借地権は売却できるの?注意点や手続きの流れを解説

借地権付きの家でも売却することは可能ですが、通常の土地の売却と異なる部分があります。今回は、借地権を売却する4つの方法それぞれの特徴や、売却の流れについてご紹介します。

目次
  1. 借地権って売却できるの?
  2. 借地権は2種類ある
  3. 借地権を売却する方法
  4. 売却の流れ6ステップ
  5. 借地権の売却はプロに相談して進めよう!
記事カテゴリ 売却 一戸建て 土地
2022.03.07

借地権って売却できるの?

マイホームの売却を考えている人のなかには、「借地権付きのマイホーム」を売却したいという人もいるでしょう。では、借地権付きのマイホームは売却することはできるのでしょうか?

今回は借地権付きのマイホームを売却するための注意点や手続きの流れを解説します。

そもそも借地権とは、土地を持っていない人が自分名義の建物を建てるために土地を借りる権利のことをいいます。

マイホームを取得する人のなかには、土地と建物どちらも購入する人もいますが、一方で建物は購入しても、土地は借りるという選択をする人もいます。借地権を利用することで、地代を地主に支払う代わりに、土地をまとまった期間借りることができます。

また土地と建物を購入する際は、不動産取得税や固定資産税など土地と建物に対してさまざまな税金を支払う必要がありますが、借地権を利用して土地を借りた場合、土地に対する固定資産税の納税義務は地主に発生します。

不動産取得税に関しては、地主は既に土地を持っているため、地主には土地の不動産取得税は新たに発生しません。もちろん、土地を借りるだけの借地人も土地の不動産取得税は生じないことになります。

借地権付きのマイホームは、住む必要がなくなったり、相続の必要がなかったりする場合は、借地権付きの家として売却することが可能です。しかし、借地権のかかわる不動産取引にはさまざまな制約があります。そのため、制約を把握していないとトラブルになることもあるので、借地権の概要や売却に関するポイントを知っておきましょう。

家の模型とお札

借地権は2種類ある

借地権には「地上権」と「賃借権」の2つに分かれており、権利の性質がそれぞれで違うので、ここではその違いについてご紹介していきます。

地上権

地上権とは、建物を所有するために土地を使用する権利のことをいいます。民法上は物権と呼ばれる強い権利に該当します。地上権の範囲は、土地の表層だけでなく、上の空間や地下も含めた範囲を指します。

地上権は、地主の許可がなくても売却や転貸(また貸し)を行うことができます。また地上権には、抵当権も設定でき、地代を支払うことを除くと所有権に近い権利といえるでしょう。

賃借権

賃借権とは、建物を所有するために土地を借りる権利を指します。民法上は債権と呼ばれる弱い権利に該当します。賃借権は、地主の承諾がなければ、勝手に売却や転貸をすることはできません。また、賃借権の場合は、抵当権に関しては、建物には設定できますが、土地に設定することはできないことが一般的です。

ここまで、地上権と賃借権の2つをご紹介しましたが、実際の借地権として利用される場合は、賃借権が多く、地上権はあまり見られません。

借地権を売却する方法

借地権を売却する方法は、主に以下の4つがあります。いずれにしても、地主の承諾をもらうことが大前提となります。まず地主は、どうしたいのか意向を確かめるようにしましょう。そのうえで、地主がどうしても売却を認めてくれない場合は、借地非訟で売却できる可能性もあります。

借地非訟とは、地主が借地権の売却を認めてくれないときに裁判所から売却の許可をもらう手続きです。しかし、これを利用することで地主との関係が悪化したり時間や費用がかかったりするなどリスクも大きいため、最後の手段として捉えておくようにしましょう。

では借地権を売却する方法について、具体的に見ていきます。

地主に売却する

1つの方法としては、建物を地主に買い取ってもらうことが考えられます。地主が建物を買い取れば、借地権は消滅します。

貸地と貸地の看板

第三者に売却する

第三者に売却する場合は、買主が個人か不動産会社かは問わず、地主の承諾を得ることが必要になります。地主の承諾を得る際には、「譲渡承諾料」を支払うのが慣習的とされています。譲渡承諾料とは、法律的に定められているものではありませんが、借地権を第三者に譲渡する場合に、借地権価格の10%程度を借地人が地主に対して支払うというものです。

