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  4. TAKANAWA GATEWAY CITY - 高輪 THE GATEWAY OF TIMES

明るい駅から街が始まる

東日本旅客鉄道会社(以下、JR東日本)が手がける新しい街、TAKANAWA GATEWAY CITYは、隣接する品川駅、都営地下鉄線の泉岳寺駅とともに東京の南の玄関口を形成しようとしている。近年の都心再開発プロジェクトとしては最大級で、敷地面積約9.5haは六本木ヒルズを上回る。

従来この場所にはブルートレインや特急踊り子などを配置する車両基地があった。JR東日本マーケティング本部でTAKANAWA GATEWAY CITYを担当する出川智之さんは、「都心の土地を車両基地にしておくのはもったいない、という声は30年以上前からあったようです」と語る。その後、ダイヤ変更などから車両基地の移転が可能となり、同社は2014(平成26)年、「グローバルゲートウェイ」というテーマのもと、駅と一体となったまちづくりを行うことを発表した。

その新駅、2020(令和2)年に開業した高輪ゲートウェイ駅は、日本の駅舎としては珍しい、明るくゆったりと過ごせる空間だ。出川さんは、設計の意図について「デザインアーキテクトの隈研吾氏と弊社が協働し、話し合いを進める中で『まちの入り口として、和が感じられ、空港のような開放的な空間に』といった方針がまとまり、折り紙をモチーフとした膜構造の屋根や、柱の少ない大空間の空間が生まれました」と解説。環境への配慮も先進的で、自然光、自然風を積極的に活用するパッシブ・デザインであることも大きな特徴だ。空調設備はなく、冷暖房のためのCO2排出はゼロである。真夏の猛暑も、膜屋根の遮熱と壁ガラスの上下からの自然風でしのいでいる。

改札を抜けると、広場を挟んでツインタワーが並び立つ。「THE LINKPILLAR(リンクピラー)1」のNORTH棟とSOUTH棟である。2棟は昨秋オープンしており、「ニュウマン高輪」、「JWマリオット・ホテル東京」、オフィスなどが入っている。今春のグランドオープン時には「THE LINKPILLAR 2」、文化創造施設「MoN Takanawa(MoN)」、賃貸住宅専用のレジデンス棟が完成する予定だ。街の中には医療施設や来日外国人の家族向けのインターナショナルスクール、フィットネスジムなども入居する。JR東日本の想定では、「全面開業以降の街全体の滞留人口は1日約10万人に」とのことだが、同社は賑わいの創出にとどまらず、この街を社会の課題解決に役立つ「実験場」にすることを目指している。

夜の高輪ゲートウェイ駅。照明には調光可能なLED電球を使用して電力の消費量を抑えつつ、日中は白色で活動的な雰囲気を、夜間は電球色にしてくつろげる空間に。

高輪ゲートウェイ駅の改札。駅名の看板は、和のイメージを演出するために、あえて明朝体を採用。周辺の環境と駅舎をなじませるため、ガラス壁が採用された。

改札内の人工芝のスペース「Eki Park」は、公園のように誰でも自由に利用することができる。移動中の休憩か、スーツ姿で昼寝している人も。

3階からホーム階を見下ろす。柱には東日本各地の杉材のパネルをあしらい、木造建築のように見せている。

街全体を実験場に

JR東日本がTAKANAWA GATEWAY CITYを「社会の課題解決に資するイノベーションの実験場に」と考える理由は、出川さんによれば、土地の由来にあるという。「ここにあった車庫は国鉄時代からのもの。つまり、もとは国のものです。国鉄の民営化でJR東日本という民間会社になりましたが、公共性を帯びている弊社としては、この場所で社会や地球にとっての利益を追求しなければいけない、という考えがありました」(出川さん)。それを実現するための仕組みが、「TAKANAWA GATEWAY Link Scholars' Hub(LiSH)」である。スタートアップ企業の新規事業部門、地方自治体などを会員とし、会員はコラボレーションの機会や、まちづくりベンチャーキャピタルファンド「高輪地球益ファンド」を通した資金サポート、館内の実験設備やワークスペース等を利用できる。とくにTAKANAWA GATEWAY CITYやJR東日本の駅のデータ基盤を活用できるメリットが高く評価され、重点テーマである環境、モビリティ、ヘルスケアの関連企業を中心に、すでに会員は150社を超えた。

イノベーションが起きる街には、経済的資産、物理的視線、ネットワーク資産の3要素が、また、まちづくりの成功には、多様性と集積、サスティナビリティ、場の固有性が不可欠とされる。「我々にはその全部があります」と出川さんは胸を張る。「場の固有性には、土地の歴史や文化が含まれますが、ここにはイノベーションの歴史があります。TAKANAWA GATEWAY CITYの開発中に明治の鉄道遺構、『高輪築堤』が発掘されました。高輪築堤とは日本で最初に鉄道が走ったとき、高輪では鉄道用地の取得ができなくて、海中に鉄道を走らせるため、日本の土木技術で築いた堤です。当時、海中を走る鉄道は世界で初めてでした。日本の技術と西洋の鉄道が出会って成し遂げられた、まさにイノベーションといえます。我々はその歴史を受け継いでいきたいです」(出川さん)。

