所有権移転登記とは?費用や必要書類、手続き方法を解説

売買や相続などで不動産の所有権が移転したときに必要な所有権移転登記。この登記を行うには、税金や諸費用がかかり、必要な書類もあります。今回は、費用を抑える方法も含めてご紹介します。

目次
  1. 所有権移転登記とは?
  2. 所有権移転登記はいつ行う?
  3. 所有権移転登記の費用と計算方法
  4. 所有権移転登記の費用を安く抑えるには?
  5. 所有権移転登記の必要書類とは?
  6. 所有権移転登記の手続きの方法
  7. 所有権移転登記の手続きは速やかに!
記事カテゴリ 売却 購入 費用
2023.10.02

所有権移転登記とは?

不動産の売買や相続を行うと、不動産登記をしなければならないことをご存じでしょうか?不動産登記とは、不動産の現況や、権利関係を公に示すために登記簿へ記録することをいいます。不動産登記には種類があり、そのなかの1つである所有権移転登記は、不動産の所有権が移ったことを公示するために必要な手続きです。マンションや一戸建てなどの中古住宅を売買、贈与、相続をすると、不動産の所有者が変わるため、法務局での所有権移転登記の手続きが必要になります。

所有権移転登記を行わないと、不動産の新しい所有者が自分であることを法的に証明できないため、不動産の所有権を主張できません。このように所有権を証明できないとトラブルにつながることもあるため、不動産を取得した際は、できるだけ早く所有権移転登記を行うことが大切です。

所有権移転登記は法律で定められた手順で行う必要があり、さまざまな費用が発生します。ちなみに、不動産に抵当権が設定されている場合には、売却や贈与を行う前に抵当権を抹消する必要があり、その際にも登記費用がかかります。

●抵当権抹消登記の費用についての記事はこちら
抵当権抹消手続きを自分で行う方法を4つのステップで解説!

所有権移転登記にはなじみのない方も多いため、「どうやって手続きすればいいの?」「どんな費用がかかるの?」などと、戸惑う方もいるのではないでしょうか?この記事では所有権移転登記について、費用や必要書類、手続きの流れを解説していきます。

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土地の名義変更とは?手順や必要書類、不動産売却までスムーズに進めるコツを解説!

所有権移転登記はいつ行う?

登記は、前述の通り先延ばしにしておくとトラブルにつながることもあるため、権利が移動したタイミングで速やかに手続きすることがおすすめです。ここからは、どんなタイミングで所有権移転登記が必要になるのかを見ていきましょう。

所有権移転登記を行う人

不動産を売買したとき

不動産の売買時には、売主と買主が共同で所有権移転登記を行います。実際には、売主と買主の引渡しの場に立ち会った司法書士が、取引完了後、代理で移転登記を行う場合がほとんどです。タイミングとしては、売買契約締結から約1か月後の引渡し日に、法務局で移転登記の手続きを行うことが一般的です。

不動産を相続したとき

遺言や遺産分割協議で不動産を相続した際、所有権移転登記の一種である相続登記を行わないとトラブルになる恐れがあります。近年では、相続登記を行っていない所有者不明の土地が増加しています。政府は、所有者不明の土地の増加を防ぐため、令和6年4月1日より相続を知った日から3年以内の登記が義務化されます。そのため、相続後は早めに登記を済ませておくとよいでしょう。

●相続登記に関する記事はこちら
相続登記とは?必要性や自分で申請する手続きの流れについて

所有権移転のイメージ

不動産を贈与したとき

親や祖父母が生きているうちに不動産を譲り受ける「生前贈与」の際にも所有権移転登記が必要になります。所有権移転登記を先延ばしにしてしまうと、贈与してくれた人が死亡したときにトラブルになる可能性があります。たとえば、生前贈与された不動産が相続の対象になっている場合、所有権移転登記を行っていないと、所有者であることが証明されず、ほかの親族へ遺産分与の権利が発生してしまうのです。

親族間の贈与は口約束で行われることが多いですが、相続トラブルを防ぐためにも事前に贈与契約書を作成しておき、所有権移転登記を済ませておくようにしましょう。

離婚で財産分与するとき

離婚で財産を分けるときは、共有持分だった自宅を片方の単独名義にするケースもあります。このような場合は、不動産の名義人が変わるため、所有権移転登記が必要です。

名義変更や移転登記には当事者の立ち会いが必要になり、時間がたつと相手が名義の変更に応じてくれないケースがあります。そのため、離婚が成立したらできるだけ早めに持分を移転する持分移転登記を行うようにしましょう。

●離婚による財産分与に関する記事はこちら
離婚に伴う財産分与とは?家や土地の気になる分与方法を詳しく解説

所有権移転登記の費用と計算方法

不動産には、農地や宅地などの土地、マンションや一戸建てなどの建物があり、どのような不動産をどのように取得したかによって、所有権移転登記にかかる費用は異なります。所有権移転登記にかかる費用の内訳は、「登録免許税 + 司法書士報酬 (依頼した場合) + 手続きの実費」です。それぞれの費用の概要と金額の目安を詳しく見ていきましょう。

