任意売却とは?住宅ローンの支払いが厳しくなったら知っておくべき基礎知識を解説

任意売却とは、住宅ローンの支払いができなくなった場合に、債権者(金融機関)の了承のもと一定の条件で不動産を売却することをいいます。今回は任意売却に関する知識や競売との違い、またメリットや注意点などを詳しく解説します。

目次
  1. 住宅ローンの返済が難しくなったら?
  2. 任意売却と競売の違い
  3. 任意売却のメリット
  4. 任意売却の注意点
  5. 任意売却にかかる期間と流れ
  6. 任意売却前後で行うとよいこと
  7. 早めに相談し対処しよう!
記事カテゴリ 売却 ローン
2023.03.06

住宅ローンの返済が難しくなったら?

人生では、予期せぬことが起こる場合があります。会社都合で急に職を失ったり、事故や災害などで想定外の出費が重なったり、急な病気やけがで働けなくなったりすることがあるかもしれません。このような事態が起きて住宅ローンの支払いが難しくなったら、どうしたらよいのでしょうか?月々のローンが返済できなくなって、滞納が続き、最悪、競売によって不本意に自宅を失うようなことは避けたいですよね。

住宅ローンの返済が苦しくなったら、まずは金融機関に返済計画の見直しを相談してみましょう。金融機関としても返済が滞ることは好ましいことではないため、相談に乗ってくれますし、役に立つアドバイスや情報も提供してくれるでしょう。

しかし、金融機関に相談しても返済が難しい場合、特に売却しても残債が残る可能性が高いときは、所有する不動産の「任意売却」を金融機関に相談してみるとよいでしょう。

今回は、住宅ローンを滞納してしまったとき、競売にならないよう事前に知っておきたい任意売却に関する基礎知識をご紹介します。

任意売却と競売の違い

住宅ローンの返済が厳しくなってしまったら、そのマイホームを売った資金で住宅ローンを完済・解消するという手段がまず考えられるでしょう。

しかし、マイホームを売却しても、売却で得た資金よりも残債が多く、ローンの完済ができないと思われる場合は、金融機関と相談して任意売却を検討することになります。そして金融機関が了承した場合は、任意売却を行います。

一方、任意売却でも返済が難しい場合や、金融機関に何も相談せず滞納を続けていると、金融機関による差し押さえの後、競売の申し立てがなされ、競売へと移行していきます。
これらの任意売却と競売にはどのような違いがあるのか、ご紹介しましょう。

任意売却とは?

任意売却とは、債権者(住宅ローンを借りている金融機関)の許可のもと、ある程度所有者の希望条件で一般市場にて不動産を売却することです。

電卓とカレンダー

本来、売却資金で住宅ローンの残債が完済できない場合は、売却を完了することができません。売却資金で完済できない状態で不動産を売却するには、完済するために必要な不足分の資金を別途準備する必要があります。

なぜなら、不動産を売却する場合、住宅ローンなどを借りたときに不動産に設定された金融機関の抵当権を抹消しなければ引渡しができず、抵当権を抹消するためには住宅ローンの完済が条件となっているからです。

しかし、任意売却の場合は、売却によって住宅ローンを完済できない場合でも、債権者である金融機関の了承が得られれば、一定の条件のもと抵当権を解除してもらうことができます。

任意売却を行うにはまず、債権者(金融機関)への相談が必要です。その後、売却する不動産の査定を不動産会社に依頼し、査定額を踏まえて金融機関とも連携を取りながら売却活動に入ります。

・債権者である金融機関に任意売却について相談する
・任意売却を扱う不動産会社に所有する不動産の査定額を出してもらう
・債権者へ査定額とともに任意売却の希望を伝えて金融機関の了承を得る

ここまで整って初めて、任意売却の活動を始めることができます。

新聞記事と赤鉛筆

競売とは?

