不動産売却後の固定資産税は誰が払う?基礎知識や計算方法を解説

マンションや一戸建てなどの不動産を年度の途中で売却しても、売主には固定資産税の支払い義務が残ります。この場合は、売主と買主で日割り計算して負担を分けるのが一般的です。今回は、不動産売却後の固定資産税に関する基礎知識や計算方法について解説します。

目次
  1. 不動産売却後の固定資産税は誰が負担する?
  2. 固定資産税清算金とは?
  3. 固定資産税清算金はいくら支払うの?
  4. 固定資産税を支払う際の注意点は?
  5. 正しい知識を持って気持ちのよい取引を!
記事カテゴリ 売却 費用 税金
2023.06.09

不動産売却後の固定資産税は誰が負担する?

固定資産税とは、毎年1月1日に土地や建物の所有者に課される税金です。たとえば、家やマンションを所有している場合、土地と建物の両方が固定資産と見なされ、課税対象となります。またそれらの固定資産を所有している限り、固定資産税を支払い続ける義務が生じます。

では、年度の途中で不動産を売却した場合でも、売主がその年の固定資産税を全て支払う必要があるのでしょうか?固定資産税の支払いは大きな金額になることもあるため、あらかじめ売主と買主のどちらが負担するのかきちんと理解しておくことで、その後の資金計画を立てやすくなります。

今回は、不動産売却後の固定資産税について、基礎知識や計算方法と併せて解説していきます。

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納税義務者は1月1日時点の所有者

固定資産税の納税義務は1月1日時点の不動産の所有者に課されます。そのため、年度の途中で不動産を売却した場合でも、納税義務者は変わらない点に注意が必要です。1月1日以降に不動産を売却した場合、元の所有者である売主が、売却初年度1年分の固定資産税を支払う必要があります。

売主と買主による日割り清算

とはいえ、売却後は所有権がないにもかかわらず、このように売主のみに納税義務があるのは不平等といえるでしょう。そのため、実際は、売主と買主の話し合いによって負担割合を決めることが一般的です。この場合多くは、固定資産税を日割り清算し、引渡し後から年度末までの固定資産税額を買主が売主に対して支払います。

このように、売主と買主の双方が固定資産税を払う場合であっても、法律上の納税義務者は売主のままで変わりません。そこで、買主は分担した引渡し以降の固定資産税を売主に支払うことで負担の割合に偏りが出ないようにしています。 

日割り清算を行う際に重要となるのが、起算日です。起算日とは、固定資産税を日割り清算する際に必要な、売主と買主の所有期間を決める基準となる日を指します。起算日は各自治体によって、それぞれ1月1日と4月1日の2種類に分かれるので、事前によく確認しておきましょう。

関東では1月1日、関西では4月1日とされる傾向にあります。たとえば、起算日が1月1日の場合は、売主は1月1日から買主への引渡し日までの課税を負担し、買主はその後の12月31日までを負担します。一方、起算日が4月1日の場合は、売主は4月1日から買主への引渡し日まで、買主はその後、翌年度の3月31日までを負担します。

このように、起算日が異なる場合、負担する固定資産税の額も変わるため、注意が必要です。日割り清算を行う際には、後のトラブルを避けるためにも、起算日を契約書に明記し、売主と買主の双方で確認をとりましょう。

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固定資産税清算金とは?

固定資産税清算金とは、不動産の売買を行うときに、不動産にかかるその年の固定資産税や都市計画税を、所有日数に応じて買主が売主へ支払うお金のことです。不動産を売買するとき、買主は、固定資産税清算金を売主に支払い、売主と固定資産税の負担を分けることが一般的です。この固定資産税清算金ですが、「どのようなお金で、いくらかかるのか」知らない方が多いのではないでしょうか?

不動産売買の際に買主が支払う

売主は物件を引渡す前日までの分の固定資産税を支払い、買主は、引渡し日から年度末分までの固定資産税を支払います。特に、買主が売主に支払う分の金額のことは、譲渡日から年度末まで期間がすぎていない分の固定資産税に相当する金額のため、「未経過固定資産税等に相当する額」と呼ばれています。

この固定資産税清算金は、不動産の購入を行ったときに一度売主に支払うものです。翌年以降は、固定資産税を買主が支払います。

売主は、買主から固定資産税清算金を受け取ったら、譲渡所得の一部として確定申告の手続きを行いましょう。

売買契約書に固定資産税精算金の支払いに関する記載がある場合、支払っていないと債務不履行や契約解除につながってしまう恐れもあるので注意が必要です。

土地・建物売買契約書と家の模型

義務ではないが慣例になっている

固定資産税清算金の支払いは、法律的に規定はありません。しかし、不動産取引の契約において、売買契約書のなかに必ず条項として組み込まれています。

また、都市計画税は、都市計画の区域内に不動産を持っている人に毎年課される地方税で、都市計画区域外の土地や家屋にはかからない税金です。そのため、不動産の所在地により、固定資産税精算金に、都市計画税が含まれる場合があります。都市計画税を支払わなければならない場合は、固定資産税同様、売主と買主で日割り計算されることが一般的です。

固定資産税清算金はいくら支払うの?

