Column / 2020 12,03

住み替えローンとは?利用の注意点や手順

住み替えローンなら、ローン返済中に家を売却して新居を購入する「住み替え」の資金を調達できます。家の売却価格と自己資金では住宅ローンの一括返済ができない場合に利用できて便利です。住み替えローンとは何か、メリットや注意点などについて解説します。

宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けにの節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/

残債があっても新居に住み替えられる?

長い人生では、離婚や転職、転勤といったさまざまな理由で、自宅の住み替えを迫られることがあります。残債があるけれど、住み替えのために新たなローンを組みたい場合、住んでいる家の売却価格と自己資金で一括返済をすることができれば、改めて新居の住宅ローンを組むことが可能です。

では、家の売却価格と自己資金がローン残債を下回ってしまい、一括返済ができない場合はどうでしょうか?そのときは、「住み替えローン」を活用することで新居を購入することができます。

今回は、残債のある家からの住み替えを検討している人に、住み替えローンとは何か、メリットや利用の注意点などについて解説します。

女性と2つの家の模型

残債があっても新たな借り入れができる「住み替えローン」

住み替えローンでは、ローンの残債があっても新居を購入するための資金を調達できます。家の売却代金と自己資金の合計がローン残債を下回っていると、新居の購入を断念する人もいるでしょう。しかし、住み替えローンを利用すれば、新居を購入できる可能性が高くなります。

残債分と新居の購入金額が借りられる

家を売却するときは、住宅ローンを完済し、抵当権を抹消させる必要があります。抵当権とは、借り入れした人がローンを支払えなくなったときの担保として、金融機関が建物や土地に設定する権利のことです。抵当権があると家の売却は難しくなります。

通常、残債がある場合には抵当権を抹消することができず、新たなローンを組むことは難しいでしょう。しかし、住み替えローンを利用すれば、残債を支払う資金を借り入れして残債の精算ができるため、抵当権の抹消が可能になります。同時に、新居の購入資金の借り入れができますよ。

家の模型と電卓

便利なローンだが注意点もある

新居への住み替えをする際に残債を支払うことが難しい人にとって、住み替えローンはとても便利なサービスです。しかし、利用については、以下のような注意点もあります。

高額な債務を抱える

住み替えローンは、売却する家の残債と新居の購入資金の両方を賄う「オーバーローン」となるため、必然的に借入金額が高額になってしまいます。そのため万が一、新居のローンも支払えなくなって売却しなければいけなくなると、高額な残債を抱える危険性が高いです。毎月の返済額や返済期間についても、将来を見据えたマネープランを立てましょう。

また、住み替えローンでは、住宅ローンよりも利息が高くなります。通常の住宅ローンでは、国から優遇措置がなされるため利息は低く設定されています。しかし、住み替えローンの場合は、国からの優遇措置がなされないため、金利が高くなるのです。

審査が厳しい

住み替えローンは通常の住宅ローンよりも高額な借り入れとなるため、融資条件が厳しい傾向もあります。年収や過去の返済状況によっては事前審査・本審査に通らない場合もあります。クレジットカードのキャッシングも借金とみなされ、審査対象となります。
住み替えローンを利用する場合は、キャッシングの使用を控えましょう。

家の模型と電卓

売却と購入の決済日を同じにする

さらに、住み替えローンの利用では、家の売却と住宅購入の決済日・引渡し日を同じ日に調整しなければなりません。住み替えローンでは、売却する家の抵当権の抹消と、購入する新居の抵当権の設定を行う都合上、同時に手続きをする必要があるのです。

決済日と引渡し日を同じ日にすると、家の売却と新居の購入に関するスケジュールがタイトになる可能性もあります。融資審査に通っても、売却した物件の決済日とタイミングが合わないと、融資が受けられなくなることもあります。
住み替えローンを利用する際は、不動産会社と相談しながら、計画的に進めましょう。

時計とカレンダー

住み替えローンを使用する際の流れ

住み替えローンを使用するには、大きく分けて「売却先行」と「購入先行」という2つの流れがあります。売却先行の場合は、家の売却を先に行うので、新居購入前に売却価格を把握することができます。資金計画が立てやすい流れといえるでしょう。

一方で購入先行の場合は、新居の購入を先に行うので、希望の条件に叶った物件をじっくり探すことができます。

現在住んでいる家の売却金額と自己資産額を合わせても住宅ローンを完済できない場合は、売却先行にできないケースが多いです。そんなときは、購入先行で住み替えローンを活用するとよいでしょう。

新居を購入する際の売買契約には、期限内に提示した条件で現在のお住まいが売却されなかった場合、契約を無効にできる「買い替え特約」を条件として付けるのを忘れないようにしましょう。そうすると、査定額よりもはるかに安い売却金額を提示されても、焦ることなく売却活動を進めることができます。

住み替えローンを相談できる主な金融機関は?