競売とは、所有者の意思とは関係なく、債権者が抵当権の対象となっている不動産を差し押さえた後、法的な手続きに則って強制的に売却されることです。

住宅ローンを3~6か月程度滞納すると、銀行や住宅金融支援機構など債権者である金融機関から催告書が届きます。催告書には、滞納分と遅延損害金を支払わなければ期限の利益が喪失する旨、法的手続き(競売)により債権回収を始める旨が記載されています。

催告書が届いても放置しておくと、「期限の利益を喪失」してしまい、金融機関から住宅ローンの残額を一括返済するよう請求されます。期限の利益とは、約束した期日と金額で住宅ローンを返済していれば、住宅ローンを借りている側は一括返済を求められない(利益)という、いわば分割返済する権利のようなものです。

期限の利益を喪失すると、一括返済しなければならなくなり、それができなければ、債権者は担保(抵当権の対象)である不動産を差し押さえます。その後、債権者の裁判所への競売申し立てが認められると、強制的に競売にかけられます。その競売で得られた資金は、抵当権者である債権者の残債の回収に、優先的に充てられます。

なお、住宅ローンを借りた際、保証会社と保証契約を締結している場合には、滞納して6か月程度が過ぎると保証会社から金融機関へ一括して残債が支払われ(代位弁済)、債権が保証会社に移転して、保証会社から残債分の一括返済を求められます。その後、支払いがなければ、同様に保証会社が差し押さえた後、競売の申し立てとなる流れです。

競売は、通常の売却や任意売却と比べて低価格で売却される傾向があります。しかも、引渡しの時期は所有者の希望とは関係なく決定されるため、所有者やその家族は、仕事や学校の都合などを考慮されずに退去せざるを得なくなります。競売は、経済面で不利になるだけでなく実生活にも大きな影響があり、精神面にも重い負担がかかるものといえるでしょう。

これらが、任意売却と競売の代表的な違いです。任意売却は法的な強制処分ではないため、債権者と債務者が合意をすれば、売却価格や引渡しの時期なども相談のうえ決定することができます。また、売却資金の配分は債権者が優位ではあるものの、資金以外の部分では債務者の希望もある程度踏まえて引渡しの時期などを決められます。そのため、競売にかけられる前に任意売却を進めるほうが、所有者側の希望が反映されやすく自由度が高くなるといえます。

任意売却のメリット

前述の通り、任意売却の場合、ローンの完済が難しくとも債権者の了承があれば、抵当権を抹消できる可能性があります。これは任意売却の特長の1つですが、ほかにはどのようなメリットがあるのでしょうか?任意売却のメリットについて見ていきましょう。

家の模型とマルバツ

市場価格に近い価格で売却することができる

住宅ローンの返済が滞り、最悪、競売にかけられた場合、不動産の売却価格は市場価格の約50~70%になるといわれています。それに対し、任意売却ではうまくいけば、市場価格で売却でき、条件が多少悪い場合でも市場価格の約80~90%の価格で売却できる可能性があります。そのため、売却資金でのローン完済がしやすいといえるでしょう。

所有者の情報を非公開にできる

任意売却は、通常の不動産売却で売り出すのと同様に、物件所有者の情報が周囲に流れてしまうことはありません。

一方、競売の場合は、競売が決定すると裁判所の競売情報のWebサイト内に、対象の不動産の所在地や権利関係、物件写真などが公表されます。つまり、インターネットでこのような情報が公表されることで、その不動産や所有者を知る人たちに、競売となっている事実を知られてしまう恐れがあるのです。競売の事実を知られれば、所有者が経済的な苦境にあることも分かってしまいます。

引越し費用の負担を軽減できる可能性がある

任意売却では、引越し代を売却資金から捻出できる場合があります。なぜなら、任意売却では、売却資金の配分を債権者と一部相談して決めることができるからです。債権者との交渉次第では、引越し費用など諸費用の一部を売却資金から負担してもらえる可能性もあります。

引渡し日の希望を相談できる

任意売却では、債権者が認める任意売却の条件の範囲内であれば、契約条件や引渡し日などについて買主と相談することが可能です。つまり、所有者の仕事や学校などのスケジュールを考慮して、引渡し日を決めることができます。

営業担当者に相談する男性

任意売却の注意点

任意売却には注意点もあります。注意点を知らずに任意売却を選択すると、任意売却そのものが完了できなかったり、売却後も住宅ローンの返済で生活に支障が出たりといったトラブルが起こり得ます。そのようなことにならないよう、注意点を確認しておきましょう!

