Column / 2020 12,03

長期譲渡所得とは?税率、控除、軽減税率を理解してお得に売却しよう!

マンションや一戸建て、土地などの不動産を売却して利益が出た場合、その売却益の額に応じて所得税や住民税などの税金が課せられます。今回は売却益に課税される譲渡所得税の中でも、特に長期譲渡所得に焦点を当てて解説していきます。

秋津智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。物件の選び方や資金のことなど、不動産に関する多岐のサポートを行なう。

長期譲渡所得とは?

マンションや一戸建て、土地などの不動産を売却して利益が出た場合、その売却益の額に応じて所得税や住民税などの税金が課せられます。このとき課税される税金を譲渡所得税といい、売却した不動産を所有していた期間や種類によって税率が変わってきます。
つまり、不動産を売るタイミング次第では、同じ不動産でも手元に残る金額が変わってくるということです。

今回は、不動産売却の際、タイミング次第では節税になることを知っていただくために、売却益に課税される譲渡所得税の中でも、特に長期譲渡所得に焦点を当てて解説していきます。

税と家の模型

譲渡所得の区分け

不動産を売却した際、発生する「譲渡所得」には2つの区分が種類あります。売却した不動産を、5年を超える長期にわたって所有していた場合は「長期譲渡所得」となり、所有期間5年以下の場合は「短期譲渡所得」となります。
譲渡所得では、売却する不動産の所有期間が長期か短期かによって、課税される所得税や住民税などの税率が変わってきますよ。

譲渡年の1月1日時点での経過年数で判断する

不動産の所有期間については、譲渡(売却)した年の1月1日の時点で何年所有していたかを判断します。譲渡が1月であっても12月であっても、その年の1月1日時点までの経過年数が所有期間となるのです。

下記の図を参考に説明しますと、たとえば、2015年(平成27年)8月15日に購入した不動産を2020年(令和2年)12月1日に売却した場合、この年の8月15日で所有して満5年を超えていても、売却した2020年(令和2年)の1月1日時点では5年を超えていないため、長期譲渡所得とはなりません。この例で2021年(令和3年)1月1日以降に売却した場合には長期譲渡所得となります。

短期譲渡所得と長期譲渡所得の説明図

長期・短期譲渡所得それぞれの税率

長期・短期譲渡所得の分け方についてご紹介しましたが、長期か短期かでどのくらい税率が変わるのか気になりますよね。それぞれの税率は下記の通りです。
長期譲渡所得の20.315%に対して短期譲渡所得となった場合は、39.63%と倍近い税率になってしまうことが分かります。

所得の区分 長期譲渡所得 短期譲渡所得
所有期間 5年超 5年以下
税率 ※1 20.315%
所得税:15.315%
住民税:5%
39.63%
所得税:30.63%
住民税:9%

※1 税率には復興特別所得税の2.1%相当が上乗せされています。

長期譲渡所得の税額を計算するには?

長期、短期譲渡所得の各税率を知って、その幅の違いに驚きませんでしたか?これだけの大きな違いがあると、「不動産を売却するタイミングが重要である」ということも実感してくるでしょう。ここでは、さらに具体的なイメージが湧くように、長期譲渡所得の税額の計算方法をご紹介します。

家の模型と電卓

譲渡所得の税額は、長期・短期ともに同じ計算で求めることができます。計算を3つのステップに分けてご説明します。

[ 1 ] 譲渡所得を把握する

譲渡所得は、次の計算式で求められます。

譲渡所得 = 物件を売った金額等(譲渡収入金額) - (物件を買った金額(取得費) + 売却時の諸費用(譲渡費用))

計算式の「物件を売った金額等(譲渡収入金額)」は、物件の売却代金と固定資産税・都市計画税の清算金を合算した額です。

「物件を買った金額(取得費)」は、物件の購入代金に、仲介手数料や税金などのかかった諸経費を加算した金額から建物の減価償却費を引いた金額となります。売却の時点では、物件取得から年数が経っているため、この金額から建物の価値が減ったものとして「減価償却費」を差し引きます。この減価償却費は、次の計算式で求めることができます。

