住宅ローン控除はいつまで利用できる?税制改正後の変更内容や申請方法も解説!

家を購入するときに利用すると費用負担が軽減される制度が「住宅ローン控除」です。利用条件や控除期間は、情勢によって変化します。今回は、住宅ローン控除がいつまで受けられるのか、税制改正後の控除期間や申請方法をお伝えします。

目次
  1. 情勢によって変化する住宅ローン控除
  2. 住宅ローン控除とは?
  3. 住宅ローン控除の適用期間はいつまで?
  4. 住宅ローン控除の借入限度額はどうなる?
  5. 住宅ローン控除の申請手続きはいつまで?
  6. 最新情報を引き続きチェックしよう
記事カテゴリ 売却 費用 税金 ローン
2023.06.30

情勢によって変化する住宅ローン控除

マイホーム購入をする人にとって利用できるとうれしい減税の制度が、住宅ローン控除(住宅ローン減税)です。できることなら、住宅ローン控除の恩恵を受けて費用を削減したいですよね。ですが、「住宅ローン控除って、一体いつまで利用できるのだろう?」といった疑問を持っている方もいるかもしれません。住宅ローン控除は、情勢によってその都度内容が見直されています。

実際に、住宅ローン控除は2021年に終了する予定でしたが、2022年の税制改正によって2025年まで延長されました。その背景には、新型コロナウイルスの影響で落ち込んでしまった経済の回復と、カーボンニュートラル(2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする宣言)を目指した対応を行う必要があることが挙げられます。

まず、新型コロナウイルスに伴う経済への打撃を見すごして予定通り住宅ローン控除を終了すると住宅取得への負担が増えることから、マイホームを購入する人が減ってしまう可能性があります。マイホームへの需要喚起のためにも、住宅ローン控除の延期が有効な手段の1つと考えられました。

また、カーボンニュートラルを目指すためには、温室効果ガスの排出を減らす必要があります。そのため、居住しても温室効果ガスの排出を抑制できるような省エネ住宅や、太陽光発電設備のある住宅を増やさなければなりません。そこで省エネ住宅増設の施策として、省エネ基準に適合した住宅を購入する場合に制度の対象となる借入限度額を拡充させることで、対象住宅のさらなる普及を目指しています。

この住宅ローン控除を受けるためには、2025年末までに住宅ローンで購入したマイホームに入居する必要があります。注意点は、売買契約の締結日ではなく、この期限までに入居していなければならないということです。不動産取引には数週間~数か月かかるため、事前にスケジュールを立てておくと安心ですね。

情勢に応じて変化する住宅ローン控除を把握すると、より費用対効果の高い住宅ローン返済プランを立てられるでしょう。ここでは住宅ローン控除の利用はいつまでなのか、住宅ローン控除に関する最新情報も含めてお伝えするのでぜひ最後までご覧ください。

控除、TAXの積み木と家の模型

住宅ローン控除とは?

住宅ローン控除とは、住宅ローンの金利の負担を軽減する制度のことです。控除額は年間数十万円に上るため、住宅ローンを利用している方は、ぜひ活用したい制度です。ここからは住宅ローン控除の控除期間や控除を受けるための要件、計算方法といった基礎知識をまとめてご紹介します。

控除期間

これまで住宅ローンの控除期間は特例措置が適用されたときのみ13年で、それ以外は原則として10年でした。しかし、2022年の税制改正後は今までと異なり、以下のように住宅の種類によって控除期間が決まっています。

住宅の種類控除期間
新築住宅・買取再販住宅(要件を満たしたもの)13年
中古住宅10年

中古住宅の住宅ローン控除期間は、住宅の環境性能にかかわらず10年です。

要件

住宅ローン控除が適用される要件も税制改正によって変わり、緩和されたものもあれば、より厳しくなったものもあります。さらに、マイホームの改築や、環境によい住宅として買取再販認定された家を購入する際など状況によっても、控除を受けられる要件が異なるのです。住宅ローン控除の要件について、項目別に見ていきましょう。

