マンションを貸す際のコツとは?流れや節税方法を紹介

住まなくなったマンションは貸すことによりさまざまなメリットがあります。今回は貸す際の流れやかかる費用、貸す前にしておくべきことなどをご紹介します。マンションを貸すことを具体的に検討する際にお役立てください。

目次
  1. 住まない分譲マンションを「貸す」のはアリ?
  2. マンションを貸す方法は?
  3. マンションを貸す際にかかる費用は?
  4. マンションを貸す前にするべきことは?
  5. マンションを貸す際の注意点
  6. 節税につながるポイント
  7. マンション賃貸を成功させるコツ
記事カテゴリ 賃貸
2022.09.20

住まない分譲マンションを「貸す」のはアリ?

転勤をはじめとするライフスタイルの変化に伴って、今住んでいる分譲マンションを賃貸物件として利用できないかと考える人もいるのではないでしょうか?

しかし、マンションを売ることはイメージできても、貸すイメージが浮かばないという人もいることでしょう。そこで、実際にマンションを貸すには何をどうすればよいのか、貸すことによるメリットや注意点にはどのようなことがあるのかについてご紹介します。転勤による住み替えや相続などの事情で分譲マンションの貸し出しを考えている人はぜひ参考にしてください。

まずは、分譲マンションを貸すことによるメリットを見ていきましょう。マンションを貸す大きなメリットは、以下の3つです。

分譲マンション

資産を手放さず保持できる

売却すると物件は資産として残りませんが、賃貸として利用すれば、資産を保持することになります。また、建物の不動産価値は、築年数が長くなると低下する傾向にありますが、賃貸として利用することで、空き家として放置するよりも劣化のスピードを抑えられるでしょう。入居者がいる間は、入居者が空気の循環や掃除をしてくれるためです。

家賃収入を得られる

賃貸物件として貸し出すことで、家賃収入を継続的に得ることが可能です。住宅ローンの返済がある場合は、家賃収入を返済に充てることもできます。ただし、自分の居住用として借り入れていた住宅ローンが残っている状態でマンションを貸し出す際は、借り入れした金融機関へ事前に相談する必要があります。

節税につながる

マンションを売却せずに貸すことによって、節税効果が期待できます。なぜなら、貸し出している際に発生する固定資産税、管理費、修繕積立金などは確定申告の際に経費として計上可能なため、その分税金がかかる対象となる金額を減らすことができるからです。計上できる経費については、後ほど詳しくお伝えします。

また、自分の子どもや孫へ財産を相続することを考えると、売却して現金化するよりも不動産として残しておいたほうが相続税が安くなる可能性があります。不動産の相続税は不動産の「評価額」をもとに算出されますが、この評価額は時価(そのとき売買する際の価格)の7割ほどといわれています。そのため、同じ価値の財産であれば現金で相続するよりも不動産の形で相続したほうがかかる税金が少なくなるのです。

笑顔の女性

マンションを貸す方法は?

「貸すことのメリットは分かったけど、実際にどうすれば貸し出せるの?」と疑問に感じる人もいると思います。ここでは、マンションを貸し出すまでの流れについてご紹介します。

[ 1 ] 不動産会社を探す

マンションを貸し出すにあたって、借主を見つけたり賃貸の管理を行ったりする必要があります。これらを自分だけで行うのはとても難しいので、貸主と借主をつなぐ仲介業務や入居後に設備の故障・不具合対応や家賃の回収などを行う管理業務は、不動産会社に依頼するとよいでしょう。仲介業務と管理業務は、どちらかのみを行う不動産会社もあれば両方の業務を行う不動産会社もあります。

賃貸管理会社については以下の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。

●賃貸管理会社に関する記事はこちら
賃貸管理会社とは?物件を貸す際に知っておきたい基礎知識

[ 2 ] 貸し出す方法を決める

依頼する不動産会社が決まったら、借主にどの契約方法で貸し出すか決めましょう。マンションの賃貸契約には次の2つがあります。

●普通賃貸借契約
普通賃貸借契約は、2つの契約のうち最も一般的な契約方法で、国土交通省の「令和3年度住宅市場動向調査報告書」によると、賃貸契約全体の96%を占めます。※1

