離婚の場合マンション売却はすべき?税金や財産分与などの注意点も解説

離婚の際には、2人で購入して住んでいたマンションは、売却して現金化することをおすすめします。マンションを残しておくと住宅ローンや財産分与の面でトラブルが起こりやすいためです。今回は、離婚時のマンション売却のメリットや売却方法、トラブル事例などをご紹介します。

目次
  1. 離婚時にマンションを売却するべき?
  2. 売却しなかったらどうなる?
  3. マンションを売却する際の流れ
  4. 住宅ローン残債がない場合の売却方法
  5. 住宅ローン残債がある場合はどうする?
  6. 離婚時にマンションを売却する際のトラブル事例
  7. 離婚でマンションを売る際にかかる諸費用
  8. 離婚前によく話し合いをしておこう!
記事カテゴリ 売却 税金 マンション
2022.04.22

離婚時にマンションを売却するべき?

離婚時に、今住んでいるマンションをどうするかは悩ましい問題です。一般的な選択肢としては、「マンションを売却する」「どちらか一方が住み続ける」「賃貸物件にして収入を得る」の3つがあります。

マンションを売却してしまうと引越しを余儀なくされ、生活環境が大きく変化するため、住み続けたいと思う人も多いでしょう。実際、マンションに住み続ける選択をした場合は、生活環境の変化によるストレスが抑えられたり、引越しによる金銭面の負担を減らしたりできるというメリットがあります。

しかし結論からいうと、離婚時にはマンションを売却し、現金化して財産分与をするのがおすすめです。マンションを残しておくと、住宅ローンの支払いや財産分与でトラブルが起きやすいためです。

今回は離婚時にマンションを売却しなかった際の注意点や、売却の方法や流れについてご紹介します。

話し合う夫婦

売却しなかったらどうなる?

離婚時にはマンションを売却するべきということをお伝えしましたが、もし売却しなかったらどうなるのでしょうか?離婚時にマンションを売却しなかった際の注意点についてご紹介します。

後で売却したくなっても売却しづらくなる

マンションが夫婦の共有名義不動産だった場合、売却には共有名義人全員による承認が必要となるため、元配偶者と話し合いをすることになります。共有名義とは、不動産の所有権を複数人で所持していることを指しています。また、共有名義不動産の売却や抵当権の設定などは、全員の同意が必要です。つまり、後になって売却したくなっても、元配偶者の承認を得られなかったり、そもそも連絡が取れなかったりという理由で売却できなくなる可能性があるということです。

また、離婚後に共有名義人の元配偶者が亡くなった場合、不動産の共有持分は亡くなった側の遺族が相続することになります。このように、相続により共有名義人が増えていくと、全員からの承認を得ることがより難しくなるでしょう。

●共有名義不動産に関する記事はこちら
共有名義不動産の売却はできる?方法や流れについて解説!

マンションの模型と電卓

住宅ローンの返済でトラブルが起きやすい

住宅ローンの残債がある場合、性質上必ずしも夫婦で半分ずつ払う必要はありません。住宅ローンの支払い義務は、あくまで住宅ローンの名義人にあり、離婚の際でもそれは変わらないためです。すなわち、どのような割合で住宅ローンを負担するかは、夫婦間の合意によって決められます。非名義人のほうがマンションに引き続き住み続ける場合は、特に支払いの手続きが複雑になり、トラブルに発展しやすいでしょう。

「それなら住宅ローンの名義人を変更しよう」と考える人もいるかもしれませんが、実際のところローンの名義人を変更することは非常に難しくなっています。夫婦でローンを組む際の名義人のパターンとしては「片方の単独名義」「片方が単独名義で、もう片方が連帯保証人」「夫婦共有名義の連帯債務、またはペアローン」の3つがありますが、いずれにしても名義人や連帯保証人の変更は現実的な選択肢とはいえません。

また、離婚後も2人で住宅ローンを返済し続ける場合、元配偶者がローン返済を滞納しても気付くのが難しく、ある日突然、多額の請求が来るという恐れもあるでしょう。このように住宅ローン周りは非常にトラブルが起きやすいため、離婚時は金融機関に住宅ローンの契約内容について相談してみましょう。

