固定資産税の計算方法は?評価額の決まり方や減税措置も併せて解説!

土地や住宅などを所有していると毎年かかる固定資産税は、おおまかな金額を自分で計算することができます。今回は固定資産税の計算方法や評価額の決まり方などについて解説します。納税額のシミュレーションも行うのでぜひ参考にしてみてくださいね。

目次
  1. 固定資産税は自分でも計算できる
  2. 固定資産税額の計算方法
  3. 固定資産税の減額措置
  4. 納税額のシミュレーション
  5. 固定資産税の支払い方法
  6. 固定資産税を計算して資金計画に役立てよう!
記事カテゴリ 売却 税金
2023.07.11

固定資産税は自分でも計算できる

土地や家屋などの不動産を所有していると、固定資産税が発生します。固定資産税とは、地方自治体に納税する地方税の1つを指し、不動産を所有している限り、毎年納めなければなりません。毎年6月になると、税務署から納税通知書が届き、書面で固定資産税の金額を確認できます。

しかし、「納税通知書が届くまでに、自分の固定資産税の金額を知りたい」という方もいるでしょう。固定資産税は、自分で計算をして金額を導き出すことも可能です。

そこで今回は、固定資産税を事前に計算したい方や固定資産税の仕組みを理解しておきたい方に向けて、固定資産税の計算方法や評価額の決まり方、減税措置などについて解説します。

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マンションの模型と電卓

固定資産税額の計算方法

固定資産税は、一般的に以下の式を用いて計算されます。

固定資産の評価額(課税標準額)×1.4%(標準税率)

固定資産の評価額(課税標準額)とは、一般的に「固定資産税評価額」とも呼ばれ、税額を計算する際に基礎となる課税対象を表します。また、固定資産税を算出するうえで用いる課税標準額は「固定資産税課税標準額」といい、標準税率をかけることで固定資産税額を求めることができます。自治体によっては税率が上記と異なる場合もあるので、自分が住んでいる市区町村のホームページで確認しておきましょう。ここからステップに分けて計算方法を解説します。

紙幣の上にある家の模型と貯金箱

固定資産の評価額を調べる

固定資産税額を求めるためには、まず固定資産の評価額を確認しましょう。固定資産の評価額とは、土地や家屋などの不動産の価値を評価し、計算した価額です。これは各市町村によって定められており、役所にある固定資産課税台帳または納税通知書に添付されている課税証明書から確認することができます。

では、固定資産の評価額はどのように決められているのでしょうか?評価額は、総務省が定めた土地や家屋を評価する指標である「固定資産評価基準」によって決まります。この基準のもとで決められた、土地と家屋の固定資産の評価額は3年に1度更新されます。

固定資産税額を自分で計算する際は、固定資産の評価額と固定資産税の課税標準額を混同しないように注意しなければなりません。通常、固定資産の評価額と固定資産税の課税標準額は同じ金額になります。しかし、減税措置が適用される場合には、固定資産税の課税標準額に軽減税率がかけられるため、固定資産の評価額よりも少なくなるのです。

●固定資産の評価額に関する記事はこちら
評価額とは?家の評価額を知る方法や、必要になるタイミングを解説!

建ち並ぶ家と土地

土地の固定資産税額を求める

固定資産の評価額を確認したら、土地と建物それぞれで固定資産税がかかるため、まずは土地の固定資産税額を求めましょう。土地の固定資産税額は以下の計算式で求められます。

土地の固定資産の評価額(課税標準額) × 1.4%(標準税率)

なお、土地の固定資産の評価額は、国が算定する地価公示価格の70%ほどが金額の目安となります。地価公示価格とは、なるべく時勢に影響されずにその土地の本質的な価値を算出しようとした価格です。土地の固定資産税をおおまかに知りたい場合は、上記を参考にしましょう。

また、前述の通り課税標準額は、通常は固定資産の評価額と同じ金額になりますが、税金の減額措置が適用されると評価額よりも少なくなります。

ここで、土地の固定資産の評価額がどのような経緯で決まるのかをお伝えします。土地の場合は、まず標準宅地(区域ごとの標準的な宅地)を選び、その標準宅地が実際に売買された価格(実勢価格)に基づいて、「固定資産税路線価」を決定します。

この路線価をもとに、宅地に「評点数」が付けられます。評点数とは標準宅地との違いを数値化するためのものです。評点数1点あたりに市町村が決定した価格をかけて、土地の評価額が決まります。

一戸建て住宅

建物の固定資産税額を求める

建物の固定資産税額を求める計算式は以下の通りです。

課税台帳に登録されている価格 × 1.4%(標準税率)

