不動産などの有形固定資産は使用を続けることで年々その価値が減少していきます。人間と一緒で「寿命」があるからです。ただし、中古物件の価格を考えるとき、不動産の場合は「寿命」ではなく「耐用年数」が用いられます。
あなたの大切な資産である不動産の耐用年数を知っていますか?今後住むうえでも、そして住み替えや売却を検討するうえでも不動産の耐用年数は大切なポイントになります。
この記事では、「耐用年数について知りたい」「今住んでいるマンションの老朽化が気になりはじめた」「売却を検討している」という人に向けて、耐用年数についてまとめています。また、耐用年数に深く関わってくる「減価償却」という考え方についても、計算法などを含めてわかりやすく解説していきます。
耐用年数とは
まず初めに耐用年数について説明していきます。不動産は建設後、年数が経つにつれ価値が下がっていくものと考えられています。不動産売買の際にはこれを前提とし、その物件にどれくらいの価値があるかを判定する材料として「耐用年数」という基準を用いています。
後ほどくわしく説明しますが、たとえばマンションに多い鉄筋コンクリート造では47年、木造の一戸建て住宅では22年という耐用年数が定められています。しかし、これは税務上の基準として設けられた年数であり、建物の寿命とは関係ありません。
耐用年数には3種類ある
不動産の耐用年数には、「物理的耐用年数」「法定耐用年数」「経済的残存耐用年数」という3つの考え方があります。それぞれの内容を見てみましょう。
物理的耐用年数
構造物の仕組みだけでなく、材質の品質が維持できなくなるなど、建物そのものが劣化して使用できなくなるまでの年数を示します。
法定耐用年数
3つのなかで最もよく目にするのがこの「法定耐用年数」で、それぞれの不動産価値を公平に算出するために国が設定したものです。不動産の種類や構造、用途によって一律に決められており、この法定耐用年数によって建物の価値を判定することが一般的になっています。
経済的耐用年数
対象となる不動産が実際に継続してどの程度使用できるか、不動産的価値がなくなるまでの期間を示すものです。劣化の程度や建物の機能だけでなく、今後見込まれる補修や修繕費用などによっても算定されます。
建物構造別 法定耐用年数一覧
不動産の耐用年数で最もよく利用される「法定耐用年数」は「法定」とあるとおり、税法で定められた年数です。下記の一覧表を見てみましょう。
建物構造別 耐用年数一覧表
建物の種類 | 構造・用途 | 耐用年数 |
---|---|---|
一戸建て | 木造・合成樹脂造のもの・住宅用 | 22年 |
中古一戸建て | 耐用年数を超えている、木造・合成樹脂造のもの・住宅用 | 4年 |
マンション | 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの・住宅用 | 47年 |
木造アパート | 木造モルタル造のもの・住宅用 | 20年 |
設備 | アーケード・日よけ設備・主として金属製のもの/そのほかのもの | 15年/8年 |
一戸建ての耐用年数
新築木造住宅の場合の耐用年数は22年。一方、中古木造住宅で、築年数が耐用年数を超えている場合は以下のように計算します。
木造の法定耐用年数22年×20%=4年
木造の法定耐用年数は22年ですから、中古の場合は4年ということがわかります。
また、築年数が耐用年数の一部を経過している場合は以下の計算式になります。
(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%=耐用年数
たとえば中古木造住宅で10年経過している場合の耐用年数は以下のとおりです。
(木造の法定耐用年数22年-経過年数10年)+経過年数10年×20%=14年
マンションの耐用年数
最も耐用年数が高いのは、おもに高層マンションで用いられる鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)と呼ばれる構造と、一般的なマンションで用いられる鉄筋コンクリート造(RC造)で47年です。
木造アパートの耐用年数
逆に最も短い構造が木造で、一般的には低層アパートで採用されている木骨モルタル造の建物構造で20年です。
設備の耐用年数
建物設備とは、電気設備や給排水設備などを指しています。たとえばアーケード・日よけ設備で主として金属製のものが使われている場合は15年、そのほかのものは8年と定められています。
参照URL:
https://www.keisan.nta.go.jp/h30yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensutatemono.html
2019/09/20時点
不動産売却時に重要な耐用年数と減価償却の関係
不動産の法定耐用年数について見てきましたが、これは不動産の「減価償却」を計算するために定められた年数です。そして、決算整理でこの費用を計上するときの勘定科目を「減価償却費」といいますが、減価償却とはどんな費用を指しているのでしょうか?
減価償却とは?
