登記識別情報とは?不動産登記の基礎知識を分かりやすく解説

不動産登記をすると発行される登記識別情報。登記が完了した後に番号を通知する書面が届き、「これは何だろう?」と思った方もいるのではないでしょうか?今回は、登記識別情報についての基礎知識と、情報管理の仕方について解説します。

目次
  1. 登記すると発行される登記識別情報
  2. 登記識別情報の基礎知識
  3. 登記識別情報の受け取り・確認方法
  4. 登記識別情報を発行した際の管理や対処の仕方とは?
  5. 登記識別情報を理解し、きちんと管理しよう!
記事カテゴリ 購入
2023.09.22

登記すると発行される登記識別情報

不動産登記をすると発行される、登記識別情報。不動産の取得や名義変更、抵当権の設定登記をした後に、番号を通知する書面が届き「これは何だろう?」「何に使うのだろう?」と戸惑った方もいるのではないでしょうか?

登記識別情報とは、その不動産の登記名義人本人であることを、公的に証明する情報のことです。不動産の権利登記をした際、登記名義人のみに12桁のアラビア数字とその他の符号の組み合わせからなる文字列が通知されます。登記識別情報は、パスワードとなる文字列自体が重要な秘密情報です。

平成17年の不動産登記法改正前は、文書形式の「登記済証(権利証)」でしたが、オンラインでの申請の際に使用できないため、改正後は「登記識別情報」に変更されました。

今回は、登記識別情報に関する基礎知識と、情報管理の仕方についてご説明します。不動産の取得・相続にかかわる登記や抵当権抹消登記などを申請した方、これから登記をする予定のある方は、登記識別情報の概要を事前に知っておきましょう。

登記識別情報通知書類と印鑑

登記識別情報の基礎知識

書面かオンラインで通知される

登記識別情報は、書面で登記申請をした場合は書面の郵送で、オンラインで登記した場合はオンラインでほかの人に閲覧されないようにして通知されます。このうち、書面によって登記識別情報・登録名義人の情報・不動産番号・登録の目的といった情報を通知したものを「登記識別情報通知書」といいます。

登記識別情報は、不動産及び申請した登記名義人ごとに通知されるので、1人で所有する土地と建物を登記した場合に通知されるのは2つの文字列です。また、1つの不動産の所有者が複数人いる場合は、申請したそれぞれの所有者に文字列が通知されます。

権利に関する登記を申請する際に使用する

登記識別情報は、不動産権利に関わる登記をする際に使用します。具体的には以下のような登記に必要です。

・所有権移転登記(売却や贈与を行うとき)
・抵当権設定、抹消登記(住宅ローンの借入・完済手続きのとき)

相続登記の場合、亡くなった本人の登記識別情報は原則的に不要です。相続登記を行うと、新たに登記識別情報が通知されますが、通知されるのは相続登記を行った申請人のみです。そのため、複数人で相続する場合は、登記識別情報が通知されない相続人が出ないよう、相続人全員で申請を行うようにしましょう。

抵当権や所有権移転登記、相続については以下の記事で詳しく解説しています。

●抵当権に関する記事はこちら
抵当権とは?基礎知識から抹消手続きまで分かりやすく解説

●所有権移転登記に関する記事はこちら
所有権移転登記とは?かかる費用と必要書類、手続き方法について解説

●不動産の相続に関する記事はこちら
不動産を相続することになったら?手続きの流れとよくある疑問を解説

登記完了証とは異なる

登記識別情報通知書とよく間違えられる書類に、「登記完了証」があります。登記完了証とは、登記の種類にかかわらず、手続きが完了した証明として必ず発行される書類です。登記後に登記完了証が必要になることはありません。登記完了証には、不動産の権利者であることを証明する効力はないので注意しましょう。

パソコンで登記を行う女性

登記識別情報の通知の有無は選択できる

不動産登記を行う際には、登記識別情報を通知するかどうかを選択できます。

たとえば複数の不動産を所有している場合、すべて通知を選択すると、複数の重要情報を管理するリスクがかかってしまいます。そのような状況を避けるために、登記の際に登記識別情報の通知を希望しないといったことも可能です。ただし、登記識別情報は登記を行ったときにのみ発行されます。通知を希望しない選択をする際には、後から発行してもらうことができないことに注意しましょう。

ちなみに、登記識別情報がなくとも、登記の申請は可能です。登記識別情報なしで登記申請できる方法を3つご紹介します。

司法書士に本人確認をしてもらう
司法書士に本人確認情報書類の作成を依頼し、完成した書類を登記申請書とともに提出することで、登記識別情報がなくとも登記できます。この場合、司法書士への依頼費用がかかる点に注意しましょう。

法務局の事前通知制度を利用する
登記識別情報を記入せずに登記申請をすると、法務局から本人確認のための書類が届きます。その書類に捺印をして返送すれば、登記識別情報を発行していなくても登記が可能です。

