不動産査定書とは?記載内容や、見るべきポイント、依頼方法をまとめて解説

不動産査定書とは、不動産会社や不動産鑑定士などが対象の物件を査定した結果を記載する書類で、物件を売却する際に必要となります。今回は、不動産査定書の種類や見方のポイント、査定の依頼方法などをご紹介します。

目次
  1. 不動産査定書とは?
  2. 不動産査定書の種類は大きく2つ
  3. 不動産査定書には何が書かれている?
  4. 不動産査定書の見方のポイントは?
  5. 不動産査定書の作成方法
  6. 査定の際に必要な書類はある?
  7. 売却するならまずは査定を依頼してみよう
記事カテゴリ 売却 マンション 一戸建て
2023.08.23

不動産査定書とは?

不動産を売却する際に必要な不動産査定書にはどのような内容が書かれているかご存じでしょうか?不動産査定書とは、不動産の査定結果が書類にまとめられたもので、不動産を売却する際に必要不可欠な書類です。売主にとっては売り出し価格を決めるための参考資料となり、不動産査定書を活用することで適切な売り出し価格を設定できるでしょう。しかし、どのように活用すればよいのか分からないという方も多いのではないでしょうか?この記事では、不動産売却を検討している方に向けて、不動産査定書の見方や入手方法をご紹介します。

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不動産査定書の種類は大きく2つ

不動産査定書には大きく2つの種類があります。1つは不動産会社が作成するもの、もう1つは不動産鑑定の国家資格を持った不動産鑑定士が作成するものです。順に見ていきましょう。

不動産会社による査定書

不動産会社では、査定を依頼すると不動産査定書を無料で作成してくれます。これは、査定を行うことは不動産会社にとって営業行為の一環となるためです。不動産会社にとって査定額の算出は、売却活動のパートナーとして選んでもらうためのプレゼンテーションともいえます。不動産会社は最終的に自社で媒介契約を結んでもらうことを目指して無料で不動産査定をし、家や土地を売る人とつながりを持つきっかけづくりをしているのです。

ただし、不動産会社が出す査定額は、あくまで実績や経験則などから算出されたもので、最終的な不動産の売却価格を保証するものではないことに注意が必要です。なお、不動産会社が違えば、査定額も異なります。

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不動産鑑定士による査定書

不動産会社の査定書は無料で作成されるのに対して、不動産鑑定士の場合は有料で作成されます。また、不動産鑑定士による査定書には2種類あり、一般的に作成されるものは不動産鑑定評価書、その簡易版として作成されるのが不動産査定書です。以下でそれぞれ詳しくご紹介しましょう。

不動産鑑定評価書
不動産鑑定士による査定書の1つ、「不動産鑑定評価書」は税務や法務などで不動産の価値を公的に証明するものです。そのため遺産分割や離婚の財産分与などで必要になります。不動産鑑定評価書は鑑定士が鑑定してから2週間程度で手元に届き、その費用の目安は、15万~30万円です。

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不動産査定書
不動産鑑定士による査定ではありますが、不動産鑑定評価書の簡易版となる不動産査定書は、公的な証明にはなりません。ただし、不動産会社が通常扱わない物件の査定額を算出したい際には不動産鑑定士に依頼するとよいでしょう。たとえば、大型商業施設や工場、ゴルフ場といった物件は顧客が一般の個人ではないため取引実績が非常に少なく、不動産会社では査定額の算出が難しくなります。そのようなときに不動産鑑定士ならば不動産査定書を作成することができるのです。

公的な証明とならない不動産査定書にかかる費用は、不動産鑑定評価書の3~4割程度と割安になります。

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不動産査定書には何が書かれている?

大きく2つに分けられる不動産査定書のうち、手軽で一般的なのが不動産会社による無料の不動産査定書です。

不動産査定書は不動産会社によって書式や内容は異なりますが、多くの不動産査定書は、公益財団法人不動産流通推進センターによる土地一戸建てマンションそれぞれの雛型・テンプレートが基礎となっています。これらを見ると、不動産を査定する際にどこがポイントになるのかがよく分かるので、査定を依頼する前に一読しておくとよいでしょう。

ここではおおよそ共通して不動産査定書に記載されている内容をご紹介します。

不動産の概要

不動産査定書の冒頭には、査定する不動産の概要が書かれています。住所や交通のアクセス だけでなく都市計画におけるその土地の目的まで、さまざまなことが記載されています。

