相続した不動産を売却するとかかる税金は?受けられる特別控除や注意点を解説
相続した不動産を売却すると印紙税や譲渡所得にまつわる税金(譲渡所得税)がかかりますが、特例により税金の支払いが免除されたり納税額を軽減できたりする場合があります。この記事では、相続した不動産を売却する流れや税金の計算方法をご紹介します。
目次
相続した不動産を売却する流れ
相続した不動産を売却するには、名義や権利関係を整理しながら進める必要があります。一般的な流れは以下の通りです。
1.遺言書有無の確認と遺産分割協議
2.名義変更
3.不動産会社に査定・仲介を依頼
4.売買契約の締結
5.決済・引渡し
特に遺産分割協議や相続登記(名義変更)などは重要です。協議がスムーズに進まず、手続きが滞ってしまうと売却できないこともあります。ここでは、各ステップのポイントを順番に解説していきます。
1.遺言書有無の確認と遺産分割協議
相続が分かったら、まず被相続人(亡くなった人)の遺言書があるかどうかを確認しましょう。遺言書があれば原則その内容に従い、ない場合は相続人全員で遺産分割協議をして不動産の扱いについて話し合います。
誰が相続するか、売却するか、共有するかなどを明確にし、合意内容は「遺産分割協議書」にまとめましょう。遺産分割協議書は、名義変更や売却に必要となる重要な書類です。
なお、相続した不動産を分割するには、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割などの方法が用いられます。
現物分割
相続の対象となる遺産自体を、相続人同士で分配する方法のことです。「車はAさん、預貯金はBさん、不動産はCさんが相続する」といったように、遺産の種類ごとに分配することもあれば、1つの敷地を複数に分割して相続する「分筆」のような方法もあります。
代償分割
特定の相続人が不動産を相続し、ほかの相続人に相続分に見合った現金を支払う方法です。
換価分割
不動産を売却し、その利益を相続人同士で分割する方法です。現金の分割は平等性を担保しやすいため、不動産相続の場面では特に行われることが多い方法です。
共有分割
不動産の全部、または一部を複数の相続人で共有します。たとえば、妻が2分の1、息子が4分の1、娘が4分の1、持分を持つ方法です。売却、賃貸など処分や管理にあたり共有名義人全員の同意が必要です。
●相続した不動産を分割して売却する方法についてはこちら
2.名義変更
不動産を相続した場合は、相続人へ名義を移す「相続登記」が必要です。2024年4月1日から相続登記が義務化されたため、相続を知ってから3年以内に登記申請が必要です。原則、登記をしないままでは売却ができません。
そして、名義変更には遺産分割協議書や戸籍・住民票、固定資産評価証明書などの書類が必要です。司法書士に依頼することも多く、売却を予定している場合は不動産会社から司法書士を紹介してもらえることもあるので相談してみましょう。
3.不動産会社に査定・仲介を依頼
不動産会社へ査定を依頼し、売却価格の目安を把握したうえで正式に仲介を依頼しましょう。不動産会社と媒介契約を結ぶと、広告掲載や内覧対応などの売却活動が本格的にスタートします。
4.売買契約の締結
不動産の購入希望者が確定したら、売買契約を締結します。このとき、買主の購入意志を確認するため、物件の引渡しまでの期間に手付金を受領するのが一般的です。
5.決済・引渡し
売買契約後、買主が住宅ローンの本審査を通過すると決済・引渡しをします。当日は残代金の受領、所有権移転登記の手続きなどが行われます。同時に鍵や設備・備品の保証書などを引渡したら完了です。
●不動産を相続する流れについてはこちら

