Lifestyle / 2020 03,27 /Vol.5

【私が長距離通勤をする理由 Vol.5】
 〜通勤時間は手に入れた新しい価値の1つ。旭市での暮らし〜

昨今は職場の近くに住む「職住近接」のライフスタイルが注目されているが、一方で、何らかの理由で長距離通勤を選んだ人もいる。高速バスや特急電車、なかには新幹線を使い、都内へ2時間近くかけて通勤する長距離通勤者たち。なぜ、そうまでしてそこに住んでいるのだろうか?単純にその街が好きということもあるだろうし、あるいは何かやむにやまれぬ事情、知られざるドラマがあるのかもしれない。

連載第5回目では、千葉県旭市で暮らし、東京都内に勤務する有馬健太さんと妻の裕香さんを訪ね、約3時間の長距離通勤と引き換えに手に入れた暮らしぶりを伺った。

小野洋平(やじろべえ)

1991年、埼玉県生まれ。東京の編集プロダクション「やじろべえ」所属。今までの実家引っ越し回数は4回です。
【やじろべえ株式会社】https://www.yajirobe.me/
【小野洋平/Twitter】https://twitter.com/onoberkon

■生活スタイルを見直したかった

千葉県北東部に位置する旭市。美しい弓状の九十九里浜や干潟八万石と呼ばれる広大な平野が広がる自然豊かなエリアだ。都心までは約80km圏の立地を生かした近郊農業が盛んで、農業産出額は千葉県内第1位、全国でも第5位を誇っている。そんな旭市から、なぜ有馬さんは約3時間もかけて都内へ勤務しているのだろうか。

▲都内にある外資系スポーツメーカーに勤めている有馬さん

有馬健太さん(以下健太さん):移住する前は、妻と2人で葛飾区に住んでいました。当時は共働きで私も妻も大好きなお酒を飲み明かし、家にはあまり帰らないような生活を送っていました(笑)。今思えば恥ずかしいですね。ただ、そんなジャンクな生活を続けていたせいか、体調を崩してしまったんです。その時に生活スタイルを見直したいと思い、田舎暮らしを考えるようになりました。

—なぜ、旭市を選んだのですか?

健太さん:最初は旭市の隣町・匝瑳(そうさ)市が候補でした。というのも、まずは食生活を見直そうと「my田んぼ」を匝瑳市ではじめていましたから。

—匝瑳市はどういった経緯で知ったのでしょうか?

健太さん:池袋でオーガニックバーを営む高坂勝さんという方が主催した「my田んぼ」の体験イベントで知りました。高坂さんは匝瑳市を拠点に“ダウンシフト”する生き方を啓蒙している方で、私が地域とつながりを持つきっかけを作ってくれたんです。そこから匝瑳市を訪れるようになり、移住先の候補地になりました。

▲my田んぼ。1区画の広さは0.5畝(約50平米ほど)

—移住への第一歩は、米作りだったんですね。

健太さん:そうですね。都内に住んでいた頃に比べて、生活スタイルがガラッと変わったのは自分でも驚いていますよ。正直、自然なんてどうでもいいって思っていた私が、一転してナチュラリストになったわけですから(笑)。

—裕香さんは移住については、どう思われましたか?

有馬裕香さん(以下裕香さん):賛成でした。むしろ私が移住を勧めたくらいです(笑)。特に田舎に憧れていたわけではないのですが、嫌な感情もありませんでした。出産直後で広い家に引っ越したいと思っていたので、ちょうどいいタイミングかなと思っていましたね。

—移住前はお仕事をされていましたか?

裕香さん:はい。でも、移住に合わせて仕事を辞めることにしました。というのも、出産後1年間の育休をいただいた後、仕事に復帰しましたが、東京での子育てと仕事の両立は本当に大変でした。そこで、もっと良い方法はないのかと模索した結果、私も移住という選択だったんです。

—いつ頃から移住は計画していたのでしょうか?

健太さん:体調を崩した2013年頃からはじめました。当時の私の仕事場は船橋市だったこともあり、通える範囲内の田舎となると、このエリアは丁度良かったんですね。そして、2014年に念願の移住生活がはじまり、長距離通勤をスタートさせました。