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査定額とその根拠

不動産査定書には、査定額とともに、その根拠となる明細が記載されています。査定額の根拠となる要素としては、建物の築年数、新耐震基準の適合性をはじめ、外装や内装、設備などが挙げられます。そのほか、リフォーム履歴やインスペクションの有無、担当者の目視による物件評価項目もあります。

売り出し価格

不動産査定書には売り出し価格も提示されています。売り出し価格とは、購入希望者を募る際に、広く告知する物件の価格のことです。なかには売り出し価格と譲歩できるぎりぎりの価格を併せて記載している査定書もあります。

周辺環境

不動産査定書には周辺環境への評価も含まれます。どんな地域にあるのか、商業施設や公共施設へのアクセスはよいか、日当たりや部屋からの眺めのほか、騒音や振動も考慮されます。

予想手取り額

不動産査定書には予想手取り額も記載されています。予想手取り額とは、査定額で売却された場合、仲介手数料、印紙税代、抵当権抹消にかかる費用、測量費などの諸費用を引いた額がいくらになるかという予想金額で、今後の資金計画の参考にすることができます。

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不動産査定書の見方のポイントは?

不動産売却のために査定を依頼する場合は、不動産査定書の知識や見方について以下に述べるようなポイントを理解しておくと、査定書を作成した不動産会社への信頼度も分かってくるでしょう。

査定額

査定額の記載の仕方を見ましょう。なかには、「3,000万~4,000万円」と幅を持たせて書かれている場合がありますが、「査定価格:3,500万円、下限価格3,000万円、上限価格4,000万円」のように、上限と下限の価格が明確な記載が好ましいといえます。

また査定額の記載では、上限価格を「推奨売り出し価格」としていたり、売却時の諸費用が差し引かれた価格を記載していたりと、不動産会社によってさまざまな配慮がなされています。

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コメントや評価

査定書にコメントや評価がどう書かれているかに着目しましょう。主な着目ポイントは、査定額への根拠がコメントとして分かりやすく記載されているか、評価された点や評価されなかった要因は明確か、などです。査定を依頼した側は不動産については素人ですから、プロである不動産会社に不動産の事情をうまく伝えてもらう必要があります。

コメントや評価が分かりやすいか、明確か、不明な点を聞いたらちゃんと対応してくれるか、などを通じて、その不動産会社がうまく仲介してくれるかが分かるでしょう。

また、その不動産会社が過去に扱った事例も見せてもらうようにしましょう。不動産会社は査定価格を決めるときの根拠として、似た条件の不動産の取引ケースを参考にしています。その会社が参考にした過去の事例を知ることにより、査定額の根拠はもちろん、不動産価格の相場も把握することができます。

流通性比率

流通性比率とは、売りやすさの指標です。1が基準となり、1からマイナスは売りにくく、1よりプラスは売りやすい、ということを示します。下限は-0.85、上限は+1.1で、-0.85~+1.1の範囲で売りやすさを表します。

流通性比率が基準の1以外の場合、マイナスにしろ、プラスにしろ、その根拠を不動産会社に問い合わせましょう。流通性比率の根拠から、不動産会社が市場をどう見ているか、その物件をどう売れると踏んでいるかが分かります。

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見やすさ

査定書は、見やすさもポイントになります。査定書が見やすい会社は、ネットでの展開やチラシなどの告知が分かりやすいといった、デザイン性に優れている可能性があるのです。「ここで暮らそう」と決断できるようなイメージを購入希望者にうまく伝えられるかどうか、その不動産会社の広告の手腕が査定書に表れている可能性があります。

不動産査定書の作成方法

では、実際に不動産査定書を作成してもらうにはどのような手順を踏めばよいのでしょうか?不動産会社に依頼する方法と不動産鑑定士に依頼する方法をそれぞれ見ていきましょう。

不動産会社へ依頼する場合

不動産査定書を不動産会社に依頼する場合、ネットで不動産会社を調べて査定を依頼しましょう。売却の検討段階であれば簡易査定を依頼し、売却の意思が固まっていれば、訪問査定を依頼します。

易査定の場合は、ネットの簡易査定のページや電話越しの担当者の指示に従い、売りたい物件の所在地や面積といった基本情報と自身の連絡先を提供します。依頼後に上がってきた簡易査定の結果を受けて、売却することを決めたら訪問査定へと進みましょう。