一般的な契約方法のため、借主が見つけやすく家賃や共益費などの条件も相場通りに募集が出せるメリットがあります。しかし、正当な事由がない限り貸主側から契約を解除することができないので注意が必要です。また、契約期間は一般的に2年間と定められています。

●定期賃貸借契約
定期賃貸借契約は、普通賃貸借契約とは異なり、契約期間を自由に設定することができるメリットがあります。そのため、転勤で決まった期間のみ貸し出したい場合に向いている方法といえます。
一方で、普通賃貸借契約と比較して契約期間に縛りがあるため、借主が見つかりにくく、場合によってはある程度家賃を低く設定する必要も出てきます。

仕事中の男性

また、上記2つの管理委託契約とは異なり、サブリースという転貸する方法もあります。サブリース契約とは、不動産会社がオーナーの所有する不動産を借り上げ、それを借主に貸し出す契約方法です。毎月の家賃保証が受けられるので、空室リスクに対する不安が和らぐというメリットがあります。一方で、上記の2つの方法と比較して不動産会社に支払う管理手数料が高めになる傾向があります。

[ 3 ] 家賃を設定する

契約方法を決めたら、家賃を設定しましょう。家賃は貸主が自由に設定することができますが、高過ぎる家賃を設定すると借主が見つかりにくいので、相場に合った家賃を設定することが重要です。家賃を設定する際は、所有する不動産の築年数や間取り、設備、周辺施設などを考慮して設定するとよいでしょう。所有するマンションの周辺エリアで同じようなマンションの家賃価格を調べておくと適切な家賃を設定することができます。

[ 4 ] 入居者を募集する

ここまで決まったら、入居者の募集を開始します。多くの場合入居前に内見をすることが一般的なので、入居者を募集する前にマンションを空室にできると理想的です。入居者募集にあたっての広告作成や掲載手続きは不動産会社の仲介業務の範囲になっています。写真の撮り方や記載する情報量によって広告の効果が変わるため、クオリティの高い広告となっているかチェックしましょう。

[ 5 ] 契約手続きを行う

入居希望者が現れたら、最後は契約手続きを行います。ここで、契約者に対して継続的な支払い能力があるかの審査のほか、入居者に対してはトラブルを引き起こさないか、室内をきれいに使用してもらえるかなどの確認も行われます。そして、審査が通り入居が決まれば、賃貸契約が結ばれ、マンションは正式に貸し出されます。そのマンション特有のルールや設備の使用方法などについて入居者に伝えておくとよいでしょう。

握手

マンションを貸す際にかかる費用は?

マンションの購入や売却と同様、貸し出す際も費用がかかるため、貸し出す際には、事前にどれくらいの費用がかかるのかを計算しておくことが大切です。ここでは、マンションを貸し出す際にかかる3つの費用についてご紹介します。

貸す前にかかる費用

マンションの貸し出しを行う前にかかる費用として、一般的なのはハウスクリーニング代やリフォーム代です。引渡しの前に、入居者へきれいな状態で部屋を渡すためのハウスクリーニングが必要です。また、場合によっては壁紙の張り替えや設備の交換などのリフォームを行うケースもあります。

そのほかにも、引越し費用や不要な家具を撤去するための粗大ごみ費用などもかかります。あらかじめ、貸し出す前にどれくらいの費用がかかるのか概算しておくとよいでしょう。

不動産会社への報酬

仲介業務の依頼や管理業務を委託した場合には不動産会社への報酬として、仲介手数料や管理手数料、初期費用などを支払う必要があります。

仲介手数料の場合は、宅地建物取引業法により、家賃の1ヶ月分までが上限と定められており、貸主に50%、借主に残りの50%を請求することができます。ただし、貸主と借主間で了承があれば、その限りではありません。加えて、貸主が仲介手数料を支払うケースはまれで、多くの場合は借主が家賃1ヶ月分の仲介手数料を支払うのが通例です。

管理手数料は、賃貸管理会社に管理を委託する際に発生するコストです。月額家賃の5%前後が目安となりますが、委託範囲によって異なります。

また、賃貸管理会社に依頼する際に、「管理登録料」や「契約事務手数料」などと呼ばれる初期費用もかかります。初期費用の相場は、家賃の1〜1.5ヶ月分です。

ランニングコスト

マンションの貸し出しには、管理手数料以外にも貸主側が負担するランニングコストとして、設備の故障や修繕費用、固定資産税、マンションへの管理費や修繕積立金の支払いなどさまざまな費用がかかります。あらかじめ、ランニングコストにはどのような項目があるのかを調べたうえで、年間どれくらいのコストがかかるのか概算しておくとよいでしょう。

家の模型と電卓

マンションを貸す前にするべきことは?

