不動産所得の確定申告はマスト?書き方や必要書類、経費まで分かりやすく解説

不動産収入から必要経費を差し引いた不動産所得が年間20万円を超える場合には、確定申告が必要です。この記事では、マンションといった不動産を賃貸する際の確定申告の種類や手順、用意すべき書類について基本的な知識を解説します。

目次
  1. 不動産所得の確定申告は必要?
  2. 不動産所得の確定申告が不要な場合
  3. 不動産所得の確定申告の方法は2種類ある
  4. 確定申告時に不動産所得から差し引かれる経費
  5. 不動産所得の確定申告のやり方
  6. 不動産所得の確定申告に必要な書類一覧
  7. 正しく確定申告を行い、損のない賃貸経営をしよう!
記事カテゴリ 賃貸
2024.01.18

不動産所得の確定申告は必要?

不動産投資やマンション経営、アパート経営などの賃貸経営を始めてみたいと考えているなかで、「確定申告」という言葉を耳にしたり、手続きにハードルを感じたりする方は多いのではないでしょうか?

確定申告とは、1月1日~12月31日までに取得した総所得を計算し、かかる税金の金額を国に申告することを指します。所得とは、給与をはじめとした収入から、必要経費を差し引いた金額のことです。なかでも土地や建物などを賃貸したことによって得る所得は「不動産所得」といいます。

不動産所得の計算方法は以下の通りです。

不動産収入(家賃収入)- 必要経費 = 不動産所得

この記事では、不動産所得がある場合の確定申告について、申告の種類や流れをご紹介します。まずは、どのような場合に確定申告が必要になるのかを見ていきましょう。

不動産所得の確定申告の準備をする女性

不動産所得の確定申告が不要な場合

給与収入がある会社員の場合、不動産所得といった給与以外の所得が年間で20万円以下であれば確定申告は不要です。ただし、不動産所得が20万円以下の場合でも、給与所得が2,000万円を超える会社員は、企業の年末調整の対象から外されるため、確定申告の対象になります。

不動産所得が20万円を超えない場合でも、確定申告をすることで節税対策になることもあります。たとえば、不動産所得がマイナスになってしまった場合、「損益通算」という仕組みを利用することでほかの所得を少なく申告することが可能です。損益通算とは、不動産所得をはじめとした特定の種類の所得において赤字が出た場合に、総所得金額から赤字分の金額を差し引いて計上する制度です。損益通算を利用することで、課税対象となる所得金額が少なくなるので、節税につながります。

たとえば、給与所得が1,200万円で、不動産収入が100万円の損失だったとしましょう。この場合、課税対象となる所得は1,200万円ですが、確定申告を行うと、損失額の100万円を引いた1,100万円が課税対象となり、納税額を減らすことができます。

これらのメリットを踏まえても、不動産所得がある場合は、基本的に確定申告を行ったほうがよいでしょう。

不動産所得の確定申告の方法は2種類ある

ひとくちに確定申告といっても、個人で行う確定申告は「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。どのような違いがあるのか見ていきましょう。

白色申告

白色申告とは、全ての納税者を対象とした、基本的な申告方法です。白色申告の大きなメリットは、何といっても手続きの簡単さでしょう。単式簿記といって簡易的な簿記による記帳で手続きが済むため、もう1つの方法である青色申告と比較すると手続きのハードルが低くなります。

しかし、白色申告の場合は、青色申告で受けられるような税制上の優遇措置を受けることができません。では、青色申告ではどのような優遇措置があるのか次でご紹介します。

不動産所得の確定申告書を持つ人

青色申告

不動産所得や事業所得、山林所得がある人は、青色申告の制度を利用することができます。青色申告は、複式簿記による記帳が必要になるため、白色申告よりも帳簿の数が増え申告方法が複雑になりますが、利用することで青色申告特別控除が適用されます。

青色申告をする場合は、事前に申請しておく必要があります。申請するには、「青色申告承認申請書」と、「開業届」という2つの書類をその年の3月15日までに提出することが必要です。それ以降に不動産投資を始めた場合は、青色申告承認申請書は、家賃を得た日から2か月以内、開業届は、家賃を得た日から1か月以内に提出するようにしましょう。

期限をすぎてしまったり、申請をしていなかったりした場合は、その年の青色申告はできないので注意してください。

また、青色申告をすることで受けられる所得控除の金額は、申告の方法によって10万円、55万円、65万円の3つのケースに分かれます。それぞれの金額の条件を見ていきましょう。

●10万円控除の場合
青色申告者のなかで、次に紹介する55万円と65万円の控除の要件に当てはまらない場合に利用できるのが10万円控除です。控除額が最も少ない10万円の控除の場合、簡易簿記での記帳が認められています。複式簿記に比べて記帳がかなり楽といえるでしょう。

●55万円控除の場合
55万円控除を受けるためには、不動産賃貸が事業的規模であることが条件になります。事業的規模といえる賃貸物件の基準は以下の通りです。

・マンションやアパートについて、貸与できる戸数がおおむね10戸以上であること
・独立家屋の場合、おおむね5棟以上であること

不動産所得、または事業所得を持つ人が、複式簿記で記帳をし、3月15日までに「貸借対照表」と「損益計算書」と共に確定申告書を提出した場合に、55万円が控除されます。

