Home / 2022 03,15

不動産を相続する際の流れとは?遺産分割や評価の方法についても解説!

不動産相続には、複雑な手続きがあり、相続の方法もいくつか種類があります。今回は、不動産を相続する際の手順から、費用や必要書類までご紹介します。あらかじめ知識を頭に入れて、スムーズに相続手続きを進められるようにしましょう。

伊藤諭

弁護士法人ASK市役所通り法律事務所代表。弁護士。
地元に根ざした幅広い業務を行い、企業法務や交通事故、相続などを注力分野としている。
多数の講演実績のほか、ネットニュースの監修やメディア出演も行う。
https://www.s-dori-law.com/

不動産を相続することになったら

多くの人がいつかは直面する相続の手続きですが、具体的に何をすればよいのかは、意外と知られていません。いざ直面したときに一から調べようとすると、とても大変な作業になるでしょう。

国税庁が公表している「令和元年分の相続税の申告状況について」※1によると、相続財産の32.7%が土地や家屋の不動産です。つまり、相続について考える際は、不動産をどのように相続人の間で分割するのか、不動産の評価はどんな方法なのかをあらかじめ知っておくことは特に大事だといえます。

この記事では、不動産を相続する際の流れや、遺産分割や評価の方法について解説します。また、その際にかかる費用や必要書類など、不動産を相続するうえで知っておいたほうがよいポイントもご紹介します!

夫婦と親

不動産を相続する際の流れ

不動産相続が発生した際に慌てないために、どの順番でどのような手続きをする必要があるのか、全体的な流れをつかんでおくことが重要です。不動産相続の流れを6つに分けて、順番に説明していきます。

[ 1 ] 遺言書の有無を確認する

相続が発生したら、まずは遺言書の有無を確認しましょう。遺言書が遺されている場合は、基本的にその内容に従って相続を進めることになります。

遺言書には「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類あります。それぞれの特徴は以下の表の通りです。

自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成方法 遺言者が自書し、押印をする 2人の証人が立会いのもと、公証人が遺言者から聴き取った遺言内容を記述する 2人の証人が立会いのもと、遺言者が自書した遺言書を公証役場に持ち込み、内容は伏せたまま存在を確認してもらう
保管場所 遺言者 法務局 公正役場 遺言者
検認手続き 必要 不要 不要 必要

遺言の種類や保管場所によっては、家庭裁判所で遺言書の内容や状態を確認する「検認」の手続きが必要となります。検認を行わずに遺言書を開封すると、5万円以下の過料というペナルティを課されるため、注意しましょう。

[ 2 ] 相続人を確認する

遺言書が遺されていなかった場合は、基本的に民法で定められた法定相続人が財産を相続します。法定相続人の調査は、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本を取得して行います。戸籍謄本から、親族関係となる人を全て洗い出し、法定相続人を確定させましょう。

法定相続人が確定したら、一定の書式に従って「法定相続情報一覧図」を作成し、法務局に被相続人および相続人の戸籍謄本、相続人の住民票などを提出することで、法定相続人を証明する制度も利用できます。あらかじめ法定相続情報一覧図を用意しておけば、この後の相続に関する手続きにおいて、簡単に相続関係を証明できるようになります。

[ 3 ] 相続する財産を確認する

相続人が確定したら、次はどのような財産が遺されているのかを確認します。相続財産に不動産が含まれているかどうかは、市区町村から届く固定資産税の納税通知書を確認すれば分かります。なお、相続財産の総額は、不動産以外のものも含んだうえで計算しなければならない点に注意しましょう。

このとき、相続財産に借金や未払いの税金などの債務が多く、相続をしたくない場合、相続人は相続放棄をすることが可能です。相続放棄をする際は、相続の開始を知ってから3か月以内に、家庭裁判所に書類を提出して、相続放棄の申述手続きを行う必要があります。

家系図

[ 4 ] 遺産分割協議をする

相続人と相続財産が確定したら、遺産分割協議を行います。遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分割について協議をし、合意をすることです。分割内容の合意を得られたら、遺産分割協議書を作成します。この書類には、相続人全員の署名捺印が必要となります。

どうしても協議がまとまらない場合は、家庭裁判所にて遺産分割調停を申し立てることになります。遺産分割調停とは、家事審判官(裁判官)と調停委員(非常勤の裁判所職員)で組織される調停委員会が、中立公正な立場から各相続人の意見を聞き、解決策を提案しながら進められる、遺産分割の話し合いです。

調停が不成立となった場合は、遺産分割審判へと移行し、裁判官が、遺産に属する物、権利関係やその性質など一切の事情を考慮して、遺産の分割方法を決定することになります。

●法定相続人の相続権利に関する記事はこちら
遺留分とは?計算方法や請求方法を解説!