不動産を取得した際に取得費用(購入金額)を一定年数に分け、毎年の経費として計上するために用いられる計算方法です。この不動産を売却した場合は、物件の法定耐用年数を基準に減価償却費として計上することが必要経費として認められています。
減価償却が必要となる場面
ではどのような場合に減価償却の計算が必要になるのでしょうか。おもに2つのケースが考えられます。詳しく紹介していきましょう。
賃貸収入を得ている場合に経費計上できる
たとえば、アパート・マンション経営で得た賃貸料などの収入は、不動産所得として確定申告しなければなりません。このような場合は不動産所得用の経費として計上することができます。
建物売却時に経費計上できる
所有する不動産を売却して得た利益を「譲渡所得」といいますが、これには所得税や住民税がかかります。譲渡所得は売却で得た金額そのものではなく、その不動産を売却するまでにかかった費用を売れた価格から差し引いたものとなります。
■譲渡所得の計算式
収入金額ー取得費ー譲渡費用=譲渡所得
このため減価償却費を取得費として経費計上することができます。取得費とは不動産を買ったときの金額と買ったときにかかった費用の合計を指します。
不動産減価償却の計算方法
ここまで減価償却について理解するため耐用年数などについても見てきました。続いて、減価償却の計算方法を紹介します。
不動産を居住用に購入した場合は住宅ローン減税で節税できるため計算方法を知っておくとメリットがあります。投資用のケースを例にとってみましょう。
減価償却費の計算に必要な項目
不動産にかかる減価償却費は、「取得費×償却率」で算出することができます。
まずこの計算をするためには、「建物取得費」「建物と土地の割合」「物件の耐用年数」、そして「償却率」を知っておくことが大切です。順を追って確認していきます。
建物取得費
建物の取得費とは「不動産を買ったときの金額」のうちの「建物の分だけ」です。建物のように劣化しない土地に関しては減価償却できないからです。
建物と土地の割合
取得費を確認するために、建物と土地の取得費(購入価格)を分ける必要があります。ここで問題になりがちなのが、売買契約書や譲渡対価証明書などに建物と土地の金額の区別が記載されていない場合です。このようなケースでは、「固定資産税評価額」を参考に算出することができますが、購入する際に利用した不動産会社に確認することをおすすめします。
物件の耐用年数
不動産の耐用年数の算出には、国税庁の「耐用年数(建物・建物附属設備)」を確認する必要があります。おもな法定耐用年数は前述したとおりです。
償却率
償却率は「取得価格の何%まで、その年度に経費算入していいか」という割合です。この償却率は「法定耐用年数」によって決まります。耐用年数をもとに国税庁の「減価償却資産の償却率表」から償却率を調べます。
1億円の一戸建てを売却する場合の計算方法
減価償却費の計算方法について説明してきましたが、実際の例を見てみましょう。たとえば、1億円の中古一戸建てを売却する場合の減価償却費を計算してみます。この物件は仮に、土地付き築年数10年の鉄筋コンクリートとしましょう。
「耐用年数(建物・建物附属設備)」によれば、鉄筋コンクリートの耐用年数は47年ですが、築年数が耐用年数の一部である10年が経過しています。耐用年数は何年になるでしょうか?再度計算式を見てみます。
(耐用年数-経過年数)+経過年数×20%=耐用年数
この式に該当する数字を当てはめてみましょう。
37年(鉄筋コンクリート耐用年数47年-築年数10年)+2年(築年数10年×20%)=39年
この中古一戸建ての耐用年数は39年ということがわかりました。この数字をもとに減価償却費を計算します。「減価償却資産の償却率表」によると、耐用年数39年の償却率は0.026です。
しかし、この物件は土地付きなので1億円を土地と建物に配分する必要があります。売買契約書には土地5千万円、建物5千万円と記載されているため、減価償却費は次のようになります。
建物5千万円×償却率0.026(耐用年数39年)=130万円/年
これで、1億円の中古一戸建て(土地付き築年数10年の鉄筋コンクリート)を売却する場合の減価償却費は130万/年になることがわかりました。
参照URL:
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/h30/0018008-045/05.htm
https://www.keisan.nta.go.jp/h30yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensutatemono.html
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070412/pdf/3.pdf
2019/09/20時点
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不動産の資産価値は築年数や傷みの具合、周辺の環境などさまざまな要因で決まります。売却を考えている場合は、不動産会社に一度しっかりとした査定をおこなってもらうとよいでしょう。その他、不動産会社の提携している税理士による無料相談会も実施されていれば、不動産の減価償却費の計算、不動産売却時に関する税務相談などのアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。
まとめ
この記事では、不動産の耐用年数や減価償却について理解を深めてきました。
この知識があれば、所有する一戸建ての売却を考えたとき、築年数や劣化の状態などから「売却できるかどうか」「高く売れないのでは」と不安に感じることも少なくないでしょう。もちろん今後の取り引きの際にも役立つことが多いと思います。
また、実際に売却価値を把握するためには、専門の会社におまかせするのも1つの手段です。売却にかかる税制などについても詳しく解説してくれることでしょう。
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参考URL:
【耐用年数とは】
https://ieul.jp/column/articles/249/
https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/ms_shinchiku/ms_sagashi/mansion_jumyou/
【建物構造別 法定耐用年数一覧】
https://fudousan-onepercent.com/bukken/kouzoutaiyou.html
https://www.keisan.nta.go.jp/h30yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensutatemono.html【不動産売却時に重要な耐用年数と減価償却の関係】
https://fudosan-pro.me/columns/11/
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
https://www.nomu.com/pro/column/kanae/02.html
https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/baikyaku/bk_money/joto_shotokuzei/【不動産減価償却の計算方法】
https://fudosan-pro.me/columns/11/
https://ieul.jp/column/articles/410/
https://www.nomu.com/pro/column/kanae/02.html【売却価値を正確に知るなら無料査定がおすすめ】
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