空き家の賢い売却方法とは?売却にかかる費用や税金、節税方法についても併せて解説!

空き家を放置していると管理費がかかってしまいますが、売却すれば空き家を現金化できます。相続したものの、活用方法がないならば売却を検討してみませんか?今回は、空き家の売却方法やかかる費用、また節約方法についても併せて詳しく解説します。

目次
  1. 活用予定のない空き家は売却しよう!
  2. 空き家の売却方法
  3. 空き家の売却にかかる費用と税金
  4. 費用と税金を抑える対策
  5. 空き家を売却する際の注意点
  6. プロのアドバイスを聞いて売却を進めよう!
記事カテゴリ 売却 費用 一戸建て
2023.06.30

活用予定のない空き家は売却しよう!

空き家の増加が社会的課題の1つとして取り上げられている昨今。管理費や固定資産税などの維持費を捻出しながら、住まない実家を持て余している方もいるのではないでしょうか?

空き家は、活用していないと負担の大きい不動産です。上に挙げたような経済的負担だけでなく、片付けずに放置していることや倒壊リスクに対する心理的負担も挙げられます。とはいえ、空き家を売却するにも「費用や税金がかかりそう」「面倒な手続きが多そう」など、不安や疑問は多いものですね。

そこで今回は、空き家を売却したい意思はあるものの、売却方法が分からない、費用に不安があるなどの空き家問題を抱える方のために、売却方法やかかる費用、コストを抑えるポイントなどをお伝えします。

家の模型

空き家の売却方法

空き家を売却する方法には、大きく分けて3つあります。解体せずにそのまま売却する方法、更地にしてから売却する方法、不動産会社に買い取ってもらう方法です。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

[ 1 ] そのまま売却する

家を解体せずに「中古住宅」、もしくは「古家(ふるや)付き土地」として売却する方法です。明確な決まりがあるわけではありませんが、建物の価値が大きく変わる築20年を目安として、築20年以内なら「中古住宅」、築20年以上が経過しているのなら「古家付き土地」として販売するのがよいでしょう。

中古住宅は、面積や立地などが同条件の新築住宅と比較すると安く手に入れられるため、家の購入費用を抑えたい人からのニーズがあります。加えてその価格の安さにより、ライフスタイルや働き方に合わせて、自分好みの間取りや内装にリフォームしたい人からのニーズも期待できるでしょう。また、古家付き土地の場合は、解体費用がかからない、固定資産税を抑えたまま売却活動ができるなどのメリットがあり、売却にかかる費用を減らすことができます。

売却する場合は、不動産会社と媒介契約を結び、売却活動を行います。不動産会社を決める際は査定額だけで判断せず、その会社の売却実績や対応のスピード感、営業担当者の人柄や知識量なども考慮して判断するようにしましょう。

模型の家に囲まれた更地

[ 2 ] 更地にして売却する

2つ目の選択肢として、空き家を解体して更地にしてから売却する方法があります。更地にするメリットは、古家付き土地として売却するより早く買い手が付く可能性が高い点にあります。なぜなら、更地として売却するケースでは、購入後に買主が解体費用を負担する必要がないためです。

更地にして売却する方法は、建物の老朽化が進んでいて、倒壊の恐れがある場合や、リフォームやリノベーションに多額の費用がかかる場合におすすめです。解体費用は発生するものの、解体費用を売却価格に上乗せできる場合があります。解体費用については後ほど見ていきましょう。

また、更地にすると建物付きの場合と比較して、土地にかかる固定資産税や都市計画税が高額になります。建物がある場合の土地の固定資産税や都市計画税は令和3年度まで減税措置の対象ですが、建物を解体してしまうと減税措置の対象でなくなってしまうため、固定資産税は3~6倍、都市計画税は3倍に上がります。

TAXの模型

[ 3 ] 買取を依頼する

3つ目は、空き家を不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。

買取は、とにかく早く売りたい方におすすめです。一般的な仲介を通して不動産売却を行う場合、買い手が決まるまでに数か月から半年程度かかるケースがあります。立地や築年数などの条件がよくないと、売却活動が長引いてしまう場合もあります。

しかし、買取なら最短1週間で売買契約ができ、1か月で残代金の決済までを完了できます。ただし、売却価格は市場の相場より安くなってしまうのが注意点です。リフォーム代を差し引いた価格で買い取られるため、相場の約6~8割程度の価格になるでしょう。

空き家の買取業者を選ぶ際は、別の不動産会社に買取業者との仲介を依頼することも可能です。不動産取引のプロである不動産会社に仲介してもらうことで、必要以上に安く買い取られたり、不利な条件を付けられたりするリスクが低くなります。

平屋の模型と虫眼鏡

空き家の売却にかかる費用と税金

空き家を売却するときにいくらかかるのかは、売却を検討するうえで気になることの1つですよね。空き家の売却にかかる費用と税金は次の通りです。

空き家の売却にかかる費用

空き家を売却する際に売主が負担する費用は、主に仲介手数料と解体費用です。

仲介手数料
仲介手数料は、不動産会社に空き家の売却を依頼し、売却が成立した際に不動産会社に支払う成果報酬です。上限金額については、宅地建物取引業法で以下のように定められています。不動産会社によっては仲介手数料の上限より安いケースもありますが、ほとんどの場合は上限通りの金額が請求されます。