ここで、建物の固定資産の評価額がどのような経緯で決まるのかをお伝えします。家屋の場合は、建築素材や構造、用途、経過年数などを考慮して、「再建築費評点数」が計算されます。再建築費評点数とは、該当する建物を再び新築した場合にかかる費用を点数表記したものです。「再建築費評点基準表」を基準点数のサンプルとして、建物全体が何点になるのかを評価します。

各市区町村は、再建築費評点基準表に基づいて標準的な家屋の基準からの違いを数値化します。家屋の構造の違いや築年数の違いなどにより、再建築費評点数は増減し、木造より鉄骨コンクリートのほうが、また築年数が浅いほうが固定資産の評価額は高くなる傾向にあります。

積み木の上で考える人

2つを合計する

上記で求めた土地と建物、それぞれの固定資産税額を合わせたものが住居の固定資産税の納税額になります。固定資産税の計算は、評価額と課税標準額の違いが複雑なため、それぞれの違いを把握して正しく計算しましょう。

固定資産税の減額措置

ここまで固定資産税の計算方法についてお伝えしてきましたが、納税するのであればできるだけ税負担を少なくしたいと考える方も多いのではないでしょうか?そんな方に向けて、ここから固定資産税を軽減する方法をご紹介します。

住宅用地の特例による軽減措置

住宅用地に建てられた家の場合、土地にかかる固定資産税が軽減されます。住宅用地とは、居住を目的とした土地のことです。住宅用地のなかでも、敷地面積が200㎡以下のものを「小規模住宅用地」といい、固定資産税が6分の1、都市計画税は3分の1に減税されます。それ以外の住宅用地は、「一般住宅用地」とされ、固定資産税が3分の1、都市計画税は3分の2となります。

この軽減措置は、土地が宅地であれば適用可能です。逆に、建物が住宅として使われなくなったり、更地になったりした場合は適用外となるため、注意しましょう。

新築住宅に対する軽減措置

住宅を新築した場合も、軽減措置を受けられます。対象となるのは、2024年(令和6年)3月31日までに新築された物件です。新築住宅を購入した後の一定期間、固定資産税が2分の1に軽減されます。

対象となる期間は住宅の種類によって異なり、一戸建ての場合、新築から3年間、マンションの場合は5年間にわたって減税の対象になります。ただし、居住部分の床面積が50㎡以上280㎡以下という条件を満たす必要があるため、注意が必要です。

住宅

認定長期優良住宅に対する軽減措置

新築した住宅が「認定長期優良住宅」の場合は、新築住宅に対する軽減措置の期間が延長されます。認定長期優良住宅とは、国の定めた審査により、耐震性や耐久性などが優れていると認定された住宅です。

先にご紹介した新築住宅に対する軽減措置と同様に2024年(令和6年)3月31日までに新築された住宅が対象となり、一定期間、固定資産税の納税額が2分の1に軽減されます。認定長期優良住宅に対する軽減措置の期間は一戸建ての場合、購入後5年間、マンションなら7年間と定められています。

建て替えや改修した住宅に対する軽減措置

減税対象となる建て替えやリフォームを行った場合、翌年度の固定資産税が軽減されます。対象となるのは、2024年(令和6年)3月31日までに改修が行われた住宅です。対象となる建て替えやリフォームとしては、以下の項目が挙げられます。

・耐震リフォーム
・バリアフリーリフォーム
・省エネリフォーム
・長期優良住宅リフォーム

それぞれのリフォームの基本的な軽減額は、以下の通りです。

リフォーム内容軽減額
耐震リフォーム2分の1
バリアフリーリフォーム3分の1
省エネリフォーム3分の1
長期優良住宅リフォーム3分の2

なお、軽減措置を受ける場合は、新築なら住宅を建てた翌年の1月31日まで、リフォームなら工事終了後3か月以内に住宅の所在地を管轄する市区町村へ「固定資産税減額申告書」と、「長期優良住宅の認定通知書」の写しを提出して申告しましょう。

固定資産税についての書類

納税額のシミュレーション

ここからは、土地と家屋の固定資産税についてそれぞれシミュレーションをしてみましょう。条件は以下のように設定します。

・土地の評価額 3,600万円
・家の評価額 2,500万円
・敷地面積150㎡の住宅用地に建てられた一戸建て住宅
・建設年月 2024年3月以前
・税率 1.4%

