相続税評価額とは?計算方法や評価額を抑える方法を紹介!

相続税評価額とは、残された財産の価値を測るための数値です。計算方法は土地や貸地、建物など財産の種類によって異なります。今回は、財産の種類ごとの相続税評価額の計算方法や、評価額を抑えて節税につながるケースなどをご紹介します。

目次
  1. 相続税評価額とは?
  2. 相続税評価額の計算方法は?
  3. 相続税評価額を抑えられるケースは?
  4. ポイントを押さえて、節税につなげよう!
記事カテゴリ 相続 シニア
2022.07.21

相続税評価額とは?

将来的に財産を家族に相続する予定のある人のなかには、「相続税がいくらになるのか、今のうちから把握しておきたい!」という人も多いのではないでしょうか?
相続税は、残した財産にどれほどの価値があるかによって、支払額が変わってきます。そのため、財産の価値を把握する必要があります。そこで、必要となってくるのが、「相続税評価額」です。

相続税評価額とは、亡くなった人が残した財産の価値を計算する場合に用いられるものを指します。相続が発生した際は、残された財産に応じて相続税の支払いが課せられます。そのとき、相続税額を決める際の1つの基準となるのが、相続税評価額です。対象となる財産は、現金や、土地、建物、株式などさまざまありますが、原則として、財産は時価で計算されます。

今回は、相続税評価額の計算方法や評価額を抑える方法をご紹介します。

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相続税評価額の計算方法は?

相続税評価額はどのように計算するのでしょうか?ここでは、土地や建物など財産の種類別に相続税評価額を導き出す方法をご紹介します。

土地の評価

土地の評価額を出す方法は、「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があります。それぞれを見ていきましょう。

路線価方式
路線価とは、道路に面する土地の1㎡あたりの評価額を指します。路線価が設定されている土地は、路線価を用いて評価することが可能です。なお、該当の土地が、路線価地域であるかどうかは、国税庁の公式サイトに掲載されている路線価図で確認することができます。

路線価方式で土地の相続税評価額を導くには、以下の計算式を用います。

路線価×各種補正率×土地面積

たとえば、路線価が30万円、各種補正率が1.0、土地面積が200㎡の土地相続税評価額は、6,000万円(30×1.0×200)になります。

傾斜や地形によって利用しにくい土地は、評価額が低くなる傾向があります。逆に2つの路線に面している角地は、利用価値が高いとされるため、評価額も高くなります。

倍率方式
倍率方式とは、路線価が定められていない地域や、国税庁の公表している路線価図において「倍率地域」と記載された地域で用いられる土地の評価方法を指します。倍率方式は、以下の計算式で導くことが可能です。

固定資産税評価額×倍率

たとえば、固定資産税評価額が3,000万円、倍率が1.1の相続税評価額は3,300万円となります。
なお、倍率は国税庁のホームページに掲載されている評価倍率表で確認することができます。

貸地の評価

貸地とは、「かしち」と読み、他人から土地を借りる権利(借地権)が設定されている宅地のことを指します。貸地は、実際に土地を使用しているのが借地人になるため、土地の所有者としては、一般的な土地に比べると自由度が低くなるといえるでしょう。

また、貸地の相続税評価を行う場合は、更地の評価額(宅地を自分自身で利用するときの評価額)から借地権の評価額を引いて計算するため、貸地の相続税評価額は一般的な土地よりも低くなります。具体的な計算式は以下の通りです。

更地の評価額×(1-借地権割合)

たとえば、土地の評価額が3,000万円の貸地、借地権割合が40%の相続税評価額は、1,800万円
になります。

家系図と印鑑

建物の評価

建物の評価額は、各市区町村の定める固定資産税評価額が、そのまま建物の評価額になります。固定資産税評価額は、市区町村の窓口や毎年送られてくる課税明細書で確認が可能です。
建物の評価額は、以下の式で導くことができます。

固定資産税評価額×1.0%

そのほかの評価

そのほかの財産として、ここでは、生命保険金と上場株式をご紹介します。

生命保険金の評価
被相続人が亡くなった際に受け取る生命保険金は、受け取った額を基準に相続税評価額を算出します。
しかし、生命保険金の場合は、法定相続人1人あたりの受取額が非課税枠の範囲内であれば、「死亡保険金の非課税枠」を利用することができます。

たとえば、2,000万円の死亡保険金がおり、その受け取りを法定相続人である配偶者と3人の子どもが行うとしましょう。その場合は、1人あたりが非課税枠内(500万円)に収まるため、死亡保険金の非課税枠の対象となります。

