住宅ローンの審査基準とは?審査で落とされないための対策や流れを解説

マイホームを購入する際に多くの人が利用する住宅ローンは、何を基準に審査しているのでしょうか?審査で重視されるポイントや、審査に通りやすくするための対策、実際の審査の流れについてご紹介します。

目次
  1. 住宅ローン審査とは?
  2. 住宅ローンの審査基準とは?
  3. 住宅ローン審査への対策7選
  4. 住宅ローン審査の流れと必要書類
  5. 住宅ローンの審査では自分に合ったプランを選ぼう
記事カテゴリ 購入 ローン
2024.03.08

住宅ローン審査とは?

マイホームを購入するとき大半の方が利用する住宅ローンですが、住宅ローンの利用で避けては通れないのが、「住宅ローン審査」。住宅ローン審査とは、新居の購入資金を融資する金融機関が、融資をしても問題がないかを判断することです。住宅ローン審査には事前審査と本審査の2種類があり、審査項目や必要書類が異なります。また、本審査は事前審査よりも判断が慎重になるため、事前審査が通ったからといって、本審査も必ず通るわけではない点に注意が必要です。

住宅ローンのなかでも特色があるのは、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)と民間の金融機関が提携して融資を行う「フラット35」です。フラット35は、住宅の規格や構造などに一定の基準を有し、収入が安定していない自営業者や病気で団体信用生命保険に加入できない人も利用できるといった、民間の金融機関にはない特色もあります。

今回は、住宅ローン審査の基準をご紹介しながら、住宅ローン審査で落とされないようにするための対策を解説します。

住宅ローンを借りる際に大切なライフプランニング

住宅ローンの審査基準とは?

多くの金融機関が住宅ローンを取り扱っていますが、審査基準はそれぞれ異なります。そのため、ある金融機関で審査に落ちたとしても別の金融機関では通る可能性もあります。ここでは、多くの金融機関が設けている住宅ローンの審査基準にはどのようなものがあるのか、「借主の状況」「連帯保証の状況」「借りる際の資金状況」の3つに分けてお伝えします。

借主の状況

令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書※1によると、借主における住宅ローンの審査基準と、その審査項目を取り入れている金融機関の割合は以下の通りです。

・完済時の年齢 98.7%
・健康状態 97.9%
・借入時の年齢 97.2%
・勤続年数 93.2%
・連帯保証 93.1%
・国籍 73.3%
・雇用形態 71.6%
・業種 34.4%
・雇用先の規模 25.4%
・家族構成 29.8%
・性別 21.2%

年齢・健康状態
上記のことから、多くの金融機関で借主の年齢や健康状態を審査内容に取り入れていることが分かります。住宅ローンの平均返済期間は30年程度であるため、完済時の年齢や、返済期間中に借主が元気に働き続ける見通しが立つかが重視されているのです。

雇用状況
借主の雇用状況は、住宅ローンの返済能力を判断する1つの指標となっています。先述の通り、金融機関は長期にわたって安定して返済ができるかどうかを判断しているので、離職率が低い業種ほど評価が高い傾向にあります。また雇用先の評価においては、企業規模よりも、景気に左右されず長期にわたって安定した経営がなされているかという点が重視されます。

国籍・家族構成
さらに、国籍や家族構成も審査基準となります。金融機関では、住宅ローン融資の条件として日本の永住権を設けているケースが多く見られます。また、家族構成を審査基準とする理由は、扶養する家族がいることで収入が安定する傾向があることや、働いているパートナーがいると、当人が返済できなくなった場合のリスクヘッジになると見なされるためです。ただ一方で、就学中の子どもが多い場合は、安定的な返済に支障を来すと判断され、審査が通りにくい場合もあります。

住宅ローンを返済しながら子育てを行う夫婦

連帯保証の状況

住宅ローンの審査では、9割以上の金融機関が連帯保証の状況をチェックしているとされます。連帯保証人の設定が必要なのは、「収入合算」や「ペアローン」を利用するケースです。収入合算とは、家族の年収を合算した世帯年収をもとにして、金融機関に借り入れ可能額を算出してもらうことで、ペアローンとは、親子または夫婦のペアで住宅ローンの融資をしてもらうことです。収入合算では世帯年収として合算した人、ペアローンでは互いに連帯保証人となります。連帯保証人が安定的な雇用状況で勤続年数が長いと、審査に通る可能性が高まります。

