親の介護時に利用したい介護保険制度とは?サービス内容や支給限度額を解説

親の介護について、そろそろ準備を始めておきたいけど、何から手をつければよいか分からないという方は多いと思います。今回は、親を介護する前に知っておきたい「介護保険制度」について、利用できるサービスや注意点をお伝えします。

目次
  1. 親の介護に利用したい「介護保険制度」とは?
  2. 介護保険制度ではどんなサービスが受けられる?
  3. 介護保険サービス利用までの流れは?
  4. 介護保険サービスの費用はどのくらい?
  5. 正しい知識で介護保険制度を有効に活用しましょう
記事カテゴリ 親のケア シニア
2021.02.26

親の介護に利用したい「介護保険制度」とは?

介護保険制度とは、介護が必要になった高齢者を社会全体で支えていく制度のことです。日本では、年齢が40歳になった月から全ての人が加入し、保険料を支払うことになっています。被保険者(介護を受ける対象者)は、以下の通りです。

・第1号被保険者(65歳以上):要介護・要支援認定を受けている
・第2号被保険者(40〜64歳):医療保険に加入し、16種類の特定疾病により要介護・要支援認定を受けている

上記に当てはまる被保険者は、介護にかかわる費用が給付される「介護保険サービス」の利用が可能です。介護保険サービスを利用すれば、介護費用の大半を介護保険の保険料や、国、都道府県、市区町村の税金で補うことができ、自己負担の割合を減らすことができますよ。

「そろそろ、親の介護の準備を始めておかないと…」と感じたら、まずは介護保険制度について、知識を蓄えておきましょう。

介護保険制度ではどんなサービスが受けられる?

介護保険サービスは、「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の大きく3つに分けられます。どのようなサービス内容なのか、どのような人が利用できるのか、1つずつ確認しましょう。

介護ヘルパーと車椅子のシニア

居宅サービス

要支援の方、要介護の方ともに、自宅にいながら介護サービスを利用できるのが、居宅サービスです。

居宅サービスは「訪問サービス」「通所サービス」「短期入所サービス」「そのほかのサービス(福祉用具購入費助成、福祉用具貸与、住宅改修費助成、特定施設入居者生活介護)」に分けられます。要支援の方も一部のサービスを除いて介護予防サービスとして利用できます。

訪問サービス
訪問サービスとは、利用者の自宅に介護スタッフや看護師などが訪問し、各サービスを提供してくれることです。主に、以下のようなサービスがあります。

●訪問介護
自宅にホームヘルパーが訪問し、買い物や掃除、洗濯といった生活援助を行ったり、食事や排せつ、衣類の着脱、入浴などの介助を行う身体介護を行ったりしてくれます。

●訪問入浴
自宅に看護師や介護スタッフが訪問し、移動式浴槽を持ち込んで入浴の介助を行ってくれます。

●訪問看護
自宅に看護師や保健師が訪問し、健康状態の確認や点滴・注射などの医療行為、療養上の世話を行ってくれます。訪問看護には、医師の指示が必要になります。

●訪問リハビリテーション
自宅に理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が訪問し、リハビリテーションの指導や支援などを行ってくれます。こちらも、医師の指示が必要になります。

●居宅療養管理指導
自宅に医師や歯科医師、歯科衛生士、薬剤師、管理栄養士といった人が訪問し、療養上の管理や指導、助言などを行ってくれます。

介護師

通所サービス
通所サービスとは、利用者が各施設に通うことで、食事や排せつ、入浴の介助を受けたり、機能訓練やレクリエーションを行ったりできるサービスです。

サービスには、主に生活支援を行う「通所介護(デイサービス)」と、リハビリテーションを行う「通所リハビリテーション(デイケア)」があります。

●通所介護(デイサービス)
通所介護施設などに日帰りで通い、入浴や排せつ、食事といった日常生活上の介助やレクリエーション、簡単な機能訓練などを受けることができます。

●通所リハビリテーション(デイケア)
介護老人保健施設や医療機関などに日帰りで通うことで、理学療法士や作業療法士からのリハビリテーションや医師の指示による医療的なケアを受けたりすることができます。

短期入所サービス(ショートステイ)
短期入所サービスとは、普段、自宅に住んでいる人でも、短期間だけ施設に入所できるサービスのことです。短期入所サービスには以下の2種類があり、いずれも原則最大30日間の利用が可能です。