マンションを貸し出す前にするべきことを5つご紹介します。

収支をシミュレーションしておく

前述した通り、マンションの貸し出しには家賃収入を得るだけでなく、費用もかかります。そのため、事前に収支のシミュレーションをして毎月や毎年の収支がどれくらいなのかをしっかり把握しておくことが大切です。次の表のように収支にはさまざまな費用があります。

●収入

収入項目発生頻度
家賃毎月
共益費毎月
礼金初回のみ
更新料更新時のみ

●支出

支出項目発生頻度
管理手数料毎月
修繕積立金・管理費毎月
火災保険料毎年
※保険によって異なる
税金毎年
ローンの返済額毎月

金融機関に連絡を入れる

分譲マンションを購入の際に、住宅ローンを借り入れていてまだ返済が終わっていない場合は、貸し出す前に金融機関に連絡を入れる必要があります。なぜなら、住宅ローンを借り入れる際の条件として、本人またはその家族が住むことが条件として設定されていることが多いからです。マンションを貸し出して収入を得ると、住宅ローンの条件と異なってしまうため、ローンの契約違反になる恐れがあります。

金融機関に相談した結果、住宅ローンから「不動産投資用のローン」に切り替えを求められることがあります。ちなみに、不動産投資用のローンのほうが住宅ローンよりも金利が高いケースが一般的です。ただし、マンションの貸し出す期間が一時的なものであると判断できる場合は、住宅ローンのままで許可をもらえることがあります。

以上のことから、住宅ローンの残債がある場合は、必ず事前に金融機関に連絡を入れたうえで、ローンの切り替えや返済計画について話し合うようにしましょう。

火災保険の見直しをする

火災保険には、居住用の保険と貸し出し用の保険があるため、必要に応じて火災保険のプランを見直す必要があります。貸し出す前に不要なものは解約して、必要なものは加入しておきましょう。

禁止事項を決めておく

マンションを貸し出す前に、入居者が守るルールを決めておくことがおすすめです。たとえば、室内でタバコを吸うと部屋に臭いが付いたり、壁紙が変色したり、ペットを飼って壁紙が汚れるなどのトラブルが発生する可能性があります。そういったトラブルを未然に防ぐために、不動産会社と相談し、禁止事項や条件などを設定しておくとよいでしょう。ただし、厳しくし過ぎてしまうとかえって借主が決まらない恐れがあるので注意しましょう。

事前に写真を撮っておく

賃貸物件の退去時には、借主は原則として、家の内装や設備を入居前の状態に戻す「原状回復」を行う必要があります。原状回復に関する貸主と借主間のトラブルが多いことを背景に、国土交通省では「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を発行しており、直近では、2020年の民法改正に伴い変更されています。

このガイドラインが徐々に浸透していったためか、2005年度と比較すると2020年度の国民生活センターによせられた敷金・原状回復に関する相談件数は減少傾向ですが、それでもなお、2020年度には12,000件以上もの相談が寄せられています。

このようなトラブルを未然に防ぐためには、禁止事項や条件を設定する以外にも、事前に写真を撮っておくことが重要です。写真を撮っておくことで、借主が退去する際に、傷は元々あったものなのか借主が傷つけたものなのかを判断する材料になるでしょう。