財産分与が複雑になる

離婚時の財産分与では、資産を50%ずつ折半するのが一般的となっています。マンションなどの不動産も財産分与の対象となりますが、いうまでもなくマンション自体を分割することはできません。

この場合、1人がマンションに住み、マンションの価値の半分の金額をもう1人に現金で渡す方法が一般的となります。ですが、住宅ローンが残っていると、残債を加味しながら分配する必要があるため非常に複雑な手続きとなるでしょう。なお、マンションを売却した場合は、現金化できるので、マンションを売却しない場合と比較して、財産分与の分配が楽と言えるでしょう。

マンションを売却する際の流れ

離婚時にマンションを売却する際は、どのような流れになるのでしょうか。4つの手順に分けてご説明します。

マンションの模型

[ 1 ] マンションの名義人を確認する

マンションを売却する際は、まず夫婦のどちらが不動産の名義人になっているかを確認しましょう。一般的に夫婦のうち収入の多い人の名義になっていることが多いですが、夫婦の共有名義になっている場合もあります。

不動産の名義人は、登記簿謄本を取得することで確認できます。登記簿謄本は法務局に行って取得するか、郵送やオンラインで取得できます。

[ 2 ] マンションの価値を査定する

マンションの現在の価値を把握するため、不動産会社に査定の依頼をしましょう。不動産の価値は変動するため、購入時の価格よりも高くなっている場合もあります。財産分与をする際は、現在の価値をもとにして財産を分け合うため、正確に把握しておくことが重要となります。

査定を依頼する際は、複数の不動産会社に査定依頼を出すことをおすすめします。査定価格は調査する不動産会社によって異なるため、複数社を比較することで、より精度の高い査定価格を把握できるでしょう。

●自分のマンションの相場を知りたい人はこちら
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[ 3 ] 住宅ローンの契約名義人と残債を確認する

住宅ローンの残債がある場合は、住宅ローンの契約名義人と残額を確認しましょう。併せて、連帯保証人も確認しておきます。
この際、不動産の名義人と住宅ローンの名義人は異なる場合があるという点に注意しましょう。住宅ローンの契約内容は、借り入れをしている金融機関に問い合わせることで確認できます。
住宅ローンの契約内容や残額によって、財産分与の結果は変わってくるため、あらかじめ把握しておくことが大切です。

[ 4 ] 売却方法について話し合う

マンションの査定額や住宅ローンの残債を比較し、どちらが高いかを把握しましょう。マンションの売却額より住宅ローンの残債のほうが少ない状態をアンダーローン、多い状態をオーバーローンといいます。

アンダーローンかオーバーローンかで、売却方法は変わってきます。適切な売却方法を知ることで、無駄のない話し合いができるでしょう。詳細は後で解説いたします。

次は、パターン別の売却方法についてご説明します。

住宅ローン残債がない場合の売却方法

住宅ローン残債がないマンションを売却する場合は、主に「不動産仲介」と「不動産買取」という2つの方法があります。それぞれのメリットと注意点を押さえておきましょう。

不動産業者と妻の話し合い

不動産会社に仲介してもらう

不動産会社に購入希望者との仲介をしてもらう、一般的な売却方法です。相場に近い価格で売却できる可能性が高く、財産分与の取り分も増えます。一方で、買主が見付かるまで売却できないため、時間がかかる可能性がある点に注意しましょう。

具体的には、仲介をしてもらう不動産会社と媒介契約を結び、売却活動を行う必要があります。購入希望者を相手に内覧を実施する必要もあり、時間だけでなく手間もかかります。

不動産会社に買取してもらう

マンションをいち早く売却して現金化したい場合は、不動産会社に直接買取してもらう方法もあります。買主を探す時間と手間、不動産会社に支払う仲介手数料がかからない点がメリットです。一方で、相場より売却価格が下がってしまう点に注意しましょう。

不動産会社の買取では、仲介で売却した場合の7~8割程度の売却価格になることが一般的です。また、マンションの売却は離婚後も可能です。先にマンションを売却するのか、金銭面での負担を少しでも減らすことを優先するのか、メリットや注意点を踏まえて、マンションの売却タイミングを検討するとよいでしょう。

どちらの方法にしても、実際いくらで売却できるかは物件の状態や不動産会社の力量によります。まずは複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。複数の不動産会社に査定を依頼し、結果を比較することで、より高い金額で売却することができます。査定の際は、一括査定サイトを利用すると便利でしょう。

住宅ローン残債がある場合はどうする?