固定資産税や固定資産税清算金がどういうものなのかが分かってくると、具体的にどのくらいの費用を支払う必要があるのか気になりますよね。ここでは、固定資産税清算金の計算方法をご紹介するとともに、具体的な負担額のシミュレーションも行います。

電卓を持つ女性

固定資産税の価格の決まり方

固定資産税の税額は、「固定資産税評価額×標準税率(1.40%)」で算出できます。

多くの自治体では、1.40%を標準税率として使用しています。しかし、固定資産税は地方税のため、住んでいる地方によっては採用されている税率が異なる場合があります。所有している固定資産がある自治体のホームページを見て、確認するようにしましょう。

固定資産税評価額は、都(23区の場合は、各区)や市町村がその不動産を評価して決める価格で、固定資産税の基準とされています。

市町村の課税課や東京都の場合、固定資産税評価額は、都税事務所から届く納税通知書に同封されている「課税明細書」を確認してみましょう。「課税地積又は課税床面積(㎡)」という欄に、金額が記載されています。要件を満たしていると、減額制度や特例が適用されるので、金額が安くなっていることもあります。減額制度や特例は、固定資産のある自治体のホームページを見たり、電話で問い合わせたりして確認しましょう。

なお、固定資産税の税額は毎年ずっと同じではありません。土地と家屋の評価額は3年ごとに見直しがされるため、固定資産税の税額もそれに伴って変動します。

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負担額をシミュレーション

それでは、次の条件で固定資産税精算金の負担額のシミュレーションをしてみましょう。
・起算日 1月1日
・引渡し日 5月16日
・固定資産税 10万円
・都市計画税 5万円

5月16日に不動産の引渡しを行ったとすると、1年のうち、売主の所有日数は135日となります。固定資産税精算金は、固定資産税と都市計画税を合わせた額なので、15万円となり、売主と買主の負担額は次のような計算で求められます。

売主 15万円 × 135日 / 365日 = 5万5,479円
買主 15万円 – 5万5,479円 = 9万4,521円

この場合、買主は、売主に9万4,521円を、残代金決済日に不動産の売買代金として支払う必要があります。残代金決済日は、売買代金から、手付金を引いた残りの分を支払う日を指しています。

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固定資産税を支払う際の注意点は?

不動産売買では一般的に、固定資産税清算金を買主から売主に支払うということを上記でお伝えしてきました。ここでは、実際に固定資産税清算金を支払う場合、また受け取る場合に注意しておきたいことを解説します。

税金ではなく売買代金

固定資産税清算金は税金ではなく、売買代金の一部と見なされます。というのも、固定資産税の納税義務者は、その年の1月1日に不動産を所有している人です。つまり、税金を納めるのは売主となるため、固定資産税清算金は売主の譲渡所得として売買代金に計上されます。

固定資産税清算金には消費税がかかる場合も

上記でもお伝えしたように、固定資産税清算金は売買代金の一部となるため、消費税の課税対象となります。しかし、課税される場合とそうでない場合があるので、注意が必要です。

固定資産税清算金に消費税が課税されるのは、売主が課税事業者である場合です。個人がマイホームを売却する場合には、消費税の課税対象にはなりません。ただし、個人であっても賃貸収入を得ていた物件を売却する場合には固定資産税清算金は消費税がかかります。また、消費税が課税されるのは建物のみで土地には課税されない点にも注意しましょう。

チェックリストとボールペンと不動産

買主に支払いを拒否される場合も

先ほどもお伝えした通り、固定資産税清算金の支払いは、不動産取引を行ううえでの慣例とされているものです。そのため、支払いの義務はないので、支払いを拒否される場合があります。そのような場合は、不動産会社に仲介を依頼しましょう。

正しい知識を持って気持ちのよい取引を!

住宅についての打ち合わせ風景

不動産売却を行う際は、固定資産税の基本を理解しておくことが大切です。また、売主と買主で固定資産税の負担割合を決める場合には、売買契約書にその旨が記載されているか確認しましょう。売買契約前に負担額を知りたい方は、仲介に入る不動産会社に相談すると計算してもらえるでしょう。

不動産売却における固定資産税の取り扱いには、ほかにも、条件によって支払う金額が変化するといった複雑な点が多くあります。そのため、売却のパートナーには、信頼できて相談しやすい不動産会社を選ぶことが大切です。

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宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/