Column / 2019 12,10

引越業者がつかまらない!単身なのにウン十万円?
「引っ越し難民」問題について、引越会社3社を集めて議論してみた

ここ2年ほど、春先に「引っ越し難民」という言葉を耳にするようになった。どの引越業者に連絡しても空きがない、見積りが高額すぎてとても頼めないなど、「引っ越ししたくてもできない人」が増えているという。
引越業界は、こうした状況をどう捉えているのだろうか?また、そもそもなぜ難民が生まれてしまうのか?各社はどんな対策を講じているのか?次の引っ越しシーズンを迎える前にこの問題について考えるべく、引越会社3社にお集まりいただき、議論していただいた。

榎並紀行(やじろべえ)

編集者・ライター。水道橋の編集プロダクション「やじろべえ」代表。「Relife mode」をはじめとする住まい・暮らし系のメディア、グルメ、旅行、ビジネス、マネー系の取材記事・インタビュー記事などを手掛けます。
Twitter:https://twitter.com/noriyukienami
WEBサイト:50歳までにしたい100のコト https://www.yajirobe.jp/media/50-100/

●単身・都内の引っ越しで数十万円も……! 3月の引越代が高騰するワケ


―― 先ほど、繁忙期の価格があまりにも高騰しているというお話がありました。実際、どれくらい上がっているのでしょうか?

ファイン:我々はここ2年、引っ越し難民と呼ばれる方々の声をたくさん聴いてきましたが、なかには単身かつ東京都内間の引っ越しで30万や50万と言われたなんてケースもありました。
トレファク:この時期はどの会社も高単価ですが、最近はやりすぎが非常に目立ちますね。せいぜい、平常期の3倍くらいが適正でしょう。それをゆうに超える異常な高騰については、業界の健全な発展を考えるといかがなものかと思います。お客さんも、どんどん離れてしまいますよね。


―― しかし、価格が高騰してしまう背景には、この時期になるべく稼いでおきたいという引越会社の事情もあるわけですよね。

ファイン:そうですね。引越会社はいかに3月4月の繁忙期で稼ぎ、それ以外の月のマイナスを抑えるかが勝負。春先の短い期間でいかに蓄えを作れるかで、通常期・閑散期を食いつないでいるのが実情です。ですから、高単価が見込める繁忙期がなくなってしまうのは、それはそれで業界として成り立たなくなってしまうのではないでしょうか。
※参考:総務省統計局『平成30年 住民基本台帳人口移動報告』

 

トレファク:繁忙期が高騰してしまう裏には、平常期の価格が下落しすぎているという問題があります。だから、3月4月に稼がないと会社が潰れてしまう。ここを適正化していかないと、なかなか今の状況は変わらないのではないかと思います。


―― なるほど……。アートさんはどのようにお考えでしょうか?

アート:まさに、皆さんがおっしゃった通りだと思います。これは私が会社に入った30年前から言われていることですが、引越業界の永遠の課題は「平準化」であると。つまり、月ごとの忙しさや売上の波をなくし、いかに均等にしていくかがやはり重要なのだと思います。


―― ちなみに繁忙期以外の単価って、そんなに下がっているのでしょうか?

アート:私の感覚では、20年前に比べ平均単価が10万円くらい下がっています。これには様々な要因があります。たとえば、住まいにクローゼットなどの収納が増え、タンスなどの大きな家財道具が減ったこと。また、核家族化や単身世帯が増えたこと。さらには、ある時期に引越業者間で激しい価格競争が起きたことなどです。
ただ、引っ越しにかかる経費は積み上げ方式で、人件費がいくら、トラック代がいくらと決まっていますので、安くするにも限界がある。しかし、特に平常期については、その限界を超える価格破壊が起きている状況ではないかと思います。


―― だからといって、引越会社が足並みを揃えて価格協定を結ぶわけにもいきませんよね。本当は、春に転居が集中する社会構造自体を変えられたらいいんでしょうけど……。

アート:現状では難しいですね。我々からお願いできるとすれば、どうしても事情がある場合を除き、3月末のピーク時の引っ越しはなるべく避けていただくことでしょうか。
ただ、じつは弊社でも平準化のための取り組みは進めています。たとえば、弊社は法人契約のお客様が多いのですが、契約企業様に対し「転勤の時期を分散していただく」などの働きかけをしてきました。


―― 企業の反応はいかがでしょうか?

アート:特にここ数年はご理解いただき、ご協力いただけるようになっています。実際の動きとして、3月の転勤はできる限り減らすという企業様も出てきていますから。やはり、あれだけ引っ越し難民の問題が報じられたことで、業界の厳しい実情を分かっていただけるようになったのではないでしょうか。