Column / 2020 12,24

離婚にともなう財産分与…家や住宅ローンはどうなるの?

やむを得ず離婚することになると多くの手続きが発生します。そのうちの1つが、「財産分与」です。気になるポイントはいろいろあると思いますが、なかでも「夫婦が住んでいた家」と「残った住宅ローン」については、どうするのか見当がつかない方がほとんどではないでしょうか?そこで今回は、財産分与における住まいと住宅ローンの扱いについて、分かりやすくご紹介します。

宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けにの節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/

離婚にともなう「財産分与」とは?

やむを得ず夫婦が離婚することになったときには、多くの手続きが発生します。そのうちの1つが、「財産分与」です。

「財産分与」とは、夫婦が婚姻関係を結んでいた間に築いた財産を、離婚するときに分け合うことをいいます。夫婦の間に共有の財産がある限り、離婚するときには必ず行わなければならない手続きです。

「どこまでの財産が分与の対象になるの?」「分け合う割合はどのくらい?」など、気になるポイントはいろいろありますが、なかでも「夫婦が住んでいた家」と「残った住宅ローン」については、どうするのか見当がつかない方がほとんどではないでしょうか?

そこで今回は、財産分与における住まいと住宅ローンの扱いについて、分かりやすくご紹介します。

夫婦

財産分与の種類

財産分与には、次の3種類があります。

●清算的財産分与
一般的に「財産分与」という場合は、この清算的財産分与を指します。婚姻中に夫婦が築いた財産を、それぞれの貢献の度合いに応じて分配する方法です。

●扶養的財産分与
離婚後の配偶者が、「収入が少ない」、「専業主婦(夫)である」といった事情から生活に苦しむと見込まれる場合、相手を扶養するために行う財産分与です。具体的には、生活費として決まったお金を一定期間支払うことを、夫婦間で取り決めます。

●慰謝料的財産分与
不倫やDVなど離婚の原因を作った側が、慰謝料の意味を含めて行う財産分与です。本来、財産分与と慰謝料は別個のものですが、これらを区別せずにまとめて相手へ渡すという意味で、このように呼ばれます。

財産分与の対象となるもの

夫婦が結婚している間に築いた財産は、どちらの名義であっても「共有財産」と呼ばれ、全て分与の対象になります。具体的には、お金(現金、預金)、生命保険(積立型)、株券、不動産、年金などのほか、場合によっては退職金も含まれます。

また、ローンや借金といった「マイナスの財産」も分与の対象になりますが、どちらかが個人的に作った借金は共有財産に含まれません。

財産分与の対象にならないもの

共有財産以外の、相手や自分だけが所有している財産は「特有財産」と呼ばれ、分与の対象にはなりません。たとえば、独身時代の貯金、嫁入り道具として持参した家財、どちらかの親から相続した遺産、別居後に築いた財産などがこれに当たります。

分与の割合

財産分与の割合は、原則的には2分の1とされています。しかし、実際には家庭ごとの事情が考慮され、協議によってどちらかが多く受け取る場合もあるので、「割合はケースバイケース」といえるでしょう。

以上が、財産分与の基礎知識です。次から、住まいやローンの具体的な分与の方法についてご紹介していきましょう。

家やマンションを財産分与するには?

夫婦と家

家やマンションといった住まいを財産分与するにあたり、まず確認したいのは「その住まいが分与の対象に含まれるか」という点です。

・夫婦共同で購入したもの
・結婚している間に購入したもの

基本的には、上記2点のいずれかに当てはまる住まいが分与の対象になります。
「どちらかの親から相続した」「どちらかの独身時代の貯金で購入した」などの住まいは分与の対象になりませんが、判断が難しい場合は弁護士に相談しましょう。

住まいが分与の対象に含まれることが確認できたら、次はどのように財産分与するかを決めていきます。具体的な方法は、次の2つです。

売却して現金化する

家やマンションを売却して現金に変え、それを分け合う方法です。
住まいの売却価格が住宅ローンの残額を上回る「アンダーローン」の状態であれば、この方法を取るのが最も簡単といえるでしょう。売却したお金でローンを返済し、残ったお金を夫婦平等に分け合うことができます。
ただし、住まいに買い手がつくまで財産分与が終わらないという点には注意が必要です。

住まいを片方に譲り、もう片方は現金を受け取る

まず、固定資産税の納税通知書を確認する、不動産鑑定士に依頼するなどして、住まいの価値を調べます。そして、算出された評価額の半分を片方が現金で受け取り、もう片方は住まいを引き取るという方法です。
たとえば、子どもの通学の事情で引っ越しを避けたい場合は、この方法を取ればそのまま同じ所で生活を続けることができます。

ただし、住まいの売却価格よりも住宅ローンの残額が高い「オーバーローン」の場合、売却した現金でローンを返しきることができないので、残りのローンの支払いについては別途話し合わなければなりません。
次は、この残ったローンをどうするのかについて見ていきましょう。

どちらかが住み続ける場合、住宅ローンはどうなる?

どちらかが住み続ける場合のローンの処理については、「ローン債務者はどちらか」「住まいに残るのはどちらか」といったシチュエーションによって、対応方法が変わります。
ここでは、一般的に多いパターンを3つご紹介しましょう。

家と電卓

債務者が夫で、夫が住み続ける場合

ローンを借りている夫が、持ち家に住みながらそのまま支払いを続けるという、最もシンプルなパターンです。
ただし、妻がローンの連帯保証人になっている場合、夫のローン返済が滞ると妻に支払い命令が下ってしまう場合があります。このような事態を避けるには、連帯保証人の変更手続きを行うことが必要です。

債務者が夫で、妻が住み続ける場合

離婚後も妻が住まいに残り、夫がローンを支払い続けるというパターンです。離婚後に妻が住まいを確保しにくい、妻が子どもを引き取るなどの場合に、この方法が取られることがあります。

妻にとっては有利に見える方法ですが、夫のローン返済が滞ると住まいを競売にかけられ、立ち退きを迫られるおそれがあるので注意が必要です。返済が滞った場合に備えるには、公正証書を作成しておくとよいでしょう。公正証書は、全国にある公証役場で作成することができます。

夫婦共同でローンを借りている場合

夫婦でローンを支払っている住まいからどちらかが出て行くと、契約違反になってしまいます。そこで、「共有名義になっているローンを、家に残る方1人の単独名義に変更したい」と望む夫婦は少なくありません。
ところが、ローン返済中の名義変更は、原則として認められないことになっています。審査を通して決めた契約内容に対して、条件が変わってしまうというのがその理由です。
そのため、単独名義に変更したい場合は、ローンの借り換えを検討するとよいでしょう。

財産分与の話し合いは早めに行おう

ここまでご紹介してきた通り、離婚に伴う住まいや住宅ローンの処理には、いろいろな難しい問題があります。トラブルにならないためには、離婚する前に夫婦でよく協議し、住まいの権利やローン返済についての取り決めを、公的な形で残しておくことが大切です。

また、財産分与には期限があり、離婚後2年を過ぎると請求の申し立てができなくなってしまいます。タイムリミットが迫ってから慌てて決断して後悔しないよう、住まいの現状だけでも早めに把握しておくとよいでしょう。
まずは、住まいの時価を調べ、住宅ローンの名義と残額を確認します。こうしたデータが揃うと、売却すべきか、住み続けるかの判断がしやすくなりますよ。