Column / 2019 12,10

引越業者がつかまらない!単身なのにウン十万円?
「引っ越し難民」問題について、引越会社3社を集めて議論してみた

ここ2年ほど、春先に「引っ越し難民」という言葉を耳にするようになった。どの引越業者に連絡しても空きがない、見積りが高額すぎてとても頼めないなど、「引っ越ししたくてもできない人」が増えているという。
引越業界は、こうした状況をどう捉えているのだろうか?また、そもそもなぜ難民が生まれてしまうのか?各社はどんな対策を講じているのか?次の引っ越しシーズンを迎える前にこの問題について考えるべく、引越会社3社にお集まりいただき、議論していただいた。

榎並紀行(やじろべえ)

編集者・ライター。水道橋の編集プロダクション「やじろべえ」代表。「Relife mode」をはじめとする住まい・暮らし系のメディア、グルメ、旅行、ビジネス、マネー系の取材記事・インタビュー記事などを手掛けます。
Twitter:https://twitter.com/noriyukienami
WEBサイト:50歳までにしたい100のコト https://www.yajirobe.jp/media/50-100/

●ベテランの引っ越しマスターが集結

今回、ご参加いただく引越会社は以下のみなさんである。

【アート引越センター】

1977年設立。全国に3500台以上の車両を保有する、業界最大手のひとつ。「ゼロイチニーサ~ン♪」のコマーシャルでもおなじみ。なお、主にお話いただく木造一弥さん(不動産法人営業部法人営業2課課長 ※写真右)は、この道30年のベテラン。

【トレファク引越】

全国に100店舗以上のリユースショップを展開する「トレジャーファクトリー」の引越サービス。トラックや引越専門スタッフを自社で持たず、日本全国の引越会社と提携し、「引越+買取+処分」をワンストップで提供している。今回お話いただくのは本間英一郎さん(トレファク引越グループ品質管理マネージャー ※写真左)。この道30年のベテラン。

【ファイン引越サービス】

1993年の創業以来、不動産会社からの紹介を中心に着実に顧客を増やし、今では北海道、東北、関東、東海、関西、中国、九州にネットワークを持つ。2019年、関東地区のサービス網拡充に伴い、東京支店を新規開設。お話いただくのは福井睦樹さん(取締役社長 ※写真奥)。この道30年のベテラン。

いずれも、この道30年のベテランをアサインしてくれる気合の入りようで、じつに頼もしい。さっそくお話を伺っていこう。

●ドライバー不足でトラックが余る? 引っ越し難民を生む、業界の深刻な人手不足


―― 昨年、一昨年と、3月から4月にかけて「引っ越し難民」のニュースが報じられています。まずは、このことについて皆さんの見解をお伺いしたいです。

トレファク引越(以下、トレファク):確かにここ2年、マスコミの報道で「引っ越し難民」という言葉を耳にするようになりました。ただ、実際に3月・4月の繁忙期が終わった後に数十社の契約引越会社に話を聞いてみたのですが、正直なところ世間で言われているほど引っ越し難民と呼ばれる方が多い印象はなかったですね。


―― 例年の繁忙期と、あまり変わらなかったということですか?

トレファク:はい。そもそも3月の月末は必ず混み合うので、各社さんの方でトラックの台数などに少し余裕を持たせておくんです。それは、企業の急な転勤などにも対応できるように。しかし、今年はその車が埋まらなかったという話も聞いています。
ただ、一方で繁忙期の引っ越し料金が高騰していることも事実で、我々としても常々この点に問題意識を持っています。そのあたりは、後ほどお話できればと思います。


―― もしかしたら、報道から受けるイメージと実際の現場で起きていることに、ギャップがあるのでしょうか?

アート引越センター(以下、アート):近年言われている引っ越し難民について、マスコミ先行のイメージがあることは確かだと思います。まず、そもそもの前提として3月4月は引っ越しの繁忙期で、どうしてもそこでのお引越しをご希望される場合、単価は上がります。また、この時期はどの業者も手一杯で、希望日になかなか頼めない。これも、ここ2年に限ったことではありません。お客様のなかにはそれを見越して、初めから業者には頼らず自分たちで運んでしまう人も多いわけです。
ただ、先ほどトレファク様がおっしゃったように、繁忙期の高騰……というより、「繁忙期以外との価格差」というべきかもしれませんが、改善すべき点があるのも事実ですね。


―― アートさん、トレファクさんはほぼ同じ見解のようですが、ファインさんはいかがでしょうか?

ファイン引越サービス(ファイン):私の感覚は二社さんと違っていて、確かにここ2年、引っ越し難民と呼ばれるような方はかなり増えたと思っています。うちは小規模ですので、おそらく引っ越し難民が最後にたどり着くところだと思うんです。最初は大手に頼もうとしたけど空きがなく、次に中堅に電話しても駄目で、最後に僕らのところへ駆け込んでくる。
ですからアートさんやトレファクさんよりも、より切実なお客様の事情を実感しやすいのだと思います。どちらが良い悪いではなく、業界の構造の問題です。通常の繁忙期でも、やはり大手から先に埋まっていきますからね。


―― 実際、困り果ててファインさんのところへ駈け込んでくるようなお客さんも多かったのでしょうか?

ファイン:すごく多かったですね。引越業者に頼めなかった方が自分でやろうと思っても、レンタカーも大手を含めどこもいっぱい。仕方なく、冷凍車や保冷車を借りる人もいたようですから。

 


―― なぜそうした状況になってしまったのでしょうか?

ファイン:最も大きいのは引越業界全体の人手不足。特にドライバーさんが足りていません。働き方改革や、そもそも引越業界に人が集まりづらくなっているなど様々な背景があるのですが、それはここ2年に限った話ではなく、もっと以前から我々が抱えている課題です。
トレファク:確かに、トラックはあるけど運転手が集まらないという話は、提携先の会社さんが口々におっしゃっていますね。