なお、上記ケースに当てはまらず、保証会社を利用して住宅ローンを借り入れる場合は、連帯保証人を設定する必要はありません。

借りる際の資金状況

住宅ローン審査では、当然ながら借りる際の資金状況も見られます。たとえば、資金状況の調査結果として以下のような評価が下されます。

・担保評価 96.1%
・年収 92.9%
・返済負担率 93.0%
・融資可能額 71.7%

担保評価
住宅ローンでは、ローンが返済不能となった場合、金融機関が担保物件を売却して返済に充てます。そのため、いざというときの換金性はどれくらいか、担保評価を見る金融機関が多いようです。

年収・返済負担率
経済状況は、ローンの返済能力に直結します。単純に「年収が高ければよい」というわけではなく、年収と返済負担率を関連付けて評価されるのがポイントです。返済負担率とは、年収に占める返済額の割合のことで、基準を超えると融資してもらえなかったり、借入額に影響したりすることもあります。先ほどご紹介したフラット35では、年収に対する年間の返済負担率を提示しています。それによると、年収400万円未満の返済負担率は30%以下、年収400万円以上の返済負担率は35%以下が基準となっています。

融資可能額
金融機関は、融資可能額もチェックしています。融資可能額は、年収や返済負担率、不動産の購入金額などの条件によって決められることが一般的です。

住宅ローン審査に重要な健康状態

住宅ローン審査への対策7選

住宅ローンは、長期にわたって返済していきます。つまり、住宅ローンの審査に通過するためには、「安定して返済できる状況である」ことを金融会社に伝えることが重要です。では、具体的な対策を見ていきましょう。

メインバンクに申し込む

メインバンクに住宅ローン融資を申し込むと、住宅ローン審査の際にプラスに働く可能性があります。預貯金の残高が高かったり、給与振込の口座を持っていたりすると、返済能力が高いと判断され、住宅ローン審査が通りやすくなることもあります。

住宅ローンの契約をする人

無理のない返済計画を立てる

先ほどお伝えしたように、金融機関では年収と年間の返済負担率を見ています。返済が長期にわたる住宅ローンでは、無理のない返済計画が必要になるため、金融機関に融資を希望する前に、自分で年収と返済負担率を計算しておきましょう。あらかじめ適切な融資可能額を算出することで、スムーズな審査が望めます。

●住宅ローンの毎月の返済額や借入可能額のシミュレーションはこちら

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ほかの借り入れを完済しておく

住宅ローンの融資を希望する際は、ほかのローンを完済しておきましょう。住宅ローン以外の借り入れは、住宅ローンの返済を妨げる要因と見なされます。車やスマホのローンはもちろん、クレジットカードのキャッシング利用枠もなくしておいたほうがベターです。金融機関によっては、実際にキャッシングを利用していなくても、キャッシング利用枠があることを「借り入れる余地」と見なす場合があるため注意しましょう。

住み替えをするために住宅ローンを借りたい場合は、旧居のローンを全額繰り上げ返済しておくことがおすすめです。繰り上げ返済に不安がある場合は、「住み替えローン」を利用するという選択肢もあります。

●住み替えローンについて詳しくはこちら
住み替えローンとは?利用の注意点や手順を解説

団体信用生命保険に加入できない場合はフラット35を検討する

団体信用生命保険(団信)に加入できない場合は、フラット35を検討しましょう。通常、住宅ローンでは、返済ができなくなったときのために団信への加入が求められます。ところが健康状態が思わしくないと、団信への加入が難しいかもしれません。フラット35なら、団信の加入なしでの利用が可能です。

家の模型と電卓とノート

物件購入価格30%の現金を用意する

自己資金がなくても住宅ローンだけで物件を購入することは可能ですが、頭金と諸経費、合わせて物件購入価格の30%は現金として調達しておいたほうが無難です。2022年度の調査※2では、分譲戸建住宅の購入者は、平均で物件購入価格の27.5%を自己資金として用意しています。

頭金とは、当初支払う物件購入費用の一部のことです。頭金を用意してある程度経済的な余裕を作ったうえで、住宅ローンの融資を希望したほうが住宅ローン審査に通りやすいといえるでしょう。

●住宅購入にかかる費用について詳しくはこちら
不動産、住宅購入にかかる諸費用、税金について説明します

自分の信用情報を把握する

住宅ローン審査の前に、自分の「信用情報」を把握しておきましょう。信用情報とは、車やスマホの所持、クレジットカードやローンでの買い物、家賃、公共料金の支払いといった個人の支払い状況のことです。住宅ローン審査を希望すると、金融機関は融資先となる契約希望者の信用情報を取り寄せます。