上場株式
上場株式とは、金融証券取引所に上場されている株式のことを指します。評価方法としては、以下の4つのなかから最も低い額で評価します。

・相続開始日の最終価格
・相続開始月の最終価格の月平均額
・相続開始前月の最終価格の月平均額
・相続開始前々月の最終価格の月平均額

たとえば、被相続人が亡くなった日付が5月15日だった場合を例にしてみましょう。

・5月15日の最終価格=4,500円
・5月の平均価格=4,300円
・4月の平均価格=4,000円
・3月の平均価格=4,200円

この例の場合は、4つのなかで最も低い価格は4,000円となり、1株あたり4,000円で評価します。株式を1,000株保有していたとすると、400万円(4,000円×1,000株)となります。

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相続税評価額を抑えられるケースは?

土地の相続税評価額を抑えられるケースとして、ここでは3つのケースをご紹介します。

[ 1 ] 小規模宅地等の特例が適用される場合

小規模宅地等の特例とは、一定の条件を満たすことができた場合に、相続税評価額を最大で80%減額できる制度のことを指します。この特例を活用できた場合、土地の相続税評価額が3,000万円だったとすると、相続税評価額を600万円まで抑えることも可能です。
そのため、土地を相続する場合には、相続する土地が対象になるかどうか一度、確認することをおすすめします。それでは、小規模宅地等の特例は、どういった土地が対象になるのかを見ていきましょう。

特定事業用宅地等
特定事業用宅地等とは、事業で使われていた土地を指します。被相続人が事業で使用していた土地や、被相続人と同居していた親族が事業のために使用していた土地が、特例の対象になります。適用要件は以下の通りです。

・申告期限まで相続人が事業を引き継ぎ、かつ、申告期限までその事業を営んでいること
・その宅地等を申告期限まで所有していること

特定居住用宅地等 
特定居住用宅等とは、被相続人が居住用に使用していた土地を表します。また、被相続人と生計を共にしていた親族が居住用として使用していた場合も、対象です。なお、別々に生活していた場合でも、被相続人が生活費や学費などの仕送りをしていた場合は、生計を共にしていたとみなされ、対象となります。適用要件は以下の通りです。

・被相続人か生計を共にする親族が住んでいた土地を配偶者が相続する
・被相続人と同居していた親族が土地に住み続ける
・生計を共にする親族が土地に住み続ける

貸付事業用宅地等 
貸付事業用宅地等とは、その土地に賃貸物件を建てている場合や、その土地を第三者に貸している場合などの不動産貸付業に使用されていた土地のことをいいます。貸付事業用宅地等の場合は、評価額が50%減額となります。なお、その土地が駐車場や駐輪場として使用されていた場合も特例の対象となります。適用要件は以下の通りです。

・相続開始前からその土地で貸付業を営んでいる
・申告期限まで相続人が貸付事業を継続している

小規模宅地等の特例を利用する場合は、税務署へ相続税の申告書の提出が必要です。特例を利用し相続税がかからない場合でも、申告をする必要があります。
万が一、申告をしなかった場合は、税務調査が入り、延滞税や加算税を支払わなければならない可能性もありますので、特例の適用条件を満たしていても申告は必ず行うようにしましょう。

[ 2 ] 土地の借地権を相続した場合

借地であれば、一般的な土地の評価額よりも借地権の割合に応じて減額されます。借地権の相続税評価額は以下の式で導けます。

土地の相続税評価額×借地権割合

たとえば、路線価8万6,000円で土地面積300㎡、借地権割合が50%だった場合の借地権相続税評価額は、1,290万円になります。借地権割合は、先にご紹介した路線価図で確認できます。

[ 3 ] 私道として不特定多数の人が利用する場所がある場合

土地の所有者が管理する私道が、土地の一部にある場合、相続税評価額の対象とならないケースがあります。たとえば、不特定多数の人が使用する私道は、公共性が高いため、私有物として処分できないことから相続税の課税対象とはなりません。そのため、評価額は0%になります。
一方、特定の人のみが使う私道は、宅地の30%が評価額となります。

微笑む老夫婦

ポイントを押さえて、節税につなげよう!

今回は、相続税評価額についてご紹介してきました。相続税は、評価方法や特例を知っていれば、節税につながる場合があります。そのため、今回ご紹介した相続税評価額の基礎知識を理解したうえで、分からない部分や不安な部分があれば、専門家である税理士や信頼できる不動産会社に相談してみましょう。アドバイスをうまく活用して、少しでも節税につなげましょう!

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宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/