[ 5 ] 相続財産の名義変更をする

不動産を相続する際は、相続登記の手続きをすることで、被相続人から相続人へと名義変更されます。相続登記の手続きには、登記事項証明書や住民票などの書類と、それを取得するための費用、そのほかにも登録免許税や司法書士報酬などの費用が必要となります。

[ 6 ] 相続税の申告・納付をする

相続開始を知った日の翌日から10か月以内に、税務署に相続税の申告・納付をしなければなりません。申告期限を過ぎたり、納税額が不足したりすると、延滞税や加算税を課せられるので注意しましょう。

遺産分割協議書

不動産を相続する方法

相続人が複数いる場合、不動産をどう相続するかは複雑な問題です。不動産は現金のように均等に分割することができないので、全員が納得できる相続方法を見付ける必要があるでしょう。

不動産を相続する方法は、大きく4つに分かれます。それぞれのメリットと注意点について見ていきましょう。

現物分割

現物分割は、不動産をはじめとした財産を、そのまま分割して相続する方法です。最もシンプルで手続きも簡単な方法になりますが、建物を含む不動産の場合は分割するのが難しいので、主に土地のみの不動産で用いられます。ただし、相続する土地のもともとの面積が狭くこれ以上分けられない場合や、分割することで価値が著しく低下するような場合は、そもそも現物分割ができないため注意しましょう。

代償分割

代償分割は、特定の相続人だけが不動産を相続し、その相続人がほかの相続人に相続分の金銭を渡す方法です。相続人のなかに、不動産よりも現金が欲しいという人がいる場合に有効な方法といえます。また、財産となった建物に住んでいる相続人が、そのまま住み続けるために、この方法を用いるケースもあります。代償金の金額に争いが生じやすいことに加え、相続分の金銭は、基本的に現金で用意する必要がある点に注意しましょう。

換価分割

換価分割は、不動産を売却し、その代金を相続人で分割する方法です。そのままの形で分割することが難しい不動産も、現金化してしまえば均等に分割することが可能となります。相続人全員が不動産の相続を望んでいない場合に有効な方法といえます。最も均等に財産を分割する方法となりますが、希望した価格で売却できない可能性がある点や、相続人全員に譲渡所得税がかかる可能性がある点に注意しましょう。

共有名義

共有名義は、1つの不動産を複数人で所有している状態のことをいいます。不動産を共有名義で相続する場合は、不動産は分割せず、相続人それぞれが共有持分と呼ばれる割合に応じて不動産の所有権を持つことになります。将来的に不動産を売却したり、賃貸にしたりする際には、共有名義者全員の同意が必要となるため、意見が合わない、連絡が取れなくなるなどのトラブルに発展する恐れがあるでしょう。また、相続が繰り返されると、共有名義人がどんどん増えていくというリスクもあります。

家の模型とお金と電卓

不動産の評価方法

数ある相続財産のなかでも、不動産は高額になりやすく、均等に分割することも難しいため、遺産分割協議の際にトラブルに発展する可能性が高いといえます。そのうえ、不動産の評価方法は複数あり、どの評価方法を用いるかによって評価額も変わってきます。

特に、代償分割を行う場合は、渡す金額を安く済ませたい相続人と、もらう金額を高くしたい相続人との間で希望する評価方法が異なることが多く、よりトラブルに発展しやすいでしょう。

遺産分割協議の際は、相続人間で同意が得られるのであればどの評価方法を用いても自由ですが、話し合いがまとまらずに調停になった場合、実勢価格で評価することが原則になります。それでは、それぞれの評価方法についてご説明していきます。

実勢価格

実勢価格は、実際にその不動産を売買する場合に、いくらになるのかを想定して算出される価格です。基本的には、複数ある評価方法のなかで最も高い評価額が出る評価方法となります。なお、査定をする不動産会社によって査定額が異なるため、複数の不動産会社に査定を依頼するようにしましょう。評価額に関する争いがまとまらないときは、裁判所の鑑定によって価格を決めることがあります。その場合、鑑定の費用が別途発生します。

公示価格

公示価格は、不動産鑑定士の評価額を参考に、地価公示法に基づいて土地鑑定委員会が公表している土地の価格です。実勢価格よりも安く算出され、実勢価格に対して90%程度の価格が目安となります。

路線価方式

路線価方式は、相続税や贈与税の計算をする際に基準となる方式であり、全国の道路ごとに路線価という土地の価格が設定されています。公示価格に対して80%程度の価格水準に設定されています。

固定資産税評価額

固定資産税評価額は、固定資産税や都市計画税などの、不動産に関する税金を計算する際に基準となる価格であり、各市町村が不動産1件ずつに対して決めています。固定資産税評価額は、土地と建物それぞれに設定されていて、土地の場合は公示価格に対して70%程度の価格水準に設定されています。