築年数
税制改正前は、マンションのような耐火住宅が住宅ローン控除の適用を受けるための築年数は25年以内、木造の一戸建て住宅のような非耐火住宅は20年以内でした。改正後は、昭和57年以降に建てられた住宅かつ新耐震基準に適している住宅であれば築年数にかかわらず、控除の対象となります。

積み木で作られた税金の文字と家と札束

床面積
床面積50㎡以上の住宅には住宅ローン控除が適用されます。ただし例外として、所得1,000万円以下で2023年までに建築確認が済んでいる新築住宅を建てた場合には、床面積40㎡以上で対象となります。

合計所得金額
改正前の合計所得金額の要件は3,000万円以下でした。しかし、改正によって2,000万円以下に変更され、合計所得金額の要件が厳しくなっています。

計算方法

改正前は、年末時の住宅ローンの借入残高に対する1%(控除率)が控除されることになっていましたが、改正によって、控除率が0.7%へ変更されました。控除額は以下の計算方法で算出できます。

その年の住宅ローン控除額 = 年末の住宅ローン残高 × 住宅ローン控除率

つまり控除率が引き下げとなったことから、毎年の控除額も減額してしまいます。

その年の住宅ローン控除額は、その年に納める所得税から先行して控除され、残った額については、一定の限度額までは住民税から差し引かれていきます。なお、住民税から控除される金額は、これまで「所得税の課税所得の7%」または136,500円が上限でした。しかし税制改正によって控除額の上限は、「所得税の課税所得の5%」または97,500円に減額されてしまいました。

所得税と住民税が既に給料から天引きされている場合は、税を納め過ぎたことになり、確定申告後、税務署から還付金がもらえることになります。

所得税青色申告決算書と電卓とペン

住宅ローン控除の適用期間はいつまで?

住宅ローン控除の適用期間はいつまでになるのでしょうか?住宅ローンを組む自宅への入居時期を踏まえて、確認しましょう。住宅ローン控除の適用期間は国内情勢によってその都度見直され、以下のように入居時期や条件によって適用期間が変わります。

入居時期適用期間がなされる条件適用期間住宅ローン控除がなされる背景・国内情勢
2007年(平成19年)~2008年(平成20年)末10年 or 15年 地方分権化。2007年に国に納税される所得税から、地方に納税される住民税へと納税先が移る「税源移譲」があった。そこで個人が住宅ローン控除の適用期間10年間か15年間かを選ぶ措置が設けられた。
2009年(平成21年)1月~2019(令和元年)年9月末10年 2008年のアメリカにおけるリーマンショック以降、日本を含む世界各国で景気の悪化が顕著となる。
2013年10月消費税8%に引き上げられる。
2019年(令和元年)10月~2020年(令和2年)12月末13年2019年10月、消費税10%に引き上げられる。
2021年(令和3年)1月1日~2022年(令和4年)12月末 ・住宅購入費用で消費税率が10%だった
・コロナ禍で2020年12月末までに入居できなかった
・注文住宅の場合は2020年9月末、分譲・増改築の場合は2020年11月末までに契約を終えている
・2021年12月末までに入居を終えている
13年2020年4月コロナ禍の緊急事態宣言が発令された。
2021年(令和3年)1月1日~2022年(令和4年)12月末上記の要件が適用されず、住宅購入費用で消費税率が8%か10%だった10年2020年4月コロナ禍に緊急事態宣言が発令された。
2021年(令和3年)1月1日~2022年(令和4年)12月末 住宅購入費用で消費税率5%だったり、中古住宅の個人間売買で消費税が非課税となったりしている場合10年
2023年(令和5年)1月1日~2025年(令和7年)12月末適用にあたって細かい条件がなされた10年 or13年2021年10月岸田内閣発足、コロナ禍の終息がおぼつかない。

エコ住宅と青空

住宅ローン控除の借入限度額はどうなる?

