高齢者が賃貸住宅に住むコツや選び方は?

高齢者(シニア)は住宅の賃貸契約を敬遠されてしまうこともありますが、スムーズな賃貸契約のコツや、住宅選びのポイントを押さえれば入居しやすくなります。今回は、高齢者が賃貸住宅に住むうえでのポイントや高齢者専用の賃貸住宅についてお伝えします。

目次
  1. 高齢者は賃貸住宅を借りられない?
  2. 賃貸契約をスムーズに進めるコツ
  3. 高齢者が賃貸住宅を選ぶポイント7つ
  4. 高齢者専用の賃貸住宅がある
  5. 今後のライフプランも考えながら物件を選ぼう!
2023.02.28

高齢者は賃貸住宅を借りられない?

老後の暮らしのなかで、お金と並んで気になるのが住まいのこと。高齢者のなかには持ち家のない人もおり、令和4年版高齢社会白書※1によると、高齢者の2割弱が賃貸住宅に住んでいることが分かっています。

持ち家の人のなかにも、子どもが巣立ったり、配偶者に先立たれたりして、家が広過ぎるため賃貸住宅に住み替えたいという人もいるでしょう。しかし、賃貸住宅への入居を希望している人にとって気になるのは「賃貸契約を断られないか」という点ではないでしょうか?

実際、高齢者には賃貸契約を敬遠されやすいというリスクがあります。高齢者が賃貸契約を敬遠されやすい理由について見ていきましょう。

悩むおじいさん

事故、孤独死が起こりやすい

一般的に、年齢を重ねるにつれて認知症になりやすい傾向がありますが、それによって火の不始末や水の出しっぱなしなどのトラブルが起こるリスクが高まります。貸主は、このような事故が起きた場合に対応しなければいけないため、高齢者との契約を敬遠する場合があります。

また現在、昔に比べて一人暮らしの高齢者は増加傾向にあります。※2同居人がいないと異変に気付きにくいため、孤独死の心配もあるのです。借主が孤独死をした場合、貸主は、遺品の処理の手間や、いわゆる事故物件として資産価値が下がるリスクなどの負担を負うことになります。

経済力が低い

高齢者の賃貸契約では、経済力もネックになります。その原因として、一般的には60~65歳で定年退職するため、60代以上は収入が少なくなることが挙げられます。そのため、収入の少ない傾向にある高齢者は、家賃の支払い能力が低いと見なされ、貸主側から敬遠されてしまうことがあるのです。

しかし、契約の際に収入や貯金が十分であるという証明ができる場合、契約が可能になることがあります。契約前に不動産会社と相談してみるとよいでしょう。

保証人がいない

高齢者には、保証人となる家族がいないことがあります。通常、賃貸住宅を借りる際には、家族を保証人として立てる必要がありますが、高齢者には、若い世代に比べ、両親や兄弟姉妹といった親族を保証人として立てられない場合も少なくありません。そのため、保証人を親族のみに限定した物件を契約する際には不利になる場合があります。

上記のように、高齢者には賃貸住宅を借りにくい条件がいろいろあります。それでも、貸主に「安心して貸し出せる」と判断してもらえれば賃貸契約は可能です。賃貸住宅への入居を希望する人は、まず賃貸契約をスムーズに進めるコツを知っておきましょう。

住宅書類にはんこを押す人

賃貸契約をスムーズに進めるコツ

高齢者が賃貸住宅の契約をスムーズに進めるには、貸主側の不安要素をなるべく取り除くのがコツです。上で挙げたような、健康面と金銭面の問題を解決する方法をご紹介しましょう。

家族の協力を得る

家族がいる場合は、なるべく近所に住むようにするとよいでしょう。近所に家族がいることで、体調を崩した際にすぐに家族が駆けつけられるというメリットがあります。これにより、貸主や管理会社が高齢者と賃貸契約する際に感じる健康面の不安を軽減できます。