●65万円控除
55万円控除の条件を満たし、かつe-Taxによる申告か、電子帳簿保存を行う場合に65万円控除が適用されます。e-Taxとは、インターネット上で確定申告や納税ができるシステムのことで、電子帳簿保存とは、帳簿を紙に出力せずに電子データで保存することです。電子帳簿保存は以前は3か月前までの事前承認申請が必要でしたが、現在は特別な手続きなく行えるようになりました。

ほかにも、青色申告を行うと、所得で赤字ができてしまった場合にも損益通算することで課税が軽減できたり、最長で3年間赤字を繰り越したりすることが可能です。なお、白色申告でも損益通算で課税を軽減できますが、赤字の繰り越しはできません。そのため本来確定申告が必要のない赤字が出た場合でも、税金対策として青色申告することをおすすめします。

確定申告の対象となる賃貸経営

確定申告時に不動産所得から差し引かれる経費

先述の通り、不動産所得は収入金額から必要経費を差し引いたものになります。その際、必要経費に含まれるものは主に以下の通りです。

・不動産にかかる税金
・建物の購入費用
・住宅ローンにかかる利子やその他費用
・修繕費
・水道光熱費
・住宅保険料
・仲介手数料
・専門家報酬費
・不動産所得を得るうえで発生した経費
・扶養家族に支払った給与

上記の必要経費について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

不動産にかかる税金

不動産にかかる税金のなかにも、経費計上できるものとできないものがあります。経費計上できる税金は以下の通りです。

・不動産取得税
・固定資産税
・都市計画税
・登録免許税
・印紙税
・事業税

なお、所得税や住民税、法人税といった税金は、個人に課税されるものであるという認識のため、必要経費には含まれない点に注意が必要です。

建物の購入費用

建物の購入費用は固定資産として減価償却することができます。減価償却とは、建物の購入にかかった費用を、法律で定められた使用期間の間にわたって少しずつ経費計上することです。

住宅ローンにかかる利子やその他費用

住宅ローンの利子や、住宅ローン借入時、または借り換え時に発生した費用も必要経費に含まれるため、関係書類を集めておきましょう。ただし、住宅ローンの元金は必要経費に含めることができないため注意が必要です。

修繕費

不動産を修繕した際の費用も必要経費として計算されます。具体的には、リフォーム費用や、故障した設備の修理、設備点検費などです。不動産を所有していると、経年劣化によりどうしても修繕費がかかります。こういった出費はオーナーが支払うため、必要経費として差し引くことが可能です。

不動産収入から差し引く必要経費の領収書

水道光熱費

賃貸物件の共用部分に使用される設備の水道代や光熱費も、必要経費として計上することができます。計上時に金額が共用部分以外の分と混ざらないよう、根拠となるような領収書・支払いの明細書を残しておくと安心です。

住宅保険料

住宅保険料も忘れずに必要経費のリストに加えておきましょう。不動産購入をする際には火災保険や地震保険などの住宅保険に加入することが一般的ですが、これらにかかる火災保険料や、地震保険料も必要経費として認められます。なお、火災や地震が起こった際に得た保険金の所得税は非課税です。

仲介手数料

物件を購入・売却する際、不動産会社に仲介を依頼すると仲介手数料がかかります。実際の金額は不動産会社によって異なりますが、仲介手数料の上限額は、売買価格が400万円以上の場合、宅地建物取引業法において以下のように定められています。

取引物件価格(税抜)× 3% + 6万円 + 消費税

賃貸管理委託費用

賃貸運営を行ううえで、管理業務を不動産会社に依頼する場合には、初期費用や毎月の管理手数料がかかります。委託する会社やプランによって金額は変わりますが、このときにかかる費用も経費として計上可能です。

専門家報酬費

不動産を購入した際に、司法書士や税理士、弁護士などの専門家に相談または手続きの依頼をした場合には、報酬が発生します。この報酬も必要経費として計算することができます。

不動産所得を得るうえで発生した経費

上記のほかにも、不動産所得を得るうえで発生した経費は必要経費として見なされます。たとえば、不動産会社や管理会社との打ち合わせに使った交際費や交通費、不動産購入のための情報収集でかかったセミナー代、本やテキストといった書籍代、インターネットの通信費用などです。

扶養家族に支払った給与

青色申告をしていれば、扶養家族に支払った給与が青色事業専従者給与と見なされ、必要経費から差し引くことができます。

このように、不動産所得にかかるさまざまな費用は必要経費として認められます。これら以外にも、不動産の広告宣伝費や賃貸経営に必要な備品購入費など、必要経費に含まれるものがあるため、気になった費用は一度確認してみることをおすすめします。必要経費に含まれそうな費用が発生すれば、その都度領収書を発行してもらい、保管しておきましょう。また、プライベートとの区分が分かりにくく、必要経費に含まれるか見極めが難しい場合は、専門家である税理士に聞いてみるとよいでしょう。