前述の通り、住宅ローン残債がある場合は、マンション売却額とローン残額によってアンダーローンとオーバーローンという2つの状態に分かれます。それぞれの状態での、マンション売却方法についてご説明します。

マンションの模型と現金

アンダーローンの場合

ローン残高がマンションの売却額より小さい場合、売却益でローンを一括返済できます。このようなアンダーローンの状態では、ローン残債がない場合と同じ売却方法が利用可能です。

オーバーローンの場合

ローン残高がマンションの売却額より大きい場合、売却後も残債が残ってしまいます。このようなオーバーローンの状態では、残債を自己資金で一括返済できる場合を除いて、通常の売却方法は利用できません。オーバーローンの場合、以下の4つの方法が考えられます。

・住宅ローンの残債を夫婦の自己資金で支払って売却する
・任意売却を行って、住宅ローンを完済する
・住宅ローンの名義人が家にそのまま住み続け、ローンの完済まで支払っていく
・住宅ローンの名義人ではない人が家を引き継いで住み、ローンは家を出た名義人が完済するまで払い続ける

上記の4つの方法のうち、売却をする場合は、上から2つのいずれかの方法を取ります。夫婦で住宅ローン返済のための現金を用意しローンを完済する方法と、任意売却を行って住宅ローンを完済する方法です。

任意売却は、債務者として住宅ローンを借りている金融機関から同意を得て、住宅ローンが残っている状態で不動産を売却に出すことを指しています。任意売却のメリットは、住宅を売却する条件に自分の希望を反映できたり、競売と比較して高い売却金額で売れたりすることです。任意売却を行うと、住宅ローンの滞納が原因でブラックリストにのってしまうので注意が必要です。

一方、下2つの方法はマンションを売却せずにローンを返済していく方法です。住宅ローンの名義人もしくは、名義人でない人が家にそのまま住み続けて、住宅ローンの名義人が住宅ローンを完済するまで支払いを続けていきます。そして、マンションの売却は、住宅ローンを完済してから行います。

もし、住宅ローン残債があるときに離婚を原因にマンションを売却する必要がでてきた場合は、上記4つの方法から自分たちに合った方法を選び、住宅ローンの完済をしていくことをおすすめします。

離婚時にマンションを売却する際のトラブル事例

これまで、離婚時にマンションを売却する方法についてご説明しましたが、売却の際に注意すべき点がいくつかあります。あらかじめ代表的なトラブル事例を知っておき、スムーズに売却を行えるようにしましょう。

困っている女性

単独名義のマンションを勝手に売却される

マンションが単独名義の場合、配偶者の同意がなく売却が可能なため、別居中に勝手にマンションが売却される可能性があります。一度売却されてしまうと、取り戻すことは困難でしょう。
そのマンションが結婚後に購入したものであれば、配偶者は売却代金の半分をもらう権利があるものの、売却方法や売却額の合意なしでの売却は、トラブルのもとになりかねません。

このような勝手な売却を防ぐ方法として、「処分禁止の仮処分」があります。これを裁判所に申し立て、裁判所が認めた場合、単独名義であっても不動産を勝手に売却することはできなくなります。

売却方法や価格で意見が分かれる

マンションの売却では、不動産仲介、不動産買取、任意売却のようにいくつかの方法がありますが、どれを選ぶかで夫婦の意見が合わない可能性があるでしょう。素早い現金化を重視するか、売却価格を重視するかによって、選ぶべき売却方法は異なります。

売却方法を決める際は、不動産一括査定サイトを活用して売却価格を把握し、そのうえどれくらいの売却期間がかかるのかを考えて話し合いをすることをおすすめします。価格や期間をしっかりと把握することで、お互い納得のできる結論にたどり着く可能性が高まります。