できる限り早く売却活動を始める

金融機関に相談のうえ許可を得て、任意売却を行うと決定したら、できるだけ速やかに売却活動を始めましょう。

任意売却すれば、ローンの残債が必ずゼロになるというわけではありません。任意売却で得た資金は、優先的にローン残債の返済に充てられます。残債よりも売却で得た資金が少なければ、原則残ったローンの残債分は引き続き返済することになります。

もちろん不動産が高く売却できればよいのですが、希望通りの価格で売却できるとは限りません。そこで、任意売却をできるだけ早く開始することで、売却活動の時間を十分に取り、希望に近い価格で売却できるようにすることがポイントとなるわけです。

とはいえ、残債を気にし過ぎて売り出し価格を高く設定すると、かえって売却に時間がかかったり売れなくなったりすることもあります。また、任意売却の価格設定については、金融機関と相談することになるので、高過ぎるあるいは安過ぎる場合は金融機関が認めないこともあります。いずれにしても売却を長引かせないためには、相場を参考に適切な価格を設定することが大切です。
滞納している間は遅延損害金という利息以外の負担も増えていくため、早く売却することでこのような負担を減らすことにもつながりますよ。

任意売却物件の実績の多い業者を選ぶ

任意売却を行う際には、任意売却物件を扱った実績の多い不動産会社を選ぶことも大切です。任意売却は通常の不動産取引よりも、関係する法律の知識や経験がさらに必要となります。また、金融機関との交渉もあるため、任意売却について詳しい不動産会社に手続きを依頼すると安心です。以下の点を確認して慎重に不動産会社を選びましょう。

・弁護士や司法書士など法律の専門家と連携している
・任意売却に関する経験や実績が豊富

信用情報に登録されるリスクがある

任意売却に限った注意点ではありませんが、住宅ローンを滞納すると、信用情報機関の個人信用情報に滞納履歴が遅延情報として登録されるリスクがあります。信用情報機関へ遅延情報として登録されるのは、信用情報機関によって異なりますが、一般的に住宅ローンの返済などを3回以上滞納した時点といわれます。
つまり、信用情報機関の個人信用情報の欄に遅延の記載が載ることで、今後、金融機関との取引が難しくなるということです。

遅延情報が信用情報機関の個人信用情報に登録されると、登録された情報の内容によっては5年間にわたり金融機関からの借り入れやクレジットカードなどの審査に通らず、融資やカードの発行が受けられなくなってしまうこともあります。後の生活にも影響を与える恐れがあるため、滞納にはくれぐれも注意しましょう。

任意売却には期限がある

債権者である金融機関が任意売却を許可した場合であっても、いつまでも任意売却できるものではありません。任意売却となる状況では、金融機関としても貸した資金の回収を急いでいます。そのため、任意売却を認めてはいるものの、並行して競売の申し立てを行うことも珍しくありません。任意売却を行っていてもなかなか買い手が見つからず、時間が過ぎると、最終的には競売による売却となってしまいます。

任意売却ができる期間は、多くの債権者が競売の「入札開始日の前日」までとしています。この期日までに決済・引渡しを終えていなければなりません。そういった意味でも、任意売却で売却する場合は、媒介を依頼する不動産会社選びや売り出し価格の設定などするべきことをできるだけ早めに行い、早期に売却できるようにすることが大切です。

任意売却にかかる期間と流れ

任意売却でより早く、少しでも高く売るためには、任意売却の流れを理解しておくことも大切です。ここでは、任意売却が完了するまでの期間や流れを解説します。任意売却の流れを以下の表でチェックしてみましょう。

●任意売却の期間や流れ

流れ期間
[1] 金融機関からの督促住宅ローン滞納後3~4か月
[2] 現状の把握
(金融機関と相談・協議)
数日
[3] 不動産会社の選定と価格の査定約1~2週間
[4] 債権者への確認約1か月(売却活動中も継続)
[5] 任意売却の開始約1~3か月間
[6] 売買契約の締結売却開始から約1~3か月
[7] 不動産の決済・引渡し契約から約1か月
[8] 残債務の返済ケースによって数年
※売却後も残債が残った場合

[ 1 ] 金融機関からの督促

住宅ローンを滞納すると金融機関から「督促状」といった書面、または「督促」に関する電話が来ます。このような「督促通知」を受け、返済が厳しいようなら金融機関と相談して任意売却を検討し始めたほうがよいでしょう。

それでも支払いがない場合、滞納して早ければ3か月から概ね6か月くらいで保証会社(ローンで保証会社を利用している場合)から「代位弁済の通知」が届きます。この通知は、保証会社が借りている人に代わって金融機関に支払いをしたことで、住宅ローン債権が金融機関から保証会社に移ったことになります。この段階で支払いや連絡をせず放置していると、保証会社による不動産の差し押さえなど競売のための準備が進められてしまいます。

督促状とペンと電卓

[ 2 ] 現状の把握(金融機関との相談・協議)