また、働いている子どもたちがいれば、連帯保証人になってもらうのもよいでしょう。家族のサポートを受けることで、経済的不安も払拭できますよ。

家賃債務保証を利用する

連帯保証人になってもらえる身内がいない場合は、保証会社を利用しましょう。保証会社を利用することで契約をスムーズに進めることができます。

特に、高齢者の場合は、家賃債務保証を利用することがおすすめです。家賃債務保証とは一般財団法人高齢者住宅財団が行う「居住支援サービス」のことを指します。このサービスにお金を払うことで保証会社が連帯保証人になるため、身内に頼らずに家を借りることができます。ただし、この保証制度を利用できる住宅は、財団と基本約定を締結している賃貸住宅に限られるという点に注意が必要です。

以上のコツを踏まえると、高齢者でも賃貸契約がしやすくなるはずです。さらに、物件選びの際は高齢者が安心して住めるポイントを押さえることが大切になります。

高齢者が賃貸住宅を選ぶポイント7つ

高齢者が賃貸住宅を選ぶ際は、次に挙げる7つのポイントを重視しましょう。

[ 1 ] 家族が近くに住んでいる

賃貸契約をスムーズに進めるためだけでなく、自身が安心して生活を送るためにも、家族が近くに住んでいるエリアで家を探すのが基本です。家族が近くに住んでいることで、万が一健康を損ねたり、看病や介護が必要になったりしたときに、すぐに様子を見てもらいやすく、安心感があります。

[ 2 ] 医療機関が近い

高齢者の賃貸住宅選びでは、医療機関が近くにあることも重要です。高齢になるにつれ病院に行く頻度は高くなる傾向があります。頻繁に病院に行くことになる可能性を見越して、病院へのアクセスのよいエリアを選ぶとよいでしょう。

また、かかりつけ医がいる場合は、その近くを選ぶのもおすすめです。

車いすと家の置物

[ 3 ] 生活に便利な周辺環境が整っている

借りたい物件の周りに何があるのか把握することも大切です。駅やバス停、スーパーや銀行などが徒歩圏内にあるか事前に確認するとよいでしょう。高齢になると移動の負担が大きくなるため、暮らしに必要な施設はなるべく近いほうが理想的といえます。

[ 4 ] バリアフリーになっている

高齢者が日常生活を送る環境として望ましいのはバリアフリーの住まいです。バリアフリーの住まいとは、高齢者や体の不自由な人にとって、暮らしにくさの原因となるものを取り除いた家のことを指します。高齢者にとっては、室内でつまずいたり滑ったりしやすい場所のない家が理想です。具体的には、段差がないことや、手すりが設置されているといったことが挙げられます。

完全バリアフリーでなくとも、なるべく段差が少ない住まいを選びましょう。また、2階以上に住む場合は、エレベーターがあると安心です。

[ 5 ] 生活しやすい広さと間取り

高齢者の場合、広過ぎる住まいは掃除や管理の面で負担になる場合があります。そのため、自分にとって適切な広さの住まいはどのくらいか、考えてみましょう。

また、生活動線がシンプルであることも重要です。生活動線が複雑な間取りは、室内の移動の際に負担になります。特に、寝室やリビングからトイレや浴室など水まわりへの動線がシンプルかどうかを確認することが大切です。

[ 6 ] セキュリティ設備が充実している

高齢者だけで暮らす場合には、防犯設備がしっかりしている住まいが望ましいでしょう。これは、高齢者を狙った空き巣や強盗が多いためです。

具体的には、オートロックやTVモニター付きインターホンなどの設備がある物件や、常駐の管理人がいる物件を選ぶと安心でしょう。

[ 7 ] 家賃に無理がない

長く安心して暮らすためには、無理なく支払いができる家賃の住まいであることも大切です。貯蓄や年金などの収入と、固定でかかる支出を確認し、無理のない家賃設定を行いましょう。

高齢者専用の賃貸住宅がある

賃貸住宅のなかには、高齢者が安心して住める高齢者専用の賃貸住宅もあります。高齢者専用賃貸住宅は、高齢者向けなので、一般的な賃貸住宅よりも契約しやすいのが特長です。高齢者専用の賃貸住宅にはいくつか種類が存在します。