個人信用情報を把握したところで、その履歴を消すことはできませんが、信用に傷がつく金融事故が起きた際の状況を伝えることは可能です。「海外の長期滞在で支払いが遅くなってしまった」「突然病に倒れて一時的に経済的に困難な状況になったが、今は体調も経済も回復している」といった支払いの延滞理由や状況を伝えることで金融機関が理解を示してくれる可能性があります。

住宅ローン審査に影響するクレジットカードの返済履歴

複数の金融機関に依頼する

住宅ローンの融資を希望する際、複数の金融機関に借り入れを申し込みましょう。上記でもお伝えしましたが、ある金融機関では審査が通らなくても、別の金融機関では審査が通る可能性があるためです。たとえば、普段メインバンクとしている銀行、住宅ローンに有利なプランを提案している銀行、都市銀行や地方銀行といった、タイプの違う銀行に同時に依頼してみるとよいかもしれません。

住宅ローンを審査する銀行

住宅ローン審査の流れと必要書類

ここからは、実際に住宅ローン審査をするときの流れをお伝えします。住宅ローン審査の事前審査は住宅ローンを融資する金融機関のみ、本審査は金融機関だけでなく、住宅ローンの支払いを保証する保証会社も含めて行われ、準備する書類も異なります。借り入れまでの一般的な流れは以下の通りです。

[ 1 ] 事前審査
[ 2 ] 正式申し込み
[ 3 ] 本審査
[ 4 ] 借り入れ決定、契約

[ 1 ] 事前審査

本審査前の事前審査では、3〜4日、遅くとも1週間で審査結果が分かります。この段階では、融資を希望する人の年収や、雇用状況に加えて、返済負担率を基に審査が行われます。事前審査の段階で必要となる書類は下記の通りです。

契約希望者に関する書類
運転免許証や健康保険証などの身分証明書、源泉徴収票、勤務先の会社案内など

住宅に関する書類
パンフレットや物件概要書など

住宅を診断

[ 2 ] 正式申し込み

事前審査に通ったら、正式に住宅ローン融資を申し込みます。事前審査に通ると、家の売買契約も本格的にスタートします。本審査の申し込みには事前審査よりも詳細な資料が必要となり、提出書類に不備があると本審査が通らない可能性もあるため、慎重に記載しましょう。参考として以下をご覧ください。

必要書類の種類必要書類の目的
ローン借り入れ申込書、口座開設書、個人情報の取り扱いに関する書類など金融機関と契約希望者の関係性を証明する
運転免許証や健康保険証などの身分証明書や印鑑証明書(実印)など契約希望者の実在を証明する
源泉徴収票、課税証明書、確定申告書、納税証明書など収入を証明する
勤務先名と業種、所在地などが分かるもの、職歴書など勤務状況を知らせる
住民票の写し家族の状況を伝える
パンフレット、立地が分かる書類(地図、公図など)、建物の構造が分かる書類(建物配置図、建物平面図、建築確認済証など)購入物件の担保価値を証明する
通帳や取引明細など返済予定の明細が分かる書類ほかに借り入れがある場合の証明

[ 3 ] 本審査

住宅ローンの本審査は1〜2週間、遅くとも1か月で審査結果が分かります。フラット35を希望する場合は住宅金融支援機構も審査に加わります。

[ 4 ] 借り入れ決定、契約

本審査に通ると、金融機関と住宅ローン融資の契約が成立します。これで家を購入する資金の調達は完了となり、同時に売主との売買契約も成立し、不動産の登記簿謄本も変更できます。

●登記簿謄本について詳しくはこちら
登記簿謄本とは?記載内容や見方、取得方法について解説!

住宅ローン審査の計算

住宅ローンの審査では自分に合ったプランを選ぼう

住宅ローンでは、金融機関を選ぶことはもちろんですが、返済負担率や金利などを考慮して自分に合ったローンプランを選びましょう。特に、住宅ローンを組んだ当初と経済状況が変わった場合は、住宅ローンのプランを見直すほうが返済しやすくなる可能性があります。

また、前述の通り、旧居の住宅ローンを完済できない場合は、住み替えローンを利用するという方法があります。

なお、住み替えを検討しており、旧居の住宅ローンを完済するための資金計画を立てるためには、まずは査定が必要です。三井のリハウスでは無料で査定を行っており、三井不動産グループの総合力と、累計取扱件数100万件の豊富な取引実績から、地域やお客さまのニーズに合った不動産売買のサポートを行っております。ぜひ、ご活用ください。

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※1出典:「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001597952.pdf
(最終確認:2024年2月13日)

※2出典:「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001610299.pdf
(最終確認:2024年2月2日)

宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/