Column / 2020 10,01

マンションの売却にかかる税金はいくら?簡単な計算方法とシミュレーション

マンションを売却したいけれど、その後にかかる税金が心配…というお悩みはありませんか?せっかく高く売れても損をしないために、かかりそうな税額を自分で簡単に計算する方法、利用できる控除の種類について、分かりやすくご紹介します。

宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けの節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/

マンションの売却にかかる税金|これだけは知っておきたい基礎知識

マンションを売却すると、必ずかかるのが税金です。その内訳は、次のようになっています。

税金の種類 対象 目安
印紙税 一律でかかる 契約価格100万円超え500万円以下の場合…2000円
契約価格1000万円超え5000万円以下の場合…2万円
登録免許税 一律でかかる 不動産1件につき1000円
譲渡所得税(所得税+住民税+復興特別税) 利益が出た場合のみかかる 譲渡所得× 税率(20.315%~39.63%)

〈計算例〉マンションを3000万円で売却した場合にかかる税金
譲渡所得:600万円
所有期間:9年

各種控除を利用しない場合
譲渡所得税=600万円×20.315%=121万8900円
印紙税=500万円を超え1000万円以下=1万円
登録免許税=マンション(建物、土地)=2000円

合計:123万900円

「こんなにかかるの?」と驚かれた人も多いのではないでしょうか?ただし、上記はあくまで一例であり、譲渡所得の金額やマンションの所有期間によって、税額は上下します。

「マンションを売りたいけれど、うちの場合は税金がいくらになるんだろう」「もし高くなったらどうしよう…」と不安な人は、税金についての基礎知識を学ぶのがおすすめです!
そこで今回は、売却にかかる税金の種類と、自分で税額をシミュレーションできる計算方法のほか、節税に利用できる控除についても解説します。

建物の模型と電卓

一律でかかる税金

マンション売却には、利益が出なかった場合でも一律でかかる税金があります。

●印紙税
印紙税とは、不動産の媒介契約書に貼る収入印紙にかかる税金で、収入印紙税とも呼ばれるものです。印紙税の金額は、売買契約したときの金額、つまり契約書に書かれている金額によって異なります。価格は以下の通りです。

契約価格 印紙税額
100万円を超え500万円以下 2000円
500万円を超え1000万円以下 1万円
1000万円を超え5000万円以下 2万円
5000万円を超え1億円以下 6万円

※2022年3月31日まで、契約価格が10万円を超えると上記の収入印紙税に軽減税率が適用されます

印紙税は、契約書に印紙を貼り、さらに印鑑や署名で消印を行うことで納税したとみなされます。そのため、印紙を貼り忘れたり消印をしていなかったりすると、罰則の対象になってしまうので要注意!通常の印紙税に加え、さらに2倍の金額の「過怠税」を払うことになってしまいます。
売買契約書を作成するときは、上記のミスがないか十分に気を付けましょう。

収入印紙

●登録免許税
登録免許税とは、不動産の名義変更にかかる税金のことです。具体的には、物件の持ち主を売主から買主に変えるときの登記に支払う税金を指します。

この登録免許税の支払い義務は、売主・買主の両方にありますが、売主が支払う登録免許税は「抵当権抹消登記」にかかるものです。
抵当権抹消登記とは、住まいを購入したときに組んだ住宅ローンの「抵当権(万が一返済が滞ったときのために、土地や建物を担保にする権利)」を外す手続きをいいます。

登録免許税の金額は、抵当権抹消登記だと不動産1つにつき1000円です。ただし、建物と土地は別々の不動産と見なされるので要注意!たとえばマンションの場合、建物と建っている土地とで登録免許税が別々にかかり、合計2000円になります。

また、登記上で土地が数個に分かれている場合は、その分さらに登録免許税がかかります。自分のマンションの土地がいくつなのかは「抵当権設定契約書」で確認できます。契約書は、ローンを組んでいた金融機関から返却してもらえるので、心配な人はあらかじめチェックしましょう。

書類を書く様子

利益が出るとかかる税金

マンションを売却して利益が出た場合にかかる税金には、これらがあります。

●譲渡所得税
「譲渡所得」とは、土地や建物などの資産を売却して得た利益のことです。この譲渡所得にかかる、住民税と所得税をまとめて譲渡所得税と呼びます。

●復興特別税
復興特別税とは、東日本大震災の復興のために使われる税金で、復興税とも呼ばれています。この復興特別税がかかるのは、マンションを売却した年の所得税です。また、復興特別税にかかる税率は所得税額に対し2.1%となっています。

各税金を納めるタイミング

以上の各種税金は、それぞれ納税のタイミングが異なります。印紙税は契約時、登録免許税は引き渡し時、譲渡所得税と復興特別税は売却した翌年の2月16日~3月15日、住民税は売却した翌年度の6月以降から4回に分けて納税します。

投資目的の場合は、消費税に注意!