電卓と家の模型群

登録免許税は「固定資産税評価額 × 税率」で算出

登録免許税は所有権が移転する不動産にかかる税金のことです。各不動産の固定資産税評価額に税率をかけた金額が税額となります。以下の表の通り、登録免許税の税率は土地や建物の評価額や所有権が移転する理由によって税率が異なります。

理由土地の税率建物の税率
売買2%(令和8年3月31日までは1.5%)2%(令和6年3月31日までは0.3%)
相続0.4%0.4%
贈与2%2%
競売2%2%

たとえば、固定資産税評価額が1,500万円の土地の場合、相続ならば6万円、贈与ならば30万円かかります。

なお新築の建物購入時は保存登記とされ、現在の税率は0.4%になりますが、令和6年3月31日までの住宅用建物については軽減措置が適用されるため、0.15%となります。

司法書士報酬の費用相場は数万~5万円程度

所有権移転登記手続きの代行を司法書士に依頼した場合、司法書士報酬がかかります。不動産1件あたりの費用は数万~5万円程度が目安となりますが、相続の場合は相続する人数が増えると手間がかかるため、その分、司法書士への報酬は高額になります。

手続きの実費は1万~2万円が目安

手続きの実費には所有権移転登記の手続きに必要な書類に貼る収入印紙代、必要書類の取得費用、書類を取り寄せる際の切手代といった郵送料、法務局に出向いたときの交通費などが含まれます。金額は1万~2万円程度が一般的な目安です。

手続きの実費は細かなものも多いため、どのような費用があるか前もって確認しておくとよいでしょう。

所有権移転登記の費用を安く抑えるには?

「費用はできる限り安く抑えたい」と考える方は多いのではないでしょうか?ここでは、所有権移転登記にかかる費用を安く抑える方法をお伝えします。

所有権移転登記を行う司法書士

手続きを自分で行う

所有権移転登記の手続きを自分で行うと、司法書士に報酬を支払う必要がないため、費用を安く抑えられます。ただし、自分で所有権移転登記を行う場合、膨大な時間や手間がかかってしまいます。記載例などを見て書類を作成しても、細かなところに不備があると登記がスムーズに進まないこともあるため、速やかに手続きを行いたい方は司法書士に依頼することがおすすめです。

複数の見積もりを取る

所有権移転登記の手続きを司法書士に代行してもらうなら、2社以上の司法書士事務所から見積もりを取りましょう。お伝えしたように司法書士の報酬は、不動産の価格によって変わるだけでなく、司法書士事務所によっても異なります。複数の見積もりから、司法書士への報酬の相場感をつかみましょう。

仕訳で経費を計上する

所有権移転登記手続きの費用は、法人での業務用途や投資用途など、非居住用不動産の場合、全額経費として計上できます。かかった費用全ての領収書を保管し、仕訳をして計上することで、確定申告の際に控除対象となりますよ。ただし、自分で住むための不動産に関しては、経費にできないため注意が必要です。

所有権移転登記の必要書類とは?

所有権移転登記の手続きは、不動産の所有を移す側・移される側の双方で用意する必要があります。ここでは、所有権移転登記の手続きにあたって必要な書類をお伝えしましょう。

全ての場合に必要な書類

売買や贈与、相続など理由が違っていても、所有権移転登記をする全ての方に必要な書類です。

必要な書類書類が必要になる理由入手先
登記事項証明書土地や建物などの不動産の所有者の氏名、住所や、抵当権設定登記の有無、建物の構造や大きさなどが記載され、所有権移転登記をする物件の登記状況を示す

法務局もしくは法務局によるオンラインの「登記・供託オンライン申請システム

売主、贈与した人が必要な書類

不動産を売却する方、贈与者は所有権移転登記にあたって下記の書類を用意します。

必要な書類書類が必要になる理由入手先
不動産登記申請書
(要認印の割り印)
登記を申請する目的や原因、登記権利者・義務者、添付書類と申請者など、所有権移転登記のあらましを伝える法務局もしくは法務局がインターネットでフォーマットを公表している。自分で作成も可能
委任状(要売主の実印、買主の認印。自分で手続きを行う場合は委任状は不要)所有権移転登記をする当人が、登記申請を代行してもらうことを表明する法務局もしくは法務局がインターネットでフォーマットを公表している。自分で作成も可能
登記原因証明情報
・売買契約書(領収書も必要)
・贈与契約書
・離婚日が記載された戸籍謄本など
(要売主の実印)
所有権移転登記となった原因、移転する人・される人、登記上の不動産の表示を明らかにする登記をした法務局
登記済権利証または登記識別情報どちらも不動産の登記上の所有者を示す不動産の所有者が保管
印鑑証明書(発行から3か月)押印した実印が本物であることを証明する。登記簿上の住所と現住所の一致が必要。(一致しない場合は、住民票が必要)各市区町村の役所・証明サービスコーナー
固定資産評価証明書不動産の資産評価額を証明して、登録免許税を算出する根拠を示す各市区町村の役所
身分証明書(運転免許証、健康保険証、パスポート)所有権移転登記をする当人であることを証明する当人が保管
(書類ではないが)実印委任状、登記原因証明書、所有権移転登記書に押印する印鑑証明書と同一のもの