●家賃収入にかかる税金や計算方法について詳しくはこちら

不動産収入から差し引く税金

不動産所得の確定申告のやり方

ここまで、確定申告の種類やそれぞれの条件について解説してきました。ここからは実際の申告の方法について解説していきます。

[ 1 ] 必要書類の用意と作成準備

確定申告を行うにあたっては、白色申告であるか、青色申告であるのか、控除額がいくらであるのかによって必要書類が異なります。事前に申告方法を決め、その方法に必要な書類を確認しましょう。それぞれに必要な書類は以下で解説します。

[ 2 ] 確定申告書類の作成

準備した書類を元に、確定申告書類を作成します。確定申告書Bや、青色申告決算書など複雑な書類の書き方が分からない場合は、税務署で税務署員のアドバイスを受けながら作成するとよいでしょう。ほかにも国税庁のホームページに、パソコンを使って確定申告ができる「確定申告書等作成コーナー」というページがあります。こちらのページでは、必要事項への記載入力、書類の作成、提出、印刷までができます。

[ 3 ] 確定申告書類を提出する

確定申告書類の提出方法は、所轄税務署の窓口まで足を運ぶ、郵送する、e-Taxを使ってインターネットで申告をする、の3つがあります。e-Taxを使うと、先ほどご紹介したように、65万円の所得控除を受けられる可能性があります。

確定申告書類の記入

[ 4 ] 納税または還付を受ける

確定申告書類の作成、税額計算を済ませた結果、納税が必要な場合は所轄税務署または所轄税務署管内の金融機関で手に入る納付書を使って納税します。納税期限は原則、確定申告書の提出期限の3月15日になるため、余裕を持って確定申告の準備を進めましょう。

また、税金の還付を受ける際は、口座に「国税還付金」として振り込まれます。e-Taxを使った電子申告だと、書面提出より早く還付金を受けられる場合があるためおすすめです。

不動産所得の確定申告に必要な書類一覧

不動産所得の確定申告に必要な書類は以下の通りです。

必要書類入手先
確定申告書国税庁のWEB、または税務署
収支内訳書(白色申告の場合)
青色申告決算書(青色申告の場合)
固定資産税通知書市町村

また、そのほか必要経費が発生する方は、以下の書類も該当する分だけ用意しましょう。

・賃貸借契約書
・送金明細表
・借入返済表
・源泉徴収票
・保険関係の支払いが分かる書類
・管理費・修繕積立金などの領収書
・所得税の減価償却資産の償却法の届出書

確定申告書

確定申告書は、白色申告、青色申告どちらの場合でも使用するものです。比較的記入が簡易で対象が給与所得や公的年金等の雑所得、配当所得などの所得だけがある人に限られていた「確定申告書A」という書類は廃止されたため、2023年(2022年分)から従来の確定申告書Bに1本化されています。

収支内訳書

白色申告をする場合には、収支内訳書を作成するようにしましょう。収支内訳書とは、1月1日~12月31日までの収支をまとめたもので、必要経費を勘定科目ごとに記入します。収支に関する取引のメモや帳簿を事前に用意しておくとよいでしょう。

青色申告決算書

青色申告をする場合は、「青色申告決算書」を作成しましょう。青色申告決算書と収支内訳書に共通する記載項目の例としては、月別の売上金額や、固定資産の減価償却費などが挙げられます。青色申告決算書には、貸借対照表の作成が必要です。

さらに、青色申告の場合、控除額によって用意すべき書類が異なる点に注意が必要です。10万円控除適用の場合、確定申告書と青色決算書、55万円、65万円控除適用の場合、確定申告書と青色決算書、損益計算書、貸借対照表がそれぞれ必要になります。

固定資産税通知書

固定資産税は、必要経費として不動産収入から差し引くことができるため、市町村から届いたら大切に保管しておきましょう。

賃貸借契約書

賃貸借契約書は、借主と賃貸借契約を結んだ際に作成する契約書のことで、物件の賃料や、賃貸条件が分かるものです。

送金明細表

送金明細表は、賃貸管理を専門の会社に委託している場合に、その管理会社や不動産会社から毎月送られてくる書類で、回収した物件の賃料が記載されています。

源泉徴収票

給与所得者の場合、年末調整の後に勤め先の会社から発行される書類で、年間の収入や、所得税の納税額、控除額が記載されています。損益通算をする場合には、源泉徴収票を使って計算をします。

所得税の減価償却資産の償却方法の届出書

減価償却資産の償却方法を選択する人は、開業した年の確定申告期限までに届出を提出する必要があります。

不動産所得の確定申告に必要な源泉徴収票

正しく確定申告を行い、損のない賃貸経営をしよう!

ここまで、不動産所得の確定申告について、申告の種類や手順、必要書類についてお伝えしてきました。前述の通り、確定申告をすることによって、税金控除を受けられるケースがあるため、不動産所得の確定申告はほぼ必須といえます。

賃貸経営を行う際は、自身の不動産所得について把握し、正しく確定申告することが重要です。事前に申告方法の確認や、必要書類の準備などを行うようにして、正確な確定申告をするようにしましょう。

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