長期譲渡所得とは?短期譲渡所得との違いや計算方法、税金を抑える方法について解説

不動産をはじめとする資産を売却して生じた所得を譲渡所得といい、プラスになった場合には税金が発生します。その税率は売却する不動産の所有年数によって異なるため、売却の時期には気を付ける必要があります。この記事では、譲渡所得の区分である長期譲渡所得や短期譲渡所得について解説します。

目次
  1. 譲渡所得とは?
  2. 譲渡所得の区分
  3. 譲渡所得にかかる税金の税率
  4. 譲渡所得の税額を計算するには?
  5. 10年以上所有したマイホームは税率が低くなる!
  6. まずは不動産会社に相談してみよう!
記事カテゴリ 売却 税金
2023.08.17

譲渡所得とは?

マンションや一戸建て、土地などの不動産を売却して生じた所得を譲渡所得といいます。譲渡所得がプラスとなった(利益が出た)場合、譲渡所得税と呼ばれることもある所得税と住民税がかかりますが、売却した不動産を所有していた期間によって税率は変わります。

譲渡所得は、不動産の所有期間に応じて「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」の2つに分けられ、不動産を売るタイミング次第では節税をすることも可能です。また、譲渡所得にかかる税金を計算する際、売却した不動産が一定の要件を満たす居住用の住宅であれば、特別控除や特例が利用できます。なお、譲渡所得にかかる税金は「分離課税」であるため、給与所得や事業所得といった所得とは別で計算します。

不動産の売却を検討している方にとっては、課税される税金について気になるのではないのでしょうか?そこで今回は、長期譲渡所得と短期譲渡所得の違いや、計算方法、税金を抑える方法などについてご紹介します。

●譲渡所得にかかる税金に関する記事はこちら
不動産譲渡税とは?税金額の計算方法も併せて詳しく解説

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譲渡所得の区分

不動産を売却した際に発生する譲渡所得には前述したように売却した不動産の所有期間によって、2つの区分があります。売却した不動産の所有期間が5年を超えていた場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」となります。

譲渡所得を区分する際の不動産の所有期間は譲渡(売却)した年の1月1日の時点で、その不動産を何年所有していたかで決まります。そのため、譲渡が1月であっても12月であっても、その年の1月1日時点までの経過年数が所有期間となります。

たとえば、2018年(平成30年)8月15日に購入した不動産を2023年(令和5年)12月1日に売却した場合、8月15日で所有して満5年を超えていても、売却した年の2023年(令和5年)1月1日時点では5年を超えていないため、長期譲渡所得とはなりません。長期譲渡所得となるには、2024年(令和6年)1月1日以降に売却する必要があります。下記の図をご参考ください。

長期譲渡所得と短期譲渡所得の所有期間の違いが分かる説明図

譲渡所得は売却する不動産の所有期間が長期か短期かによって、課税される所得税や住民税などの税率が変わります。詳しく見ていきましょう。

悩む高齢女性

譲渡所得にかかる税金の税率

長期譲渡所得と短期譲渡所得それぞれにかかる税率は下記の通りです。

所得の区分長期譲渡所得短期譲渡所得
所有期間5年超5年以下
税率※20.315%
所得税:15.315%
住民税:5%
39.63%
所得税:30.63%
住民税:9%

※税率には復興特別所得税の2.1%相当が上乗せされています。

長期譲渡所得の税率が20.315%に対して、短期譲渡所得は39.63%と倍近くの税率になっていることが分かります。不動産の所有期間が違うだけで、税率が大きく変わるため、支払う税金の額にも大きく差が出てきます。売却するタイミングが非常に重要だといえますね。

譲渡所得の税額を計算するには?

ここからは譲渡所得にかかる税金の計算方法をお伝えします。3つのステップに分けて説明していきますので、譲渡所得の税額を具体的にイメージするための参考にしてくださいね。なお、税率は異なりますが、長期、短期それぞれの譲渡所得にかかる税額は同じ計算方法で求めることができます。

●マンションを売却するタイミングに関する記事はこちら
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[ 1 ] 譲渡所得を把握する

まずは譲渡所得を把握しましょう。譲渡所得は次の計算で求められます。

譲渡所得 = 物件を売った金額等(譲渡収入金額) – (物件を買った金額(取得費) + 売却時の諸費用(譲渡費用))

「物件を売った金額等(譲渡収入金額)」は、物件の売却代金と固定資産税・都市計画税の清算金を合算した額です。「物件を買った金額(取得費)」は、物件の購入代金に、仲介手数料や税金などの諸経費を加算した金額から建物の減価償却費を引いた金額となります。

●固定資産税清算金に関する記事はこちら
不動産売却後の固定資産税は誰が払う?基礎知識や計算方法を解説

減価償却費とは、建物などの減価償却資産の取得にかかった費用を、定められた年数で分割して毎年計上するための費用で、形式的に時間の経過によって建物の価値が減った分として見ることができます。土地は、減価償却の対象になりませんが、建物は、売却の時点で物件取得から年数がたっているため、減価償却費を差し引く必要があります。減価償却費は、次の方法で求められます。

減価償却費 = 建物の取得価格 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

なお、償却率は木造や鉄筋コンクリート造など、建物の構造によって数値が定められています。経過年数については、1年未満の端数は、6か月以上は1年、6か月未満は切り捨てとします。

●不動産の構造別耐用年数と減価償却の計算方法に関する記事はこちら
減価償却資産の耐用年数とは?不動産売却に役立つ知識を解説!

