共有名義不動産の売却はできる?方法や流れについて解説!

共有名義の不動産を売却することは可能です。方法としてはいくつかありますが、どの場合でも必要書類を準備しなければいけません。今回は、共有名義の売却方法や流れ、想定できるトラブルについてご紹介します。

目次
  1. 共有名義不動産を売却する方法とは?
  2. 共有名義不動産の売却時に必要な書類
  3. 共有名義不動産を売却する際の流れとは?
  4. 共有名義不動産で起こりうるトラブルとは?
  5. 共有名義不動産の売却はなるべく早めに!
記事カテゴリ 売却 シニア
2022.02.11

共有名義不動産を売却する方法とは?

共有名義不動産とは、複数人で所有している不動産のことをいい、共同名義不動産や共有不動産とも呼ばれます。共有者は、共有持分と呼ばれる割合に応じて、該当の不動産を所有していることになります。

そんな共有名義不動産ですが、パートナーと一緒に購入した、親から相続したなどの理由で一度は所有したものの、売却をしたくて悩んでいるという人もいるのではないでしょうか?共有名義不動産は、単独名義不動産と比べて売却に時間と労力がかかる可能性が高いですが、売却は可能です。

この記事では、共有名義不動産の売却の方法や流れ、起こりうるトラブルについて説明します。まずは、共有名義不動産を売却する方法について見ていきましょう。

住宅街

全員の同意を得て不動産全体を売却

共有者全員の同意を得られる場合は、不動産全体をそのまま売却することが可能です。ほかの方法と違って相場通りの価格で売却ができ、売却してまとまったお金にしてしまえば、共有者間で分配することが簡単になります。

しかし、共有者のなかに1人でも反対者がいると手続きは進められませんので、共有者の人数が多い場合は、難しくなります。また、原則的に、売却の利益や売却の際にかかる諸費用は持分に応じて分けるので、その点をあらかじめ確認しておきましょう。

自分の持分のみを売却

不動産のなかでも土地の場合は、自分の持分のみを売却することが可能です。多くの場合、専門の買取業者に買い取りを依頼することになりますが、単独名義不動産と比較して、売却価格が大幅に安くなる点に注意しましょう。

また、買取業者がほかの共有者に強引に持分の売買を持ちかけ、トラブルに発展する恐れがありますので、売却する前にほかの共有者に連絡をしておくとよいでしょう。

●共有持分の売却に関する記事はこちら
共有持分は売却できる?

ほかの共有者に持分を買い取ってもらう

自分の持分のみを売却したい場合は、ほかの共有者に売却する方法があります。売却先の共有者がその不動産を利用している場合は、共有持分を多く持つとメリットが大きいため、売却話がスムーズに進む可能性が高いでしょう。

買取業者に売却するのと比べて、トラブルに発展するリスクも小さいため、自分の持分のみを売りたい場合は、買い取ってくれる共有者がいないかを最初に確認しておきましょう。

土地の売却

持分割合によって分筆

土地のみの不動産の場合は、土地を分筆して単独名義にすることができます。分筆とは、1つの土地を複数の土地に分けて、登記をし直す手続きのことです。一度単独名義にしてしまえば、自由に売却することが可能となります。

分筆の際は、所有権移転登記の手続きや、専門家の手による測量を行う必要があるため、時間と費用がかかる点に注意しましょう。

リースバックを利用する

共有者の誰かが対象となる家に居住しており、不動産全体の売却に反対している場合は、リースバックを利用するのもよいでしょう。リースバックとは、一度不動産会社に家を売却し、改めて賃貸契約を結ぶことで、元の家に住み続ける方法です。居住者はそのまま住み続けつつ、売却によりまとまったお金を得ることが可能です。

しかし、家賃が相場よりも高くなる傾向にあり、場合によっては家賃の支払総額が住宅ローン返済額を上回ることもあります。また、その家は不動産会社の所有物となるため、家の使用について新たなルールが設けられたり、将来的に賃貸契約を更新できなくなったりする可能性もあります。リースバックを利用する際は、信頼できる不動産会社を選び、事前に契約内容を十分に確認するようにしましょう。

●リースバックに関する記事はこちら
住まいのリースバックとは?メリットや注意すべきトラブル事例を解説

共有名義不動産の売却時に必要な書類

共有名義不動産全体を売却する際に必要な書類は、基本的に通常の不動産売却の場合と変わりません。しかし、書類によっては共有者全員分が必要になるため、共有者が多かったり、住んでいる場所が遠方であったりする場合は、用意するのに時間がかかります。あらかじめ必要な書類を把握しておき、早めに準備を進めておきましょう。

