不動産査定の価格とは?査定価格の算出方法を解説

家や土地などの不動産を売却する際には、不動産査定を依頼し「売り出し価格」を決める必要があります。今回は、不動産会社が提示する査定価格との違いや、売り出し価格を決定する際の注意点をご紹介します。

目次
  1. 不動産査定の価格とは?
  2. 不動産の査定価格はどう決まる?
  3. 査定価格と売り出し価格は違う
  4. 売り出し価格を決める際の注意点
  5. 不動産会社選びも大切!
2023.01.27

不動産査定の価格とは?

不動産査定の価格とは、不動産会社が不動産を客観的に評価し、3か月程度で成約にいたると見込まれる金額を設定したものです。

マンションや一戸建て、土地などの不動産を売却する際には、いくらなら売れそうかという売り出し価格を決める必要があります。「できるだけ高く売りたいけど、価格設定が高過ぎるとなかなか売れないかも…」そのようなときに参考になるのが、不動産査定の価格です。

今回は、不動産の売却を検討している人や、自宅がいくらで売れるのか知りたい人のために、不動産査定の価格の算出方法や不動産の売り出し価格を決める方法、注意点などを解説します。

不動産の査定価格はどう決まる?

不動産査定の価格はどのように決められるのでしょうか?不動産査定には、主に簡易査定(机上査定)と訪問査定の2つがあります。以下では、この2つの違いや査定価格の算出方法をご紹介します。

悩む女性

簡易査定(机上査定)

簡易査定とは、物件を訪問せずに、過去の売買データや周辺の売り出し情報から物件の査定価格を導く方法です。

簡易査定では、書類を提出するか、あるいは専用サイトに物件の情報を入力し、おおまかな査定価格を算出します。必要な情報は物件の住所や間取り、面積、築年数などです。提出した物件の情報を以下のようなデータと比較し、査定価格を算出します。

・物件の立地
・類似するほかの物件の過去の売買記録
・周辺にある物件の現在の売り出し状況
・周辺エリアの相場価格帯
・市場動向

簡易査定は、不動産査定にかかる時間が短いのが特徴です。ただし、簡易査定で算出できる査定価格はデータに基づいた概算になります。実際に、不動産会社に物件を見てもらうわけではないので、精度は訪問査定のほうが高い傾向にありますが、「まず一度、気軽に査定してみたい」という人にはおすすめの方法といえるでしょう。

なお、三井のリハウスでは、Webだけですぐに結果が分かるAI査定サービスを行っています。

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マンションの売却価格を営業からの電話、店舗への訪問なしで知る!売却価格の簡単な決め方は?

データ入力

訪問査定(現地調査)

訪問査定は、実際に不動産会社の担当者が物件を訪問し、細かく調査して査定価格を算出する方法です。担当者は物件を訪問する際、以下のような項目を調査します。

・敷地の状態
・面している道路幅
・近隣の環境
・インフラの状態
・建物の状態
・設備の状態
・管理の状態 など

これらの状況を把握するために、訪問査定で行う現地調査には、登記簿謄本や建物の図面、敷地の測量図などの書類が必要です。訪問査定は、物件に関する特別な事情から、物件の状態まで細かく調査するため、簡易査定に比べて精度の高い査定価格を算出できることが特徴です。その分、簡易査定よりも訪問査定は時間や手間がかかります。

また、不動産査定を複数の不動産会社に依頼する場合、物件の査定価格は不動産会社によって得意な分野・エリアが存在するため、各会社によって異なることが一般的です。複数の会社に依頼する場合は、どこの査定価格が最も妥当なのかを比較して検討しましょう。

不動産会社に自宅を案内する女性

査定価格の算出方法

不動産の査定価格を算出する方法は、主に「取引事例比較法」「原価法」「収益還元法」の3つが挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