売却価格(税別)仲介手数料の上限
200万円以下売却価格×5%(税別)
200万円超から400万円以下売却価格×4%+2万円(税別)
400万円超売却価格×3%+6万円(税別)

なお、仲介する空き家の取引価格が400万円以下の場合、「低廉な家等の売買又は交換の媒介における特例」により、不動産会社は「仲介手数料+必要経費(物件調査費や人件費など)」として上限18万円(税別)を売主に請求できることになっています。

解体費用
空き家を解体し更地にしてから売却する場合、解体工事の費用がかかります。一戸建てに多い木造建築の場合は、1坪当たり4~5万円程度が相場です。解体費用は、主に建物の種類によって決まりますが、立地条件や老朽化の度合い、業者によっても異なります。まずは、複数の業者に見積もりを依頼し、比較検討して選ぶとよいでしょう。

家とショベルカーの模型

空き家の売却にかかる税金

空き家を売却した際にかかる税金は主に、譲渡所得にかかる税金、相続登記費用、印紙税の3つです。

譲渡所得にかかる税金
土地や、一戸建て・マンションなどの不動産を売却した際に発生する利益を「譲渡所得」といいます。この譲渡所得には、金額に応じて所得税や住民税などの税金が課せられることになっており、これらは総称して「譲渡所得税」や「不動産譲渡税」と呼ばれることもあります。

譲渡所得の算出方法は、以下の通りです。

譲渡所得 = 物件を売った金額等(譲渡収入金額) – 【物件を買った費用(取得費) + 売却時の諸費用(譲渡費用)】

譲渡所得にかかる所得税や住民税は、利益に税率をかけて算出します。税率は空き家の所有期間によって異なり、以下のように定められています。

不動産保有期間所得税住民税復興特別所得税合計
保有期間5年以下30%9%0.63%39.63%
保有期間5年超15%5%0.315% 20.315%

なお、不動産の保有期間が5年以下で売却して得た売却額は、「短期譲渡所得」、保有期間5年を超える場合は「長期譲渡所得」と呼ばれます。以上の表を見れば、長期譲渡所得にかかる税率のほうが低く、結果として税額が安くなることが分かりますね。

譲渡と書かれたブロックと電卓

相続登記費用
相続した空き家を売却するには、相続登記が必要です。相続登記とは、法務局に申請して不動産の名義変更を行うことです。相続登記を行うことで、初めて自分の不動産として扱えるようになります。相続登記を行う過程では、申請書類の取得費、登録免許税、司法書士への依頼費用がかかります。

ただし、登録免許税については、場合によって免税措置も設けられています。詳しくは国税庁ホームページをご参照ください。

書類の取得費数千円程度
登録免許税固定資産税評価額の0.4%
司法書士への依頼費用5~15万円程度

印紙税
印紙税とは、不動産売買契約書を含む課税文書を作成する際に課せられる国税です。空き家を売却する価格に応じて税額が定められています。2024年3月31日までの間に作成された契約書は、租税特別措置法による軽減措置の対象となります。軽減措置を受けた際の金額は、以下の通りです。

契約金額本則税率軽減税率
10万円超~50万円以下のもの400円200円
50万円超~100万円以下のもの1,000円500円
100万円超~500万円以下のもの2,000円1,000円
500万円超~1,000万円以下のもの1万円5,000円
1,000万円超~5,000万円以下のもの2万円1万円
5,000万円超~1億円以下のもの6万円3万円

お金と電卓

費用と税金を抑える対策

空き家の売却にかかる費用や税金は、極力抑えたいものですよね。ここでは、売却前に知っておきたい補助金や控除、また自分でできる節約術をご紹介します。

確定申告を行う女性

コストカットに役立つ公的制度

一定の要件を満たせば、空き家の売却時に利用できる相続控除や補助金をご紹介します。なお、以下の特例を受けて税金対策を行うには確定申告が必須です。

空き家解体の補助金
個人が空き家を解体する際には、全国の地方自治体が設けている空き家の解体に対する補助金を利用できる場合があります。補助金を受け取るための条件や補助金の金額、計算方法は自治体ごとに異なるため自治体のサイトや窓口で確認するようにしましょう。

相続した空き家の3,000万円特別控除
親をはじめとした被相続人から取得した相続不動産を売る際に利用できる特別控除です。空き家をそのまま売却して売却益が出た場合に、一定の要件を満たせば、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が適用されます。つまり、譲渡所得のうち3,000万円までは税金が控除されるのです。これは、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を相続空き家にも活用したものです。

相続した空き家の取得費加算の特例
相続や遺贈により取得した空き家を売却した場合、譲渡所得の計算に使う「取得費」に相続税の一部を加算できる特例です。この特例を利用するには、相続税の申告期限の翌日から3年がたつまでに譲渡している必要があります。

