Interview / 2017 10,30 /Vol.2

日本モダンガール協會代表 淺井カヨさん

自分らしい生き方をしている人を訪ね、その暮らしの様子や思いをお聞きする企画「Tokyo go my own way」。

今回お伺いしたのは、日本モダンガール協會代表の淺井カヨさんのご自宅。「モガ」ことモダンガールが生きた大正から昭和初期の時代を研究する淺井さんの装いは、まさにモダンガールそのもの。そんな淺井さん、昨年ご主人の郡修彦さんと一緒に家を新築されたそう。なんとそのお家、昭和初期に流行した和洋折衷の文化住宅を可能なかぎり再現したものなんです。
まさに、“モダン”な生活を送る淺井さんに、モガに目覚めたきっかけや魅力、そしてお家を建てたときのお話をお聞きしました。

新築ではなく、古い家に住もうとは思わなかった?

Question.05

それも考えましたが、これまで間借りしてきた家は、昭和初期のものはオリジナルの建築に改変が加えられていました。また、大正10年の家は、住んでいるときに隣の部屋の窓ガラスが庭に落ちたりして、朽ちていく一方。もちろんどちらも地震対策はなされていない。震災などに強く、安全に住めて、なおかつ当時の風情がある家を新品で作りたいと強く思いました。

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新築した際に、凝ったところは?

Question.06

すべてです。この家は、窓の桟の寸法やマイナスねじを付けること、瓦の形状や色など、私と郡とで素材と仕様を指定して、全部のことを一個も手を抜かずに作りました。

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昭和初期の和洋折衷住宅について書かれた当時の本を読んだり、現存している建物を見に行ったりしてかなり研究し、家を考えたんです。そして郡が画用紙で40分の1の模型を作り、これを持って工務店に行き、これと同じ家を作りたいと説明して回りました。なかなかいい工務店さんが見つからず苦労しましたね。よかれと思ってか、私たちの希望に加えて「ここはこうした方がいい」と何か付け加えたりするところが多かったですから。

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当時の生活様式に倣った暮らしのいいところは?

Question.07

例えば、食事に関してご飯は土鍋で炊いてそれをおひつに入れておきますね。これがとてもおいしいんですよ。保ちもいいです。また、基本的に生ものはその日のうちに新鮮なまま食べます。冷蔵庫は氷冷蔵庫を使用していますから。それだけではなく、長期間保存ができる乾物や缶詰、漬け物を作るようになって、それは災害が起きた場合にもいいのではないかと思いますね。電気にばかり頼っていると、電気があるうちはいいですが、なくなったときに困りますから。

story_img11ご自宅の氷冷蔵庫

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自身の暮らしと外界とで違和感を感じることは?

Question.08

Tシャツやランニングなど、外で着るものではなくあくまで肌着ですから、街で見かけると不思議な感じがしますね。
また、仮名遣いも何で「上野」が「うへの」ではなく「うえの」なのかと違和感があったり、最終電車に乗っていると前の人全員が携帯電話を見ていたりすると、何を見てるのだろうと中毒になっているように見えて仕方がないです。
日頃から、大正・昭和初期の時代を可能なかぎり追いかけているので、現代に生きてはいるけれど、現代に違和感を感じることがあります。

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当時の時代に生きたいとは思いませんか?

Question.09

それは思いません。
私は、当時のものが好きで、ものを見てはわくわくします。印刷物の文字がたまにずれていたりして、当時の物に人の姿が見えます。私にとって今よりも手仕事の魅力があるのです。
また、本の仮名遣いを見ているだけでも、これも本当にわくわくします。
けれど、当時に生きたいかと言えばそれは別です。当時もいいところはありましたが、すべてがいいわけではもちろんありません。
また、仮に私が大正時代に生きていたら、今度は江戸時代に夢中になっていたかもしれないですね。私は古いもののいいところを大切にしたいのだと思います。

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では、現代のいいところはありますか?

Question.10

それはもちろんたくさんあります。衛生面や医療は、とても良いです。昔のことはもちろん好きですが、現代にもいい点があります。仕事で使うパーソナルコンピュータは最新のもので、それで驚かれたことがあります。
ただ、携帯電話は私にとってはダメですね。小さいあの形状が好みに合いません。だから、携帯電話はまったく持っていません。電話といえばもっぱら自宅の黒電話です。

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最後に、これからの夢は何ですか?

Question.11

この家を建てるまでの過程を本にしたいなと思いますね。いろいろ大変なことがあったので、それをこれから家を建てる方や興味を持っている方に伝えたいと考えていますね。
また、将来は、当時のことを知る方々がますます少なくなり、戦後生まれの人たちばかりになってきますね。今後も、大正時代の良かったところを見直す運動をしていきたいです。大正・昭和はそんなに前のことではないですからね。大正時代に戻したいのではなくて、その当時よかったものを見直そうというそれだけですね。

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淺井さんのご自宅にいると、学校帰りの小学生が道を駆けていく音やカラスの鳴き声など、
街の自然な音が心地よく聞こえてきました。
というのも、家電製品がほとんど無く家の中がとても静かだから。この静けさに、驚きました。
それにしても、大正時代やご自宅についてお話をする淺井さんはとても楽しそうで、
聞いているこちらも胸が踊りました。