減価償却資産の耐用年数とは?不動産売却に役立つ知識を解説!

耐用年数とは、減価償却資産の使用目的が通常の場合に使用が可能と見込まれる年数のことで、減価償却を計算する際に必要です。この記事では耐用年数や減価償却について知りたい方に向けて、資産ごとの耐用年数や減価償却の計算方法について解説します。

目次
  1. 耐用年数とは?
  2. 耐用年数には3種類ある
  3. 償却資産別の法定耐用年数
  4. 耐用年数と減価償却の関係
  5. 不動産減価償却の計算方法
  6. 減価償却は耐用年数に応じて計算しよう!
記事カテゴリ 税金 マンション 一戸建て
2023.07.07

耐用年数とは?

家やマンションなどの建物は「減価償却資産」として、築年数に応じて徐々に価値が下がっていくのが一般的です。そのため、売却時にはその物件が取得時からどれくらい価値が減少(減価)したかを求めます。その計算に「耐用年数」を用います。

たとえば建物の場合、マンションに多い鉄筋コンクリート造では47年、木造の一戸建て住宅では22年という耐用年数が定められています。ただし、これは税務上の基準として設けられた期間であり、建物の実際の寿命とは関係ありません。

ちなみに、耐用年数と一緒に把握しておきたいのが「耐久年数」です。上記でもお伝えしたように、耐用年数とは省令で定められた減価償却資産の使用可能な年数です。一方で耐久年数とは、メーカーが「問題なく使用できる」と独自に決めた年数です。耐久年数はあくまでも目安の値であるため、耐用年数との違いに注意しましょう。

今回は、不動産を売却する方や減価償却の仕組みを知りたい方に向けて、減価償却と耐用年数について詳しく解説します。

家の模型

耐用年数には3種類ある

不動産の耐用年数には、「法定耐用年数」「物理的耐用年数」「経済的残存耐用年数」という3つの考え方があります。それぞれの内容を見てみましょう。

法定耐用年数

3つのなかで最もよく目にするのがこの「法定耐用年数」で、不動産それぞれの価値を公平に算出するために国が設定したものです。不動産の種類や構造、用途によって一律に決められており、この法定耐用年数によって建物の評価額を判定することが一般的になっています。

物理的耐用年数

構造物の仕組みだけでなく、材質の品質が維持できなくなるなど、建物そのものが劣化して使用できなくなるまでの年数を示します。

経済的耐用年数

対象となる不動産が実際に継続してどの程度使用できるか、不動産としての価値がなくなるまでの期間を示すものです。劣化の程度や建物の機能だけでなく、今後見込まれる補修や修繕費用なども加味されます。

工事が行われているマンション

償却資産別の法定耐用年数

不動産の耐用年数で最もよく利用される「法定耐用年数」は「法定」とある通り、税法で定められた年数です。建物の構造によって年数が変わってくるため、下記の一覧表を見て確認していきましょう。

建物の構造別耐用年数

構造別耐用年数表は以下の通りです。建物の種類や構造、用途によって耐用年数が変わります。

建物の種類構造・用途耐用年数
一戸建て木造・合成樹脂造のもの・住宅用22年
マンション鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの・住宅用47年
木造アパート木造モルタル造のもの・住宅用20年

建物付属設備の耐用年数

建物付属設備とは、建物の使用価値を上げる付属設備のことです。具体的にはエレベーター、冷暖房設備、自動ドアなどが挙げられます。主な建物付属設備の耐用年数は以下の通りです。

設備の種類構造・用途耐用年数
アーケード・日よけ設備金属製のもの15年
店舗簡易装備3年
電気設備(照明設備含む)蓄電池電源設備6年
給排水・衛生設備・ガス設備15年

ここまで償却資産別の耐用年数についておおまかにお伝えしてきました。建物だけでなく、車や機械といった償却資産にもそれぞれ耐用年数が決められているため、より詳しく知りたい方は国税庁のホームページをご覧ください。

3階建てアパート

耐用年数と減価償却の関係

ここまで不動産に関する法定耐用年数についてご紹介しました。耐用年数は、「減価償却費」を計算する際に用います。減価償却費とはどんな費用を指しているのでしょうか?

減価償却とは?

