マンションの評価額とは?評価の方法も解説!

マンションの評価額は、「固定資産税評価額」「相続税評価額」「実勢価格」「公示価格・基準地価」など用途によって基準にする値が異なってきます。評価額の調べ方や計算方法もご紹介するので、売却の検討や相続の際に参考にしてみてください。

目次
  1. マンションの評価額が必要なとき
  2. マンションの評価額は大きく6種類
  3. マンションの固定資産税を知る方法は?
  4. マンションの相続税の算出方法は?
  5. マンションの売却額を決める方法は?
  6. マンションの評価の今後
記事カテゴリ 売却 マンション
2022.01.31

マンションの評価額が必要なとき

マンションの売却をしたり、マンションを相続したりする際に、必要になるものの1つとして評価額があります。マンションの評価額とは、贈与税や相続税などの計算をする際に基準となる価格のことです。

また、評価額はマンションの売却を検討しているときや不動産を担保にお金を借りるときにも役立ちます。さらに、離婚時に不動産が財産分与の対象である場合は、評価額を知ることで分与の配分に関して方針が決めやすくなるでしょう。

マンション模型とお金

今回は評価額が必要になるケースを具体的に挙げながら、マンションの評価額の基礎知識や簡単な計算方法をご紹介していきます。

以下の表は、具体的な用途別に、評価額が必要となるタイミング、調べる評価額を示したものです。

用途評価額が必要となるタイミング調べる評価額
マンションを所有・所有の検討をしている場合固定資産税を調べるとき固定資産税評価額
マンションの相続・贈与をする場合相続税を調べるとき相続税評価額
マンションを売買する場合不動産売買時に売却価格を調べるとき・実勢価格
・公示価格
・基準価格や不動産価格指数など公的機関が示す価格
・不動産会社が提示する査定額
・不動産鑑定評価額
マンションの価値を証明する場合・マンションを担保に借り入れするとき
・監査法人に見せる必要があるとき
不動産鑑定評価額
離婚する場合財産分与の計算をするとき不動産鑑定評価額
火災保険に加入する場合保険金額を決定するとき建物評価額

上記のように、用途によって基準となる評価額はさまざまあります。

マンションの評価額は大きく6種類

前述の通り、目的や状況によって用いる基準値は異なります。まず、計算の基準となる6つの基準値を見ていきましょう。

空とマンション

固定資産税評価額

固定資産税評価額とは、不動産を所有する人が、毎年支払う固定資産税の計算をする際に用いられる評価額のことを指します。固定資産税評価額は、ほかにも市街化区域に土地や家屋を持っている人に課税される都市計画税や、土地や家屋を取得した際に発生する不動産取得税、登記登録を行う際に必要な登録免許税などを計算する際の基準となるものです。

固定資産税評価額は、各市区町村の固定資産評価員が、固定資産評価基準に基づいて、個別に決定します。その評価額の数値は、3年に1度の頻度で見直されます。

固定資産税評価額は土地と建物に分けて計算され、土地は国が出している公示価格の約60〜70%、建物は再建築費の約50〜70%が目安です。再建築費とは、対象となる建物を再び新築した際に必要となる金額を指します。

固定資産評価額を確認したい場合は、毎年送付される固定資産税の明細書に記載があるので自分でチェックすることが可能です。

相続税評価額

相続税評価額は、国税庁が定める相続税を計算するための財産に対する評価額を指します。相続税評価額は自分で確認することができます。確認方法としては土地の場合、国税庁が認めている指標「路線価図・価格倍表率」から把握することが可能です。一方、建物の相続評価額は、固定資産税評価額の数字がそのまま相続税評価額になります。なお、賃貸の建物は固定資産税評価額に70%を掛けることで求められます。

なお、贈与税を計算する場合は、土地と建物の価額を別々に計算し合算することでマンションの評価額を導けます。

実勢価格

実勢価格とは、一般的な不動産に対する周辺相場や需給バランスなどさまざまな要素を考慮して計算された、実際に不動産の売買取引が成立する価格を指します。また実勢価格は、市場価格や時価ともいわれています。

固定資産税に関する書類とペン

公示価格・基準地価

公示価格とは、土地売買の目安となる適正な価格のことです。国土交通省が毎年定期的に評価している適正な価格を公表しています。公的な機関が適正価格を決めているため、土地の価格の有効な目安となるのです。

公示価格には、「公示地価(地価公示価格)」と「基準地価」の2種類があります。公示地価は国土交通省が選んだ全国約2万3000か所の土地売買の価格を調査したものです。一方、基準地価は都道府県が場所を選び、調査した土地売買の価格です。

確認は、国土交通省の「地価公示・都道府県地価調査」をチェックしてください。

●公示価格に関する記事はこちら
公示価格の調べ方!土地の価値はどう決まる?