書類

不動産に関する書類

不動産の所有者や土地を証明するために、以下の書類が必要です。

登記識別情報(登記済権利証)
不動産の登記が完了した際に、登記名義人に対して交付されるものであり、その登記人が不動産の所有者であることを証明するために必要です。2006年までは登記済権利証という書類が発行されていましたが、2006年以降は12桁の英数字からなる登記識別情報が発行されるようになりました。不動産の売却の際には、登記識別情報か登記済権利証のどちらかが必要となります。

地積測量図、境界確認書
売却する不動産の土地の面積や、隣地との境界線をはっきりとするために必要な書類です。昔から代々受け継がれてきた土地や家などでは、これらの書類が用意されていないこともあるので、その場合は土地家屋調査士に依頼して測量してもらう必要があります。測量には多額の費用と長い期間がかかる場合があるので、必要だと判明した場合はすぐに依頼をしましょう。

共有者全員が用意する書類

以下の書類は、共有者全員が用意する必要があります。

・実印
・印鑑証明書
・身分証明書
・住民票

これらの書類を用意して、共有者全員が実印を押印し、契約書に署名をすることで売却が可能となります。

共有名義不動産を売却する際の流れとは?

共有者全員の同意を得て、共有名義不動産全体を売却するには、多くの手間と時間がかかります。売却までの流れをスムーズに進められるよう、1つずつ説明していきます。

不動産売却

[ 1 ] 共有者が誰なのかを把握する

売却の前には、共有者が誰なのかを明確にすることが大事です。共有名義不動産では、相続が繰り返され、知らないうちに共有者が増えていることがあります。あらかじめ権利関係を正確に把握しておかないと、後になって共有者が発覚して、売却手続きがやり直しになる恐れもあります。

共有者は登記事項証明書で確認することができます。法務局に行けば簡単に取得できるため、忘れずに確認しておきましょう。

[ 2 ] まとめ役を決める

共有者が多ければ多いほど、全員の同意を得るのは難しくなります。そのような場合は、共有者間の意見をまとめるまとめ役の存在が重要となります。不動産の売却では、不動産に関する知識が必要なだけでなく、弁護士や税理士といった専門家の手配や、隣地との境界問題の対処などを行うことがあり、共有者内だけで全てに対応するのは困難です。

そのため、売却の話を進める際は、共有名義不動産売却の経験豊かな専門的不動産業者(実務者)に、まとめ役を依頼することをおすすめします。不安な点や疑問な点があったときに、専門的な視点からアドバイスをもらうことができ、話し合いをスムーズに進められるでしょう。

[ 3 ] 費用の負担割合を決める

不動産売却をする際には、さまざまな費用がかかります。代表的なものは以下の通りです。

・仲介手数料
・測量費
・抵当権抹消費用
・印紙税
・登録免許税
・譲渡所得税

これらの費用の負担割合をあらかじめ決めておかないと、後になってトラブルに発展する恐れがあります。そのような事態を避けるためにも、売却前のうちに必要な費用をしっかりと把握して、話し合いをしておきましょう。基本的には、持分割合に応じて費用を負担するのがおすすめです。

●不動産売却の際にかかる諸費用に関する記事はこちら
【家の売却ガイド】初めて不動産を売る人向けの基礎知識

諸費用

[ 4 ] 最低売却価格を決めて売却活動を始める

共有名義不動産を売却する際は、売り出し価格のほかに、最低売却価格を決めてから売却活動を始めることをおすすめします。不動産売却では、長い間売れなかった場合や、購入希望者による値下げ交渉が行われた際に、売り出し価格から値下げをすることがあります。その際に、あらかじめ最低売却価格を決めておけば、売却後の金銭トラブルを防ぐことができますよ。売却価格の相場を知る際は、不動産の査定を利用するとよいでしょう。

●不動産の無料査定はこちら
【三井のリハウス】不動産売却・査定・相談

価格を決めたら、売却活動を始めることになりますが、売買契約、重要事項説明、代金決済などの重要な場面では、基本的には共有者全員が立ち会う必要があります。しかし、立会いが困難な共有者がいた場合、委任状を出すことでほかの共有者に手続きを委託することが可能です。委任状に決まった書式はありませんが、誤った情報の記載や、情報の不足がないように注意しましょう。

[ 5 ] 確定申告を行う

不動産を売却して利益が出た場合は、所得税と住民税といった税金を支払わなければならず、そのためには確定申告を行う必要があります。確定申告は、共有者全員が個別に行う必要があるため、忘れずに行いましょう。

また、売却した不動産が一軒家やマンションのような、居住用財産である場合は、条件を満たせば譲渡所得税から3000万円までを控除できる制度を利用できます。この制度を利用する際にも、確定申告が必要となります。

●居住用財産3000万円控除に関する記事はこちら
居住用財産3000万円控除|不動産売却時に活用できる控除とは?