●短期入所生活介護
短期的に施設に入所することで、食事、排せつ、入浴、レクリエーション、機能訓練といったサービスが受けられます。普段介護をしている人が、出張や冠婚葬祭、通院など急な用事ができたり、休養したくなったりしたときに利用されることが多いです。

●短期入所療養介護
短期入所療養介護も短期的に施設に入所できるサービスですが、短期入所生活介護よりも医療の側面が強く、医療系介護サービスといわれています。施設では、主に医療ケアやリハビリテーションを受けることができます。

リハビリテーションをする女性

そのほかの居宅サービス
自宅の環境を安全に整えるために、「福祉用具購入費助成」「福祉用具貸与」「住宅改修費助成」といった居宅サービスも利用できます。

●福祉用具購入費助成
福祉用具販売の指定を受けた事業者から購入した一部の福祉用具は、保険の給付対象となります。保険の給付対象となる福祉用具は、腰掛便座、自動排泄処理装置の交換可能部品、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトのつり具の部品といった5品目です。要介護度によって利用できないものがあります。

●福祉用具貸与
福祉用具貸与の指定を受けた事業者が、利用者に合わせて福祉用具をレンタルしてくれるサービスです。福祉用具貸与の対象は13品目あり、要介護度によって利用できるものが異なるので、厚生労働省のホームページで事前に確認しておきましょう。

●住宅改修費助成
自宅のリフォームを行う場合に、要支援・要介護区分にかかわらず工事費用(20万円まで)の7〜9割が支給されます。支給対象となる工事は、手すりの取り付けや段差の解消など6種類に定められています。

●特定施設入居者生活介護
入所条件は、指定を受けた有料老人ホームや軽費老人ホームなど各ホームによって異なります。食事や入浴などの日常生活上の支援や、機能訓練などを受けることができます。

施設サービス

施設サービスとは、「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「介護医療院」に入所している方に向けたサービスで、要介護状態の方が利用できます。施設によって入所可能な介護度は異なります。各施設の特徴とともに確認しておきましょう。

●介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
「要介護3」以上、または、「要介護1・2」でやむを得ない理由のある方が入所できます。日常生活において、常に介護が必要な方が、食事や排せつ、入浴といった生活介助、機能訓練やレクリエーションなどを長期的に受けられます。

●介護老人保健施設
「要介護1」以上の方が入所できます。介護を必要とする方が、食事や排せつなどの生活介助や医師、看護師による医療ケア、専門家によるリハビリテーションなどを受けながら、在宅への復帰を目指す施設です。

●介護療養型医療施設
「要介護1」以上の方が入所できます。長期療養を必要とする方が、日常生活の支援や医療ケア、リハビリテーションを受けながら生活をする施設です。特別養護老人ホームや介護老人保健施設に比べて、医療の必要性が高い方を対象にしています。

●介護医療院
「要介護1」以上の方が入所できます。長期的な医療と介護を必要とする方が、医療ケアやリハビリテーション、食事や排せつなどの生活介助を一体的に受けられます。

談笑するシニアと介護師

地域密着型サービス

地域密着型サービスとは、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう設けられたサービスです。事業所のある市区町村で提供されるサービスであり、原則、住所地以外の市区町村で提供されるものは利用できません。

●小規模多機能型居宅介護
「通い」を中心に、短期間の「泊まり」、自宅への「訪問」サービスを組み合わせて受けることができます。生活支援や機能訓練を1つの事業所で提供するため、顔なじみの職員から介護サービスを受けることができます。

●夜間対応型訪問介護
夜間(18時〜翌朝8時)に、排せつ介助や安否確認などを受けることができます。夜間の定期巡回に加え、利用者の求めに応じた随時対応も受けられます。「要介護1」以上の方が利用できます。

●定期巡回・随時対応型訪問介護看護
介護スタッフと看護師が連携を取り、24時間切れ目なく訪問介護や訪問看護を提供するサービスです。定期的な訪問だけでなく、緊急の場合は通報や電話などで随時対応も受けられます。「要介護1」以上の方が利用できます。

●認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症の方を対象としたサービスです。介護スタッフから、日常生活の支援や認知症ケアなどを受けながら共同生活を送ります。認知症の診断を受けた「要支援2」以上の方が利用できます。

