
新築物件を考えている人にとって、都心にするか郊外にするか…という選択は大きな問題でしょう。
都心の物件は、なによりも資産価値があります。さまざまな交通機関が網羅しているというアクセスのよさもあります。そのため、どうしても全体的に価格が高くなっているので、住居に十分な広さが欲しいファミリーにとっては悩みどころです。
郊外の物件は都心と比較すれば割安で、周囲には自然や商業施設などがあって子育ての環境としては申し分ありません。一方で、都心に勤務先がある場合は通勤時間がかかってしまう点や、資産価値は低くなってしまうというデメリットもあります。
どちらも一長一短で、なかなか決められない…そんな方は、「新築物件の多さ」を判断基準にしてみてもいいかもしれません。
新築物件は購入ニーズがあるからつくられます。つまり、新築物件が多いエリアというのは、「価値」があるということですので、それだけ資産価値が崩れにくいエリアということになります。
また、物件が多いということは選択の幅も広がりますので、理想のマイホームを探すうえでも有利になることはいうまでもありません。
では、「都心」と「郊外」のどちらが新築物件が多いのでしょうか。
そこで注目すべきは、「新設住宅着工戸数」です。これには持ち家や賃貸住宅も含まれますが、新しく住宅が建てられているエリアがどこなのかということを知る「目安」になります。
2016年11月の東京都の発表によると、東京でつくられた新設住宅は1万1471戸、参考値で出されている近隣の神奈川県、埼玉県、千葉県の着工数が1万8037戸ですから、首都圏全体でおよそ約3万戸の新しい住宅がつくられているということです。
そして、このなかで「都心」と呼んでさしつかえのない「23区」で着工数を見てみると、8767戸に過ぎません。つまり、「都心」よりも「郊外」の方が多い新しい住宅が建てられているということです。
もちろん、これだけをもって、「都心」よりも「郊外」には新築物件が多いといいきることはできません。「郊外」にも、エリアによってはさまざまな違いがあります。
たとえば、先の東京都のデータでも、八王子市などの東京市部は2673戸と「都心」と比較してかなり少ないことになっています。
また、国土交通省の「住宅着工統計」の2016年11月分をあらためてみてみると、埼玉県の新設住宅は5295戸、千葉県も4659戸と「都心」と比較しても、かなり少ないことがわかります。
「都心」と比べても遜色ないほど住宅が新設されているのは、8452戸の神奈川県だけなのです。
住宅ニーズが新築物件の価格に反映…やはり東京23区と神奈川県が安定
ただ、先ほども申し上げたとおり、新設住宅には持ち家や賃貸住宅も含まれます。また、あくまで2016年11月のデータなので、大規模マンションなどが着工した場合は大きく増減します。
それでも、おおまかな傾向としては、「都心」と「神奈川」で多くの住宅がつくられている…つまり、需要が多いということがわかっていただけたのではないでしょうか。
このエリアごとの住宅ニーズの「差」というものは、新築物件の「価格」にも反映されていきます。
マンションの販売価格などを調査・分析する東京カンテイが、首都圏の都県別に新築マンションの平均分譲価格の推移を調べたところ、2007年に東京都が5000万円を突破、神奈川県は4500万円近くまで上がりましたが、千葉県と埼玉県は4000万円を超えることはなく3800万円ほどを推移しています。
その後、東京都は4500万円ほどに、神奈川県も4,000万円ほどまで下がって推移していましたが、2012年から東京だけは価格が上昇しています。これは再開発がおこなわれている東京都心や湾岸エリアのマンションが高騰していることと無関係ではありません。
同じく中古マンションが高値になっているエリアといえば、武蔵小杉駅や川崎駅周辺です。そのような意味でも、「神奈川県の一部」と「都心」は住宅ニーズ的にみると、価値が落ちないエリアといえるでしょう。
もちろん、マイホームは「資産価値」だけではありません。そこで暮らしていくことを考えれば、千葉県や埼玉県、八王子市などの東京市部にも大きな魅力はあります。
「家」というものをどうとらえるかは人それぞれ。自分のニーズに合った賢い選択をしていただきたいと思います。