相続した不動産を売却したときにかかる税金
相続した不動産を売却する際には、譲渡所得税や印紙税が発生します。譲渡所得税は、不動産の所有期間によって税率が変動し、印紙税は不動産売買の契約金額によって変わります。ここでは、相続した不動産の売却にかかる主な税金の種類と内容、税率などについて詳しく見ていきましょう。
譲渡所得税
相続した不動産の売却によって利益が出た場合、利益に対して所得税と住民税が発生し、これらを総称して譲渡所得税と呼びます。譲渡所得税がかかるのは、原則として不動産の購入金額よりも売却金額のほうが高い場合です。
譲渡所得は、以下の式から算出されます。
課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
不動産売却において、「収入金額」とは不動産を売却したことで受け取った金額のことです。また、収入金額から差し引かれる「特別控除額」は、不動産の種類や譲渡する理由によって異なりますが、相続した不動産を売却する場合には条件を満たしていれば最大3,000万円が控除されます。
上式で求められた課税譲渡所得金額に、所定の税率をかけ合わせたものが譲渡所得税です。この税率は、不動産を所有していた期間の長さによって異なり、以下のように決められています。
| 所有期間 | 税率 |
|---|---|
| 短期譲渡所得 (譲渡した年の1月1日時点で5年以下) | 39.63% (所得税30.63% + 住民税9%) |
| 長期譲渡所得 (譲渡した年の1月1日時点で5年を超える) | 20.315% (所得税15.315% + 住民税5%) |
なお、相続した不動産の所有期間は被相続人が取得した日から計算されるのが一般的です。
●譲渡所得税についてはこちら

印紙税
印紙税は、売買契約書の作成時にかかる税金です。記載された契約金額に応じて高くなり、原則として以下のように決められています(※1)。なお、印紙税は租税特別措置法により、2027年3月31日までの間に作成されるものには、軽減措置によって税率が引き下げられています。
| 記載された契約金額 | 軽減税額(2027年3月31日まで) | 本則税額(2027年4月1日以降) |
|---|---|---|
| 10万円を超え50万円以下 | 200円 | 400円 |
| 50万円を超え100万円以下 | 500円 | 1,000円 |
| 100万円を超え500万円以下 | 1,000円 | 2,000円 |
| 500万円を超え1,000万円以下 | 5,000円 | 1万円 |
| 1,000万円を超え5,000万円以下 | 1万円 | 2万円 |
| 5,000万円を超え1億円以下 | 3万円 | 6万円 |
| 1億円を超え5億円以下 | 6万円 | 10万円 |
| 5億円を超え10億円以下 | 16万円 | 20万円 |
| 10億円を超え50億円以下 | 32万円 | 40万円 |
| 50億円を超えるもの | 48万円 | 60万円 |

相続した不動産の売却に使える特別控除
譲渡所得税には納税額を軽減するための特例が存在するため、実際の納税額は計算によって求められる金額よりも低く抑えられるケースがあります。不動産を相続し売却する際に活用できる特例と、納税額を抑えるコツについて詳しく見ていきましょう。
取得費加算の特例
取得費加算の特例は、相続した不動産を3年以内に売却すると受けられるものです。先ほど「譲渡所得税」の項で解説したように、譲渡所得税の金額は以下の式によって求められます。
・課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
・譲渡所得税額=課税譲渡所得金額×所定の税率(20.315%または39.63%)
ここで所定の条件を満たせば、取得費加算の特例が適用され、不動産売却による収入金額から差し引かれる取得費の金額が大きくなります。その結果、課税譲渡所得の金額が小さくなるため、譲渡所得税額が抑えられるのです。取得費加算の特例が適用されるには、以下の3つの条件を満たす必要があります(※2)。
・相続や遺贈により財産を得た者(=相続人)であること
・財産を相続するにあたって相続税が課されたこと
・相続税の申告期限の翌日から3年以内に譲渡したこと
取得費に加算される金額を求めるには、やや複雑な数式を使う必要があります。詳しい内容について知りたい方は、国税庁のWebページ(※2)で確認するとよいでしょう。
また、取得費加算の特例は相続税を納めた人のみに適用されることに留意しましょう。譲渡所得税と同様に、相続税についても節税のために役立つ特例があり、これにより相続税が課されなかった場合には取得費加算の特例は適用対象外となります。
●取得費加算の特例についてはこちら