倍率方式

倍率方式は、固定資産税評価額に地域ごとに定められた倍率をかけて評価する方式であり、主に路線価が定められていない地域で用いられています。倍率は国税庁が定めており、評価倍率表に記載されています。

家の模型と、PCと電卓を操作する人

不動産相続の際にかかる費用

不動産を相続する際、相続税や手続きにかかる費用がどれくらいなのかは気になる部分です。具体的にどれくらいの金額がかかるのかをしっかりと把握し、相続人の間でどのように負担するかを決めておきましょう。

相続税

相続税は、被相続人から相続人へと財産が相続された場合に、その財産に課される税金です。相続税がかかるかどうかを知るには、「相続税の基礎控除額」を把握する必要があります。相続税の基礎控除額の計算式は以下の通りです。

相続税の基礎控除額=3,000万円+(法定相続人の人数×600万円)

土地の相続税評価額は、「路線価方式」か「倍率方式」によって求められ、建物の相続税評価額は固定資産税評価額と同じです。相続財産の総額が基礎控除額を超えている場合、相続税が課されます。なお、相続財産は不動産だけでなく、現金や有価証券、美術品などの全ての財産が含まれる点に注意しましょう。

相続税の算出方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご参照ください。

●相続税の基礎控除に関する記事はこちら
相続税の基礎控除とは?計算方法と課税の目安をご紹介!

登録免許税

登録免許税は、不動産の相続登記を行う際に課される税金です。相続登記での登録免許税額の計算式は以下の通りです。

登録免許税額=土地と建物の固定資産税評価額×0.4%

固定資産税評価額は土地と建物を分けて定められており、その両方に登録免許税がかかる点に注意しましょう。

その他の費用

相続登記には、登記事項証明書や戸籍謄本、住民票といった書類を取得するための費用や、書類を法務局に送るための郵送費なども必要となります。また、相続登記の手続きは複雑であり、一般的には司法書士に依頼することになるため、その際に司法書士報酬を支払う必要があります。

相続登記の手続きについてはこちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご参照ください。

●所有権移転登記に関する記事はこちら
所有権移転登記の費用はどれくらいかかる?取得のために必要な費用の計算方法

家と税金の模型と現金

不動産相続の際に必要な書類

相続手続きには非常に多くの書類が必要となります。相続人が遠方に住んでいる場合は、郵送に時間がかかることもありますので、相続の発生が判明したら、すぐに書類を集め始めましょう。必要書類は以下の通りです。

・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の印鑑証明書
・被相続人の戸籍謄本(出生時から死亡時まで)
・被相続人の住民票の除票
・遺言書もしくは遺産分割協議書
・不動産の登記事項証明書
・不動産を相続する人の住民票
・不動産の固定資産評価証明書

これらの必要書類は基本的に全て原本の提出が必要となります。提出した原本は、原本還付の手続きをしないと返却されません。

封筒に入った書類

不動産の種類ごとの注意点

一言で不動産相続といっても、土地のみの場合もあれば、戸建てやマンションの場合もあります。これら不動産の種類によっても、注意すべき点が異なるので、1つずつ説明していきます。

土地のみを相続する場合

土地の価格は常に変動するため、相続発生時と分割時で価格差がある場合に、どの時点での価格を用いるかでトラブルに発展する可能性があります。分割協議の際に、将来の価格変動についても触れながら話し合い、事前に合意しておくことが重要となります。

戸建てを相続する場合

相続した戸建てを空き家のままにしておくと、「特定空き家」に指定されてしまうことがあります。特定空き家に指定されてしまうと、小規模住宅用地特例の対象外になるため、固定資産税が最大で6倍ほどまで高くなってしまいます。固定資産税は毎年支払う必要があるため、相続した戸建てに住む予定がない場合は、なるべく早く売却するとよいでしょう。

マンションを相続する場合

マンションを相続し、住む予定がない場合は賃貸に出して家賃収入を得ることが可能ですが、築年数が古いマンションの場合は、入居者の獲得が難しくなります。また、築年数が増すにつれ、修繕積立金や管理費も増加していく点にも注意が必要です。マンションを相続した場合は、不動産会社に相談して、活用方法を検討するとよいでしょう。

戸建てや集合住宅の模型

相続の準備はなるべく早めに

相続手続きでは、相続人の確認や書類の用意などに多くの時間がかかります。相続放棄や相続税の申告などには期限があるため、事前に相続手続きについて知り、どれだけ準備をしておくかが重要となります。

相続が発生してから動き始めるのではなく、いつ相続が発生してもよいように準備しておくとよいでしょう。自分ひとりで準備することが難しい場合は、専門家に相談してサポートしてもらうのもおすすめですよ!

※1出典:令和元年分の相続税の申告状況について, 掲載会社名
https://www.nta.go.jp/about/organization/takamatsu/release/hodo/hodo_r02/souzoku_shinkoku/index.htm
(最終確認:2022年1月27日)

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