イギリスのEU離脱で住宅ローンの金利がさらに下がる?

目次
  1. 長期固定金利の住宅ローン「フラット35」と変動金利の見極め
2016.09.05

2016年6月23日にイギリスが国民投票によりEU(欧州連合)からの離脱を決めたのは、まだ記憶に新しいことと思います。その後、イギリスでは首相が変わり、新しく就任したテリーザ・メイ首相はドイツのメルケル首相との会談で、年内のEU離脱手続き開始は行わないことで了解を得ました。

これによりEU離脱騒動はいったん落ち着いた感がありますが、その一方で、いまだにその影響による変動が続いているものがあります。それが日本の長期金利です。イギリスやヨーロッパから遠く離れた日本で、何が起こっているのでしょうか。

当サイトの7月24日配信の記事「マイナス金利導入、住宅ローン金利大幅低下でいまが買いどき?」でも少し触れましたが、イギリスのEU離脱により、ただでさえ超低金利が続いている日本の住宅ローンの金利が、さらに下がる可能性が高くなりました。

これは、EU離脱後のイギリス経済に対する不安から、機関投資家の間で英ポンド離れが進み、その資金がより安全な先進国の通貨に流れ込むことになり、日本の国債などが大量に買われることが予想されたからです。そうすると日本の長期金利が低下し、それにより住宅ローンの金利もさらに下がることになるのです。

実際、6月末に発表された7月の住宅ローン金利は、多くの大手銀行で過去最低の数字を更新しました。これを受けて、ネット銀行などそのほかの金融機関も金利が大幅に下げられることになりました。

長期固定金利の住宅ローン「フラット35」と変動金利の見極め

さらに、長期固定金利の住宅ローン「フラット35」の金利も7月に入って下がり、35年の固定金利は0.93%(借入期間21〜35年/融資比率9割以下)と1%を割り、20年の固定金利も0.85%(借入期間15〜20年/融資比率9割以下)と、史上最低を記録しました。

8月に入ると、大手銀行の10年固定金利がさらに0.05〜0.1%下がり、フラット35も20年固定金利は0.02%下がって0.83%に、35年が0.03%下がって0.9%になりました。

住宅ローンの固定金利と変動金利はそれぞれにメリット・デメリットがありますが、ここまでくると、金利は固定に較べて低いけど将来的に金利が上がる可能性もある変動金利より、ほとんど底値ともいえる今の固定金利でローンを組んでしまったほうがいいのではないかという考え方も出てきます。

その一方で、金利の変動に影響のある別の動きも出てきています。

安倍首相が7月27日に、デフレ脱却に向けた新たな経済対策の事業費として28兆円超を出すことを発表し、2016年秋の臨時国会での成立を目指すとしました。その財源には建設国債の追加発表も検討されており、国債の発行により長期金利が上がり、住宅ローンの金利も上がる可能性があります。

また日銀が7月29日の金融政策決定会合において、これまでの金融緩和策の効果や問題点を9月の会合で検証することを決めたことから、市場では「マイナス金融政策を見直すのではないか」という予測から長期金利が高騰しています。

これを受けて日銀は8月4日にすぐさま会見を開き、岩田規久男副総裁が「金融緩和の程度を縮小することはありえない」と市場の動揺を抑えようとする発言を行っていますが、これら一連の動きによる住宅ローン金利への影響は避けられそうもありません。

イギリスのEU離脱決定をきっかけに始まった住宅ローン金利のさらなる低下も、もしかしたらここで打ち止めとなり、さらには上昇に転じる可能性もあります。

上昇するにしてもまだわずかな動きであると思われますが、金利の変動には、これから目が離せません。