住み替えのときにかかる税金とは?特例制度もご紹介

家を住み替えるときには、家の売却時と購入時それぞれに税金がかかります。今回は、かかる税金の種類とその金額、また税負担を減らせる特例についてもご紹介します。税金や特例制度の概要を知り、住み替え時に活用できるようにしましょう。

目次
  1. 住み替えにかかる税金とは?
  2. 不動産を売却するときにかかる税金
  3. 【早見表】不動産を売却するときに使える特例
  4. 不動産を購入するときにかかる税金
  5. 不動産を購入するときに使える特例
  6. 住み替えにかかる税金や特例を確認しよう!
記事カテゴリ 売却 購入 税金 住み替え
2025.05.14

住み替えにかかる税金とは?

住み替えの際には、売却時にも購入時にも税金がかかります。しかし、一定の条件を満たすことで利用できる特例があるため、税金を抑えることも可能です。

そこで今回は、賢い住み替えをするために、住み替えに関する税金の仕組みや適用される特例をご紹介します。

●マンションの住み替え(買い替え)についてはこちら

住み替え先の家を眺める家族

不動産を売却するときにかかる税金

住み替えで売却するときにかかる税金には、売却の手続きにかかる税金と、売却によって利益が出たときにかかる税金があります。以下で、それぞれ詳しく見ていきましょう。

売却の手続きにかかる税金

売却の手続きの際には、主に印紙税と登録免許税がかかります。

印紙税
印紙税とは、不動産を売買した際に作成される契約書のような、特定の文書にかかる税金です。印紙税相当額の収入印紙を文書に貼り付けて納付しますが、文書に記載されている金額によって税額が変わります。たとえば、1,000万円を超え5,000万円以下の場合、税額は原則2万円です。

ただし、2027年3月31日までは、軽減措置によって税額が引き下げられています。納める金額の例は以下の表の通りです。

契約書に記載された金額本則税率軽減税率
100万円を超え500万円以下2,000円1,000円
500万円を超え1,000万円以下1万円5,000円
1,000万円を超え5,000万円以下2万円1万円
5,000万円を超え1億円以下6万円3万円
1億円を超え5億円以下10万円6万円

登録免許税
登録免許税とは、不動産や会社などを登記する際にかかる税金です。土地や建物の所有権を明確にするためには、所有権の保存登記や移転登記が必要です。所有権保存登記では、新築した建物の所有者が誰かを記録します。一方、所有権移転登記は、土地や建物の所有者が変更されたことを記録するものです。

登録免許税は、原則として現金で納付することになっていますが、オンライン申請の場合は、電子納付することも可能です。登録免許税額は下記のように計算されます。

税額=課税標準×税率

課税標準とは、税金を計算する際の計算基準のことをいいます。課税標準には原則、自治体の固定資産課税台帳に登録された不動産価額が用いられます。

●登録免許税の税額についてはこちら

売却で利益が出たときにかかる税金

売却で譲渡所得がプラスだった場合には、所得税・住民税・復興特別所得税などが課せられます。

譲渡所得にかかる税金の税率は、家の所有期間によって「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に分けられます。売却する家を所有していた期間が5年以内だった場合は短期譲渡所得にあたり、税率は合計で39.63%です。一方、5年を超える場合は、長期譲渡所得となり、税率は合計で20.315%です。これらの税金は、譲渡を行った年の翌年に確定申告を行い、所定の方法で納付します。

なお、不動産を売却した際には消費税を支払う場合もありますが、不動産の状況や、売主が個人なのか事業者なのかによって有無が変わります

●不動産売却にかかる税金についてはこちら

●不動産売却時の確定申告についてはこちら

マンションから一戸建てへの住み替え

【早見表】不動産を売却するときに使える特例

売却によって利益が出たとき、一定の条件を満たしていれば適用される3つの特例があります。利用することで大幅な減税が可能となる、これらの特例の特徴と注意点を見ていきましょう。また、不動産売却で損失が出てしまった場合に適用されると控除が認められる特例もあります。上記の特例と併せてご紹介します。