ケアを受けるシニア

●地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(小規模特別養護老人ホーム)
指定を受けている、定員30人未満の介護老人福祉施設で、食事や排せつ、入浴の介助やレクリエーションサービスなどを受けられます。「要介護3」以上、または、「要介護1・2」でやむを得ない理由がある方が利用できます。

●地域密着型特定施設入居者生活介護(小規模有料老人ホーム)
指定を受けている、定員30人未満の有料老人ホームや軽費老人ホームなどで、食事や入浴などの日常生活上の支援や、機能訓練などを受けられます。「要介護1」以上の方が利用できます。

住んでいる地域やサービス事業者などによって、各サービスの利用条件や料金は異なります。詳しくは、地域包括支援センターやサービス事業者に確認してみてくださいね。

介護保険サービス利用までの流れは?

介護保険サービスを利用するには、まず「要支援・要介護認定」を受けなければなりません。ここでは、実際にサービスを利用するまでの2つの大きな流れについてお伝えいたします。

介護保険の資料

[ 1 ] 要介護認定を受ける

要介護認定を受けるには、自分が住んでいる地域の窓口へ申請する必要があります。申請先は、市区町村の介護保険担当窓口や、地域包括支援センターです。

申請後は、調査員が自宅や入院先を訪問し、認定調査を行います。認定調査では、調査員が認定を受ける方の心身の状態や生活の様子、家族の状況を本人やご家族に質問します。

質問の内容がまとめられたサイトがあるので、参考にしてみるとよいでしょう。普段から、日常生活について気づいたことをこまめにメモをして、調査員の質問にはなるべく具体的かつありのままに回答することがポイントですよ。

結果は、申請日から30日程度で届きます。同封の介護保険被保険者証は、介護サービスを利用する際に必要となりますので、大切に保管しましょう。

●要介護認定に関する記事はこちら

[ 2 ] ケアプランを作成する

認定を受けたら、利用する介護サービスの種類や事業者などが記された「ケアプラン」の作成を行いましょう。ケアプランを作成するには、ケアマネジャーと契約する必要があります。

ケアマネジャーは、認定結果に同封された居宅介護支援事業者リストから探すことができますよ。探し方が分からないという方は、一度市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談してみるとよいでしょう。

●親の介護方法に関する記事はこちら

介護保険サービスの費用はどのくらい?

介護保険サービスを利用すれば、自己負担額は全体の1〜3割で済みます。ただし、1か月に介護保険制度で給付される金額には限度があります。支給限度額を超えて介護保険サービスを利用した場合、その分の料金は全て実費で支払う必要があるので注意しましょう。

毎月の支給限度額は、要介護・要支援の区分によって異なります。要支援・要介護度別の支給限度額と自己負担額について、居宅サービスを利用する場合の目安を以下の表にまとめました。

<居宅サービスの支給限度額と自己負担額>※1

要介護度支給限度額 (1か月)自己負担額自己負担額自己負担額
1割2割3割
要支援15万320円5,032円1万64円1万5,096円
210万5,310円1万531円2万1,062円3万1,593円
要介護116万7,650円1万6,765円3万3,530円5万295円
219万7,050円1万9,705円3万9,410円5万9,115円
327万480円2万7,048円5万4,096円8万1,144円
430万9,380円3万938円6万1,876円9万2,814円
536万2,170円3万6,217円7万2,434円10万8,651円

介護保険サービスの自己負担割合は、毎年更新されます。自分が何割負担なのかは、自治体から送られる「負担割合証」で確認することができますよ。

正しい知識で介護保険制度を有効に活用しましょう

介護保険サービスをスムーズに利用するためには、必要な手続きを理解しておくことが重要です。「着実に手続きが進められるか不安…」という方は、地域包括支援センターや市区町村の介護保険課、ケアマネジャーに相談すると、詳しく教えてくれるので安心ですよ。

介護保険制度は、利用者の日常生活を支援するだけでなく、家族にとっても、介護負担や費用の軽減に繋がります。正しい知識を得て、介護保険サービスを有効に活用しましょう。

シニア夫婦と子ども夫婦の食事の様子

※1出典:サービスにかかる利用料,厚生労働省
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
(最終確認:2021年1月26日)

三井不動産株式会社 ケアデザイン室

三井不動産グループが培ってきた住まいと不動産に関する総合力・専門性を生かし、豊かな老後を過ごすためのお手伝いをするとともに、福祉の専門職が豊富な経験に基づいたコンサルティングを通して高齢期のさまざまなお悩みにお応えしています。