被相続人の居住用財産(空き家)にかかる譲渡所得の特別控除の特例
空き家を相続、売却して得られた利益についても、特別控除の特例が存在します。空き家についても、一定の要件を満たすことで譲渡所得の金額から最大3,000万円までを控除できます。この特例でも適用される要件は細かく規定されており、代表的なものは以下の通りです(※3)。
・1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家屋であること
・区分所有建物登記された建物(マンションやアパートなど)ではないこと
・相続が発生する直前に、被相続人以外が暮らしていなかったこと
・相続した日から3年が経過した年の12月31日までに売却したこと
・売却金額が1億円以下であること
被相続人の居住用財産(空き家)にかかる譲渡所得の特別控除の特例は、「住宅ローン控除」との併用はできますが、「取得費加算の特例」との併用はできません。必要に応じてどちらか一方を選びましょう。
●空き家売却にかかる税金を抑える補助金や特例についてはこちら

不動産売却の税額シミュレーション
相続した実家を売却する場合に、どれくらいの金額を用意する必要があるのかを、具体的な数値や条件をもとにシミュレーションを行ってみましょう。以下のケースで、譲渡所得税と印紙税の金額を考えます。
・売却金額:4,000万円
・譲渡時にかかった諸経費:200万円
・取得費:3,000万円(取得価格から建物の減価償却費を差し引いた金額)
・取得時にかかった諸経費:100万円
・被相続人の不動産取得から相続発生までの期間:10年間(長期譲渡所得)
・相続から譲渡までの期間:3年間以下
・特別控除:相続税を納める必要がなかった場合

譲渡所得税のシミュレーション
譲渡所得税の算出方法については、以下の2つの式が使われます。
・課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
・譲渡所得税額=課税譲渡所得金額×所定の税率(20.315%または30.63%)
ここでは、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例を考慮しない場合と考慮する場合のそれぞれを考え、特例による節税効果を確認します。
特別控除を考慮しない場合
まずは、課税譲渡所得金額を求めます。
課税譲渡所得金額=(4,000万円-3,000万円)-(100万円+200万円)=700万円
次に、課税譲渡所得金額に所定の税率をかけることで、譲渡所得税を算出します。今回の場合、被相続人の物件取得から不動産売却までの期間が5年以上であるため、長期譲渡所得の税率を用います。
譲渡所得税額=700万円×20.315%=142万2,050円
特別控除を考慮する場合
先ほど解説した通り、譲渡所得税の算出にあたっては「取得費加算の特例」「3,000万円の特別控除の特例」を適用できることがあります。これらの特例は併用できませんから、節税効果が高い特例はどちらなのか確かめましょう。
今回のケースでは相続時に相続税を納める必要がなかったため、取得費加算の特例は適用されず、3,000万円の特別控除の特例のみを考えます。特別控除では、課税譲渡所得金額から3,000万円までを差し引いて譲渡所得税を計算します。
先ほどの計算では課税譲渡所得金額が700万円となり、これは3,000万円を大きく下回る金額です。つまり、今回のケースで3,000万円の特別控除の特例を適用すると、譲渡所得税は発生しないことになります。
印紙税のシミュレーション
印紙税の金額を知るうえでは、複雑な計算は不要です。今回の場合、不動産売買の契約金額は4,000万円ですから「1,000万円を超え5,000万円以下」の項に該当します。軽減税率が適用される2027年(令和9年)3月31日までであれば1万円、同年4月1日以降であれば2万円となることが分かります。