税制改正によって、住宅ローン控除の控除率だけでなく、控除の対象となる借入限度額も変更されました。住宅の環境性能の度合いによって細かく分けられたためです。

「カーボンニュートラルの実現を支援する」という目標のもと、長期優良住宅や低炭素住宅などの認定住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅に対して住宅ローン控除措置が行われます。以下の表は、新築住宅や、買取再販住宅における各住宅環境性能ごとの住宅ローン控除の上限額の変化と控除期間を表しています。

また、中古住宅の借り入れ限度額と控除期間は以下の通りです。

住宅の環境性能借り入れ限度額借り入れ限度額控除期間
2023年まで2024、2025年
長期優良住宅や低炭素住宅などの認定住宅5,000万円4,500万円13年
ZEH水準省エネ住宅4,500万円3,500万円13年
省エネ基準適合住宅4,000万円3,000万円13年
上記以外の住宅3,000万円0円13年

それぞれの住宅の環境性能は、以下のように分けられています。

住宅の環境性能借り入れ限度額控除期間
2022~2025年入居
長期優良住宅・低炭素住宅ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅3,000万円10年
上記以外の住宅2,000万円10年

上記でもお伝えしたように、中古住宅に対する住宅ローン控除の適用条件は現状の築年数の制限がなくなり、昭和57年以降に建築された住宅は新耐震基準適合住宅として住宅ローン控除の対象となります。

環境性能が高い住宅の区分概要
長期優良住宅 住みやすいだけでなく、自然災害や省エネなど複数のポイントから長期的に住みやすい対策をしている住宅のこと
低炭素住宅二酸化炭素の排出を抑える対策をしている住宅のこと
省エネ基準適合住宅 日本住宅性能表示基準に基づいて、一次エネルギー消費量や、断熱性能の基準を満たしている住宅のこと
ZEH水準省エネ住宅 一次エネルギー消費量や、断熱性能の基準を省エネ基準適合住宅よりもさらに満たしている住宅のこと

確定申告書と電卓とペン

住宅ローン控除の申請手続きはいつまで?

住宅ローン控除を受けるためには自分で提出書類をそろえ、期限内に申請手続きを行う必要があります。自営業かサラリーマンか、初年度か2年目かによっても申請のフローが変わってくるため、以下で詳しく見ていきましょう。

住宅ローン控除を初めて受ける場合

住宅ローン控除を初めて受ける場合は、入居した翌年の確定申告時に申請を行います。普段確定申告をしないサラリーマンでも、住宅ローン控除を受けるためには確定申告が必要です。確定申告の時期である2月16日~3月15日の間に必要な書類や、証明書の写しなどを用意しておきましょう。

住宅ローン控除を受けて2年目以降

2年目以降は、年末調整を受けるサラリーマンは確定申告の必要はありません。「年末残高等証明書」と「住宅借入金等特別控除証明書」、「住宅借入金特別控除申告書」の3点を会社に提出します。自営業の方は2年目以降も確定申告が必要なので、注意しましょう。

家の模型と札束

最新情報を引き続きチェックしよう

住宅ローン控除は情勢に応じて控除期間や控除率が変更されるので、最新情報は必ずチェックをしましょう。また、住宅ローン控除は入居や契約の時期に応じて適用条件が変わります。適用条件をしっかり確認しながら計画的に住宅ローンの返済プランを練ると、スマートに節税ができるでしょう。

2022年の税制改正によって、控除率や控除期間、借入限度額などに変更が加わっています。今後家を買おうかと迷っている方や、住宅ローン控除を利用したいと考えている方は、ぜひ住宅ローン控除への知識を深めてくださいね。

自宅を売却し、新しく物件の購入を検討している場合は、三井のリハウスにご相談ください。三井のリハウスでは、売却と購入両方のサポートを行っております。住宅ローン控除に関するお悩みにもお答えしますのでお気軽にお問い合わせください。

宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/