「借りられるローン」と「返せるローン」の差額を計算する方法

2016.11.12

家を購入する際には、ほとんどの方が住宅ローンを利用しますが、みなさんは「借りられるローン」と「返せるローン」の違いをご存知でしょうか。

「借りられるローン」というのは、あなた自身が金融機関などから借り入れできる「借り入れ可能額」のことであり、そして「返せるローン」というのは毎月の家計収支(=収入-支出)のなかで、どれほどの額を借り入れしたローンの返済にあてられるかという「毎月返済可能額」のことです。

多くの方は、家を購入する際の予算として、「借りられるローン」を基準に考えます。しかし、実際には、生活をしながら無理なく毎月ローンを返済していくということが極めて重要ですので、「返せるローン」をベースに予算を考えていく必要があります。

つまり、家を購入する際には「借りられるローン」と「返せるローン」は同じではないという公式を頭に入れておくことが重要なのです。

そうなると、「返せるローン」だけでは希望通りの家が買えないという方も多いでしょう。ほとんどの方は、自分がいくら借りられるのかという「借りられるローン」を前提で予算を考えているからです。

ただ、そこであきらめることはありません。このギャップを埋めるために、「頭金」があります。

どれくらいの頭金が必要なのか、また自分たちが考えている予算の家と、買える家の間にどれくらいのギャップがあるのを知るための公式があります。大事なのは「借りられるローン」と「返せるローン」の差額を知ることなのです。

では、具体的にこの公式を用いて計算をしてみましょう。

まず、年収600万円の方が、金利3%で35年の返済期間だとして、いったいどれほどのローンを借り入れできるのかを算出してみましょう。

毎月返済可能額÷100万円あたりの返済額×100万円=「借りられるローン」

毎月返済可能額は、年収負担率がベースになります。これは年収に対して、返済額の割合を示す基準で、一般的に年収の25%以内とされています。年収600万円で年収負担率は25%として12カ月で割ると、12万5,000円という毎月返済可能額がでます。

100万円あたりの返済額というのは金利と返済額によって定められており、金利3%で35年の返済期間の場合は、3,848円となります。これを先ほどの公式にあてはめると、「借りられるローン」が約3,248万円と導き出されます。

12万5,000円(毎月返済可能額)÷3,848円(100万円あたりの返済額)×100万円
=約3,284万円(借りられるローン)

優先すべきは「返せるローン」
差額を埋める「頭金」で「借りられるローン」へ

では、次に「返せるローン」です。こちらは税込みの年収ではなく、給料の手取りがベースになります。これはおおよそ80%と試算されることが多いです。年収600万円の可処分所得(手取り年収)は80%として約480万円。ボーナスが2カ月分で年2回とすると、毎月の手取り収入というのが約30万円程度と導き出されます(480万÷16ヶ月)。

そこで仮に、生活費が15万円。教育費の積立が2万円。さらに、これから購入する物件の管理費や積立金、駐車場、固定資産税などを4万円程度に見積もり、さらに予備費として1万円を計上していくと、22万円となります。

つまり、8万円というが家計収支(毎月返済額)、つまりローン返済にあてられることができるというわけです。

毎月返済額から借入可能額の目安というのは、さまざまな金融機関が試算をしているので、そちらを参考にしていただくと、月8万円の返済可能額だと、約2,070万円となります(先ほどと同じく金利3%、返済期間35年、ボーナス返済なしの場合)。

以上の公式から、年収600万円の方の「借りられるローン」は約3,248万円、「返せるローン」は約2,070万円と試算され、両者の間には1,178万円のギャップがあるというわけです。

この公式は家を買ううえでの、理想と現実のギャップを浮かび上がらせるものでもあります。無理のない返済をするには、「返せるローン」をベースにして予算を組んでいただきたいと思います。

とはいえ、「借りられるローン」と「返せるローン」の差額を埋めるほどの「頭金」が用意できれば、「借りられるローン」をそのまま予算とすることもできます。また、いまは年収600万だが、年齢によっては年収が上がっていくということもありますので、返済可能額に余裕ができるという人もいるでしょう。

夫婦が共働きの場合、返済可能額が上がりますので当然、購入予算も上がります。

ただし、これらはあくまでも目安です。実際には、子供の成長による教育費の増加や、親の介護など不測の事態も起こり、支払いが苦しくなるケースもあります。また、老後資金の確保といった点からも、自分たちのライフプランをふまえて、無理のない返済プランを組み立てましょう。