相続した不動産を売却するときの注意点
相続した不動産を売却する際は、手続きだけでなくトラブル防止のための注意点もあります。例として、不動産会社選び、売却のタイミング、共有名義の扱い、税務上の特例などが挙げられます。確認すべき項目は幅広いため、事前準備が売却成功のポイントです。
ここでは、特に押さえておきたい注意点を具体的に紹介します。
不動産会社を見極める
相続した不動産の売却では、不動産会社選びがポイントです。成約価格や手続きのスムーズさに大きく影響を与えることがあります。相続物件の取扱実績が豊富な会社や、査定価格について丁寧に説明してくれる会社を選ぶと安心です。最終的には、各不動産会社の強みや担当者の対応などを見て、信頼できる不動産会社と媒介契約を結びましょう。
3年以内を目標に売却する
相続した不動産を売却した際の特別控除は、利用できる期間が限られています。そのため、節税の観点からは、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却を目指すとよいでしょう。また、空き家のまま放置すると固定資産税や管理コストが増えるほか、建物の劣化も進んで資産価値が下がる恐れもあるため、早めの売却が望ましいといえます。
共有名義の場合は全員の同意を得て売却する
相続した不動産が共有名義の場合、売却には共有者全員の同意が必要です。1人でも反対すれば売却できず、協議が長引くことも珍しくありません。共有者が遠方に住んでいる場合や連絡が取りにくい場合は、手続きに時間がかかることもあります。事前に意向を確認し、合意形成を進めておくとスムーズに売却できます。共有名義を避けるために、遺産分割の段階で調整することも有効です。
換価分割の場合は贈与にならないようにする
相続した不動産を売却し、その代金を相続人全員で分ける「換価分割」は一般的な方法ですが「贈与」と見なされる可能性があります。贈与と判断されると贈与税の対象となり、思わぬ負担が生じることもあるため、対策が必要です。具体的には、不動産の売却代金を換価分割する旨を遺産分割協議書に明記するとよいでしょう。
取得費が不明の場合は代わりとなる資料を探す
相続した不動産の領収書や売買契約書が見つからない場合、代わりとなる資料で証明できます。取得費は被相続人が不動産を購入した際の金額を指しますが、古い物件では領収書や売買契約書が残っていないケースも多くあります。取得費が不明な場合は「譲渡収入金額(土地・建物の譲渡代金、固定資産税・都市計画税の清算金)の5%」で計算され、税負担が大きくなりがちです。
資料が見つからない場合でも、購入時の価格が分かるパンフレットや購入代金の支払いに使用した通帳などで証明ができるので、探してみましょう。
●取得費についてはこちら

よくある質問
相続した不動産の売却に関して、さまざまな疑問が多く寄せられます。ここでは代表的な質問を取り上げて解説しますので、売却を検討する際の参考にしてみてください。
相続した不動産を売却するメリットは?
相続した不動産を売却する大きなメリットは、維持管理の負担を減らせる点です。空き家を放置すると、固定資産税や修繕費がかかり、長期的には資産価値が下がるリスクもあります。共有名義の場合、売却して現金化すれば分配が明確になり、相続人同士のトラブルも回避しやすいでしょう。
相続した不動産を売却するタイミングは?
相続した不動産を売却するタイミングは、税制上のメリットや市場動向などを踏まえて判断するのが理想です。特に、取得費加算の特例や3,000万円の特別控除の特例が使える「相続開始から3年以内」は節税の観点から重要な期間です。空き家のまま放置すると劣化が進み、売却価格が下がる可能性があることを踏まえると、早めの検討が望ましいといえるでしょう。
相続した不動産は早めに売却しよう
遺産相続や不動産売却の際に、留意しなければならないことは多く存在します。その数ある留意項目のなかでも、相続した不動産は決して放置しないという点は特に重要です。
相続した不動産を放置するという行為には、さまざまなリスクを伴います。手入れされていない空き家は劣化や腐食が進み、快適性や安全性を損ねる恐れがあります。それだけでなく、年々不動産価値が下がっていくため、売却しても利益が見込めないことが考えられます。
不動産を相続したら、どうすれば有効活用できるのかを考え、なるべく早いうちに行動に移しましょう。不動産を所持しているだけで、固定資産税や維持費といった支出が発生するため、不動産価値が下がらないうちに売却することは有力な選択肢の1つといえるでしょう。
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※1出典:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/08/10.htm
(最終確認:2026年2月27日)
※2出典:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
(最終確認:2026年2月27日)
※3出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
(最終確認:2026年2月27日)

柴田 剛
弁護士法人ASK川崎所属。弁護士。
交通事故、相続、債務整理などのいわゆるマチ弁業務のほか、スポーツ法務にも注力している。
https://www.s-dori-law.com/