一般的な不動産売却にかかる税金は上記で全てですが、注意点が1つあります。
それは、マンションを投資目的で売却した場合、販売した建物価格に消費税がかかる(土地は非課税)投資目的で売却した場合、販売した建物価格に消費税がかかる(土地は非課税)
また、投資目的の売却の場合、一部の控除や特例も利用できない決まりになっています。

ただし、2年前の課税売上が1000万円を超えていなければ「免税事業者」となり、消費税が免除されます。投資としてマンションを売却する場合は、過去の課税売上を見直しておくとよいですよ。

利益が出た場合の税金はいくら?計算方法とシミュレーション

ここまではマンション売却でかかる税金の特徴についてご紹介しましたが、実際に気になるのは「うちはどのくらい税金がかかるのか?」という点ですよね。
そこでここからは、売却して利益が出た場合に発生する、譲渡所得税の計算方法をご紹介します。ぜひ、売却時のシミュレーションに役立ててくださいね!

ペンを持ち、考える女性

税金の計算方法

マンションの売却にかかる税金の仕組みは、ちょっと複雑になっています。その上、聞きなれない言葉も多いので、最初は途方にくれてしまうかもしれません。でも、次の順番の通り進めていけば大丈夫!1つずつトライしていきましょう。

●譲渡所得の計算方法
初めに、自分の譲渡所得を計算します。譲渡所得は、次の式によって求められます。

譲渡所得 = 譲渡収入金額 - (物件の取得費 + 売却時にかかった経費)

・譲渡収入金額…物件を売った金額
・物件の取得費…物件の購入価格や、購入時にかかった諸費用
・売却時にかかった経費…仲介手数料や印紙税などの諸費用

ここで注意したいのが、取得費に含まれる「物件の購入価格」です。物件の購入価格はそのまま合算せずに、「減価償却費」を差し引かなければなりません。

木材の上に置かれた電卓

●減価償却費の計算方法
減価償却費とは、経年劣化によって下がった建物の価値を表す費用を指します。一般的に建物は築年数が経つとともに、その価値が下がるとされているのです。

減価償却費の計算方法には「定額法」と「定率法」がありますが、建物の場合は定額法が使われます。定額法の計算式は以下の通りです。

減価償却費=建物の購入金額×0.9×償却率×経過年数

●譲渡所得税の計算方法
これで、自分の譲渡所得が把握できました。次はいよいよ、譲渡所得税の計算に移りましょう。譲渡所得税額は、譲渡所得から特別控除を引いたものに、特定の税率をかけて求めます。

譲渡所得税=(譲渡所得-特別控除額)×税率

譲渡所得税にかかる税率は、売却する物件の所有期間によって変わります。以下の表の通り、所有期間が5年を過ぎると税率は大きく下がるので、売却するタイミングは慎重に検討したいですね。

●居住用不動産の譲渡所得税率

所得の区分 短期譲渡所得 長期譲渡所得
所有期間※1 5年以下 5年超 10年超所有軽減税率の特例
税率※2 39.63%
所得税:30.63%
住民税:9%
20.315%
所得税:15.315%
住民税:5%
1)課税譲渡所得6000万円以下の部分
14.21%
所得税:10.21%
住民税:4%2)課税譲渡所得6000万円超の部分
20.315%
所得税:15.315%
住民税:5%

※1 譲渡した年の1月1日現在において、所有期間が5年以下か、5年を超えているかにより判断
※2 税率には復興特別税2.1%を上乗せしています

●計算式を利用した、譲渡所得税のシミュレーションに関する記事はこちら
必要な税金を簡単にシミュレーションしてみよう!

節税に役立つ控除にはどんなものがある?