住み替えローンについて相談できる金融機関にはどんなところがあるでしょうか?複数の金融機関を知っていると、利用前に比較できますよ。住み替えローンを取扱っている各金融機関の商品概要を一覧でご紹介します。

銀行

各銀行では、ローン残債分と新居購入資金の借り入れのほか、万が一のときに返済を保障します。

銀行 ローン商品 主な特徴
三井住友銀行 住み替えローン 支払い者が難病にかかったり死亡したり万が一の場合は返済を免除。自然災害に遭った場合は返済の一部を免除します。
みずほ銀行 みずほ買い替えローン 出産や子どもの進学などライフイベントに応じて返済を減額されます。
りそな銀行 りそな住みかえローン 新規購入住宅の担保評価額の最高200%もしくは最高1000万円までの、いずれか低い方が融資金額の上限となります。
横浜銀行 住宅ローン(お住み替え) 新居の購入資金に加えて、家の売却で返済しきれない残債分を最大2000万円まで借り入れできます。また支払者が高度障害状態になったり、死亡したりした場合は返済を免除。自然災害時には返済をサポートします。
千葉銀行 住み替えコース ローン残債分と新居購入資金のほか、住み替えに伴う増改築や設備資金、住宅取得に伴う税金や諸費用の借り入れもできます。
関西みらい銀行 住みかえ住宅ローン 住み替えだけではなく、建て替えもサポートします。住み替えの場合は「住み替え資金と売却損(自宅の売却金額 – 住宅ローン残高)」と「住み替え後の自宅の担保評価額の300%」のいずれか低い金額、建て替えの場合は「建て替え資金+既存住宅ローンの借り替え資金」と「建て替え後の自宅の担保評価額の300%」のいずれか低い金額を借り入れできます。

ろうきん

ろうきんでも住み替えのためのローンを提供しています。ろうきんとは労働組合や生協の方々がお互いに助け合うために生まれた福祉金融機関です。

●ろうきん「借換・買替ローン(不動産担保型)」
ろうきんの住み替えローンには2種類の金利を組み合わせたプランがあります。それぞれの金利のメリットを生かしながら将来の金利変動へのリスクを抑えることができますよ。

融資の申請に関連する必要書類や手数料は各金融機関によって違いがあります。詳しくは金融機関のサイトや店舗で相談してみましょう。

住み替えローンの返済シミュレーションをしよう!

住み替えローンを実際に利用する場合、どのくらい借入れができるのでしょうか?実際に住み替えローンを利用することを想定して、シミュレーションしてみましょう。三井住友銀行「住み替えローン」を例にご説明します。

●現在の条件

店頭金利 年2.475%
年齢 30歳
年収 700万円
借り入れ期間 30年
売却予定額 3500万円
自己資金 100万円
ローン残高 4000万円
新居購入価格 4000万円

●シミュレーション結果

使える資金
(売却予定額+自己資金)
3600万円
売却時諸費用 (140万円)
購入時諸費用 (200万円)
合計支払金額
(ローン残高+購入価格+各諸費用)
8340万円
必要借り入れ額 4740万円

※売却時の諸費用を4%、購入時の諸費用を5%で計算しています。

住み替えローンの利用は計画的に!

カレンダーと家の模型

住み替えローンを利用するときには、税金の控除についても知っておきましょう。家を買うのが初めてではなくとも、条件さえ合えば住宅ローン控除を利用できる可能性があります。実際に住み替えをする前に、税務署や税理士などに相談したり、情報を集めてシミュレーションしたりしてみるとよいでしょう。

住み替えのために融資を利用する場合は、自分の状況に合った借り入れ方法を選び、計画的に進めていくことが重要です。特に、住み替えローンの場合は、住宅ローンよりも高額な融資を利用することが多いため、より一層の注意を払って利用したいものです。

「過剰な借り入れは避ける」「綿密な返済計画を立てる」「頼りになる不動産会社を選ぶ」ことで、失敗しない住み替えを行ってくださいね!

この記事のポイント<Q&A>

  • Q住宅ローンが残っていても、家の住み替えはできる? A住み替えにあたり、現在の家を売却する場合、ローンの残債があると売却できないのが通常です。ただし、「住み替えローン」という融資を受けられた場合は、ローンの残債分と新しい家の購入分の資金調達が可能になります。詳しくはこちらをご覧ください。
  • Q住み替えするときの流れは? A住み替えでは、現在の家の売却と新しい家の購入の両方を行います。住み替えには3つの流れがありますよ。売却と購入を同時進行、売却先行、購入先行です。ただし、「住み替えローン」を活用する場合は、売却と購入の決済日を同日にする必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
  • Q住み替えローンにはどんな商品がある? A住み替えローンは、ざまざまなプランがあります。たとえば、融資の上限額が設定されていたり、ライフイベントに応じて返済の減額があったり、家の建て替えやリフォームに対しても融資されたり、といったプランです。詳しくはこちらをご覧ください。