10年超所有軽減税率の特例
空き家を売却した場合、売却した年の1月1日時点で10年を超えて所有していれば、住民税をはじめとする譲渡所得にかかる税金の税率が低くなる特例です。更地にした土地にこの特例を適用するためには、家屋を解体した日から1年以内に契約が締結され、かつ、住まなくなった日から3年がたつ年の12月31日までに売却している必要があります。

なお、上記でご紹介した控除や特例は、併用できない場合があります。

TAXと控除と書かれたブロックと家の模型

自分でできる工夫

空き家の売却にかかる費用を抑えるために、自分でできることもあります。売却する際の節約術をご紹介しましょう。

リフォームせずに売却する
売却前に空き家のリフォームを行わない、という選択をすることで、リフォームにかかる費用を抑えられます。リフォームにかかる費用は、老朽化の度合いや工事内容によって異なりますが、家全体をリフォームするとなると、一戸建てでは500~2,000万円程度かかります。

売却前にあえてリフォームを行わないということは、コストカットにもつながりますし、リフォームを待たずに売却活動ができるので、早く買い手が見つかる可能性も高まるといえるでしょう。

不用品は自分で処分する
家の中の不用品はできるだけ自分で処分することで、処分費用を節約できます。たとえば、布団、衣類、食品などは「家庭ごみ」として自分で処分しましょう。これらの処分を専門業者に依頼すると、家庭ごみではなく「産業廃棄物」としての処分になるため、処理費用がかかることになります。

チェックリスト

空き家を売却する際の注意点

ここまで、空き家を売却する際の費用や税金についての注意点をご紹介してきましたが、その他にも気を付けるべき注意点がいくつかあります。ここでは、空き家を売却する際に注意するべきことをご紹介します。

名義変更できているか確認しておく

空き家を売却する際に、最も重要ともいえるべきことは、不動産の名義変更ができているか確認しておくことです。不動産を取得する際は、所有者が誰なのかという情報が登録されます。この不動産の所有者を登録する手続きを「登記」といい、不動産の所有権が移り、名義を変更する手続きを「所有者移転登記」と呼びます。

万が一、空き家を売却する際に、名義が自分になっていなかった場合は、名義変更を行うまで売却できません。そのため、相続したばかりの不動産を売却したい場合には、まずは名義変更を行ってから売却活動を進める必要があります。

名義変更を行う場合は、司法書士に手続きを依頼するのが一般的です。依頼にかかる費用は、司法書士によって変わるのであらかじめ確認しておきましょう。

カレンダーの上にある時計と砂時計

状態を確認しておく

空き家を売却する際には、建物や設備の状態以外に、地盤の状態についても必ず確認するようにしましょう。建物や地盤の現状を把握することで、修繕できるところやきれいにできるところが見つかり、買い手に好印象を持ってもらえる可能性が高まります。

また、空き家は空気がこもりやすい特徴があるため、定期的な換気を行い、臭いや湿気対策も心がけましょう。

建物の耐震性が低い場合や、「特定空き家」に認定されそうな場合、建物の修繕が難しいとされる場合は、建物を壊し更地として売却することも検討しましょう。特定空き家とは、国土交通省が示している衛生上で有害となる恐れがある建物や、倒壊の危険性がある建物などがこれに該当します。更地にするタイミングの詳細については、次にご紹介します。

更地にする場合はタイミングを考える

建物を壊して更地にして売却する場合は、更地にするタイミングを考慮する必要があります。その理由としては、建物を壊し更地にしてしまうことで、家主の税負担を軽減するための減税措置の対象から外れてしまうからです。そのため、取り壊しを行った結果、固定資産税の支払いが増えてしまう場合があります。

固定資産税は、毎年1月1日時点の土地の状態で決定されます。もし、更地の状態で1月1日を迎えてしまうと、その年の1年間は税金が軽減される「住宅用地の軽減」が適応されません。そのため、1月2日以降に更地にすることで固定資産税額を抑えられます。

プロのアドバイスを聞いて売却を進めよう!

空き家の売却をスムーズに進めながら、しかも費用を抑えるには、専門的な知識がなければ難しいかもしれません。そのようなときには、不動産会社に相談することがおすすめです。空き家の状態に最も適した売却方法を提案してもらえるうえに、可能な限り高く売る方法も考えてくれますよ。高い値段で売却できれば、譲渡費用の回収にもつながります。

笑顔のビジネスパーソン

不動産の売り出し価格は、査定額によって決まります。売り出し価格が適正でないと売却に時間がかかったり、損をしたりすることもあるため、売り出し価格を決める際には精度の高い査定を受けることが重要です。

不動産会社は実績を多く有するほど、精度の高い査定が期待できます。累計100万件以上の取扱実績を誇る三井のリハウスは、これまでに得た知見を活かし、不動産売却をサポートいたします。空き家の売却をご検討中の方は三井のリハウスに相談してみてはいかがでしょうか?

宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/