金融機関に連絡して、住宅ローン滞納状況や残債の状況などを詳しく把握します。返済が厳しい場合は、できれば上記の督促が来る前にできるだけ早く金融機関に相談することが必要です。

ローンを借りている金融機関に状況を確認し、今のままでは返済が厳しいと判断したら、早めに返済に関して金融機関と相談、協議することが先決です。その後、任意売却の方向となった場合には、任意売却に関する知識を持つ専門業者や不動産会社などに相談しましょう。

ちなみに、任意売却の検討段階で、不動産会社に任意売却に向けた査定を行ってもらうこともできます。また、金融機関によっては、任意売却を依頼する不動産会社を紹介してもらえる場合もあります。

[ 3 ] 不動産会社の選定と価格の査定

任意売却を想定した不動産の査定を行います。不動産の売り出し価格は、査定額を参考に設定しますが、相場より高く設定してしまうと任意売却のうちに売却できず、競売の手続きに移行されてしまう恐れがあります。ただし、売り出し価格については金融機関の了承も必要なので、相場を逸脱した価格設定にはなりにくい傾向です。
それでも、売却活動次第で早期に売却できることもあれば、売却価格も異なってくるので、任意売却を行う際には、通常の売却よりも不動産会社を慎重に選ぶようにしましょう。

[ 4 ] 債権者の許可

任意売却を行うには、売却価格・売却(返済)時期・売却後の残債の有無などを債権者である金融機関に相談して許可を得る必要があります。任意売却の売却活動が始まってからも引き続き債権者に確認をしながら進めていきます。なお、売却後にもローンの残債が残る場合は、その返済方法や金額などについても債権者と相談しながら計画を立てます。

[ 5 ] 任意売却の開始

条件が整い、金融機関の許可を得たら、不動産の任意売却を開始します。一般の不動産売却と同じく不動産会社に仲介を依頼する媒介契約を締結してから売却活動が行われます。

任意売却の場合でも、通常の不動産売買と同様に内覧などがあります。内覧とは、物件の購入希望者が建物内の状況を見学することです。内覧の際には、購入希望者へ少しでもよい印象を与えるためにも室内をきれいに掃除しておきましょう。

できるだけ早めの売却を目指しますが、任意売却でも通常の仲介による売却活動と同様、媒介契約が専任媒介や専属専任媒介の場合は、契約期間は最大3か月という期限があります。

また、なかなか買い手が見つからないときは、任意売却できる期間内に売却できるよう売り出し価格を下げるといった条件の変更も必要になります。ただし、価格を変更する場合には、金融機関の了承が必要です。

●媒介契約についての記事はこちら
媒介とは?仲介や一般媒介などの違いを一挙解説!

ビジネスマンと女性

[ 6 ] 売買契約の締結

買主が見つかったら、売買契約を結ぶ前に債権者と最終的な調整を行います。債権者である金融機関から売却条件について合意が得られれば、買主と売買契約を締結します。ここでスムーズに合意を得るためにも、売却活動中も債権者とこまめに話し合いをするようにしましょう。

ちなみに、任意売却では、一般的な不動産売買とは異なるため、売主である所有者が不利益になることのないように契約の際、以下のような2つの特約を盛り込むことが通例です。

債権者から合意が得られなかった場合の白紙解約
特約の1つが、「債権者から抵当権抹消の合意が得られなかった場合の白紙解約」です。任意売却では、いよいよ契約という段階になっても急に債権者から売却許可を取り下げられる可能性があります。

たとえば、債権者が複数いて債権者間での話し合いがこじれたり、売却価格以外の条件が金融機関の想定と異なったりすることなどから生じるもので、所有者である売主にはどうすることもできません。

しかし、買主にとっては購入しようとしていた不動産が土壇場で急に手に入らないとなると問題です。通常の不動産売買では、買主から違約金などを請求される事態に及ぶでしょう。これを回避するために白紙解約の特約が盛り込まれています。

契約不適合責任の免責
特約のもう1つは、「契約不適合責任の免責」です。これは、一般的な不動産売買の際に売主が責任を負うことになる「契約不適合責任(瑕疵担保責任)」について、任意売却では、責任を負うための資金や支払い能力などが売主にないため、その責任を問われないようにするための一種の特約です。