なお、いずれの特例を受ける場合にも確定申告が必要です。通常、譲渡損失が生じた際は確定申告は不要ですが、特例を受けるためには、この場合でも確定申告が必要です。その際、確定申告は不動産を売却した翌年(原則として毎年2月16日~3月15日)に行わなければなりません。

特例特徴
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例・売却による譲渡所得が3,000万円まで課税されない
マイホームを売ったときの軽減税率の特例・長期譲渡所得の税額が低くなる
特定の居住用財産の買換えの特例・譲渡益への課税を将来に繰り延べられる
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 ・譲渡損失を、ほかの所得から控除して相殺できる
・控除しきれない損失を翌年から3年以内に繰り越して控除できる

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例

「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」とは、マイホームを売却する際の譲渡所得に対して、3,000万円までは課税対象から除外されるという制度です。この特別控除を受けるためには、複数の要件を満たしている必要があります。主な要件は以下の通りです。

・自分が住んでいるマイホームであること(または住まなくなって3年目の年末までに売却すること)
・売る相手が親子や夫婦などの特別な関係でないこと
・売却をした年の前年と前々年に3,000万円の特別控除や繰越控除の特例などを受けていないこと

●居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例についてはこちら

マイホームを売ったときの軽減税率の特例

「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」とは、マイホーム売却時に、一定の要件を満たしていれば、長期譲渡所得の税額が通常よりも低くなる制度です。マイホームを売却するときの軽減税率は、長期譲渡所得が6,000万円以下になる場合と6,000万円を超える場合で計算方法が異なり、具体的には下記のように計算されます。

・6,000万円以下の場合:長期譲渡所得×10%
・6,000万円を超える場合:(長期譲渡所得-6,000万円)×15%+600万円

軽減税率の特例を受ける場合には、主に以下の要件を満たすことが必要です。

・自分が住んでいるマイホームであること(または住まなくなって3年目の年末までに売却すること)
・売る相手が親子や夫婦などの特別な関係でないこと
・売却をした年の前年と前々年に軽減税率の特例を受けていないこと

●マイホームを売ったときの軽減税率の特例についてはこちら

特定の居住用財産の買換えの特例

「特定の居住用財産の買換えの特例」とは、住み替え用のマイホームを購入した際に一定の条件を満たせば、譲渡益への課税を繰り延べられる制度です。

この特例は、上記でご紹介した3,000万円の特別控除や軽減税率の特例とは異なり、控除ではなくあくまで繰り延べができるという点に注意しましょう。こちらの特例を受ける場合に必要な要件は、主に以下の通りです。

・売主の居住期間が10年以上かつ、売却した年の1月1日時点で売却する不動産の所有期間が10年を超えていること
・更地にして売却する場合は、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売却されていること
・売る相手が親子や夫婦などの特別な関係でないこと

●特定の居住用財産の買換えの特例についてはこちら

マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

住み替えによる不動産の売却時に、譲渡所得がプラスにならず、赤字になってしまう状態を「譲渡損失」といいます。自身でプラスか赤字かを知るには、課税譲渡所得金額を以下の式で計算してみましょう。

課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

計算の結果、収入金額が低いために課税譲渡所得が赤字になった場合は、以下の損益通算や繰越控除といった制度の利用を検討してみましょう。

ほかの所得との損益通算
損益通算とは、赤字になった所得の損失分を、ほかの黒字となった所得金額から控除できるという制度です。2025年12月31日までにマイホームを譲渡して住み替えた際に、譲渡損失が生じたときは、一定の要件を満たせば、損益通算によってその損失をほかの所得から控除できます。つまり、住み替えの売却で損失が出た場合も、給与所得といったプラスの所得との間で相殺できます。これにより、課税対象となる総所得金額が小さくなるため、所得税の負担を抑えることが可能です。

繰越控除
繰越控除とは、損益通算をしてもなお控除しきれない損失がある場合、その年の翌年から3年以内に、控除を繰り越せる制度です。マイホームを売却した結果、譲渡損失が大きくなってしまった場合でも、翌年以降の所得と相殺することで節税につながるでしょう。