社会への意識は、商業施設のデザインにも色濃く、駅ビル「ニュウマン高輪」は、誰もが心地よく過ごせるように工夫され、近隣の人々にはすでに身近な商業施設として親しまれている。子どもが遊べるスペースのあるフロア「こもれびら」は親子連れに大人気だ。ペットフレンドリーエリアもあり、高齢者が愛犬とお茶や食事を楽しむ姿も見られる。館内1~5Fに流れるBGMは、自然音を活かし、高輪の歴史や四季の移ろいを表現したオリジナルBGMである。エリアごとにグラデーションがあり、また季節や時間ごとに変化し、さりげなく心地よさを演出する。

高輪ゲートウェイ駅改札前の広場を挟んで並び立つTHE LINKPILLAR 1のツインタワー。ニュウマン高輪は、これらの1~5F、28~29Fの飲食街「LUFTBAUM(ルフトバウム)」、新たに開業するTHE LINKPILLAR 2内の「MIMURE(ミムレ)」で構成され、全体で180店舗以上となる。また、イノベーションのための「TAKANAWA GATEWAY Link Scholars' Hub(LiSH)」の施設は2棟およびTHE LINKPILLAR 2に展開される。

LUFTBAUMは日本の四季が楽しめる、庭園のある飲食街。食・植物・音・会話・眺望を複合的に掛け合わせ、リアル体験価値の提供にこだわる。

親子にやさしいフロア「こもれびら」の、ラウンジのある書店「文喫」。児童書コーナー、読み聞かせができるスペースも。

エリア内を人が歩く速度で自動走行するモビリティ「iino」。無料で新鮮な移動体験が楽しめる。音声ガイドで街を紹介しながら周遊する機能も。

文化にもイノベーションを

3月28日にオープンする施設にもTAKANAWA GATEWAY CITYらしい、ユニークな仕掛けが施されているようだ。出川さんは「TAKANAWA GATEWAY CITYの実験は、科学分野にとどまりません。百年先のくらしづくりの実験や、伝統文化にテクノロジーを組み合わせるなどの文化的実験を行っていきます」と語る。

THE LINKPILLAR 2の2~3Fに展開されるニュウマン高輪の「MIMURE(ミムレ)」には産地や生産者との対話や、サスティナビリティを大切にするレストランやコミュニティが集まるだけでなく、水耕栽培と養殖をかけあわせたような、アクアポニックスというシステムで野菜や魚を育て、食材から料理になるまでを見える化した食体験を提供するという。地域の子どもの食育の場にもなる予定だ。

文化施設「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」の名称は「門」をかけ、伝統とテクノロジー、アートとサイエンス、都市と自然など、多様な分野をつなぐ門という意味をもつ。展示スペースのほか、月見、畳などの日本文化を楽しむ公共スペースが配置され、気軽に多様な文化を楽しむことができそうだ。

テクノロジーや文化にそれほど関心が高くない人にも、TAKANAWA GATEWAY CITYは利用価値のある施設だ。ことにニュウマン高輪の屋上庭園のある飲食街LUFTBAUMは、駅直結の動線も便利で、各種会食や接待に使い勝手がよい。「LiSHと連携したクリニック、『Medical & Life Design Hub』では、LiSH会員のスタートアップが開発した検査技術を活用する予定で、人間ドックや各種検査をより快適に利用できるようになるという。

地域の人にとっては待ちに待った商業施設であり、日常的な利用のほか、TAKANAWA GATEWAY CITYを中心にしたコミュニティ活動も広がり始めている。昨秋開催された「高輪地区まつり」では駅前の広場で盆踊りが行われ、エリアで働く人々と住民が一緒に「高輪ゲートウェイシティ音頭」を踊った。同まつりでは区と関係のある全国の市町村の出店も並び、地方と都心の人同士で直接的な交流を楽しむ姿も印象的であった。鉄道で人と人を結びつけることはJR東日本の仕事の根幹といえるが、この新しいまちでも彼らの結ぶ力が成功のカギとなりそうだ。

アートやパフォーマンスなど、あらゆるジャンルの文化活動を発信する「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」。展示やパフォーマンスのプログラム開発のため、歌舞伎の松竹、J-WAVE、英バービカン・センターなどとパートナーシップを結ぶ。

月の映り込みをデザインし、高輪海岸が月見の名所だった歴史を引き継ぐ「月見テラス」。花見、月見など季節のイベントに活用。

和の文化とテクノロジーを掛け合わせた体験の場「Tatami」は、約100畳の畳を敷く。利用者は靴を脱いであがる。

地上44階地下2階建てレジデンス棟も今春竣工を迎える。新しい人が入りやすい環境を守るため、総戸数809戸すべてを賃貸住宅とした。

協力:東日本旅客鉄道株式会社株式会社ルミネ

東日本旅客鉄道株式会社 マーケティング本部
まちづくり部門 品川ユニット マネージャー
出川 智之(でがわ ともゆき)(でがわ ともゆき)

東日本旅客鉄道株式会社 マーケティング本部
まちづくり部門 品川ユニット マネージャー
出川 智之(でがわ ともゆき)(でがわ ともゆき)

出川 智之
出川 智之

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