また、建物の明確な取得費が分からない場合は、売却によって得られた譲渡収入金額の5%相当の金額が概算取得費として適用されます。

「売却時の諸費用(譲渡費用)」は、物件の売却の際にかかった仲介手数料や印紙税などの必要経費を合計した金額となります。

家と通帳

[ 2 ] 特別控除額を差し引く

譲渡所得を算出した後、特別控除の特例が適用される場合は、その特別控除額を差し引いて課税譲渡所得を求めます。課税譲渡所得とは、税率をかける前の特別控除を差し引いた額のことです。主な特別控除には、以下のものがあります。

居住用財産の3,000万円特別控除
一定の要件を満たし、自らの居住用として使用している物件を売却して得られた譲渡所得のうち、要件に当てはまる場合は、申告することで最大3,000万円まで控除を受けることができます。ただし、確定申告の際に「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」を提出する必要があるので、注意が必要です。

●「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」はこちら

●居住用財産の3,000万円特別控除に関する記事はこちら
居住用財産3000万円控除|不動産売却時に活用できる控除とは?

相続した空き家の3,000万円特別控除
一定の要件を満たす被相続人が居住していた住宅を相続し、空き家となった住宅を売却する場合に要件を満たしていれば、申告することで3,000万円の特別控除を受けることができます。この特別控除も居住用財産の特別控除と同様に、確定申告の際に書類を提出する必要があるので注意してください。なお、要件によって必要な書類が異なるため、不安な方は国税庁の公式ページを確認してみるとよいでしょう。

[ 3 ] 税額を計算する

課税譲渡所得が算出できたら、税率をかけて譲渡所得にかかる税金を計算します。長期譲渡所得の場合は税率である20.315%、短期譲渡所得は39.63%をかけた額が税額です。

不動産売却にかかる税金について、詳しく知りたい方は以下をご覧ください。

●不動産売却にかかる税金に関する記事はこちら
不動産売却にかかる税金は?税金の計算方法と税金対策をご紹介

●マンション売却にかかる税金に関する記事こちら
マンションの売却にかかる税金はいくら?簡単な計算方法とシミュレーション

日当たりのよい和室

10年以上所有したマイホームは税率が低くなる!

お伝えしたように長期譲渡所得に該当する場合は、短期譲渡所得に比べて税率が低くなるのですが、10年以上にわたって所有していたマイホームを売却する場合、軽減税率の特例の対象になると更に税率が低くなります。特例を受けるための主な適用条件は以下の通りです。

・売却した年の1月1日現在でそのマイホームの所有期間が10年超であること
・売却するマイホームが国内にあること
・売却した年の前年または前々年にこの特例を受けていないこと
・親子、夫婦など特別な関係者への売却ではないこと
・居住用財産の3,000万円特別控除を除く指定された特例を受けていないこと

適用条件の詳細は国税庁公式ページをご確認ください。

適用要件を満たしている場合、課税譲渡所得の6,000万円以下の部分の税率が14.21%(所得税10% + 復興特別所得税0.21% + 住民税4%)、6,000万円超の部分については20.315%(所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%)となります。加えてこの特例は、前述の「居住用財産の3,000万円特別控除」と併用が可能です。2つの特例を併せて利用すると、大幅な節税になるため、条件を満たしているか確認しましょう。適用になる場合はぜひ活用してみてくださいね!

ただし、居住用財産の3,000万円特別控除を利用した場合は住宅ローン控除が利用できなくなるため、今の自宅を売却し、新たに住宅ローンを利用して新居を購入する住み替えの場合には注意が必要です。

●住宅ローン控除に関する記事はこちら
住宅ローン控除はいつまで利用できる?税制改正後の変更内容や申請方法も解説!

老人夫婦

まずは不動産会社に相談してみよう!

ここまで長期譲渡所得と短期譲渡所得の違いや譲渡所得にかかる税金の計算方法、税金を抑える方法などについて解説してきました。譲渡所得にかかる税金は、売却する不動産の種類や所有期間が長期か短期かによって税率に大きな差があるので、特に所有期間が5年前後となる場合は、不動産を売却するタイミングについてよく検討しましょう。

また、特別控除や軽減税率を活用すれば、節税できる可能性もありますが、特別控除や軽減税率の適用にはさまざまな要件があるため、事前に確認しておく必要があります。

なお、不動産を売却する際には、専門的な知識が必要となる場面が多くなります。分からないことがあれば不動産会社に相談し、税金については税理士や会計士のアドバイスも受けながら進めていくと安心ですよ。

また、不動産を売却する場合には、まず不動産の査定を依頼するのが一般的です。不動産査定とは、所有する不動産が今の相場からいくらで売却できそうかを不動産会社に算出してもらうことで、査定額は不動産の「売り出し価格」を決定する際の参考になります。そのため、査定を受けることは不動産売却における重要なステップです。

三井のリハウスでも全ての査定を無料で承っておりますので、不動産売却を検討している方は、お気軽にお問い合わせください。

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秋津智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。物件の選び方や資金のことなど、不動産に関する多岐のサポートを行なう。