不動産鑑定評価額

不動産鑑定評価額とは、土地や建物を不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準に従って鑑定した価額のことをいいます。不動産鑑定評価額は、不動産の適正な価格を判断することを目的とされた制度で、路線価や公示価格などの公的な指標ともなっています。路線価とは、国税庁が全国40万地点の道路を標準値として、鑑定評価を参考に道路の値段を決定したものです。

建物評価額

建物評価額は、固定資産税評価額と同じです。そのため固定資産税通知書に記載されている課税額がそのまま建物評価額になります。建物評価額は、火災や自然災害などの被害にあった際に、支払われる保険金額を決定する際や、家屋に対する固定資産税の課税時に用います。

マンションの固定資産税を知る方法は?

ここまでマンションの評価を決める複数の評価額についてご紹介してきました。ここでは、マンションの評価のなかでも固定資産税に焦点を合わせて解説します。まず、マンションの固定資産税はどのようにして把握すればよいのでしょうか?調べ方や簡単な計算方法を見ていきましょう。

計算機とノート

固定資産税納税通知書で知る

固定資産税は、前述のように毎年4月頃に送付される固定資産税納税通知書に同封されている課税明細書で確認できます。課税証明書には、固定資産税額と一緒に固定資産税評価額も記載されています。固定資産税額が分かることによって、マンションを売却した際の費用も調べられるので、一度確認してみましょう。

また固定資産税通知書には、課税標準額も記載されています。この課税標準額と固定資産税評価額の2つを混同させてしまう人も多いかもしれません。課税標準額が税額計算の際に基準となる金額を表すのに対して、固定資産税評価額は、土地の時価を基に決められる価格を指します。

万が一、固定資産税通知書を紛失してしまった場合は、各市役所の窓口に、本人確認書類を持参して、本人確認ができれば固定資産税評価証明書を入手できます。

固定資産税を自分で算出する

土地や建物を所有していると発生するのが固定資産税です。では、実際に固定資産税の税額はどのように計算するのでしょうか。建物の固定資産税の税額は以下のように計算できます。

固定資産税評価額(課税標準額)×1.4%

上記の計算式を用いて納税通知書に同封されている課税明細書を基に、固定資産税がいくらになったのかを把握することができます。

マンションの模型とルーペを持つ不動産鑑定士

マンションの相続税の算出方法は?

ここからは、マンションを相続した際についてどのように計算していくかを見ていきましょう。

相続税を調べる場合、相続税評価額と基礎控除額を利用して算出します。相続税評価額は、ここまででも述べてきたように国税庁や市区町村が算定した土地の評価額です。一方、基礎控除額とは、税額を計算する際に、納税者の所得から一律で差し引かれる所得控除の一種です。

相続税評価額を算出する

相続税評価額を含め不動産の評価額は、土地と建物それぞれで異なります。贈与税や相続税を知るためにマンションの評価額を計算するには、まず土地部分と建物部分の評価額を分けて算出し、後で合算する必要があります。詳しく、計算方法を見ていきましょう。

[ 1 ] 公的書類から建物の評価額を調べる
マンションの建物評価額は、固定資産税評価額と同等です。
固定資産評価明細書に表記されている額がそのまま建物評価額になるため、計算は不要です。

固定資産税評価額の確認方法には2通りあります。
ここまででお伝えしたように、1つ目は、課税明細書で確認する方法です。

2つ目は、固定資産評価証明書で確認する方法です。課税明細書を紛失した場合に有効といえます。固定資産評価証明書とは、固定資産課税台帳に記載された土地や建物の証明書のことで、自治体の税務課に申請すれば入手可能です。

●固定資産評価証明書に関する記事はこちら
固定資産評価証明書とは?手数料や取得の方法などを分かりやすくご紹介

[ 2 ] 路線価から土地の価格を調べる
土地部分の評価額は、路線価を用いて計算します。国税庁の「路線価図・価格倍率表」を確認すれば、1m2あたりの価格を調べることができます。

[ 3 ] マンション敷地全体の評価を行う
次に、路線価で求めた1m2の価格と、マンション全体の面積を掛けて、敷地全体の価格を求めます。

[ 4 ] 全体の土地価格に持分割合を掛ける
マンションの全体の土地価格に、持分の割合を掛けます。持分とは、1つの財産を複数人で共有して所有する場合のそれぞれの権利の割合を表します。
自分の居室の専有面積だけでなく、玄関や廊下など、マンション全体の共用部分も持分に入ります。専有面積に共用部分の面積を加算した割合を求めて、土地価格に掛けてください。

[ 5 ] 建物・土地の評価額を合計する
建物の評価額と、土地の評価額を足してください。その合計金額がマンションの評価額となります。

マンション模型

実際の納税時は一定額控除される

相続税には、財産の総額が一定の金額以下であった場合、課税が免除される基礎控除が設定されています。基礎控除額は以下の計算式で求めることができます。

3000万円+(600万円×法定相続人の人数)

たとえば、法定相続人が3人だった場合を上記の計算式に当てはめると、基礎控除額は4800万円となります。

マンションの相続税を計算する場合、以下の計算式で求めることができます。

相続評価額-基礎控除額

計算の流れとしては、取得する相続財産を求めたものから基礎控除額を差し引きます。その後、税率を掛けることで、相続税を導けます。

土地評価額が2000万円、建物評価額が4000万円、法定相続人が3人の場合を例に相続税を求めてみましょう。この場合、以下のように計算できます。

2000万円+4000万円=6000万円(取得する相続財産)

6000万円-4800万円(基礎控除額)=1200万円

1200万円に対する税率は15%で、その控除額は50万円なので、相続税額は、130万円になります。

実際のマンションにかかる相続税を計算する際には、総資産から相続税を算出する必要があります。また、上記のケースでは含めていませんが、実際にはローン残債を含めた全ての財産を相続するので注意しましょう。

電卓で計算する不動産会社の担当者

マンションの売却額を決める方法は?

