるための聞き取り調査が行われます。それをもとに、一次判定を行います。その後、主治医が作成した意見書などをもとに二次判定がなされ、最終的に要支援・要介護度が認定されます。

在宅介護で受けられるサービスの内容と要支援・要介護認定については以下の記事でご紹介しています。

●在宅介護サービスに関する記事はこちら

●要支援・要介護認定に関する記事はこちら

ステップ2:ケアプランを作成する

介護度が決まると、ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員によってケアプランが作成され、そのプランに沿ってさまざまな介護サービスを受けられるようになります。

●ケアプランに関する記事はこちら

[ 2 ] 住環境の整備

介護保険の申請を行ったら、介護する環境を整備しましょう。自宅で介護を始めるには、これまでの暮らしの空間を、介護がしやすい環境へと変える必要が出てきます。実際にどのように環境を整えればよいのか見ていきましょう。

介護ベッドで寝るシニア女性と介護者

自宅の環境を整える

在宅介護の環境作りをするには、最初に介護する部屋を決定することが大切です。たとえば、トイレや浴室に近く、家族がコミュニケーションを取りやすく、風通し、日当たりがよい場所が理想的です。

次に、食事や移動、排せつや入浴など、日常生活で不便やストレスを感じている動作がないかをチェックしましょう。外出するときの動線を確認しておくことも大事です。車椅子で玄関まで、また玄関から車寄せまでスムーズに移動できるかを確認しましょう。

もし不便を感じる場所があるなら、手すりやスロープをつけるなど、バリアフリーにしたり、ドアを引き戸にするなどの整備をしておきましょう。なお、工事の内容によっては介護保険から給付されますよ(改修費20万円まで、助成は費用の7~9割)。

住まいの環境をどう整えればよいか分からないときは、ケアマネジャー、リハビリの専門職、福祉住環境コーディネーターなどの専門家に相談しながら、必要な整備を進めることをおすすめします。

車椅子のシニア女性と相談をする夫とビジネスマン

介護用品を準備する

介護環境が整ったら、次に介護用品を取りそろえましょう。身体状況によって必要なものは異なりますから、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員などの専門家に相談して、本人の状態や家族に合った介護用品を用意します。

在宅介護によく利用される介護用品は、電動ベッド、車椅子、歩行器、ポータブルトイレ、シャワーチェアなどです。利用する際は、それぞれの介護用品の寸法を調べて、設置できるよう先に自宅の環境を整えておく必要があります。なお、介護用品のなかには介護保険が利用できるものもあります。こちらも専門家に確認するとよいでしょう。

ほかにも、家族を呼ぶためのブザーやベル、杖、昇降機、曲がるストロー、食べやすい箸やスプーン、薬ケース、クッションなどの介護用品も必要に応じて用意しておきましょう。

住宅の模型、お金、電卓

[ 3 ] 資金調達

在宅介護では、介護用品をそろえたりバリアフリーにするための費用のほか、月々の介護用品のレンタル料や介護保険サービス利用料などが必要です。また将来、介護度が進んでしまったり、在宅介護が難しくなってしまったりした場合には、施設介護への移行が必要になるかもしれません。そのため、早いうちから介護のための資金を用意しておくことをおすすめします。

持ち家がある場合、資金調達の方法として、「リースバック」と「リバースモーゲージ」という2つの方法があります。

リースバック
リースバックとは、今住んでいる住まいを売却し、売却後は買主と賃貸契約を結ぶことで、自分の住まいに住み続けたまま、資金を得る方法です。リースバックの場合、まとまった資金がすぐに手に入り、後からの買い戻しもできることがあります。

リバースモーゲージ
リバースモーゲージは今の住まいに住み続けながら、住まいを担保に資金を借入れる方法です。借り入れた本人が死亡した際に、担保の不動産を売却し、借入金を返済します。リバースモーゲージは生きている間は家を明けわたす必要がなく、自宅で過ごすことができます。

リースバックとリバースモーゲージは、老後にまとまった資金が必要になった場合に利用できる資金調達方法です。一度検討してみるとよいでしょう。

●リースバックとリバースモーゲージに関する記事はこちら

介護の話は家族で早めに話し合っておこう

親の介護に直面すると、どうしたらよいかが分からず、当事者も家族も戸惑われるかもしれませんね。介護は、介護する側もされる側も気を使い、ストレスが溜まりやすくなります。できるだけお互いの負担を減らすためにも、安心できる環境を整えてスタートさせたいものですね。

そのためには、日頃から、介護についてどう考えているかを両親と話し合っておくことが大切です。今住んでいる家をどうしたいか、施設に入る必要が出てきた場合はどうするかなどについても早めに話し合っておくことをおすすめします。

今回は、在宅介護の準備についてお伝えしましたが、在宅介護を家庭内だけで行うことは、体力的にも精神的にも大変です。家族に余裕がなくなると、介護される側にとってもつらくなります。介護の負担を少しでも軽くするために、周りの人の協力を得ることが重要です。プロの手を借りながら、家族間で介護の時間や役割を分担して、無理なく在宅介護ができる環境を整えて、心地よい介護を始めてくださいね。

三井不動産株式会社 ケアデザイン室

三井不動産グループが培ってきた住まいと不動産に関する総合力・専門性を生かし、豊かな老後を過ごすためのお手伝いをするとともに、福祉の専門職が豊富な経験に基づいたコンサルティングを通して高齢期のさまざまなお悩みにお応えしています。