等価交換を行い第三者に売却する

等価交換とは価格や価値が同等とされるものを互いに交換することを表します。具体的には、建物と、地主の持っている底地権(そこちけん)を同等なだけ交換し、それぞれが所有権を得ている状態にしてから借地人と地主で同時に売却するというものです。底地権とは、借地権が設定されている土地の所有権のことをいいます。

たとえば、交換前は借地人の建物価格1000万円、地主の土地価格1000万円だったとした場合、半分の面積を互いに交換することにより、借地人は土地と建物の所有権を50%、地主も土地と建物の所有権を50%とするものです。この場合、借地人は50%に値する不動産を売却することができます。

等価交換することで双方が土地と建物の一部の権利を失いますが、借地権が消滅するため買手がつきやすくなります。なぜなら、買主は土地と建物の完全な所有権を持つことで、土地や建物を自由に利用したり売ったりすることができるからです。

ただし等価交換を行う際は、測量や登記の手間と費用が必要になってくる点には注意しましょう。

借地権と底地権を第三者に売却する

地主の持つ底地権を譲ってもらい、借地権と底地権をセットにして「所有権」として同時に売却する方法もあります。この方法をとる場合も、事前に地主への交渉や説得が重要となるでしょう。

売却の流れ6ステップ

売却する際には、どういった流れで進めていけばよいのでしょうか?ここからは、借地権を売却する際のステップを6つに分けてご紹介します。
第三者に借地権を売却する場合は、不動産会社に仲介を依頼して買主を探すのが一般的です。今回は、不動産会社を仲介とした場合を例に見ていきます。

[ 1 ] 査定、仲介契約を結ぶ

借地権の売却を検討し始めたら、複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。複数の不動産会社に査定結果を出してもらうことで、その不動産が持つ相場を把握することができます。
査定結果が得られたら、経験豊富な不動産会社に仲介を依頼しましょう。借地権の売却実績のある不動産会社であれば、地主や買主との交渉もスムーズに進められることでしょう。

●不動産査定に関する記事はこちら
家の査定とは?スムーズな売却のために知っておきたい基礎知識

[ 2 ] 地主の承諾を得る

地主と交渉する際は、不動産会社を介して交渉することをおすすめします。なぜなら、借地権の売却は、売却の承諾料や売却方法などのさまざまなことを地主と話し合わなければならず、専門知識があり、公平な立場から話し合いを進めてくれる仲介役が必要となるからです。

[ 3 ] 売却活動を行う

地主の承諾を得れば、いよいよ不動産会社が売却活動を開始します。不動産会社は、不動産ポータルサイトに物件情報を掲載したり、レインズへの不動産情報を登録したりといった売却活動を行います。レインズとは、全国の不動産会社が見ることのできるネットワークシステムです。

[ 4 ] 売買契約を結ぶ

買主が見付かれば、買手と売手で売買契約を結びます。借地権を売却する場合は、地主が承諾した旨を記載した文書が必要です。万が一、地主の承諾書を得られなかった場合は、売買契約自体が白紙になるので注意しましょう。

家の模型をもつ手

[ 5 ] 借地権譲渡承諾書を作成する

地主から借地権譲渡承諾書を受け取ることで正式に契約が成立します。借地権譲渡承諾書とは、第三者への借地権の譲渡を承諾する際の正式な合意文書を指します。

[ 6 ] 借地権を引渡す

正式な契約が成立したら、買主に借地権付建物を引渡します。なお、借上の建物の所有権も買主に移ることになります。そのため所有権が移る際に行う、所有権移転登記が必要になります。

●所有権移転登記に関する記事はこちら
所有権移転登記の費用はどれくらいかかる?取得のために必要な費用の計算方法

借地権の売却はプロに相談して進めよう!

借地権を売却する際は、一般的な不動産売却と違い、地主に対する説明や交渉が必要になってきます。そのため、借地権売却に精通した不動産会社に相談して、中立的な立場からアドバイスをもらいながら進めることをおすすめします。

借地権に関する取引経験が豊富な不動産会社であれば、借地人と地主、買主の仲介に入ってスムーズに引渡しまで行ってくれるでしょう。借地権を売却する際は、全ての立場の仲介役に円滑に入ってくれる不動産会社を選びましょう。

●土地売却の詳しい流れや準備に関してはこちら
土地売却の流れと各ステップでの注意点

●土地の相場が知りたい人はこちら
【三井のリハウス】不動産売却・査定・相談

不動産鑑定士 竹内英二

株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士をはじめとしたさまざまな資格を保有。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングなども行なっている。
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