取引事例比較法
取引事例比較法は、「対象物件と近い条件を持つ物件が、市場でいくらで取引されているか」をもとに査定価格を算出する方法です。取引事例比較法で算出される価格は、以下の4つを考慮して決定されます。

●事情補正
事情補正とは、特殊な事情によって本来の相場とは異なる取引事例をできるだけ排除して査定する方法です。たとえば、転勤や離婚などの理由で不動産を売却したい人の場合、売却を急いでいるために相場より安い価格で契約してしまう人も多くいます。このような個人的な事情や特別な事情による取引事例を査定額の算出に加味しないように補正しています。

●時点修正
時点修正は、過去の取引事例を参考にする際に、その時期の取引相場を考慮して、現在の相場に合うように価格を修正することです。

●地域要因
該当する不動産のエリアが、周辺エリアと異なる環境でないかどうかが評価の対象になります。たとえば、該当の不動産の周辺の一部のエリアだけ、治安が悪かったり騒音が問題になっていたりした場合、その一部だけがほかの周辺エリアよりも安く売買されていることがあります。このような地域的な要因も加味して査定価格を算出することです。

●個別的要因
対象となる不動産の個別の違いを考慮して査定します。リフォームの有無や耐震性などがこれに該当します。

原価法
原価法は、「現在建っているものを壊し同じ建物を再建築する、あるいは同じような土地を造成したら、どれくらいかかるのか」という観点で算出する方法です。この方法は、一戸建てや土地の査定方法として用いられることが多い傾向にあります。

建物の場合は、同じ状況下で該当の不動産と同じものを建てる場合にかかる費用(再調達原価)がそれに値します。建物と土地の両方を算出する場合は、それぞれの再調達原価の算出が必要です。なお、対象とする不動産が土地だけの場合は、基本的には原価法は用いません。

収益還元法
収益還元法は、「対象とする不動産が将来どのくらいの利益を生み出すか」をもとに査定価格を算出する方法です。こちらは、主にアパートや賃貸マンションなどの収益物件の査定に使われます。

収益還元法には、1年間で対象の不動産から得られる純利益を不動産の収益性(還元利回り)で割る「直接還元法」と、対象物件が将来的に生み出す利益を現在の価格に変換する「DCF法」の2種類があります。直接還元法のほうが簡易的で、不動産業界で広く使われている手法です。

●不動産査定の算出方法に関する記事はこちら
不動産査定とは?売却時に必要な査定方法、流れ、注意点を解説!

電卓で計算をしている人

査定価格と売り出し価格は違う

不動産会社の担当者に査定価格を出してもらったからといって、それが実際の売り出し価格になるわけではありません。それでは、売り出し価格とはどのような価格を指すのでしょうか?ここからは、査定価格と売り出し価格の異なるところや、売り出し価格を決める基準についてご紹介します。

査定価格と売り出し価格の違い

査定価格は、不動産会社の担当者が調査によって集めた情報や自身の経験から「これくらいで売るのが適正だろう」と判断した価格です。一方で、売り出し価格とは、査定価格に売主の希望や抱える特別な事情などを加味して算出する価格のことを指します。

そのため、売主は査定価格で物件を売る必要はなく、査定価格を参考にしながら、最終的な売り出し価格を決定します。

家とお札と電卓

売り出し価格の基準は「期限」

売主が売り出し価格を決定する際、最終的な基準となるのは、売却期限です。売り出し価格を設定する際は、査定価格を参考にしながら売り出し希望価格の上限と下限を決めて、売却期限に応じて価格を調整するのがスムーズな方法でしょう。

査定価格は不動産会社の担当者から見て「この価格なら3か月以内に売れるだろう」と判断した額に設定されています。売主が、特別な事情を抱えてそれよりも早く売りたいと思っている場合、売り出し価格は査定価格よりも低く設定することがおすすめです。反対に、売却期間に余裕がある場合、査定価格よりも高く設定してもよいかもしれません。