減価償却とは、償却資産を取得した際の取得費用(購入金額)を一定年数で割り、毎年の経費として計上するための会計処理を指します。

たとえば、3,000万円で不動産を購入した場合、購入代金の3,000万円全てをその年の経費として計上するのではなく、不動産を購入した日から耐用年数が終わるまでの年数に分けて計上します。

減価償却が必要となる場面

不動産を所有している方は、税申告のために減価償却の仕組みを理解しておく必要があります。減価償却の計算が必要になるケースは、主に次の2つです。詳しく見ていきましょう。

賃貸収入を得ている場合
アパート・マンション経営で得た賃料収入は、不動産所得として確定申告を行わなければなりません。この不動産所得には所得税がかかります。しかし、アパートやマンションの価値の目減り分は「減価償却費」として、賃料収入から差し引くことができます。これは所得税の節税につながるので、忘れずに計上することが大切です。

売買契約

不動産を売却する場合
不動産を売却して得た利益を「譲渡所得」といい、譲渡所得は所得税や住民税などの課税の対象になります。この譲渡所得を計算するには、建物の取得費が必要です。取得費とは、建物の購入代金と購入した際にかかった諸費用の合計を指します。譲渡所得の計算方法は以下の通りです。

・譲渡所得 = 収入金額 – (取得費 – 減価償却費) – 譲渡費用

このとき、収入金額(不動産を売却した金額)から取得費を差し引くことで、譲渡所得が減り、節税につながります。

ただし、減価償却費が多い場合には、取得費が減ってしまうため節税効果は薄くなる点に注意が必要です。不動産のうち、建物分の取得費からは減価償却費を差し引く必要があります。土地は時間がたっても建物のように経年劣化しないため、減価償却できませんが、建物は価値が減ってしまうため、減価償却の対象になるのです。

もし正確な取得費が分からない場合は、「売却益の5%相当額」を概算取得費として計算することができます。しかし、概算取得費よりも実際の取得費のほうが高い場合は、税負担が上がって損になってしまうので注意が必要です。

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●不動産売却にかかる税金に関する記事はこちら
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確定申告をする女性

不動産減価償却の計算方法

ここまで減価償却について理解するため、耐用年数と減価償却の仕組みについてお伝えしてきました。ここからは、不動産にかかる減価償却費の計算方法をご紹介します。

減価償却費の計算に必要な項目

不動産にかかる減価償却費は、「取得費 × 償却率」で算出することができます。この計算をするためには、「建物の取得費」「建物と土地の割合」「物件の耐用年数」、そして「償却率」を知っておくことが必要です。順を追って確認していきましょう。

建物の取得費
建物の取得費とは、不動産の購入金額のなかで建物の部分に対応する金額のことです。上記でもお伝えしましたが、土地とは異なり、建物は減価償却の対象となるため価値の目減り分を差し引いた金額が取得費となります。

建物と土地の割合
取得費を確認するために、建物と土地の取得費(購入価格)を分ける必要があります。ここで問題になりがちなのが、売買契約書や譲渡対価証明書などに建物と土地の金額の区別が記載されていない場合です。このようなケースでは、「固定資産税評価額」を参考にしたり、売買契約書の消費税から逆算して建物の取得費を算出したりすることができますよ。

物件の耐用年数
不動産の耐用年数の算出には、国税庁の「耐用年数(建物・建物附属設備)」を確認する必要があります。主な法定耐用年数は前述した通りです。

電卓とグラフ図

償却率
償却率は「取得価格の何%まで、その年度に経費算入してよいか」という割合です。この償却率は、事業に用いない居住用の建物の場合、耐用年数にかかわらず建物の構造のみで決まります。詳しくは国税庁の「減価償却費の計算について」をご覧ください。

1億円の一戸建てを売却する場合の減価償却費の計算方法

それでは、上記の必要項目を使って実際に減価償却費を計算してみましょう。

〈例〉取得費1億円の一戸建ての場合(土地付き・築10年・鉄筋コンクリート造)

減価償却費は、「建物部分の取得費 × 0.9 × 償却率 × 経過年数」という計算式で求められます。0.9とは、建物部分の取得費から残存価額(法定耐用年数を過ぎた後も建物に残る価値のことで、購入費用の10%)を差し引いた金額にするための数字です。

この物件は土地付きなので、取得費の1億円を土地と建物に分ける必要があります。売買契約書には土地5,000万円、建物5,000万円と記載されているため、建物部分の取得費は5,000万円ということになります。

償却率は、鉄筋コンクリート造なので0.015となります。経過年数は10年なので、減価償却費の計算は次の通りです。

5,000万円 × 0.9 × 0.015 × 10年 = 675万円

売却する際は、上記の減価償却費を建物の取得費から差し引くと、売却時点での取得費を算出できます。実際に計算を行う際の不明点や疑問は、税理士や税務署の窓口に相談しましょう。

指を立てる女性

減価償却は耐用年数に応じて計算しよう!

ここまで不動産に関する耐用年数や減価償却の仕組み、計算方法について解説してきました。耐用年数と減価償却について知っておくと、今後不動産売買を行うときに役立ちます。減価償却費は築年数に応じて変わるため、随時確認が必要です。また、減価償却費によって譲渡所得にかかる税金も変わってくるため、この記事を参考にご自身で計算してみてくださいね。

不動産の資産価値や耐用年数は築年数だけでなく、劣化具合、周辺の環境などさまざまな要因で決まります。そのため、実際に売却を考えている場合は、一度不動産会社にしっかりとした査定を行ってもらうとよいでしょう。

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監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
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