通常、譲渡損失が発生したケースの確定申告は不要ですが、上記の特例を利用する際は確定申告が必要です。詳しい要件は国税庁のサイトから確認できます。

●マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例についてはこちら

特例について確認する女性

不動産を購入するときにかかる税金

住み替えのために新居を購入する際には、新居の購入額や仲介手数料、引越し代などの諸費用以外にも税金がかかります。家を購入すると必ず発生する税金と、取引の相手に応じて発生する税金があるので、それぞれ分けて見ていきましょう。

購入するとき必ず発生する税金

マイホームを購入する際に必ず支払う税金として、印紙税、登録免許税、不動産取得税の3つがあります。この3つの税金は、いかなる場合でも支払いを免除されることはありません。

印紙税
印紙税とは前述のように、不動産の売買に関する契約書のような、特定の文書にかかる税金のことをいいます。不動産売却と同様に、購入の契約をする際にも必要です。

登録免許税
こちらも前述のように、所有権保存登記や移転登記などをした際に必要になる税金です。不動産を取得すると、所有権が売主から買主である自分に移動するため、その際の登記に対して課税されます。登録免許税の納税は、原則として譲渡と同じタイミングで行われます。

不動産取得税
不動産取得税とは、土地や建物などを購入したり、贈与されたりするときにかかる税金です。不動産取得税は、住宅を購入してから約半年から1年半の間に納税通知書が都道府県から届き、金融機関で支払いをします。税額の計算は下記の通りです。

税額=固定資産税評価額×4%

ただし、2027年3月31日までは、土地やマイホームに関する税率は3%となっています。

取引相手に応じて発生する税金

取引相手に応じて発生する税金は以下の通りです。

贈与税
贈与税とは、親や祖父母などの親族から不動産を譲渡された場合、贈与された側に発生する税金です。新居を購入するのではなく、親族から譲渡された場合には、この税金が課せられます。贈与税の納付は、税務署以外に銀行や郵便局でも可能です。

消費税
マイホームを購入する場合、土地部分は消費税の課税対象になりませんが、建物部分は課税対象として、建物価格の10%が課せられます。ただしこれは、売主が不動産会社のような課税事業者である場合のみで、売主が個人である住宅を購入する場合にはかかりません。

ただし、不動産会社に支払う仲介手数料には消費税がかかります。

家の購入にかかる税金

不動産を購入するときに使える特例

家を売却するときと同様に、新居を購入するときにも、かかる税金を抑えられる特例があります。ここでは、マイホーム購入時に利用できる特例の特徴と注意点についてご紹介していきます。

住宅ローン控除

住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んで購入するマイホームが一定の条件を満たしている場合、新築住宅は最大13年、中古住宅は10年にわたり、住宅ローン残債の0.7%を控除してもらえる制度です。2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅は、一定の省エネ基準を満たすものしか原則的に控除を受けられないようになりました。ほか、住宅ローン控除を受けるには、以下のような要件を満たすことが必要です。

・住宅の引渡し日から6か月以内に入居すること
・特別控除を受ける年の合計所得が2,000万円以下であること
・対象となる住宅に対して10年以上のローンがあること

また、住宅ローン控除を受けるための手続きに関しても注意しておきたいポイントがあります。1年目の手続きは、確定申告が必要です。入居した年の翌年に、申告書を納税地の税務署長に提出します。しかし、2年目以降からは、年末調整で手続きができます。

住宅ローン控除とほかの特例の併用

住宅ローン控除を利用する際には、売却時の譲渡所得に対する3,000万円の特別控除との併用はできません。そのため、どちらの特例措置を利用すればより節税できるかを慎重に比較して決めるようにしましょう。その際に、税理士をはじめとした専門家に相談してみるのもよいでしょう。

控除とお金

住み替えにかかる税金や特例を確認しよう!

住み替えを考え始めたら、自分が利用できる特例をチェックし、どれを利用すれば、より多く節税できるかを判断しましょう。自分たちで決められない場合は、経験豊富な不動産会社の担当者に相談してみるのもおすすめです。事前準備をしっかりと行って後悔のない住み替えをしましょう。

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宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/