訪問査定を依頼する際には、現地調査の日取りを決めます。訪問査定当日は、売主の立ち会いが必要です。立ち会いは1時間程度かかるので、余裕のあるスケジュールを立てましょう。訪問査定当日から1週間程度で、不動産査定書が郵送で届きます。

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不動産鑑定士に依頼する場合

不動産鑑定士に依頼する場合は、不動産鑑定士事務所を調べて問い合わせましょう。不動産鑑定士は各都道府県の不動産鑑定士協会に属しているのでHPを利用すれば、最寄りの不動産鑑定士事務所を調べられます。

費用請求の仕方や値段は不動産鑑定士事務所によって違うため、依頼した際の料金を確認してから契約を結び、正式に調査を依頼しましょう。

査定の際に必要な書類はある?

不動産査定の際に必要な書類は特にありません。ただし、査定時にあったほうが査定の精度が上がったり、査定価格が高くなったりする要因となる書類があります。ここでは用意しておくと査定の精度が上がる書類をお伝えしましょう。

購入時のパンフレット

広く購入希望者を募るために不動産会社が新築時に作成しており、不動産会社から見た物件のよさが伝えられています。査定を行う不動産会社にとっては、物件のアピール方法がよく分かる資料となります。

売買契約書・重要事項説明書

売買契約書には境界線の情報といった不動産を売買する際の決めごとが、重要事項説明書には物件の法規則、ライフラインの状態などが示されており、これらの書類があれば査定の精度が上がる可能性が高くなります。

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リフォーム履歴やインスペクションの結果

リフォーム履歴や「インスペクション」と呼ばれる住宅診断の報告書があると、中古でも新しい印象を与えたり、プロの検査済みでトラブルが起こりにくい物件だとアピールできたりするので、査定の高評価につながる可能性があります。

管理規約、長期修繕計画書、重要事項調査報告書

管理規約のほか、長期修繕計画書、重要事項調査報告書はマンションの詳細な情報を伝え、査定の精度を上げます。また、これらの書類は売却時に必要になります。

登記簿謄本

登記簿謄本は不動産の権利所有者、借入状況などが分かる公的書類で、登記事項証明書と証明内容は同じです。不動産について基本的で重要な事柄が記載されているため、登記簿謄本があると精度の高い査定額が算出できます。売買契約の際にも必要なので査定の段階から用意しておくとよいでしょう。

確定測量図や地積測量図、境界確認書

確定測量図や地積測量図、境界確認書などは、土地の面積や形状、土地の境界の把握などを証明する書類として査定の精度を上げ、売買契約時には必要とされる書類です。これらの書類は、マンション売却では不要ですが、宅地や一戸建ての売却には土地の広さを明確にしなければならないため必要とされます。

境界標

公図

公図は土地の面積や形状、隣接地との関係性など、土地の実態を示すものとして、不動産査定の参考となります。公図は法務局で管理しており、法務局の窓口やインターネットで取得できます。

身分証明書、印鑑証明書、住民票

不動産査定では本人確認書類である身分証明書、印鑑証明書、住民票を求められる場合があります。なぜなら、登記簿謄本で記載されている所有者と、不動産査定の依頼者が同一人物であるかを確認する必要があるためです。本人確認書類のなかの印鑑証明書は、「印鑑登録証」またはマイナンバーカードがあれば発行することができますよ。

印鑑証明書、実印

固定資産税納税通知書

固定資産税納税通知書に記載されている評価額は不動産の公的な価値の指標です。不動産売買にあたっては、あくまで参考となりますが、念のため提出しておきましょう。固定資産税納税通知書は、不動産売却の際、固定資産税の支払い状況の確認や物件を引き渡す際の固定資産税の清算にも必要になります。

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不動産売却後の固定資産税は誰が払う?基礎知識や計算方法を解説

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不動産の売却に必要な書類は?リストを見ながら計画的にそろえよう

固定資産税納税通知書

売却するならまずは査定を依頼してみよう

土地や一戸建て、マンションなどの不動産売却に必要不可欠な書類である不動産査定書についてご紹介しました。価値を評価することが難しい不動産を査定するには、プロの手が必要になります。売却をご検討の場合は、今回ご紹介したポイントを参考にしながら、不動産査定を実際に依頼してみてください。

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宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
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