家とカレンダー

売り出し価格を決める際の注意点

不動産査定で査定価格の相場を把握したら、次は売り出し価格を設定します。具体的に売り出し価格はどのように決定したらよいのでしょうか?ここでは、売り出し価格を決めるうえでの注意点を解説していきます。

「上限価格」と「下限価格」を設定する

売り出し価格は、適切な「上限価格」と「下限価格」を設定することを意識しましょう。上限価格とは、売主が「この価格で売りたい」と希望する価格です。もちろん売主が自由に決めることができますが、不動産会社が算出した査定価格と離れ過ぎていると売れにくくなってしまう恐れがあります。もし、査定価格に疑問を持つ場合は、担当者に算出方法や査定価格の根拠をきちんと確認したほうがよいでしょう。

下限価格とは、「売却に合意できる最終的な価格」です。売り出し価格を低く設定することで、早く売却できる可能性が高まります。一方で、早く売りたいからといってやみくもに価格を下げてしまうと利益が出ず、納得のいく売却ができない可能性があるので、注意しましょう。

特に住み替えのための不動産売却の場合には、下限価格の設定を慎重に行う必要があります。なかでも、住宅ローンの残債がある人にとっては売却額で完済できるかどうかが非常に重要な判断基準になります。また、住宅ローンを完済していたとしても、売却によって得たお金を新居の購入に充てることを考えている場合には、下限価格の設定が重要になるので、よく考えて価格を設定しましょう。

用意しておくとよい書類を準備する

不動産査定には用意しておくとよい書類が複数あります。具体的な書類は以下の通りです。

・身分証明書
・印鑑証明書・実印
・登記簿謄本(登記事項証明書)
・公図
・土地の測量図
・建物の図面(平面図・立面図)
・登記権利証(または登記識別情報通知)

公図や、土地または建物の図面はインターネットからの取得可能ですが、書類によっては入手に時間がかかるものもあります。そのため、不動産査定の直前になって焦ることがないように早めに準備するようにしましょう。また、不動産会社によって、必要な書類が異なる場合があるため、どういった書類が必要なのか事前に確認することをおすすめします。(不動産会社側で用意してもらえる書類もあります。)

売りに出される家

不動産会社選びも大切!

今回は、不動産査定の価格の算出方法や不動産の売り出し価格を決める方法、注意点などを紹介してきました。

不動産の売却をする際は、経験が豊富で適正な査定価格を出してくれる不動産会社を選ぶことが大切です。物件の最終的な売り出し価格は売主が決定しますが、参考にする査定価格が適正でなければ、売主の判断に影響が出てしまう恐れがあるからです。

もし、むやみに高い査定価格を提示された場合は注意しましょう。契約後、「売れないから」という理由でどんどん値下げされてしまうこともあります。査定価格が不自然だと思ったら、どのような査定方法で、どのような根拠で算出されたのかきちんと確認できると安心ですね。

専門家に相談する様子

不動産会社による査定は、簡易査定(机上査定)、訪問査定のどちらも無料で行ってもらえます。不動産会社に査定を依頼するときは、まず簡易査定や訪問査定で平均的な査定価格を提示している複数社に絞りましょう。そのうえで、説明や対応が誠実だと感じる会社を選ぶのがおすすめですよ。不動産売却は高額な取引になることが一般的です。安心して任せられる不動産会社を選んで、納得のゆく不動産売却にしてくださいね。

三井のリハウスでは、売却価格シミュレーションを行っています。住所や名前を入力するだけで、すぐにシミュレーションができるので、自分の所有している不動産の価格が気になる方は、一度、活用してみてはいかがでしょうか?

山本直彌

さくら事務所 マンション管理士。マンション管理士、管理業務主任者、マンション維持修繕技術者、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。マンション・ビル管理、不動産仲介、マンション管理コンサルタントなど、不動産の多岐にわたる業務に従事している。
https://www.sakurajimusyo.com/