買い替え特例とは?要件や注意点について分かりやすく解説

買い替え特例とは、不動産を買い替えるときに負担となる税金を将来に繰り延べることができる制度のことを指します。今回は、買い替え特例のメリットや注意点、利用上の要件、マイホームにまつわるそのほかの優遇措置についても分かりやすく解説していきます。

目次
  1. 買い替え特例とは?
  2. 買い替え特例のメリット・注意点
  3. 買い替え特例を利用する際の要件
  4. 事業用資産の買い替え特例
  5. 買い替え特例の利用に必要な書類
  6. 不動産の買い替え特例で迷った場合はプロに相談!
記事カテゴリ 売却 購入
2024.02.27

買い替え特例とは?

「買い替え特例」は、正式名称を「特定の居住用財産の買換えの特例」といいます。これは、自身のマイホームを売って代わりのマイホームに買い替えたとき、要件を満たせば、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる制度です。

本来は、物件を売却した金額から、購入代金をはじめとする物件の取得費用や、仲介手数料、登記費用などの譲渡費用を差し引いた金額がプラスになった場合、その利益分が課税の対象となります。しかし、この特例を使えば、売却によって得た利益に対する課税を、次回のマイホーム売却時に繰り延べることができるのです。ただし、旧居の売却金額よりも、新居の購入金額が低い場合には、差額分が課税されます

今回は、買い替え特例を活用することによるメリットや注意点、適用できる要件や必要書類について解説していきます。

買い替え特例を利用して購入する新居

買い替え特例のメリット・注意点

マイホームを売却する際には、買い替え特例との併用ができない「マイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除」や「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」といった特別控除・特例がいくつか存在します。ここでは、そうした複数の選択肢のなかから買い替え特例を選ぶメリットや注意点について解説します。

メリット

買い替え特例を用いる大きなメリットは、支出がかさむ買い替えのタイミングで税金の負担を抑えられる点にあります。税負担を抑えた分、住宅ローンの元本を減らしたり、引越しに伴う諸費用に充てたりすることができるでしょう。

注意点

買い替え特例を用いる注意点には、基本的にほかの控除との併用ができないということが挙げられます。税金の支払いを先送りできる分、ほかのマイホームの売却にまつわる特例や控除を受けることはできません。併用できないそのほかの特例については後ほど詳しくご説明します。

また、買い替え特例は税金の控除ではなく、あくまでも税金を繰り延べる特例である点にも注意しましょう。つまり、新たに購入したマイホームを将来売却し、譲渡所得が発生した際には、今回の譲渡所得税と併せて次回の譲渡所得税も支払わなければならないということです。新たに購入したマンションを売却しない場合には、実質的な利益の繰り延べとなります。

なお、買い替え特例の適用を受ける際には確定申告をすることが必須です。

売却と買い替えを考える男女

買い替え特例を利用する際の要件

買い替え特例を利用するには、決まった要件を満たさなければなりません。売却予定の家、買う予定の家それぞれの要件を見ていきましょう。

売却予定のマイホームに関する要件

売却予定のマイホームに関する主な要件は以下の通りです。

・自分が住んでいる家屋、並びにその敷地や借地権を売ること
・マイホーム売却に関するそのほかの特例を受けていないこと
・売却代金が1億円以下、売った人の居住期間が10年以上であること

自分が住んでいる家屋、並びにその敷地や借地権を売ること
以前住んでいた家屋の場合は、住まなくなった日から3年が経過した日が属する年内までに売却する必要があります。なお、家屋を取り壊している場合には、以下の条件も加味されます。

・取り壊された家屋やその敷地が、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるものである
・その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日が属する年の年内までに売ること
・家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用途として使っていないこと

マイホーム売却に関するそのほかの特例を受けていないこと
具体的には、売った年とその前後1年間に、以下に代表される特例の適用を受けていないことが要件となります。

・マイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
・マイホームを売ったときの軽減税率の特例
・マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例
・収用等の場合の特別控除