人の置物

高齢者(シニア)向け賃貸住宅

高齢者(シニア)向け賃貸住宅とは、介護を必要としない高齢者向けに作られた、バリアフリー化された住宅を指します。一般の賃貸住宅の場合、年齢や実収入がないことを理由に高齢者の入居を断ることもありますが、そうした心配なく高齢者が賃貸契約できるのが特長です。

ただし、高齢者(シニア)向け賃貸住宅を借りる際は、身元引受人が必要な点に注意が必要です。身元引受人がいない場合は、先ほどご紹介したような保証会社に相談してみるとよいでしょう。

高齢者(シニア)向け賃貸住宅には、老人ホームのような介護サービスや日常生活サービスはありませんが、緊急時に駆けつけてくれるサービスや健康相談サービスを備えた物件があります。物件によって家賃や設備、付加できるサービスなどに違いがあるので、自分が優先したい要素を決めて絞り込むことをおすすめします。また、介護が必要になった場合でも、外部の介護サービスを利用することで、継続して住むことができます。

高齢者(シニア)向け賃貸住宅のメリットは、生活支援のサービスがない分、自由に動けるという点でしょう。そのため、食事や外出時間などに制限を受けず、好きなように過ごしたいという人におすすめの住宅です。

シニアと住宅

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅とは、要支援の人や、要介護度の低い人を受け入れる賃貸住宅のことです。略して「サ高住」とも呼ばれています。

サービス付き高齢者向け住宅の登録基準は以下の通りです。

・建物全体が完全にバリアフリー化されている
・専用部分の床面積が原則25㎡以上
・台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を備えている(共有部に備え付けられている場合も可)

家と車椅子の模型と杖

また、サービス付き高齢者向け住宅には、専門家による安否確認や生活相談のサービスが付きます。なかには、身体介護や生活支援、リハビリなどを受けられるところもありますが、住まいによって受けられるサービスも変わるので、確認するとよいでしょう。

また、サービス付き高齢者向け住宅も高齢者(シニア)向け賃貸住宅同様、介護が必要となっても、併設の介護事業者や外部の介護サービスを利用することで住み続けることが可能です。

さらに、サービス付き高齢者向け住宅では一般的な賃貸住宅と違い、住み続けた場合でも契約更新の必要がなく、再契約の際にかかる礼金や更新料もありません。ただし、月額費用は一般の賃貸住宅より高額になりやすいため注意が必要です。

一部のサービス付き高齢者向け住宅では、終身建物賃貸借契約を行っているものもあります。終身建物賃貸借契約とは、借主が死亡したときのみ賃貸契約を終了できる制度です。この制度を利用することで、最期まで安心して住み続けられます。

●サービス付き高齢者向け住宅に関する記事はこちら
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の費用は?料金相場を解説!

今後のライフプランも考えながら物件を選ぼう!

物件は今の希望や状態だけで判断せず、これからのことを想像して借りることをおすすめします。今は元気であっても、介護が必要になる可能性まで考慮することが大切です。将来を視野に入れつつ、未来のライフプランに沿った賃貸住宅を探して、長く安心して暮らせる物件を見つけましょう。

また、入居審査に不安を感じる場合は、「シニア相談可」としている物件を探すと安心です。また、1人で高齢者向け賃貸住宅を見つけるのが難しいと感じる人は、一度不動産会社に相談するとよいでしょう。

●シニア向け賃貸住宅についてのご相談はこちら
シニア向け賃貸住宅とは?

※1出典:令和4年版高齢社会白書,内閣府
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/zenbun/pdf/1s2s_03.pdf
(最終確認:2023年1月23日)

※2出典:令和4年版高齢社会白書,内閣府
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/html/zenbun/s1_1_3.html
(最終確認:2023年1月23日)

三井不動産株式会社 ケアデザイン室

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