実際にマンションを売却する場合は、どのような方法でマンションの売却額を決定すればよいのでしょうか?ここからはマンションの売却額を決定する具体的な方法を見ていきます。

土地の価値は公示地価や実勢価格などから

土地の売却額は、「公示地価」「路線価」「実勢価格」などから求めることができます。詳しい計算方法は以下の通りです。

公示地価と基準地価
マンションの土地の評価額は、公示価格を1.1〜1.2倍することで求められます。ここまででもお伝えしたように、公示価格は、国土交通省の地価公示・都道府県地価調査から確認できます。具体的な計算式は以下の通りです。

公示価格×1.1~1.2

なお、公示価格は平均として実勢価格の9割程度とされていますが、地域によって低く設定されている場合があるので、事前に確認しましょう。

路線価
路線価を用いて売却費を求める場合は、路線価を0.8で割ったものを1.1〜1.2倍することで割り出せます。具体的な計算式は以下の通りです。

路線価÷0.8×1.1~1.2

路線価は公示価格の約8割になるように設定されていますが、計算はあくまでも目安ということに注意しましょう。

実勢価格
実勢価格とはここまででもお伝えした通り、実際に不動産の売買取引が成立する価格です。実勢価格で求める場合は、一般的に、公示価格と同じ程度か2割増しをすることで導き出せます。

虫眼鏡とビルの模型

家屋の評価は納税通知書から

ここまででもお伝えしたように、家屋の評価は毎年送られてくる納税通知書に同封されている課税証明書からも確認することができます。不動産の所有を検討している場合は、各市役所の窓口で取得することもできます。

不動産会社の査定から

マンションの売却額を決めるときには、不動産会社に査定を依頼して決める方法もあります。査定には2種類あり、不動産会社のサイトで査定ができる机上査定と、より詳しく査定をする訪問査定があります。

机上査定は、不動産会社のサイトで申し込み、不動産の情報を入力するだけで、およその査定額を提示してくれるものです。机上査定は、立地条件や似た物件の販売価格などの情報をもとに算出されます。訪問査定は、不動産会社が実際にマンションを調査して査定額を算出する方法で、机上査定より正確な査定額が導き出されます。

どちらの査定も無料で行えますが、より正確な査定価格を知りたいときは、訪問査定を依頼することをおすすめします。

営業からの電話、店舗への訪問必要なし!Webだけで簡単にマンション売却価格を知る方法とは?

不動産鑑定士の鑑定から

信頼性が高い評価額が必要な場合は、不動産鑑定士に評価を依頼します。不動産鑑定士とは、国家資格を持った専門家で、不動産鑑定評価を決めることができるプロフェッショナルです。不動産鑑定士が算出した不動産鑑定評価は、裁判所や税務署などの公的機関に提示する際に使える信頼性の高い情報です。

不動産鑑定士は、対象となるマンションの市場の特徴から、市場価格を「費用性」「市場性」「収益性」などいくつかの視点で検討し、価格を算出します。不動産鑑定士は主に以下のような調査を行い、それらの結果を総合的に判断して、正確で信頼性の高い不動産評価額を算出してくれます。

・費用性:更地に建物を新築で建てる場合にかかる費用を算出し、築年数による劣化を差し引いて割り出す
・市場性:周辺の成約価格を参考にする
・収益性:賃貸に出すときの収益の見込み額を調査する
なお、こうした詳細な調査を行う不動産鑑定士に依頼する場合は、一定の費用が必要になります。

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マンションの評価の今後

マンションの評価は今後どのようになっていくのでしょうか?現在マンションに住んでいる人、中古マンションの購入を検討している人は、動向をぜひチェックしたいところですよね。

今後は、マンションの管理もマンション評価額の大きな要素となりそうです。その理由として、2022年4月から「マンション管理適正評価制度」がスタートすることが挙げられます。マンション管理適正評価制度とは、定められた評価項目に沿ってマンションの管理状態をチェックする制度をいい、具体的には、マンション管理の状態や、管理組合の運営状態をチェックし、5段階で毎年評価を更新していくものです。この制度によって、マンションの資産価値を上げることも期待できそうです。

マンションの評価額を調べる際には、ぜひ今回ご紹介した方法やマンション管理適正評価制度などを参考にしてみてください。具体的な数字で、よりマンションの評価の質が上がるかもしれませんよ。

宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/