平成27年5月26日、「空き家対策特別措置法」が完全施行されました。住人がいないまま放置されている空き家が、倒壊・不審者の出入りなどにより周辺住民へ不安を与える場合や、景観への悪影響を及ぼしているという問題を、空き家の持ち主自身の手で解消させるための法律です。

もし空き家のオーナーになったとしたら?

「空き家・空地などを相続で手に入れはしたものの、遠方に住んでいるため、何から手を付けていいか分からない」「不動産投資が話題になっているけれど、どんな方法があるのか分からない」と戸惑っている人も多いでしょう。

もしも空き家の老朽化が進んでおらず、今にも誰かが住むことのできる状態なら、誰かにその家を貸して、家賃収入を得るという方法があります。不動産会社などを通して借り手を探す方法もありますし、「空き家バンク」を運営している市区町村もあるのでそれを活用することもできます。

空き家が老朽化していて、そのままでは住めない場合、リフォームやリノベーションにより住める状態にした上で、ご自身が住む場合や、賃貸に出すという方法が考えられます。「まず借り手を探し、その人の希望を取り入れたリフォームをした上で貸し出す」という方法にも注目が集まっています。

空き家を解体する場合

従来、たとえ空き家で老朽化した建物であっても、土地の上に建物が存在することで、小規模住宅用地(200㎡以下の部分)、あるいは一般住宅用地(200㎡を超える部分)と区分されてきたため、所有者にとって固定資産税の節税効果が得られました。しかし、空き家対策特別措置法の施行により特定空き家に該当する建物を保有している場合は、土地が更地と同等の評価が行われる上に、建物(空き家)の固定資産税減額の適用がなくなるため、これまで通りの減税効果は望めません。さらに老朽化した空き家を放置すると、近隣の方への迷惑にもつながります。

老朽化した空き家は、解体して更地にしてから売却や駐車場としての利用を考える方法もあります。空き家を解体する場合は、お住まいの市区町村で補助金・助成金を受けられるかどうか、ぜひ調べて下さい。
なお、土地として売却する場合にも、空き家を解体して更地にしてからのほうが、購入検討者の印象がよく、高値での取引が期待できることもあります。

空地の活用法は?

空地を取得することになった場合、その活用法の選択肢は幅広いです。その分、「周辺地域にはどのようなニーズがあるのか」をきちんと調査し、ニーズに応える活用法を選択することが、空地活用の成功につながります。

手軽に始められる空地の活用法として駐車場経営がありますが、各家庭の駐車場保有率がすでに高い地域では、駐車場を借りる人が少なく経営が厳しくなるでしょう。最近は、コインパーキング運営会社に土地を賃貸し、コインパーキングの運営はすべて運営会社に任せるという手法も注目されています。
都心部で人通りの多い場所に空地を所有しているなら、自動販売機の設置という方法もあります。

また事業用定期借地として、飲食店やコンビニエンスストア、ショッピングセンターなどに土地を貸し出し、家賃収入を得る方法があります。事業用定期借地は、10年以上50年未満の期間を設定することができ、契約終了時には借主がその土地を更地として、貸主に返却してくれることがメリットです。

広大な土地を相続した場合、あるいは思い切って多額の利益を得たいという場合には、マンションやアパートを経営するという方法もあります。多額の融資を受ける必要があり、30年、40年といった長期の事業となりますので、ご家族の理解を得て、家族ぐるみで事業を進めていくことがポイントとなります。

空き家・空地の活用で必要なこと

空き家・空地の活用法を選ぶ際にもっとも大切なことは「周辺地域のニーズ」を把握することです。周辺に田畑しかない場所に、自動販売機の設置や大規模マンションの建築を考えても、経営が立ち行かなくなるのは目に見えています。また、周辺が高層マンションばかりのエリアに、戸建住宅や小規模なアパートを建てても、やはり入居希望者は二の足を踏んでしまうでしょう。

空き家・空地の活用には、建築会社やハウスメーカー、売主と買主や、借り手と貸し手の橋渡しを行う不動産会社、融資を受けるための銀行・信用金庫、場合によっては相続・事業承継などの相談に乗ってくれる税理士事務所・会計事務所など、信頼できるパートナーが必要です。土地の活用法について、無理のない事業計画を立て、竣工後のアフターフォローまできちんと行ってくれるパートナーを見つけ、相談しながら土地活用を進めていきましょう。