
THE・裏スポット探訪 Vol.2
店主の人生を具現化したカフェ!怪しい喫茶「パブレスト百万ドル」は今も進化し続ける
全国各地にある、さまざまな観光地やレジャースポット。王道の観光地巡りも楽しいですが、たまにはちょっと変わった体験をしてみるのも思い出に残るものです。
情報誌が取り上げないニッチな情報を紹介する「東京別視点ガイド」代表の松澤茂信さんが、さまざまな裏スポットを紹介していきます。
●謎は解かれた!イラストや謎の言葉は店長の人生そのものだった
もう1つ疑問なのは、壁を埋め尽くすイラストと謎の言葉。
疑問が解かれたきっかけは、この赤ちゃんだ。
「この子、誰ですか?」の質問を皮切りに、店長さんの身の上話がはじまった。

赤ちゃんはマスターの息子さん。名前はゆうき君。たいそう可愛がっていたが、わけあってお母さんとともにいなくなった。
あまりのショックで店主は当時経営していたレストランを休業。しばらくなにも手につかず、悲しさを紛らわすために絵を描きはじめた。

とにかくゆうき君を描いて描いて描きまくり、気持ちを静めた。
そのうち、描くこと自体が面白くなり、ゆうき君以外を描きはじめる。
次第にキャンバスの上では飽き足らなくなり、店の壁にまで手を伸ばした。
「もう最近は、好きなこと、昔行きつけだった店の名前、夢に出てきた言葉、なんでもかんでも描いてるんだ!」とはつらつと宣言していた。
そう、壁に描かれた謎の単語たちは、店主の人生の記録だったのだ。
話を踏まえ、じっくり眺めると、入り口の横に「ゆうき」の3文字が。
こちらにも、「ゆうき珈琲店」と描かれている。
あの話を聞いた後では「愛する苦しみ 愛される倖せ」の2行の重たさが違う。
当初は無秩序におもえた単語から、1つ1つのストーリーが立ちあがる。
いかにも意味がなさそうな「食べログ」「YouTube」にもストーリーがあった。
パブレスト百万ドルを気に入ったとあるお客さんが、店主の身の上話を撮影して、YouTubeにアップしてくれた。その記念としての「YouTube」なのだ。
店内に飾られた巨大な龍のイラスト。口元にはなぜか名刺が貼られている。
実はこの方、食べログに初レビューを書いた人。その記念に名刺を貼り、看板にも「食べログ」と描いた。
雑誌やテレビで取り上げられても描く。
私が運営する「東京別視点ガイド」でもレポート記事を書いたら、パブレスト百万ドルの一部になれた。
なかでもバラエティ番組『ナニコレ珍百景』の放送は一大事で、1カ所にとどまらずあちこちに描かれている。
「目の前に住んでるけど、怪しすぎて入れなかったの! ナニコレ珍百景を見てから、すっかり常連になったのよ」と証言するお客さんに出会ったこともある。
テレビのビッグダディがあまりに面白く、その翌日に描いたという「ビックダディ」の文字。
「この人、本当になんでも描くんだな!」と痛感できて、好きな謎言葉の1つだったが、
いつしか「全国のみなさんありがとう」と感謝の言葉に書き換えられていた。
そりゃあ店主だって、ビッグダディより感謝のほうが重要だ。
店主の過去、好きなもの、感謝の想い。
怪しげでとりとめのない建物の正体は、店主の人生そのものだった。
常に更新し、書き込みが増殖し続ける進化系珍スポット。
いま行かないで、いつ行くの!!?


営業時間:10:00~17:00、日曜営業
定休日:不定休
電話:0568-62-3336