ちなみに、原状回復とは、借主の責任によって生じた汚れや傷を戻すことを指し、経年劣化や通常損耗などは原状回復の対象外となります。

カレンダーとメモ

マンションを貸す際の注意点

次に、マンションを貸し出す際の注意点について確認しましょう。注意点は大きく次の4つです。

費用がかかる

前述した通り、マンションを貸し出す際は、さまざまな費用がかかり、家賃収入が安定して手に入るまで、収支がマイナスとなってしまう恐れがあることに注意しましょう。事前にかかる費用としては、リフォーム費やハウスクリーニング費、管理を依頼する不動産会社へ支払う初期費用などです。貸し出したあとにかかる費用としては、管理を依頼する不動産会社への管理手数料や修繕費の積立、税金などがあります。

空室リスクがある

契約の方法にもよりますが、マンションを貸し出しても空室が続いてしまい、家賃収入が途絶える恐れがあります。また、家賃収入が入ってこなくても、管理手数料や修繕積立金は支払い続けなければならないため、収支がマイナスになってしまう可能性があります。

貸主の都合で途中で契約を解除することはできない

普通賃貸借契約を結んだら、2年ごとに契約更新を行うことが一般的です。その際に、正当な事由がない限り、貸主側から途中で契約を解除することはできません。正当な事由があれば、6ヶ月前に解約予告をすることができますが、多くの場合、正当な事由としてなかなか認められないため契約解除は難しいといえます。

定期賃貸借契約を結んだ場合は、自由に定めた一定期間で契約を終了できますが、貸主側から途中で契約を解除することは正当事由の有無にかかわらずできません。

売却時の相場が下がる可能性がある

入居中の物件を売却する場合は、収益物件(オーナーチェンジ物件)という扱いになります。この場合、物件の需要が投資用に限られてくるため、査定価格や売却価格が、居住用として売却する場合と比較すると低くなる傾向があります。

家の模型とグラフ

節税につながるポイント

家賃収入は所得税の対象となりますが、コツを押さえて確定申告を行えば、納税額を少なくすることが可能です。ここでは、確定申告する際のポイントを2つご紹介します。

費用は経費として計算する

収入から経費を差し引いた金額が不動産所得として税金がかかる対象となります。そのため、経費をたくさん計上して不動産所得を低く見積もれば、かかる税金は少なくなります。経費として計上できるものは、次のようなものがあります。

・管理費
・修繕積立金
・損害保険料
・減価償却
・修理費
・ローンの利息
・固定資産税
・都市計画税
・印紙税
・証明書発行手数料

このほかにも、不動産会社へ支払う費用や税理士への依頼料、交通費や通信費なども経費として計上することができます。経費として計上するために、領収書やレシートは大切に保管しておきましょう。

不動産所得が赤字の場合

もし空室が続いてしまったことによって、不動産所得が赤字になってしまった場合、ほかの所得と損益を合算して所得税を計算することができます。この場合は、トータルの所得に税金がかかるので、不動産所得が赤字であることによって、全体の所得額が下がり、結果として所得税も下がります。そのため、不動産所得が赤字になってしまったとしても、経費をしっかりと計上しておくことで節税につながります。

確定申告用紙

マンション賃貸を成功させるコツ

今回は、分譲マンションを貸し出すことのメリットや注意点、貸し出しまでの流れなどについてご紹介してきました。分譲マンションを貸し出す際は、将来設計を考え、貸し出す際に発生するコストも充分に考慮したうえで検討しましょう。

また、信頼できる賃貸仲介会社や賃貸管理会社を選ぶことも、マンションの貸し出しを成功させるポイントです。三井のリハウスでは、「売る」「買う」「貸す」「借りる」全てにおいて長年の実績があります。そのため、抜群の集客力をもって、空室リスクを低減します。そのほかにも、賃貸として出していた物件を売却したい人や転勤先の物件探しに迷っている人など多方面でのサポートも可能です。

さらに、分譲マンションの豊富な取扱実績もあるので、賃貸仲介会社、賃貸管理会社を検討中の人はぜひご気軽にご相談ください。

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※1出典:国土交通省「令和3年度 住宅市場動向調査報告書」
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001477550.pdf
(最終確認日:2022年8月16日)

アユカワタカヲ

株式会社タカプランニングジャパン代表取締役。
宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナーなどの資格を保有。
会社員時代に不動産投資をスタートさせ、今では幅広く不動産賃貸業を営む。
メディア出演や著作の出版、セミナーなどでも活躍。
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