買主、贈与を受ける人が必要な書類

不動産の購入者、受贈者は、所有権移転登記にあたって下記の書類を用意します。

必要な書類書類
が必要になる理
入手先
不動産登記申請書(要認印の割り印)登記を申請する目的や原因、登記権利者・義務者、添付書類と申請者など、所有権移転登記のあらましを伝える法務局もしくは法務局がインターネットでフォーマットを公表している。自分で作成も可能
委任状(要売主の実印、買主の認印。自分で手続きを行う場合は委任状は不要)所有権移転登記をする当人が、登記申請を代行してもらうことを表明する法務局もしくは法務局がインターネットでフォーマットを公表している。自分で作成も可能
登記原因証明情報
・売買契約書(領収書も必要)
・贈与契約書
離婚日が記載された戸籍謄本など
(要売主の実印)
所有権移転登記となった原因、移転する人・される人、登記上の不動産の表示を明らかにする登記をした法務局
住民票(有効期限なし、戸籍の附票でも可)相続人当人の所在を示す市区町村の役所
身分証明書(運転免許証、健康保険証、パスポート)所有権移転登記をする当人であることを証明する
(書類ではないが)認印委任状に押印する

遺産相続の場合

遺産相続の場合は、まず相続人全員が下記の書類を用意します。

必要な書類書類が必要になる理由入手先
委任状(自分で手続きを行う場合は不要)
(売主は実印、買主は認印)
所有権移転登記をする当人が、登記申請を代行してもらうことを表明する法務局もしくは法務局がインターネットでフォーマットを公表している。自分で作成も可能
戸籍謄本相続人当人であることを示す市区町村の役所
住民票相続人当人の所在を示す市区町村の役所
実印遺産分割協議書に押印する

相続人は、ほか下記の書類も必要です。

必要な書類
類が必要になる理由
入手先
被相続人の住民票除票(戸籍の附表でも可)登記している不動産が被相続人のものであると示す(住所が登記と一致していない場合は登記済権利証、不在籍不在住証明書、相続人全員の上申書および不動産権利書の原本が必要)各市区町村の役所
固定資産評価証明書(最新年度のもの)不動産の資産評価額を証明して、登録免許税を算出する根拠を示す各市区町村の役所
遺産分割協議書(遺産分割証明書、要相続人全員の実印の押印)不動産を相続する相続人を確定する司法書士か自分が作成
登記原因証明情報
・被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本(遺産分割協議書や遺言書でも可)
被相続人の存在を証明する各市区町村の役所
相続関係説明図被相続人と相続人の関係を明らかにする司法書士か自分が作成
遺言書、検認調書
(がある場合)
被相続人の意向を明らかにする検認調書は遺言書をもとに家庭裁判所が作成

所有権移転登記の手続きの方法

所有権移転登記に必要な書類がそろったら、手続きを行います。ここでは具体的な手続きの方法をお伝えします。

不動産登記権利情報書類、家の模型

[ 1 ] 書類の作成・準備

司法書士に代行を依頼しない場合、所有権移転登記の手続きの一歩は、登記申請書の入手です。登記申請書の記入をし、必要書類を確認したら、提出の準備を行います。自分で所有権移転登記をする場合は、提出前に法務局で提出書類の確認をしてもらうのがおすすめです。

[ 2 ] 法務局に提出

そろえた必要書類を登記申請書に添付して、不動産を管轄している法務局に直接、もしくは郵送やオンラインで提出します。管轄の法務局は法務局のホームページで調べられますよ。

[ 3 ] 審査

登記申請書と必要書類が法務局に届くと、所有権移転登記の手続きの審査が行われます。ここで申請書の記入に誤りや必要書類の不備があると、訂正や再提出を求められます。

[ 4 ] 受け取り

所有権移転登記は、登記事項証明書を取得して終了です。申請してから登記完了までには1~2週間かかるといわれています。完了の通知を受けたら、郵送もしくは登記所窓口、法務局証明サービスセンターの窓口まで登記事項証明書を受け取りに行きましょう。

所有権移転登記の手続きを行う男性と夫婦

所有権移転登記の手続きは速やかに!

ここまで所有権移転登記について、費用や必要書類、手続きの流れなどを解説してきました。お伝えしたように、登記をしていないとトラブルにつながることがあるため、速やかに手続きを行うことが大切です。

所有権移転登記は自分で行うこともできますが、複雑なものも多く、手続きに時間がかかるため、不安や疑問があれば、不動産会社に相談することがおすすめです。

三井のリハウスでも所有権移転登記といった不動産に関するお悩みにお答えしています。そのほかにも不動産売買をお考えの方はサポートいたしますので気軽にお問い合わせくださいね。

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宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/