減価償却費 = 買ったときの建物の価格 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

償却率については、木造や鉄筋コンクリート造など建物の構造によって、数値定められています。

また、建物の明確な取得費が分からない場合は、売却によって得られた譲渡収入金額の5%相当の金額が概算取得費として適用することができます。なお、譲渡所得の計算では、取得費と概算取得費の、いずれか大きい方の額を計算に用いることができます。

「売却時の諸費用(譲渡費用)」は、物件の売却の際にかかった仲介手数料や印紙税などの必要経費を合計した金額となります。

[ 2 ] 特別控除額を差し引く

譲渡所得を算出した後、特別控除の特例が適用される場合は、その特別控除額を差し引いて課税譲渡所得を求めます。課税譲渡所得とは、税率を掛ける前に特別控除を差し引いた額のことです。

主な特別控除には、以下のものがあります。

●居住用財産の3000万円特別控除
自らの居住用として使用している物件を売却して得られた譲渡所得のうち、要件に当てはまっている場合は、最大3000万円まで控除が受けられます。

●相続した空き家の3000万円特別控除
被相続人が居住していた住宅を相続し、空き家となった住宅を売却する場合に、要件を満たしていれば3000万円の特別控除が受けられます。

居住用財産の3000万円特別控除に関する記事はこちら
居住用財産3000万円控除とは?ほかの控除との併用や適用要件についてご紹介

[ 3 ] 税額を計算する

課税譲渡所得が算出できたら、税率を掛けて譲渡所得税を計算します。長期譲渡所得の場合は、適用税率の20.315%を掛けた額が税額です。

不動産売却にかかる税について、もっと詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。

不動産売却にかかる税金に関する記事はこちら
不動産売却にかかる税金はいくら?必要な費用の計算や節税対策をご紹介

さて、ここまで長期譲渡所得の税額の算出方法を見てきましたが、実は、長期譲渡所得の中でも、より長期で不動産を所有していた場合、長期譲渡所得の場合より税率が低くなることがあります。それはどのようなケースでしょうか?次で詳しくご紹介します。

10年以上所有していたマイホームは税率が低くなる!

基本的に長期譲渡所得の場合は、ご紹介した税率が適用されますが、例外もあります。10年を超える期間にわたって所有していたマイホームの売却については、要件が満たされれば軽減税率の特例の対象になるため、さらに税率が低くなるのです。

日当たりのよい和室

特例の制度を受けるための主な要件は、以下の通りです。
・売却した年の1月1日現在でそのマイホームの所有期間が10年超であること
・売却するマイホームは国内にあること
・土地建物とも10年超所有したものであること
・親子、夫婦など特別な関係者への売却でないこと
・居住用財産の3000万円特別控除を除く指定された特例を受けていないこと

要件の詳細については国税庁公式ページをご確認ください。

この要件を満たしている場合、課税譲渡所得の6000万円以下の部分に関しては、税率が14.21%、6000万円超の部分については20.315%となります。しかも、この特例は、前述の「居住用財産の3000万円特別控除」と併用が可能です。2つの特例を組み合わせれば、大幅な節税につながりますので、条件を満たしている場合は、ぜひ活用してみてくださいね!
ただし、居住用財産の3000万円控除の特例を利用した場合、住宅ローン控除が利用できなくなりますので、売却して新居に買い換えするときには注意が必要ですよ。

不動産売却を考え始めたら、まずは不動産会社に相談してみよう!

長期譲渡所得について、経過年数の判断の仕方や税率、税額の計算方法などをご紹介してきました。
譲渡所得税は、不動産の所有期間が長期か短期かというだけでも税率に大きな差が生じること。また自宅を売却する場合、特別控除や軽減税率を活用すれば、納税の際に節約になる可能性が高くなることが分かりましたね。

ただし、特別控除や軽減税率が適用されるにはさまざまな要件があり、複数の書類を準備したり、確定申告を行ったりと、やや専門的な知識が必要となります。そこで、不動産の売却を考え始めたら、まずは不動産会社に相談して、税理士や会計士のアドバイスも受けながら進めていくことをおすすめします。
豊富な知識を持ったプロにサポートしてもらえば、節約もでき、よりスムーズに不動産の売却が進められるでしょう。