なお、相続の際に活用される特例である「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」は、適用を受けていても問題ありません。

売却代金が1億円以下、売った人の居住期間が10年以上であること
特例の対象となるマイホームと一緒に利用していた部分を分割して売却している場合には、マイホームを売却した年の前々年から翌々年までの5年間に分割・売却した部分も含めた総額が1億円以下でなければ適用されません。

マイホームの一室

購入予定の物件に関する要件

購入予定の物件に関する主な要件は以下の通りです。

・規定の築年数と床面積・土地面積であること
・マイホームを売った年の前後1年間にマイホームを買い換えること

規定の築年数と床面積・土地面積であること
買い替えるマイホームが中古住宅である場合、耐火建築物・耐火建築物以外に関わらず、取得の日以前25年以内に建築されたもの、また一定の耐震基準を満たすものでなければなりません。

さらに、買い替える建物とその土地の床面積・土地面積は、それぞれが50㎡以上、500㎡以下のものでなければならないという条件もあります。

マイホームを売った年の前後1年間にマイホームを買い替えること
買い替えたマイホームは次の期限までに住む必要があります。

・売った年・その前年に取得した場合、売った年の翌年12月31日まで
・売った年の翌年に取得した場合、取得した年の翌年12月31日まで

買い替え特例の要件には、マイホームの売却先が親族以外でなければいけないといったほかの要件も存在するので、売却前にしっかりと国税庁のウェブサイトを確認しましょう。

●特定のマイホームを買い換えたときの特例について詳しくはこちら
国税庁 | No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例

マンションと家を持つ男性

事業用資産の買い替え特例

買い替え特例には、居住用財産であるマイホームを対象とする特例とは別に、事業用資産を対象とした特例が存在します。個人が事業用に提供している特定の地域内にある土地建物等の資産を譲渡して、一定期間内に買い替え資産を取得し、かつ取得日から1年以内に取得資産を事業用として提供した場合には、譲渡益の一部にかかる課税を将来に繰り延べることができます。これを「事業資産の買換えの特例」といいます。

この特例が適用されると、資産の譲渡価額より買い替えた取得価額が大きくなる場合には売却金額に20%をかけた額を、小さくなる場合にはその差額と、買い替えた金額に課税割合をかけた額との合計額を収入金額とし、譲渡所得の計算を行います。特例を適用するためにはいくつかの要件を満たす必要があるので、詳しくは国税庁のサイトを確認しましょう。

●事業用の資産を買い換えたときの特例について詳しくはこちら
国税庁 | No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例

マイホームのミニチュアと男性

買い替え特例の利用に必要な書類

買い替え特例を利用するには、複数の書類の作成・提出が必要です。基本的には、先述したさまざまな要件を参考に、買い替え特例を適用できる物件であるかを証明できる書類を用意することになります。自分が所有する不動産の条件ではどのような書類が必要になるのか、国税庁のウェブサイトを確認して把握しましょう。

とはいえ、条件に合わせて異なる書類を用意するのは、負担が大きく難しいものです。書類作成に不安を感じる方は、司法書士、税理士などのプロに任せると安心です。

買い替え特例の書類作成に悩む女性

不動産の買い替え特例で迷った場合はプロに相談!

ここまで、買い替え特例の概要やメリット・注意点、諸要件について解説してきました。大きな資金が動く不動産の買い替えは、後悔のないように進めたいものです。税に関する特例が複数あるなかで、自分の場合はどれが適用されるのか、自分にとって最もお得に買い替えを進めるにはどの特例を活用するのがよいのか、よく検討しましょう。判断に迷った際には、ファイナンシャルプランナーや税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。

三井のリハウスでは、豊富な取引実績をもとに不動産売買のサポートをしております。お客さまの状況に合わせて特例や控除を取捨選択し、最適な売却プランをご提案することが可能です。不動産の買い替えでお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/