契約不適合責任とは、不動産を売却した後、契約内容に合致しない欠陥や不備が見つかった場合に、その修理や賠償などについて売主が負う責任のことをいいます。

[ 7 ] 不動産の決済・引渡し

売主の売却資金の分配や残債の返済などについて条件が決まり、また買主側の購入準備が整えば、不動産の決済・引渡しとなります。不動産の決済・引渡し日に売主が受け取った資金でローンの残債を返済し、抵当権の抹消手続きと同時に所有権を買主に移転します。

売却資金でローンの残債が完済できない場合は、売主は、物件を買主に引き渡して完了ではありません。決済後、残債の返済に関する契約書などを金融機関と締結し、決済後も返済など債権者との関係は続きます。残債が残る場合はその返済について、決済前に債権者との調整は綿密に行いましょう。

[ 8 ] 残債務の返済

前述の通り、任意売却後にもローンの残債が残ってしまった場合にはその返済を行います。無理のない返済額となるよう、よく債権者と相談しましょう。

任意売却の流れは、物件の状態や債務状況によっても変わります。ここで紹介した流れはあくまで目安ですが、任意売却をスムーズに進行するための参考にしてみてくださいね!

任意売却前後で行うとよいこと

任意売却の流れが分かったところで、任意売却の前後に行っておくとよいこともご紹介します。以下の3つを意識し、不安要素を軽減しておきましょう!

書類の置いてある机を挟んで握手する人

[ 1 ] マンションの場合は管理費等の清算

売却する物件がマンションで管理費や修繕積立金を滞納していた場合には、任意売却を進める前に清算しておくことが理想的です。管理費や修繕積立金を滞納したままでは、管理費等の滞納金はそのまま買主に承継されてしまいます。管理費や修繕積立金が完済していることが売却の条件になることもあるため、可能なら事前に清算しておくほうがよいでしょう。

しかし、任意売却を行う状態では売主が管理費や修繕積立金を清算することが難しい状況がほとんどです。その場合は、売却金額から清算することを前提に金融機関と相談することも必要です。

[ 2 ] 売却にかかる費用の確保

任意売却でも通常の売買取引と同様に売却の諸経費はかかるので、できる限りその費用を確保しておくとよいでしょう。売却資金からこれらの費用を充てるかどうかについては、一般的に債権者と相談して決定します。なお、任意売却でも通常の売却と同様にかかる費用の内訳は、主に以下の通りです。

・不動産会社への仲介手数料
・抵当権の抹消登記にかかる費用
・一戸建てや土地の売却では、測量費用
・建物設備の修理費、残置物の撤去や処分費など

ほかにも、住宅ローンの返済手数料や遅延損害金などがありますので、覚えておきましょう。

⚫︎仲介手数料に関する記事はこちら
不動産の売却には手数料がかかる?仲介手数料の相場やポイントを解説

[ 3 ] 売却後の引越し・生活の相談

売却後の引越し代や当面の生活費についても債権者と早めに相談しておくとよいでしょう。任意売却の場合、事情を説明して債権者に交渉することで、売買代金のなかから引越し代や当面の生活費用を出してもらえるケースがあります。

しかし、それだけでは足りなかったり、そもそも費用を出してもらえなかったりする場合もあります。親戚や知人などでまとまったお金を貸してもらえるような人はいないか探してみることも選択肢に入れておきましょう。

早めに相談し対処しよう!

ここまで、住宅ローンを滞納してしまう前に知っておきたい任意売却に関する基礎知識について解説してきました。

住宅ローンを支払うことができなくなり、最悪、マイホームを競売にかけられてしまうと、売却金額や引渡しの時期、諸経費など所有者である自分の希望はほぼ通らなくなります。また、競売では売却金額が一般的な売却に比べて低くなる傾向があるため、基本的に売却資金が手元に残ることがありません。売却資金からその後の生活費を出してもらうこともできず、売却後の生活が困窮してしまう恐れもあるのです。

女性に相談する人

「住宅ローンの返済が厳しい.」と感じ始めたら、まずは金融機関に相談してみてください。返済計画を見直してもらっても返済が難しいときには、できるだけ早めに任意売却について相談することをおすすめします。一般的な不動産売却に近い価格で売却できる任意売却を成功させることで、住宅ローンの残債を完済できたり、その後の生活費を確保できたりする可能性があるからです。

ローンの返済が苦しいと感じたら、経済的にも精神的にもなるべく負担がかからないよう、正しい知識を持って早めに対処しましょう!

秋津智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。物件の選び方や資金のことなど、不動産に関する多岐のサポートを行なう。