どうしても意見がまとまらない場合は、弁護士を間に入れて話し合うのもおすすめです。それでも解決しない場合は、最後の手段として離婚調停を申し立てるという方法もあります。調停で合意した内容は判決と同様の効力があり、強制的に離婚トラブルを解決する手段として有効です。

財産分与の期限を過ぎてしまう

離婚の財産分与の期限は離婚後2年以内であり、それを過ぎると家庭裁判所への申し立てができなくなります。これ以降は、財産分与の内容に不満があったとしても、相手側が応じてくれない限り財産分与の請求はできません。
不動産仲介のような時間のかかる売却方法を選ぶ場合は、期間を過ぎないように注意しましょう。適切に財産の価値を評価し、早急に手続きを進めることが重要です。

離婚でマンションを売る際にかかる諸費用

マンションを売却する際には、さまざまな諸費用がかかります。あらかじめしっかりと金額を把握し、費用の負担についても話し合っておきましょう。

マンションや税金の模型と現金

仲介手数料

不動産仲介を利用してマンションを売却した際に、仲介してくれた不動産会社に支払う手数料です。仲介手数料の上限額は法律で定められており、金額の目安は以下の通りです。

仲介手数料=(売却額×3%)+6万円+消費税

仲介手数料を支払うタイミングは主に、売買契約時と引渡し時に半額ずつ払う場合と、不動産の引渡し時に全額払う場合の2パターンに分かれます。

●仲介手数料に関する記事はこちら
マンション売却の手数料は?負担を抑える方法を解説

印紙税

マンションの売買契約書に印紙を貼り付けることで支払う税金です。印紙代はマンションの売却額によって異なり、500万円以上1億円以下の売却額であれば、印紙5000円~3万円となっています。売買契約書は、売主および買主用に1通ずつ作成するために、売主と買主のそれぞれが保有する売買契約書分を各自で負担します。

登録免許税

売却するマンションの住宅ローンを完済し、抵当権を抹消する際にかかる税金です。抵当権抹消のため、不動産1物件につき、建物と土地のそれぞれに1000円の登録免許税が課税されます。
また、抵当権抹消の手続きは司法書士に依頼することが一般的であり、その際に司法書士に支払う報酬も必要となります。報酬額は司法書士によって異なりますが、1万〜2万円程度が相場となります。

譲渡所得税

不動産売却時に利益が出た場合に、その所得に対して課税される税金です。譲渡所得税は譲渡所得に税率をかけあわせて算出され、譲渡所得は以下のように求められます。

譲渡所得=売却額-(購入額+購入時の諸費用+売却時の諸費用)-特別控除

税率は、マンションの所有期間によって異なり、5年以下ならば30.63%、5年を超えるならば15.315%となります。また、マンションを売却して所得が出た場合は確定申告が必要となるため、忘れずに行いましょう。

●譲渡所得税に関する記事はこちら
不動産譲渡にかかる税金とは?「譲渡所得税」の基礎知識

引越し費用

マンションを売却する場合、引越しをする必要があり、その際の引越し費用がかかります。離婚時には、夫と妻がそれぞれ別の新居に引越すため、それぞれの費用がかかる点に注意しましょう。複数の引越し業者を比較検討することで安い業者を見付けたり、荷造りを自分で行ったりすることで引越し費用を抑えられます。事前に、引越しの方法やタイミングなどについてあらかじめ話し合っておくことをおすすめします。

離婚前によく話し合いをしておこう!

これまでご紹介した通り、マンションの売却には手間と時間がかかります。離婚前に売却方法や財産分与についてよく話し合いをしておくことで、トラブルなく新生活をスタートできる可能性も高まるでしょう。

また、夫婦間のトラブルを避けるために、早いうちから不動産会社に相談することをおすすめします。専門家の意見を聞くことで、夫婦同士で納得しながら話を進めることができるでしょう。さらに、不動産会社に査定を依頼し、資産価値を把握することも大切です。

なるべく早く、適切に準備を行うことで、スマートかつ円満に物事を進めましょう!

宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/