マンションを売却して利益が出ると嬉しい反面、同時に気になるのは「税負担をどう抑えるか?」という課題です。益金に影響する税金を賢く抑えるために、マンション売却時に利用できる控除や特例についてご紹介します。

パソコンを操作する女性

3000万円特別控除

3000万円特別控除は、マイホームの定義を満たした物件を売却したときに、譲渡所得から最大3000万円の控除が受けられるというものです。ここでいうマイホームとは「居住用財産」のこと。売却するのが投資用マンションではなく、自宅であれば、3000万円特別控除を受けることができます。

この控除が適用された場合、譲渡所得が3000万円以下なら、譲渡所得税額は0円になります。つまり、譲渡所得税自体を払わずに済むのです。これは、かなり大きな節税対策といえるでしょう。

ただし、3000万円特別控除を利用すると、売却後に購入した物件は住宅ローン控除が受けられなくなります。新居を購入する予定がある人は、どちらの控除の方が減額が大きいかを計算してから選択しましょう。

なお、この特例を受けるためには確定申告をする必要があります。

●詳しい要件については国税庁公式ページをご確認ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

●3000万円控除についての詳しい記事はこちら
居住用財産 3000万円控除

計算機を持つ夫婦

買い換え特例

買い換え特例は売却する物件の所有期間が10年超えで、売却価格よりも高い価格で新しい物件に買い換えた場合に利用できる特例です。ただし、こちらも3000万円特別控除と同じく、マンションが自宅である場合のみに使えます。

また、この特例は課税が軽減されるものではありません。買換え特例は、新しく購入した物件を将来売却した際に、古い物件を売却した際に生じた譲渡所得税が上乗せされるものですので間違えないようにしましょう。
さらに、この特例を利用するには、2021年12月31日までにマイホームを売却しなければならず、3000万円特別控除と同じように確定申告をする必要があるなど、複数の要件全てに当てはまっている必要があります。

●詳しい要件については国税庁公式ページをご確認ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3355.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm

譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例は、マンションの売却額が購入額より低くなり、譲渡所得がマイナスになる「譲渡損失」になったときに使える特例です。

譲渡損失になった場合は、損失分の金額をほかの所得(給与所得、事業所得など)から控除する「損益通算」ができます。さらに、譲渡損失の金額がその年の所得より多く、相殺できない場合は「繰越控除の特例」が可能です。

繰越控除の特例を使えば、最長3年間は譲渡損失を翌年以降の所得から差し引くことができます。

●詳しい要件については国税庁公式ページをご確認ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3370.htm

電卓と書類

取得費加算の特例

取得費加算の特例は、親から相続したマンションを売却する際に、そのマンションの取得費として相続税の一定額を加算できるというものです。この特例を使うことで、譲渡所得税を軽減することが可能になります。

上で説明した通り、譲渡所得税は、売却した金額から物件の購入費や手数料などの経費を差し引いた利益に対して発生するものです。ここに取得費加算の特例が適用されれば、マンションの相続税も経費として一緒に差し引くことができるのです。

相続したマンションを売却すると、住民税や所得税のほかに相続税もかかるため、売主には大きな負担になります。ですが、この特例を使えば、相続でかかる税金を抑えられるわけですね。

●詳しい要件については国税庁公式ページをご確認ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm

話し合いをする年配の女性

賢いマンション売却のカギは、税制の仕組みを知ること!

マンションの売却にかかる税金のことは複雑で、特に初めて売る人にとって、すぐに全てを理解するわけにはいかないかもしれません。しかし、売却の流れのなかでは避けて通れないものです。

思わぬ「売り損」を防ぐためには、やはり税制の仕組みを知っておくことが大切です。そして、税金がどれくらいかかりそうかシミュレーションすれば、売るタイミングや売却価格の判断もしやすくなるでしょう。計算に必要なマンションの取得費や、売却にかかった経費などが分かる書類は、いつでも確認できるようにしておくことをおすすめします。

また、今回ご紹介したように、マンションの売却には利益だけでなく損失が出ても使える特例や控除があります。制度によっては控除額も大きいので、こうした制度があることも覚えておいてくださいね。

売却を本格的に考え始めたら、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的な流れです。仲介契約の種類については、こちらの記事を参考にご覧ください!

●売却時に不動産会社と結ぶ媒介契約についての記事はこちら
専任媒介とは?不動産売却時の不動産会社の選び方も併せてご紹介
一般媒介を選ぶ前に知っておくべき、不動産売却の基本知識を紹介!

この記事のポイント<Q&A>

  • Q不動産売却にはどんな税金がいくらかかる? A一律でかかるのは印紙税、登録免許税。利益が出た場合のみかかるのが譲渡所得税(所得税+住民税+復興特別税)です。詳しくはこちらをご覧ください。
  • Q不動産売却時の税金を抑える方法はある? A3000万円特別控除、買換え特例、譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例、取得費加算の特例を利用できるケースがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
  • Q不動産売却時の税金を納めるタイミングは? A印紙税は契約時、登録免許税は引き渡し時、譲渡所得税と復興特別税は売却した翌年の2月16日~3月15日、住民税は売却した翌年度の6月以降とされています。詳しくはこちらをご覧ください。