土地の固定資産税額

土地の固定資産税は以下のように計算できます。

まずは、固定資産税課税標準額を求めます。
= 3,600万円(土地の評価額) × 1/6
= 600万円

先にお伝えした通り、この場合は敷地面積が150㎡以下のため、小規模住宅用地となり、軽減措置が適用されます。そのため、土地の評価額に6分の1をかけて、固定資産の課税標準額は600万円と求められました。次に、600万円の課税標準額をもとに、固定資産税を計算していきましょう。計算式を当てはめると、固定資産税額は以下のようになります。

固定資産税
= 600万円 × 1.4%
= 8.4万円

計算をしながら悩む女性

家屋の固定資産税額

家屋の固定資産税は以下のように計算できます。

固定資産税課税標準額
= 2,500万円

固定資産税額
= 2,500万円(固定資産税課税標準額)×1.4%(税率)
= 35万円

ただし、新築して3年までの建物の場合は、税額の軽減を受けられるため、固定資産税は2分の1の17.5万円(35万円×1/2)となります。加えて、対象の建物が、認定長期優良住宅であれば、固定資産税に対する軽減対象の期間が、建築後5年間となります。

上記のように、固定資産税は自分で求めることができるため、自分は大体どれくらい固定資産税を支払わなければいけないのか把握しておくと安心でしょう。

電卓を持って考える夫婦

固定資産税の支払い方法

実際に固定資産税は、どういった方法で支払いができるのでしょうか?ここからは、固定資産税の支払い方法について見ていきましょう。

現金払い

複数の支払い方法のなかでも最も一般的とされている支払い方法は、金融機関の窓口や都道府県事務所、コンビニエンスストアなどで現金で納税する方法です。

各自治体から郵送された納付書を持参すれば、事前の手続きや手数料もかからずに支払うことができます。また、現金で支払った場合は、その場ですぐに領収証書の発行が可能です。

注意点としては、コンビニエンスストアで納付する場合は、納付書1枚あたり30万円までしか取り扱いができないことが挙げられます。30万円を超える場合は、金融機関や各自治体の窓口で納める必要があります。

口座振替

口座振替は、一度申し込みを行えば、継続的に口座から自動引き落としされるため、支払いを忘れることがありません。また、手数料がかからないという特長もあります。

しかし、口座振替で納税する場合は、領収証書を受け取ることはできません。また、口座振替の申し込み期限は、振替日よりも1か月ほど前に設定されているため、引き落としのタイミングは問題ないか必ず確認しましょう。

ネット決済

ネットでの決済には以下のような方法があります。

クレジットカード決済
自治体によっては、クレジットカード決済に対応している場合もあります。クレジットカード決済をする最大のメリットとしては、固定資産税の納付でもポイントやマイルがたまるという点があるでしょう。

ただし、クレジットカードを利用して支払う際は、手数料が発生する点には注意が必要です。東京都の場合、税額1万円ごとに75円(税別)がかかり、納付金額が高くなればなるほど手数料も高くなります。

スマホ決済
スマホ決済は、スマホ決済アプリを利用して納付する方法です。便利で気軽なスマホ決済ですが、2重納付になってしまわないよう注意が必要です。スマホ決済を行う場合は、納税通知書に記載されたバーコードを読み取って支払いを行うため、領収した印のない通知書が手元に残ります。誤って一度支払ったものを、再度支払わないよう、メモを残しておくとよいでしょう。

ペイジー決済
ペイジーマークのある納付書の場合は、ペイジー決済をすることができます。ペイジー決済とは、公共料金や税金などをインターネットバンキングやATMを利用して支払う方法です。インターネットバンキングの場合は、スマホやPCがあれば自宅からでも支払いができるため、時間に縛られず気軽に納付できます。

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携帯とクレジットカード

固定資産税を計算して資金計画に役立てよう!

ここまで固定資産税の計算方法や減税措置についてお伝えしてきました。固定資産税は、固定資産の評価額と税率が分かれば自分で計算することができます。納税通知書を待たずに金額を把握できるため、資産計画に役立つといえるでしょう。

土地や家屋が軽減措置の対象となる場合は、申請を行って節税することができます。そのため、自分の不動産が条件に当てはまるか確認しておきましょう。軽減措置の対象となる場合は、自分で申告期限までに手続きを行う必要があります。

また、固定資産の評価額が記載された納税通知書が届いたら、まずは自分で内容をしっかり確認しましょう。そのうえで、不安や疑問点を税理士に相談してみるのがおすすめです。固定資産税は、家や土地を所有しているだけでかかる税金です。固定資産税に関する知識を身に付けて、できる限り賢く納税しましょう!

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宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/