ただし、この方法は通常の登記申請よりも時間がかかるうえ、申出期間内に本人からの申出が法務局に届かなかった場合には、登記申請自体が却下されることになります。また、所有権移転登記や抵当権設定登記においては、この制度を利用できない場合もありますので注意しましょう。

公証人による認証を受ける
認証とは、その書類が本人の意思によって作成されたことを公証人が証明することをいいます。認証を受けるためには、まず公証役場において公証人の目の前で登記関係書類に署名捺印をすることが必要です。その後、認証を受けた書類を登記申請に利用することで、登記が可能になります。

ちなみに、公証役場とは公的な書類を専門に作成している機関のことで、市町村の役場とは異なります。また、この方法での登記には公証人費用がかかることにも注意が必要です。

事務所で仕事をする司法書士

登記識別情報の受け取り・確認方法

登記識別情報の受け取り・確認方法は、登記申請の仕方によって異なります。オンラインで登記する場合と書面で登記する場合のそれぞれについて、申請から通知までの流れをご説明しましょう。

登記をオンライン申請する場合

登記申請をオンラインで行った場合、登記識別情報は原則的に「登記・供託オンライン申請システム」を通して通知されます。登記・供託オンライン申請システムは、登記所の窓口へ出向かずに登記申請や公文書の取得ができるサービスです。

登記のオンライン申請は、この登記・供託オンライン申請システムから行います。「申請用総合ソフト」を登記・供託オンライン申請システムのホームページからダウンロードし、ファイルに必要事項を記入すれば登記申請が可能になります。登記申請の際には、登記識別情報の交付を希望しておきましょう。

登記手続き終了後にもう一度申請用総合ソフトにアクセスすることで、登記識別情報を自動的に取得できます。取得した登記識別情報は、申請用総合ソフトの「処理状況表示」画面から「公文書」ボタンをクリックすることで確認可能です。

なお、申請の際に登記識別情報の書面での交付を希望した場合、オンラインシステムからダウンロードすることができなくなるので注意しましょう。

PCと登記申請書

登記を書面で申請する場合

登記を書面で申請する場合、申請書類上で希望した送付場所に登記識別情報通知書が届きます。申請の際、任意の場所に申請書類の郵送を希望する旨と送付先の区分を記載しておきましょう。以下は記載例です。

〈例〉
送付の方法により登記識別情報通知書の交付を希望します。
送付先の区分:申請人の住所

住所:〒000-0000
〇〇県〇〇市〜

なお、記載する住所は、自分のところへ郵送して欲しい場合は自分の住所、担当の司法書士のところへ郵送して欲しい場合は、送付先の区分を「資格者代理人の事務所」として司法書士の事務所の住所を記載しましょう。

登記識別情報通知書は本人限定受取郵便、もしくは書留郵便で届きます。

登記識別情報を発行した際の管理や対処の仕方とは?

登記識別情報は先にお伝えした通り、重要な情報です。発行後、登記識別情報を取り扱ううえでの注意点や、もしものときの対処法をご説明します。

不動産登記手続きをする男性

文字列を知られないようにする

12桁の文字列は厳重に管理し、情報が漏れないように注意しましょう。正しい文字列であれば、手書きのメモやコピーした書面でも、不動産の権利者であることを証明できます。そのため、文字列を他者に知られずに登記識別情報通知書を保管することが重要です。

登記識別情報通知書には12桁の文字列が見えないようにシールが貼られています。シールは一度はがすと元に戻すことができないようになっています。他者に文字列を知られないためにも、登記識別情報を使用する必要性がない限りは、シールを開封しないようにしましょう。

紛失・盗難の際は失効手続きを行う

万が一、登記識別情報を紛失してしまったり、誰かに見られてしまったりした場合は、法務局の窓口で「登記識別情報の失効申出」を行いましょう。情報を無効化することで、悪用を防げます(文字列の再発行や変更はできません)。

登記識別情報を失効させた後に登記が必要になった場合は、司法書士に本人確認をしてもらうか、法務局の事前通知制度を利用して、登記名義人であることを証明してください。

登記識別情報を理解し、きちんと管理しよう!

ここまで、登記識別情報の基礎知識と、管理上の注意点を解説してきました。登録識別情報は、不動産の権利を証明する重要な情報です。今後、相続や不動産売買などで登記を行う予定がある方は、登記識別情報の管理方法について事前に考えておきましょう。

三井のリハウスでは、登記のほかにも不動産売買に関する疑問・ご相談にお答えしています。無料査定や、不動産売買のサポートも行っていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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山本直彌

さくら事務所 マンション管理士。マンション管理士、管理業務主任者、マンション維持修繕技術者、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。マンション・ビル管理、不動産仲介、マンション管理コンサルタントなど、不動産の多岐にわたる業務に従事している。
https://www.sakurajimusyo.com/