共有名義不動産で起こりうるトラブルとは?

共有名義不動産にはさまざまなトラブルが付き物です。家族や親族が共有者の場合は、関係が悪化してしまう恐れもあるため、代表的なトラブルについてあらかじめ把握しておきましょう!

悩む男性

共有物分割請求をされる可能性がある

「共有物分割請求」とは、共有名義不動産の共有状態を解消し、ほかの共有者に分割を求めるための手続きのことです。各共有者には、共有物分割請求によっていつでも共有状態の解消を求める権利が認められています。共有物分割請求には法的強制力があるため、各共有者は共有状態の解消のために話し合いをしなければなりません。

話し合いで解決しない場合は、裁判所にて共有物分割請求訴訟を起こし、判決で不動産の処遇を決めることになります。その際に、判決によっては不動産が競売にかけられ、相場よりも売却代金が大幅に下がってしまう可能性もあります。

このような事態を起こさないためにも、早いうちに売却や分筆などの話し合いを行い、できる限り別の方法で共有状態を解消しておくことをおすすめします。

買取業者によって強引な売買を持ちかけられる

買取業者に自分の共有持分のみを売却した場合、その買取業者がほかの共有者に対して強引な売買を持ちかける可能性があります。共有持分を買い取った買取業者は基本的に、その後に以下のどちらかを行います。

・ほかの共有者全員の共有持分も買い取って、不動産全体の所有権を獲得しようとする
・買い取った共有持分をほか共有者に転売する

どちらにせよ、買取業者は残された共有者に対して売買を持ちかけることになるため、結果的にほかの共有者を困らせてしまうことになります。このように、買取業者への共有持分の売却にはリスクが伴うので、売却前にほかの共有者としっかりと相談をして、可能であればほかの共有者に売却することをおすすめします。

業者の提案

離婚時の財産分与が複雑になる

夫婦で共有名義になっている場合、離婚時の財産分与が複雑になり、離婚協議が難航する可能性があります。共有状態をそのままにすると、離婚後も住宅の売却やリフォームの際に協議をする必要があり、お互いの関係を続けることになります。そのため、離婚時には基本的に共有状態を解消するべきだといえるでしょう。共有状態を解消する方法は以下の2つです。

どちらかが相手の共有持分を買い取る
どちらかが相手の共有持分を全て買い取り、家を単独名義にしてしまえば共有状態は解消されます。その際は、どちらかが相手に財産分与という形で共有持分を全て譲り、代わりに家の価値の半額分の「代償金」を受け取る、という流れになります。また、夫婦間での合意があれば、代償金なしで相手に家を全て譲ることも可能です。ただし、住宅ローンが残っている場合は、完済するまで共有者の名義変更が認められない場合もあるので注意しましょう。

不動産を売却して代金を分け合う
夫婦間で合意を得て、不動産全体を売却して現金化してしまえば財産分与もしやすいでしょう。しかし、財産分与では基本的に夫婦で2分の1ずつ財産を分けることになるので、持分割合が2分の1ずつでない場合に、トラブルに発展する恐れがあります。こちらについても住宅ローンが残っている場合は、完済するまで不動産の売却が認められない可能性があります。

●離婚時の財産分与に関する記事はこちら
離婚に伴う財産分与…家や住宅ローンは処理する方法とは?

共有名義不動産の売却はなるべく早めに!

共有名義不動産を、長期間共有名義のままにしておくのはリスクが伴います。これまでに紹介してきたトラブルに注意するのはもちろん、共有持分の相続にも気を付けなければなりません。

不動産の共有者が亡くなると、その人の持分は相続の対象となります。つまり、相続人が複数人いる場合、共有者が2人から3人、3人から4人と増えていく可能性があるということです。このように、時間の経過と共に共有者全員の意見をまとめることが難しくなり、売却の話も進めにくくなるため、共有名義不動産の売却を少しでも考えている場合は、なるべく早く動き始めましょう!

どうしても売却が難しい場合は、共有持分の放棄という方法もあります。共有持分を放棄すると、放棄した持分はほかの共有者に帰属するため、その共有者は贈与税を支払う必要があります。放棄の際には、ほかの共有者にあらかじめ報告しておくとよいですね。

共有名義不動産の売却について困っている場合は、まずは共有名義不動産に詳しい専門家に相談して、アドバイスをもらうことをおすすめします。アドバイスを生かして、慎重かつ迅速に行動することで、うまく売却できる可能性も上がるでしょう!

宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
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